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 五蘊と認知の4点セット

2021.05.10文部科学教育通信掲載

4月3日に、法隆寺で開催された 聖徳太子没後1400年の特別法要に参列しました。聖徳太子のご遺徳を忍び、功績を敬讃する法要では、雅楽に合わせて華麗な舞を奉納する様子もあり、神仏が融和した当時の仏教の姿を垣間見ることができました。

お寺で雅楽?

今年は、聖徳太子没後1400年の御恩忌とされ、法隆寺では、3日間 特別法要が行われます。私が参列した法要は、その初日で、西院伽藍で営まれ、450人が参列しました。法要では、雅楽に合わせて、子どもたちが、極楽にいるとわれていると鳥の衣装に身を飾り、華麗な舞の奉納を行いました。神仏が融合する様子に、仏教が日本に紹介され、日本社会の一部になり始めた頃の日本を想像し、祖先の皆様に感謝の気もちを抱きました。和を重んじる聖徳太子の教えが、神仏融合の姿にも表れていると感じました。

法隆寺では、毎月3日に命日の法要「お会式」を営み、10年に一度、大講堂の前に部隊を設けて大きな法要を行うそうですが、今回は、100年に一度の特に大きな法要でしたので、とても貴重な機会となりました。100年前の法要は、大正時代に行われ、新しい一万円札の顔となる渋沢栄一氏が尽力して、国を挙げての法要であったというのも、何か不思議なご縁を感じます。

五蘊(ごうん)

さて、ここからは、仏教の五蘊について触れてみたいと思います。最近、出版した「リフレクション 自分とチームの成長を加速させる内省の技術」で紹介しているメタ認知のための手法 認知の4点セットを開発する際に、マインドフルネスについて調べている時に、仏教の五蘊という言葉に出会い、とても感動しました。

お釈迦様の教えの中でも、最も、私たちに馴染みのあるのが般若心経です。その中にも、五蘊は、登場します。般若心経では、色即是空の方が、五蘊よりも有名かもしれませんが、五蘊は、色即是空とも関連のある言葉です。

色は、物質的存在のことで、色即是空は、この世の万物、形あるものの本質は、空(くう)であり、普遍のものはないという般若心経の教えです。

五蘊の5つの構成要素

五蘊は、人間を5つの構成要素で表しています。その一つが、色であり、ここでは人間の肉体を指します。残りの4つ 受想行識 は、精神に関するものです。形のない精神の世界を、4つに分類していることと、その視点にとても驚きました。

事例と共に、五蘊を紹介してみたいと思います。

色:物質的存在 

人間の肉体は、空です。人間の体は、赤ちゃんから大人になり、やがては老いて土にかえるので、空であることは納得できます。

では、受想行識はどうでしょうか。

雨の事例で紹介してみたいと思います。

受:感受 

水滴が頭に落ちたことを知覚します。

想:表象

空から水滴が頭に落ちがことを知覚し、雨が降ってきたと判断します。

行:意思

雨を認識したので、雨に濡れたくない(という意思が現れ、次に行動へ)、傘を取り出し、傘をさします。

識:認識

この経験では、傘を持っていたので、雨に濡れずにすみました。そこで、「いつでも傘を持ち歩こう」と考えます。

一般的には、「雨が降ってきたので、傘をさした」と考えがちです。受想行識では、水滴の存在⇒雨と気づき⇒濡れないようにという意思があるから⇒傘をさすという行動を選択し⇒この一連の経験から「いつでも傘を持ち歩こう」という知識を形成する という風に、自分の内面で起きていることを、大きく4つに分類しています。

特に興味深かった所は、行は、意思であるという点です。意思を持つことは、同時に、行動することを意味するという点です。例えば、物事を他責で考えている時でも、そこには、「行」が常に存在することになります。

五蘊に出会い、お釈迦様の深い悟りから生まれた「メタ認知」の世界の奥深さに驚きました。自分の内面を深く理解することが可能になります。

知覚と判断

ユングの心理学を学んでいた際に、人間は生きているすべての時間において、知覚と判断を繰り返しているということを教わりました。そして、知覚と判断は心の機能であるという説明を受けました。五蘊の「受」と「想」が、知覚と判断に当たります。

私たちは、たくさんの経験を積み重ねると、この「受」と「想」を分けられなくなります。頭の上に、水滴が落ちたら、すぐに「雨だ」と気付きます。この水滴は何だろうと疑問に思う人はいないでしょう。私たちが、常識だと考えること、多くの人が当たり前と考える社会通念、無意識の偏見等は、すべて、知覚と判断、「受」と「想」が切り分けられていない状態です。

五蘊を知っていれば、自らの行動の前提には、「受」と「想」があると考えることができるので、「私は、何を知覚し、どのような判断を下し、今の行動を選択したのか」 と自分に問いかけることができます。

学習する組織論

学習する組織論は、MITのピーター・センゲ氏によって構築された理論です。この理論の背景には、西洋的なものの見方だけではなく、東洋的な要素がたくさん入っています。センゲ氏も、理論の構築に当たり、西洋の心理学の世界だけではなく、東洋の思想や哲学に学んだと述べていました。おそらく、メンタルモデルという手法を確立する際に、五蘊も参考にしたのではないかと思います。

メンタルモデルとは、人が物事を捉えるレンズです。人間は、誰もが、物事を捉える際に、過去の経験によって形成されたものの見方を活用します。これは、私たち人間が、危険から身を守るためには、大切な習慣です。ところが、仕事においては、この習慣が、逆に、危険を意味することになります。特に、変化の激しい時代には、過去の前例を踏襲することは、大きなリスクになっています。

そこで、学習する組織では、自分の内面を俯瞰するために、自身のメンタルモデルをメタ認知することを奨励しています。

自分のメンタルモデルは何か。(判断の尺度・価値観・ものの見方)自分はどのようなレンズ(判断の尺度・価値観・ものの見方)で物事を捉えているのか。そのレンズは、どのような経験により形成されたものなのか。

ピーター・センゲの弟子たちは、この問いに答えることで、次のアクションを見出す習慣を持ちます。私自身も、ずっと、メンタルモデルを意識する習慣を持ち、日々の生活や仕事に臨んできました。

五蘊は、今、この瞬間に自分の内面に起きていることをメタ認知する手法であり、メンタルモデルは、自分の判断を起点に、その背景を分析するアプローチを取ります。

認知の4点セット

メンタルモデルを参考にして生まれた認知の4点セットでは、意見、経験、感情、価値観とメタ認知の対象を、4つの要素に分解しています。

認知の4点セットでは、意見(自分の考え)と、感情(自分の気持ち)という、自分でも認識し易い事柄を中心に、それが、どのような背景によって生まれたのかを、経験(過去の経験を通して知っていること)と、価値観(意見や感情に繋がる判断の尺度やものの見方)の2つの観点で探求します。特に、ポジティブ/ネガティブな感情は、価値観と繋がっているので、感情をメタ認知することで、自分の内面を俯瞰し易くなります。

本来は、今、この瞬間の自分の内面を、受想行識で捉えられることが理想です。そのためにも、日々、自己の内面をメタ認知する訓練を続けてみたいと思います。

 

 

非認知能力と問題解決力

2021.04.26文部科学教育通信掲載

教育において、非認知能力の重要性が盛んに謳われるようになりました。人間教育において、社会情緒的能力の重要性は、今も昔も変わらないはずなのに、なぜ、非認知能力に注目が集まるのでしょうか。

国立教育政策研究所は、非認知能力を社会情緒的コンピテンスとして3つに分類しています。

  • 自分に関する領域(自己認識、自分の感情、自己制御等)
  • 他者に関する領域(他者の感情や思考の理解等)
  • 自己と他者や集団との関係に関する領域(人間関係、コミュニケーション)

そこで、今回は、非認知能力と問題解決力の関係についてお話してみたいと思います。

 

企業やNPOの方々を対象に、リーダーシップ開発や問題解決の支援を行う中で、改めて、問題解決には、認知能力と非認知能力が両方必要になることを実感しています。複雑な問題を解決する上で、高い専門性を有し、必要な情報を収集し分析することや、課題そのものを論理的に整理することは大切な能力です。高い認知能力は、この領域において大きな力となります。

しかし、現実社会の問題解決は、机上で受験問題を解くのとは異なり、課題を解くために必要な情報がそもそも存在せず、不確実な中で判断を迫られることもあります。また、課題解決のためには、多様なステイクホルダーと向き合う必要があります。不可能に挑戦するような課題解決に臨む際には、反対勢力の存在、現状維持を望む人々の抵抗、無関心な傍観者等に囲まれながらも、前向きな気持ちを持ち続け、時には、ビジョンを熱く語ることも必要になります。これらすべての行為は、非認知能力に支えられています。

リーダーシップと非認知能力

以前、ある大学生が、学生団体のリーダーに就任した直後に、「リーダーになったら、なんでも思い通りに出来ると思っていたのに、全くそうではなかった。リーダーになるということは、思い通りにならないことを引き受けることなのですね」と語ってくれたことがあります。

ヒエラルキーの長として、指示命令を徹底することで、物事が推進される世の中であれば、リーダーシップとは、自分の思い通りに、全ての事柄を牛耳れたのかもしれません。しかし、今日では、リーダーシップを発揮する際にも、多様なステイクホルダーの存在を前提とし、反対意見にも耳を傾け、粘り強く対話を行うことが期待されます。対立から逃げたり、決定事項だけを通達しても、人は付いてこず、孤立してしまいます。

リーダーとして、物事を前進させるためには、常に、みんながベストな環境で役割を果たせる環境を整備し、課題や障壁があれば、それを取り除く必要があります。今日のように、変化の激しい時代には、内的な要因だけではなく、外的な要因により、課題が生まれる場合もあります。リーダーは、心が休まる暇はありません。そんな中でも、リーダーは、常に、最良の決断を行うことが期待されます。そのために、リーダーは常に、どんな時でも、静寂な心でいる必要があります。ストレスを感じても、マインドフルな心を維持できることや、感情を制御することができ、心身共に健康でいられるためには、非認知能力を育んでおく必要があります。

コラボレーションと非認知能力

課題を解決する際にも、新しい価値を生む創造的な取り組みにおいても、コラボレーションが前提になる時代です。昔のコラボレーションは、阿吽の呼吸で物事が進められる同質性の集団によるものが主流でしたが、最近のコラボレーションは、専門性も、文化も、言語も異なる多様な構成員によるものが主流になりつつあります。メンバーが集まり、一緒にいるだけでも、ストレスを感じるような人々と、腹を割って話すことが期待されています。リーダーシップ同様に、コラボレーションにおいても、「思い通りにならない」ことが当たり前です。

多様性が化学反応を起こすためには、異なる意見を出し合い、相互に学び合い、新たな価値を創造することが期待されます。議論が、拡散したり、紛糾することも、想定内のプロセスということになります。ここでも、非認知能力が役立ちます。自分一人の頭で考え、決断できる時には、認知能力を頼りに、答えを見出すことが出来ますが、多様なメンバーと共に意思決定を行うのであれば、認知能力のみに頼っていても、最良の意思決定はできません。対立する意見に遭遇しても、落ち着いた心で、他者の意見を傾聴し、対話する力が求められます。

ワークショップと非認知能力

人生で1度だけ、誰もが、自分の想いを伝えることに夢中で、誰の話も聞けないワークショップに参加したことがあります。テーマは、教育で、参加者は、すでに、思いを持って教育に関する活動を行っていました。地方の教育を変える動きをしている人もいれば、子どもの主体性を育む教育プログラムを開発している人もいました。科学教育に関心のある人もいれば、グローバル人材の育成が大事だと考えている人もいました。みんな素敵な人たちで、子どもたちの幸せを願っているメンバーが大集合したワークショップでした。もう10年も前に、未来の教育を創るワークショップというタイトルに引き寄せられて集まったメンバーの中には、現在、教育改革におけるリーダー役を担っている人もいます。

未来の教育を創るというタイトルに合わせて、対話を通して、みんなで未来の教育の姿を描き、コラボレーションの道筋が見えるであろうことを狙って行ったワークショップなのですが、一人ひとりのこだわりが強く、中々、対話になりません。ファシリテーターが、学年で分けたり、教育観や教科等で分ける試みを行いましたが、中々、しっくりとしたグループワークに発展しません。だんだん、みんなのストレスも高まってきます。今思うと、一番のストレスは、「自分の話をもっと聞いて欲しいのに」というものだったように思います。

このワークショップで、私自身も、自分の非認知能力を試されました。みんなのストレスがピークになる中で、投げ出さず、不満を声にせず、我慢するのではなく、やすらかな気持ちでその場に存在することに尽力しました。私自身にも、聴いて欲しい教育のテーマがありましたが、これ以上、主張が増えるのは得策ではなく、私は、自分の意見をしまい込み、とにかく、他者が何を考えているのか、他者が何を目指しているのかを真剣に聴き取ることに尽力しました。それは本当に、修行のような場でした。

平穏な心を保つように、頑張って、頑張って、皆さんの意見を傾聴することに尽力した結果、大きなギフトがありました。それは、一人ひとりの主張は異なるけれど、全員が、子どもたちの幸せを願っているという点で、意思統一が出来ていることに気付けたことです。教育観や教育活動の主軸が違っていても、同じ目標に向かっていると気付けたら、緊張が解け、その場にいることもそれほど苦しくなくなりました。その場を立ち去らず、最後まで参加したご褒美です。

まとめ

未来の子どもたちが、世の中で問題を解決する際に、非認知能力が必要になることを、少しイメージしていただけましたでしょうか。

仕事においても、人生においても、不確実性が増し、リスクテイクの機会も増える中、幸せを手に入れるために、非認知能力を育む重要性は、今後益々増えていくと思います。

 

女性の活躍の色々

2021.04.12文部科学教育通信掲載

国際女性デーを記念して、今回は、女性活躍推進についてお話したいと思います。

日本が、もっと素敵な国になるために、教育を変えることと同じ位、エネルギーを注いでいるのが、女性の活躍推進です。

主婦もプロ

私自身は、1985年の男女雇用均等法の世代です。私の周囲を見回すと、私よりも100倍優秀だった女性たちが、ほとんど家庭に入り、主婦として人生を生きています。職業人の道を選んだ私が、主婦との接点を持つのは、ママ友と繋がりです。特に、幼稚園と小学校の時に出会ったママたちはプロの専業主婦で、子どもと家族のためにすべてを捧げ、また、自分自身も、美しくあることに努めていて、尊敬する方たちばかりでした。この時、「主婦にもプロがいるんだ」と思ったことを記憶しています。

子育てとキャリアの両立

主婦について、もう一つ忘れられないことがあります。それは、ハーバードビジネススールに留学するためにNYからボストンに移動する飛行機の中で読んだ雑誌の記事です。弁護士をはじめとするプロフェッショナルの女性たちが、子育てとの両立を目指し、フルタイムではない働き方を選んでいるという記事でした。アメリカは、日本よりも、女性の社会進出が進んでいると思っていたので、その記事に驚いました。当時の私は、まだ、未婚で、子育てがどんなに大変かも知らなかったので、余計に驚いてしまったのかもしれません。

一番優秀な女性が社会貢献

ビジネススクールの同級生のアメリカ人の中にも、クラスで一位、二位を争う優秀な女性が二人とも、専業主婦の道を選んでいます。一人は、大手コンサル会社出身の女性で、頭脳明晰で人柄もよく、いつもクラスの中心にいるような存在でした。もう一人は、学部もハーバードで、ロースクールとビジネススクールの両方に通っている才女。シェイクスピアの劇も上手で、ユーモアのセンスもある女性でした。ビジネススクールでは、5年ごとに、同窓会があるので、みんなが、今何をしているのかを知ることができます。最初に、彼女たちが、専業主婦の道を選んだと聞いた時は、「社会の損失ではないか」と、衝撃を受けました。しかし、彼女たちは、社会活動を辞めた訳ではありません。学校の理事会に入り、良い活動の資金調達イベントを企画したり、様々な形で、社会に貢献する活動を行っています。あの優秀さが、社会に活かされるのであれば、素敵なことだと感じました。

日本の進歩

私が、ビジネススクールから帰国した当時の日本は、まだ、完全なる男性社会でした。「○○社は、社屋を建てる時、女性トイレを設計図に入れるのを忘れたらしい」という話が、冗談ではない時代です。その当時に比べれば、日本に起きた進歩は、素晴らしいです。特に、2014年以降の女性活躍推進の動きは、とても前向きなものになっています。今では、結婚しても、出産しても、仕事を辞めないでよいという風に、社会通念も書き換えられています。「家庭にお母さんがいないと、子どもがかわいそうとか、子どもがまともに育たない」という言葉を口にする人は、ほとんどいません。優秀な専業主婦を母親に持つ女性の中には、全てを完璧にこなしたいと考え、自分を苦しめている人もいますが、そういう方たちも、周囲のママたちに勇気をもらい、変わりつつあります。

 

共働き社会

どうせ働くなら、楽しく働きたい。気持ちよく働きたい。やりがいを感じたい。成長を実感したい。そう考えるのは自然のことだと思います。ある種の緊張感は大事ですが、変に体に力が入っている不自然な状態では、よい仕事もできません。仕事もスポーツも、同じ原理なのではないかと思います。変に体に力が入ったスイングでは、ゴルフボールも、うまく飛ばすことができません。共働き社会に生きる子どもたちにも、親が、「働くって楽しいよ」と伝えられるような仕事の仕方を、みんなで実現して欲しいです。

女性の特性

ジェンダーバイアスを持ち込むつもりはありませんが、学術的なジェンダー論によると、女性の思考には、ヒエラルキー概念があまりなく、フラット概念が強いそうです。このため、階層を上がること自体に、男性ほど興味がありません。また、管理職になったとしても、ヒエラルキーの長としての振る舞いよりも、チームの長として振る舞う傾向があります。このジェンダー特性があるために、多くの女性たちが、管理職になることに、高いモチベーションを持たないのではないかと思います。理由は二つです。一つは、抑々、管理職になること自体に、男性のように魅力を感じなかったためです。もう一つは、男性上司の管理職のスタイルを見て、あんな風にはできないと考えたためです。

女性のリーダーシップ

昭和女子大学キャリアカレッジでは、2014年から企業で働く女性たちのリーダー養成を行っています。そこでも、女性の特性について解説しています。そして、女性たちが、自分らしいリーダーシップスタイルを開発する支援を行っています。ぶれない軸を持ち、反対意見に遭遇しても、真摯に対話できる強くてしなやかなリーダーになるために、スキルトレーニングも行っています。今も、1年に一度、同窓会で修了生と会うことが、とても楽しみです。

時代が求めるリーダーシップ

チームを大事にする女性のリーダーシップは、実は、イノベーションを生む創造的なチームを創る上で、とても魅力的なものです。フラットでオープンなコミュニケーションや、心理的安全な文化の醸成が、みんな、とても上手です。昨年より、男女半々位で、リーダーシップを学ぶ場を創っていますが、グループワークでは、女性が大活躍です。質問したり、意見を出したり、ファシリテートしたり、その場に必要な役割を柔軟に担ってくれます。また、最初に発言してくれることで、場にコミュニケーションの機会をもたらします。少し褒めすぎでしょうか。国際女性デーなのでお許しください。

女性の弱点

実は、女性にも弱点があります。その一つが、自信がないことです。女性は、99%できそうなことでも、1%のリスクを眺め、できないと考える、そんな完璧主義的な傾向があります。

女性たちには、いつも、「男性6割、女性100%。男性に学ぼう」と伝えています。男性は、6割ぐらいできそうなら、「できます」と云えるという意味です。実際に、海外で、採用の募集広告の要件に何割自分が該当していたら応募するかという調査を行った所、男性は6割、女性は一つでも要件が満たされないと応募しないという結果になったそうです。VUCA時代に、確実な成果物を最初から生み出すことはできませんから、女性も、男性に学ぶ必要があります。

これ本当?

もう一つ、これは、まだ私の中で未消化のことですが、ここで、皆さんに投げかけてみたいと思います。昨年、ハーバードビジネスレビューという雑誌が、女性の力というテーマで、様々な記事を紹介してくれました。その中に、コロンビア大学のトマス・チャモロ・プレミュジック教授が、男性が女性リーダーから学ぶべき7つのポイントを紹介しています。その中の一つに、「変革を通じてモチベーションを高める」という項目がありました。「えっ?! ということは、男性は、変革にモチベーションを感じないということなの?!」と私の頭の中には、たくさんの「?」が浮かびました。まだ、この真実は、解明できていません。これから、色々な場面で、確かめてみたいと思います。

最適化社会

2021.03.22文部科学教育通信掲載

2月22日に、元国会議員の二之湯武史氏が出版された「最適化社会日本幸せの国の作り方」をテーマに、最適化社会実現フォーラム第1回を開催しました。二之湯武史氏のミニ講演の後は、私を含めた五名の登壇者(共感資本主義の実現を目指し活動する株式会社eumoの岩波直樹氏と武井浩三氏、鎌倉に禅2.0を立ち上げた宍戸幹央氏、GCストーリー常務取締役の萩原典子氏)も参加して、最適化社会について語り合いました。

最適化社会とは何か、その実現に何が必要か 

テーマは、資本主義から教育まで多岐に渡り、1回でまとめることは不可能です。そこで、これから、当分、月1回、最適化社会実現をテーマに、ゲストを招聘し、対話を行うことになりました。オンラインなので、ぜひ、皆様にもご参加いただきたいです。

 最適化社会とシニック理論

今日は、最適化社会 という言葉の由来となるシニック理論を紹介したいと思います。シニック(Seed-Innovation to Need-Impetus Cyclic Evolution,)理論は、オムロンの創業者 立石一真氏が、1970年に構築し、国際未来学会で発表した理論です。シニック理論は、未来を指し示す羅針盤として、今もオムロンの経営を支えています。立石氏は、経営者の最大の仕事は、次の時代がどのような時代になるかをいち早く予測して、その時代に対応する商品を開発することと考え、この理論を創られたそうです。今から50年以上も前に、考えられた理論とは思えず、立石氏の先見性に脱帽します。

イノベーションの円環的展開

シニック理論は、日本語に訳すとイノベーションの円環的展開という意味です。立石氏がどのように、この理論を解説していたかを、『「できません」と云うな』オムロン創業者立石一真(湯谷昇羊著 ダイヤモンド社)から引用します。

「人類が地球上に現れてから今日までの歴史を見ると、科学と技術の間には、円環論的な関係があるんや。まず、新しい科学が生まれると、その科学にタネ(Seed)をもらって新しい技術が開発される。その新しい技術がイノベーションの形で社会を変貌させていくという、こういう一つの方向があるんや」

「そして、それとは逆に、社会からはニーズ(必要性、要請)がでてくるんや。そして、このソーシャル・ニーズを満足させるための新しい技術、商品、システムが開発される。もちろん、そういう商品やシステムは、確実にうれるわなあ。その場合、それまでの技術だけでは解決できないというんであれば、科学の分野に対して刺激(impetus)を与えて、新しい技術の誕生を促すんや。これが最初に云った正方向の相互関係に対して、逆方向の相互関係ということになる」

「こんな風に、科学、技術、社会の間には、二方向の相互関係が合って、お互いが因となり果となって社会が変貌し、発展していくんや。つまり、サイクリック・エボルーション、円環論的なツー・ウェイの関係が合って、常にサイクリックに流れている」

立石氏が、幹部にこう話した際に、ある幹部が、「なんで人間だけが、常にそういう新しい技術や商品、システムを求めて進歩を図ろうとするんですか」と質問し、「それはなあ、人間の一種の業や、常に進歩したいという意欲がもとになってるんや」と立石氏は答えました。

1952年の出会い

立石氏が、シニック理論を構築した背景には、20年前の2つの情報との出会いがあります。

1952年に、立石氏は、初めてオートメーションという技術革新の存在を知ります。当時、アメリカでは、すでにオートメーション工場が存在していましたが、日本では、オートメーションが何かもほとんど知られていませんでした。同年、立石氏は、マサチューセッツ工科大学のノーバード・ウィーナー博士によって提唱されたサイバネティックスにも、出会います。サイバティニックスとは、通信工学と制御工学を融合し、生物、人間、機械、社会のメカニズムを統一的に解明しようとする学問です。

アメリカでは、サイバネティックスの本が出版されると、もしこの科学が応用されると、機械化が進み、労働者が失業してしまうことを恐れ、本の流通が止められたという話を聞いた立石氏は、どれだけ科学技術が発展し高度化されても、それを駆使するのは人間であり、どれだけ優れたシステムでも、人間の介在をなくすことはおそらく不可能だろうと考えました。そして、機械化できる仕事は機械に託し、人間には、創造的な仕事が残ることが、人間にとっても幸せであると結論付けます。そして、翌年の1953年には、オートメーションに進出することを決めます。

AIと人間

モノが中心の時代に、機械化されるのは製造ですが、情報が中心の時代に、機械化されるのは事務作業です。AIに人間の仕事が奪われることを恐れる我々と、サイバティニックスに怯えた当時の人々の心情はとても似ています。立石氏の考えに見習い、機械と人間の役割の違いを意識し、人間である私は、創造的な仕事に喜びを得るよう心掛けたいと思います。

シニック理論の素晴らしい所は、技術だけが先行するのではなく、人間の進歩欲求が、技術、商品、システムを創造する原動力にもなっているという点です。環境問題がより深刻化する今日、技術と人間と社会と自然の4つの調和をどのように保つことができるのかも見極める必要があります。技術革新のスピードが増す今日でも、人間が社会と未来を創るという気概を忘れず、最適化社会から自律社会への移行に、ポジティブな影響を与える人間でありたいと思います。

経験から学ぶリフレクション【実践編】

2021.03.08文部科学教育通信掲載

21世紀学び研究所では、経験から学ぶリフレクションを広める活動に従事しています。そのために、様々なフレームワークを作成し、試行錯誤を繰り返し、最も簡単に、最も質の高い経験学習を行っていただくための「問い」を模索してきました。

最新版の経験から学ぶリフレクションの問いを、新入社員のリフレクションを事例にご紹介してみたいと思います。

明確なゴール

経験から質の高い学びをえるために大切なことは、行動する前に、明確なゴールを持っていることです。新入社員の事例では、オンライン上で行う自己紹介で好印象を持ってもらうことがゴールでした。

問い:想定していた結果は何ですか。

答え:自己紹介で、好印象を持ってもらう。

 

計画と仮説

ゴールの次に重要なもの、それは計画と仮説です。行動には、計画が必要ということは誰もが知っていることです。仮説とは、経験の前提となるものの見方のことです。誰もが、行動する前には、「こうすればうまく行く」という考えを持っています。過去の経験により形成されたものの見方を、私たちは常に活かしています。多くの場合、無意識に活かしているために、その存在に気付き難いですが、誰もが、うまくいくであろうという仮説を持って行動しています。ところが、実際に行動してみると、うまく行かないこともあります。新入社員の事例では、事前に、パワーポイントを準備し、プレゼンの練習を行うことにしました。その前提となる仮説は、パワーポイントを使うと、口頭だけよりも、たくさんの情報を伝えられ、練習をするとスムーズに話せるようになるというものでした。

仮説の前提には、過去の経験があります。それは、自身の経験の場合もあれば、他者の経験に学ぶ場合もあります。本やセミナーなどから学んだことかもしれません。私たちは、常に、経験に学び、次に生かすという習性を持っているために、いざ、何かのゴールを達成しようと思うと、過去の経験に基づき、仮説を立て、その仮説に基づき行動します。ところが、この仮説は、過去の経験に基づくものであり、未来のゴール達成を保証するものではありません。このため、うまく行く時と、うまく行かない時があります。いずれの場合でも、仮説を明確にしていれば、その経験から学ぶことができます。

問い:どのような行動計画を立てましたか。

答え:オンラインでの自己紹介なので、パワーポイントを準備し、発表の練習をして本番に臨む。

問い:計画の前提にある仮説(判断基準)は何ですか。(「こうすればうまくいく」等の持論、過去の成功・失敗体験から得た知恵・成功法則等)

答え:パワーポイントを使うと、口頭だけよりもたくさんの情報を伝えられる。練習をすることで、スムーズに話せる。

 

経験の振り返り

経験を振り返りでは、ゴールに対してうまく行ったこと、うまく行かなかったことを洗い出します。この際に、感情を振り返ることもお勧めしています。新入社員の事例では、うまく行ったことは、練習の成果もありスムーズに語ることができたことです。うまく行かなかったことは、少し緊張してしまい、硬い話し方になってしまったことです。

経験の振り返りでは、感情を振り返ることも大事です。プレゼン中はドキドキ、終了してほっとした、その後、ちょっと残念な気持ちと、気持ちの変化を追うことで、自分の経験を追体験することができるからです。経験の振り返りにおいて、最も難しいことは、経験という膨大な情報の中から、何を切り出して振り返るのかということです。経験と繋がる感情を思い出すことによって、この経験のどこに満足していて、どこに不満が残ったのかが解りやすく、振り返りのツボが見つけ易くなります。

問い:どのような経験でしたか。うまくいったこと、うまくいかなかったことは何ですか。

答え:・練習の成果もあり、スムーズに語ることができた。
・少し緊張してしまい、硬い話し方になってしまった。

問い:その経験には、どのような感情が紐付いていますか。

答え:(プレゼン中)どきどき  (終了後)ほっとした  (その後)ちょっと残念

 

経験からの学び

経験を振り返ったら、いよいよ学びの刈り取りです。成功しても、失敗しても、経験を通して人は賢くなるというのが、経験から学ぶリフレクションの理念です。うまく行ったことも、うまく行かなかったことも共に学びの材料になります。

新入社員の事例では、うまく行ったことは、練習の成果があり、スムーズに語れたことです。うまく行かなかったことは、少し緊張してしまい、硬い話し方になってしまったことです。また、終了後に、少し残念と感じたのは、普段、面白いと言われる性格なのに、その部分が、自己紹介で全く出せなかったことです。もう少し、自分の面白いキャラクターを知って欲しかったという残念な気持ちが残りました。

うまく行かなかったことについては、経験前に戻れるとしたら、何を変えるかという問いにしています。次のアクションにつなげ易いと考えたからです。新入社員は、練習とは違い、本番では緊張することを改めて認識しました。このため、普段の面白さを、自然に出すことはできませんでした。そうであれば、プレゼンの中に、面白さを盛り込んでおけばよかったという気づきに至ります。

問い:(うまく行った場合)なぜうまくいったのだと思いますか。

答え:〇 練習の成果があり、スムーズに語れた。

問い:(うまく行かない場合)経験前に戻れるとしたら、何を変えますか。

答え:△ 緊張すると硬い話し方になることを計算に入れ、普段のような「面白さ」をあらかじめプレゼンに盛り込んでおけばよかった。

法則の定義

経験の振り返りを基に、法則を定義します。経験から学ぶリフレクションのクライマックスです。この際に、計画当初の仮説と、経験を照らし合わせることも重要なポイントです。

仮説は役に立ったのか、想定外の何かがあったのかを確認します。新入社員の場合、パワーポイントの準備も練習も役に立ちました。しかし、仮説の段階で、本番での緊張は考慮していなかったので、そういう意味で、本番での緊張は想定外ということになります。そして、自分らしさを十分表現できなかったことも残念に感じ、準備の段階で、自分の面白いキャラクターを伝えようという意識を持っていなかったことに気付きます。プレゼンを実際にやってみたことで、改めて、自己紹介とは何かについても、振り返ることになります。

問い:リフレクションから明らかになったことは何ですか。仮説(判断基準)がアップデートされた法則を定義してみましょう。

答え:自己紹介では、情報共有のみならず、自分らしさを伝えることも大切。まじめな自己紹介の中でも、愉快な自分を、どう表現するかを工夫することが大事。

行動計画

経験で学んだことは、すぐに活かす!これも、経験から学ぶリフレクションの大切なことです。新入社員は、まじめな自己紹介で、どう愉快な自分を表現するかその方法を考える事にしました。自己紹介がどんな風に進化するのか楽しみです。

 

問い:明らかになった学びをどのように活かしますか。

答え:まじめな自己紹介の中で、愉快な自分を表現する方法を考える。

ぜひ、皆さんも、経験から学ぶリフレクションで、進化し続ける楽しさを味わっていただきたいです。

教えない教育

2021.02.22文部科学教育通信掲載

2018年に、東日本大震災・福島第一原発事故から7年ぶりに再開した福島県双葉郡の小中学校には、毎年、一人のプロフェッショナル転校生がやってきます。1月24日に、今年で、3年目となる「教えない教育」を振り返るオンラインイベントが開催され、私も、モデレーターとして登壇させていただきました。「教えない教育」を通して、子どもたちは何を感じ、何を学んでいるのかを探求する中で、たくさんの気づきを得ることが出来ました。

PnS(ピンズ)は、プロフェッショナル・イン・スクールの略で、各界のプロ、特にアーティスト、建築家、音楽家、職人などクリエイティブな職種の人が、「プロフェッショナル転校生」として、教室を仕事場としながら子供達と学校生活を共にするプロジェクトです。

3人の登壇者との対話を振り返りながら、「教えない教育」の可能性を考えてみたいと思います。

大工棟梁の林敬庸さん

転校生第1号は、岡山県西粟倉村を拠点に90年以上にわたり神社・仏閣、住宅などの建築物を創り続ける大工の3代目 林敬庸さんです。プロフェッショナル転校生 林さんのミッションは、台風で倒れた地元の樹齢350年の黒松を使って、大きな机を創ることでした。当時の教育長が、「証し」と半紙に筆で書き、なぜ林さんが学校にやってきたのかを子どもたちに説明し、林さんの転校生生活がスタートしました。林さんの職場は、校長室の隣にある教室です。

子どもたちは、林さんの職場が大好きで、みんな何かお手伝いをしたいと集まってきます。最初に、みんなでルールを決めようということになり、プロの仕事場で何を心掛けるかを、書き出してみると、あっという間に10以上のルールが出来上がりました。林さんや先生が指示をしたわけでもなく、子どもたちが自らの意志でルールを考えました。子どもたちなりに、ここはプロの仕事場であるということを理解したのだと思います。リストの中には、「棟梁の言うことを聴け」というものもありました。

大工が美しい仕事をするために、掃除がとても大切であるという林さんの職人としての哲学は、子どもたちの心を動かします。子どもたちが、いつも、掃除に来てくれたと、棟梁は思い出を語ってくれました。普段とは全く異なる姿勢で、誰もが一生懸命、掃除に打ち込む様子には、先生も驚いたようです。

子どもたちは、棟梁が真剣に仕事に打ち込んでいる時には、教室に入らず、廊下に立ち、窓の外から仕事の様子を眺めていて、棟梁が休憩に入ると、部屋に入ってきたそうです。子どもたちは、真剣に仕事に向かう棟梁の姿から、何を学び取ったのでしょうか。

完成した大きな机の裏側には、棟梁が、タイムカプセルのように、手紙を入れるスペースを作り、みんなの手紙をその中に締まっておいたそうです。富岡町の学校再開の証しとして作られた大きくて美しい机は、今も、学校で子どもたちと共に暮らしています。

 油絵画家の加茂昂さん

二年目の転校生は、油絵画家の加茂昂さんです。加茂さんは、3.11後、「絵画」と「生き延びる」ことを同義に捉え、心象と事象を織り交ぜながら「私」と「社会」が相対的に立ち現れるような絵画作品を制作されていることから、プロフェッショナル転校生2期生に選ばれました。

「鴨ではなく、加茂です」と白板に名前を書き、自己紹介する加茂さんに、子どもたちは興味津々です。加茂さんは、林さんの大きな机を見て、「大きな絵」を書こうと決めたそうです。完成した絵を飾るのは、大きな壁があり、子どもたちが登校したら必ず通る場所にある階段の踊り場に決まりました。加茂さんは、「最初から、どこに飾られるのかが決まっていて、その場所で絵を描くことはめったになく、移動で破損することを心配せず、たっぷりと、絵の具をキャンパスに載せることができた」とお話されていました。実際に、私も完成した絵を見せていただきましたが、そのせいか、作品の中央で美しく咲いている桜の木がとても立体的に見えます。

加茂さんが学校にやってくると、棟梁の仕事場が、アトリエに変身です。加茂さんの最初の仕事は、デッサン。町中を歩きデッサンを何枚も何枚も書き、アトリエの壁に貼っていきます。サッカーをしている子どもたち、遊んでいる子どもたちの様子も、何枚も何枚も書きます。そして、絵の構想が決まり、キャンパスに書き始めてからも、何度も、書いた絵を白く塗り、書き直す様子を、子どもたちは、驚きと共に見ていたようです。「あんなにきれいに書いてあったのに、なぜ、書き直すのかな」、「それがプロの仕事なんだ」こんな風に、先生と子どもたちは話していたようです。

絵の好きな子どもたちが、アトリエで加茂さんと一緒に絵を描く授業もあります。プロのアトリエで、小学生が絵を描くことを想像しただけで、ワクワクします。「教えない教育」なので、加茂さんも絵の指導は行いません。でも、子どもたちの中には、加茂さんに絵の指導をした子がいたそうです。厳しいダメ出しをされたと、加茂さんも苦笑しながら話していました。

加茂さんが行った「色の三原色の授業」は、石を写生することを通して、グレーという色にも、色々なグレーがあるということを体験学習するというもの。色に対して興味が沸く「教えない教育」に相応しい素敵な授業です。

加茂さんの作品「富岡に灯る桜」には、校舎と桜と共に、校庭で活動している子どもたちが描かれています。生徒全員が絵の中に、誰とはわからないように描かれているのだそうです。子どもたちが、躍動感のある姿で描かれている背景には、子どもたちの様子を観察し、何枚も何枚も書き貯めたデッサンがあることを知り納得しました。絵の中央には、大きな桜が描かれています。富岡町には、2キロ以上の桜並木があり、春になると「桜まつり」が開かれます。7年ぶりに避難指示が解除され、小中学校が再開した年には、「桜まつり」も復活しました。加茂さんの絵には、復興への願いと、子どもたちが、今、ここに生きている証し、そして、未来への希望が描かれているように見えました。加茂さんが転校生の任期を終えた今も、加茂さんの絵は学校に存在し、子どもたちの成長を見守っています。

先生の尾形泰英さん

もう一人の登壇者は、林さんと加茂さんをプロフェッショナル転校生として受け入れた学校の尾形泰英先生です。「最初は、えっ? 何?」という感じだったという率直なコメントから始まった尾形先生のお話もとても興味深いものでした。「プロフェッショナル転校生は、先生とは違う、安心できる大人の存在だ」と尾形先生は話されました。先生は、子どもたちを評価する存在なので、先生と生徒の関係には、何かしらの緊張感が存在しますが、プロの転校生と生徒の関係には、この緊張感が全くない様子でした。加茂さんにダメ出しをする子どもがいたり、林さんに人生相談する子どももいたという話にもつながります。

また、尾形先生が、「僕もプロの教員。林さんはプロの大工。加茂さんはプロの画家。異なる世界のプロと一緒に過ごせたことは、自分にとっても貴重な経験となった」というお話がとても印象に残りました。

「教えない教育」とは、子どもたちも、転校生も、学校の先生も、みんなが学び、成長するものなのかもしれません。

 

 

チェンジ・メーカー教育

2021.02.08文部科学教育通信掲載

ワシントンに本拠を持つ非営利団体アショカは、エブリワン・ア・チェンジメーカー(誰もが、みんなチェンジ・メーカーだ)というキャッチフレーズを掲げ、世界中の社会起業活動を促進する取り組みをおこなっています。創業者のビル・ドレイトンは、社会起業家という言葉の生みの親で、社会起業家の父と言われる人です。その日本事務所アショカ ・ジャパンから、新年に素敵なメッセージが届きました。15年に一度見直される国際バカロレアの教育内容に、新たにチェンジ・メイキング思考が加わるというニュースです。

チェンジ・メーカー大学

アショカは、チェンジ・メーカーを増やすために、小・中・高・大学生を対象に、チェンジ・メイキング教育を奨励しています。2008年には、大学に、チェンジメーカー・キャンパスというコンセプトを創り、社会イノベーションと高等教育の変革をリードする大学をチェンジメーカーキャンパスに認定し、学生とすべての大学の利害関係者が、チェンジメーカーとして地域および世界の課題に取り組むことを奨励し、キャンパス全体の文化と運営に、チェンジメイキングの思想が反映されることを目指しています。現在、チェンジメーカー・キャンパスに認定されている大学は、43校で、アメリカのみならず、世界の大学が参画し、アジアでは韓国の大学も、チェンジメーカー・キャンパスの認定を受けています。

国際バカロレア

国際バカロレアは、国際的な初等中等プログラムで、通称IBと呼ばれています。現在、150か国で5,500校以上の学校がIB認定を受け、国際バカロレアに基づく教育を行っています。

IBの使命と学習者像

【使命】

すべてのIBプログラムは、国際的な視野をもつ人間の育成を目指しています。人類に共通する人間らしさと地球を共に守る責任を認識し、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する人間を育てます。

【学習者像】

IBの学習者として、私たちは次の目標に向かって努力します。

探究する人
私たちは、好奇心を育み、探究し研究するスキルを身につけます。ひとりで学んだり、他の人々と共に学んだりします。熱意をもって学び、学ぶ喜びを生涯を通じてもち続けます。

知識のある人
私たちは、概念的な理解を深めて活用し、幅広い分野の知識を探究します。地域社会やグローバル社会における重要な課題や考えに取り組みます。

考える人
私たちは、複雑な問題を分析し、責任ある行動をとるために、批判的かつ創造的に考えるスキルを活用します。率先して理性的で倫理的な判断を下します。

コミュニケーションができる人
私たちは、複数の言語やさまざまな方法を用いて、自信をもって創造的に自分自身を表現します。他の人々や他の集団のものの見方に注意深く耳を傾け、効果的に協力し合います。

信念をもつ人
私たちは、誠実かつ正直に、公正な考えと強い正義感をもって行動します。そして、あらゆる人々がもつ尊厳と権利を尊重して行動します。私たちは、自分自身の行動とそれに伴う結果に責任をもちます。

心を開く人
私たちは、自己の文化と個人的な経験の真価を正しく受け止めると同時に、他の人々の価値観や伝統の真価もまた正しく受け止めます。多様な視点を求め、価値を見いだし、その経験を糧に成長しようと努めます。

思いやりのある人
私たちは、思いやりと共感、そして尊重の精神を示します。人の役に立ち、他の人々の生活や私たちを取り巻く世界を良くするために行動します。

挑戦する人
私たちは、不確実な事態に対し、熟慮と決断力をもって向き合います。ひとりで、または協力して新しい考えや方法を探究します。挑戦と変化と機知に富んだ方法で快活に取り組みます。

バランスのとれた人
私たちは、自分自身や他の人々の幸福にとって、私たちの生を構成する知性、身体、心のバランスをとることが大切だと理解しています。また、私たちが他の人々や、私たちが住むこの世界と相互に依存していることを認識しています。

振り返りができる人
私たちは、世界について、そして自分の考えや経験について、深く考察します。自分自身の学びと成長を促すため、自分の長所と短所を理解するよう努めます。(出典:文部科学省IB教育推進コンソーシアム)

日本でも、161校(令和2年11月時点)が、国際バカロレア校として認定されています。

システミック・チェンジ

アショカは、社会問題の解決方法として、システミック・チェンジを提唱しています。私たちは、食べるものがない人に、魚を与えるのではなく、釣りの仕方を教えてあげる方がよいと言います。しかし、アショカは、釣りの仕方を教えてあげるのだけでは十分ではないと言います。そして、食べるものがない現状を変えるために、その根本原因を探り、漁業システムそのものを変えることを奨励しています。そして、この根本原因まで遡り社会システムを変えることを、システミック・チェンジと名付けました。

困っている人がいたら助けるという、誰にでもできる直接的なチェンジ・メイキングはダイレクト・チェンジ・メイキング。たくさんの困った人を助けようと、その活動を拡大することもできます。この取り組みも素晴らしいものですが、このやり方では、いつまでたっても、困った人が減ることはなく、支援し続けなければなりません。勿論、最初は、身近な誰かを助けたいという思いからスタートするのですが、いつまでも、同じやり方で支援をするだけではなく、その課題の背景にある構造的な問題に目を向け、創造的な発想で課題を解決するシステミック・チェンジを実現することができると、社会を大きく変えることができます。

アショカは、現在、3500人の社会起業家をフェローと認定しています。彼らは、教育から医療まで様々な分野でシステミック・チェンジに取り組んだ実績を持つ人たちです。国際バカロレア教育に、システミック・チェンジの考えが盛り込まれることで、世界のIBスクール5500校で、システミック・チェンジを起こすことに、意欲を持つ学習者が育まれることを考えると、とてもワクワクした気持ちになります。

教育のシンクロシティ

私が、世界の教育改革に最初に触れたのは、2003年のことです。当時、ヨーロッパでは、OECDを中心に、VUCA時代の教育改革の推進が始まり、アメリカでは、アップルをはじめとするIT企業が中心となり設立されたパートナーシップフォー21という非営利団体が、21世紀スキルと教育を提唱し始めていました。OECDは、キーコンピテンシーを提唱し、パートナーシップフォー21はスキルを中心に、それぞれ教育指針を打ち出していたので、その内容は全く同じという訳ではありませんでしたが、両者の目指すところは同じであることがとても興味深かったです。

日本は、その頃、持続可能開発教育が導入され、2015年まで継続することになります。世界に先駆けて行われた日本の持続可能開発教育は、今日推し進められているSDGs(国連の持続可能開発目標)にもつながる取り組みです。

OECDは、2003年に打ち出した教育指針をさらに発展させ、現在、トランスフォーマティブコンピテンシーと名付け、変革を推進ための力であることを強調しています。また、学生エイジェンシーという言葉を用い、子どもたちは、社会を変革する主体であるという概念を明確に打ち出しています。

世界、そして日本の教育も、確実に、チェンジ・メーカーを育む方向にシフトし始めているのだと感じます。

就活生のためのリフレクション講座

2021.01.25文部科学教育通信掲載

就活生を対象にリフレクション講座を始めました。就活生が、キャリアを選択する上で欠かせない自己認識を深めるためにリフレクションを学びたいというご相談を頂き、始めた講座です。

 自分を知るリフレクション

メタ認知のためのメソッドを活用し、リフレクションを行うと、自分が何者なのかを理解することができます。人生で印象に残った経験を振り返ると、自分が何にこだわり、どのような経験を大切にしてきたのかを俯瞰することができます。20年間の人生の歩みの中で、思い出に残る出来事、嬉しかったこと、辛かったこと等を振り返ることで、自分を知ることができます。

感情と価値観の関係

私たちは、日頃、価値観レベルで考えることが少ないです。大人もそうですが、学生も同様に、学校教育で、価値観を扱うことが少ないため、「価値観はなにか」と問われると、困ってしまいます。しかし、嬉しかったこと、悲しかったことなど、出来事を尋ねれば、簡単に答えることができます。出来事を題材にリフレクションを行えば、実は簡単に、価値観を見出すことができます。学校の合唱祭で優勝した出来事を、テーマに選んだとしても、みんなと頑張れたことが喜びの源泉である場合も、競争に勝つことが最高という場合もあります。感情の背景には、価値観があります。感情がポジティブな時、価値観は満たされていて、ネガティブな感情になった時には、自分の大切にしている価値観とは異なる価値観が優先されていると感じているはずです。

 なぜ、なぜ、なぜ

なぜを5回繰り返すことが、思考を掘り下げることができると云いますが、リフレクションでも、同じことが云えます。合唱祭で優勝して楽しかったのはなぜか。みんなと頑張れたから。Why➀なぜみんなと頑張れたからうれしいの? 練習をサボりたかったけど、凄い頑張ってた子がいて、その子のパワーに影響を受けた。Why②どんなパワー? その子は、理想の音を心に持っていて、理想を手放さなかった。Why③理想って? 全員の音が揃っているのか、普通なら上手といってもいいレベルでも、彼女だけ、音のズレに気づいて、何度も、何度もやり直しを求めた。その過程で、みんなの心が合わさった感じ。Why④大変だったと思うけど、どんな気持ちだった? 誰もが、声を合わせることに必死になって、集中力があがり、最初は音が合っているかどうか、みんなわからなかったのに、最後には、誰もが、1ミリの音のずれに気づけるようになった(笑) why⑤この練習の思い出のどこが一番楽しかったの? みんなで一つのゴールに向かって、進化に挑戦したこと。

Why5回で明らかになった価値観

みんなで頑張ることもうれしい。一人ひとりがゴールを自分事にした状態で、共通のゴールの実現に向かっていること、そのゴールが簡単ではなく、挑戦がそこにあること、ゴールを達成するために、進化が求められていること等が、大切な価値観であることに気づくことが出来ました。

就活のヒント

就活は、人生で初めて行う大きな意思決定です。終身雇用の時代ではなくなり、大企業からベンチャー企業まで選択肢が広がる中で、外から眺めて企業を理解し、就職先を選ばなければなりません。できれば、最良の選択、最良の決断をしたいと考えれば、考えるほど、正解が何かわからなくなるというのが正直な所ではないでしょうか。

そこで就活という意思決定のためのヒントもお渡ししました。自己認識、事業、人、企業文化、働き方、社会、時代、学べることの8つの視点です。

 【自己認識】

好き、得意、志向特性、興味関心、憧れ、キャリアビジョン、ワークライフバランス、
暮らす場所、仲間

 人生の意思決定ですから、自分を起点に考えなければなりません。自己分析が大切なのもこのためです。自分の嫌いなこと、不得意なことが求められる場所に居ても、人は幸せになれません。同時に、ワークライフのバランスのとり方や、暮らす場所についての希望があるのであれば、それも明確にしておくことが大事です。海外に行きたいのなら、海外展開をしている企業を選ぶ必要があります。一緒に働く人が、苦手なタイプばかりだと、仕事そのものが好きでも、おそらく、充実したキャリアを構築することが難しいかもしれません。

【事業】

パーパス製品・サービス規模収益性独自性ブランド市場地域

次は、会社と事業の評価です。この会社が好きとか、この会社はいい会社だという時に、何を見ているのかを点検してください。その会社の存在理由なのか、製品やサービスなのか、規模や収益性なのか、その企業の持つ独自性やブランドなのか、誰がお客様なのか、どんな地域に進出しているのか。企業の魅力を多面的に理解することも大切です。

【人】

人材特性(仕様)人材のスタイル(社風)市場価値(評価)中途採用・出戻りの動向

ダイバーシティ推進・女性管理職比率の推移

 人生の最初に就職する会社は、人間の職業観にとても大きな影響を与えると云われています。このため、その会社に入ると、どのような仕事のスタイルを身に付けることになるのかを知っておくことが大切です。また、終身雇用が終焉した今日、その会社で働いている人たちは、転職市場でどのような評価を得ているのかを知ることも大切です。

最近では、多様性を重んじる企業が増えています。中途採用や一度辞めた社員の再就職を歓迎するような風土がある会社であれば、多様性を大切にしようとする姿勢が見えます。女性管理職比率を上げるために、どのような施策に取り組んでいるのかは、女性にとっては重要な指標かもしれません。

 【企業文化】

理念、創立の精神、創業者/経営者の特性

理念がしっかりとしている会社であれば、その理念が、自分にとってどんな意味を持つのかをしっかりと考えることが大切です。

 【働き方】

ジョブ型リモートワーク、兼業、副業

 現在進行中の働き方改革の取り組みは、100社100通りと云ってもよいかもしれません。これから本格化する働き方改革に対ししてどのような意識で臨んでいるのかを知っておくことで、理想のワークスタイルを実現することができます。

 【社会】

ESG、SDGs 統合レポート

 SDGsに代表される持続可能性に対する企業の取り組み姿勢は、企業の未来志向度を表しているとも云えます。HPで紹介されている取り組みをチェックしてみると、企業の取り組み姿勢を知ることができます。

【時代】

時代の創造/時代への適応

時代が大きく変化する中で、企業は大きく2つに分類することができます。時代を創る企業なのか、時代の変化を追いかけている企業なのか。そのどちらに身を置くのかは、好みの問題ですが、どちらなのかを知っておくことは大切です。

【学べること】

バリュービジネスモデルスキルセット経験業界人脈

変化する時代にキャリアを考える上で、最も大切なことは、「何を学べるのか」だと思います。どのような価値基準や行動規範を身に付ける企業なのか、どのようなビジネスモデルを学ぶのか、どのような経験を積み、どんなスキルを身に付けるのか、どのような業界について学び、どんな人脈を形成することになるのか。

学びの観点も、キャリアの選択において大切にして欲しいと思います。

大学生の皆さんには、幸せなキャリアの選択をし、自分らしく、キャリアを積み、楽しく充実した人生を生きて欲しいと思います。

 

オンライン化への適応

2021.01.11文部科学教育通信掲載

コロナ禍で、会議、研修、セミナー、ワークショップがすべてオンライン化して、半年が過ぎました。皆さんは、この変化をどのように受け止めていらっしゃるのでしょうか。

オンラインのコミュニケーション

オンラインでいきなり初対面という出会いもたくさんあり、名刺交換ができないことに不便を感じます。しかし、オンライン初対面でも、自己肯定感が高く、自分をよく知っている人や、コミュニケーション力のある人とは、すぐに親しい関係になることができます。お人柄というものは、オンラインでも伝わるものであることが解りました。

あるプロジェクトでは、コロナ禍でもリアルな会議を続けています。リアルでもなかなか会話も弾まない会議です。この会議を、オンラインでファシリテーションして欲しいと言われたらと想像してみると、「ちょっと無理」という心の声が聞こえてきました。ある研修講師が、「オンラインでコミュニケーションに問題が出てきているというのは嘘です。リアルに場を共有していただけで、リアルにオフィスで時間を過ごしていた時からコミュニケーションの問題は存在していて、その問題がオンラインになり露呈しただけです」と厳しくお話されていたことを思い出します。

ZOOMは民主的

インターネットは、世の中を民主化するツールであるということは、以前から言われていたことですが、ZOOMを体験して、民主的であることを実感します。オンラインの会議では、社長も部長も平社員もみんな同じように画面に映ります。席次も自分で変えられますから、社長が常に中心に存在する訳ではありません。話している人の顔は大きく映っても、地位によって、画面に映る顔のサイズが変わることはありません。

私は、女性なので、これまでたった一人の女性という立場で会議に参加することが多くありました。例えば、100人中女性1人という会議の場では、場の空気を読み、少し緊張感が生まれていたように思います。ところが、ZOOMになりますと、場の空気がないのです! これは、ジェンダーの問題だけでなく、部屋に入るだけで他者に圧のようなものを感じさせていた人の圧も、ZOOM画面では届きません!リアルな会議であれば、その人の存在が、部屋全体の空気を換える存在でしたが、オンライン会議では、画面上の1人として存在するだけです。

ZOOMでグループワークをする時には、全員がちゃんと話すことができます。リアルなグループワークでは、誰か一人がしゃべり、聞き役に回る人もいたように思いますが、オンラインでは、全員が話すようになります。誰もの顔が画面上にあり、話していない人は誰かを誰もが意識できるからだと思います。私は、講師という立場で、グループワークを皆さんに実施していただくことが多いのですが、ZOOMになって初めて、彼らが本当に何を話しているのかを聞かせていただくことが出来ました。これまでは、一人だけ、立ったまま、グループの話を横で聞くことしかできなかったのですが、ZOOMに入れば、一緒に座って話を聴いている感じです。彼らが何を考えているのか、生の声が聞こえます。講師が、グループワークに入っても、誰も遠慮する様子もなく話してくれます。ZOOMが民主的なツールだからなのだと思います。

会議の数

会議がオンラインとなり、時間の使い方が変わりました。これまでは、移動の時間を含めると、訪問などを含む会議であれば、午前に一つ、午後に2つと、一日3つ位しか入れられなかったのではないかと思います。ところが、会議がオンラインになると、会議の数を無限大?に増やすことが可能になります。これまでは、目上の方に、オンライ会議でお願いしますということは失礼に当たりましたが、今では、オンライン会議も、会議の部屋を選ぶのと同じ位当たり前の選択しになりました。これには、良い面と悪い面があると感じます。よい面は、移動という無駄がなくなったこと。CO²の排出量も削減できます。悪い面は、移動という気分転換の時間が消え、運動不足になることです。また、移動という空きスペースが、発想を広げたり、意外なものに遭遇したり、自然と触れたり等、色々な経験をする場になっていたということに改めて気づかされました。最初は、オンライン会議があまりにも便利で、時間のある限り、予定を埋めていたのですが、そのスタイルは危険であることに気づきました。そして、画面の前に1日中座り、会議を続けることは、意図的に避けなければならないことを学びました。パソコンと人間が同じ様に働くことはできません。

オンラインプレゼン

オンラインでも、とても素敵なプレゼンをされる講師のお話を聴く機会がありました。背景にもこだわり、カメラ目線も決まっていて、画面の構図も完璧です。休憩時間には、音楽が流れ、コーヒーブレイクにも癒しのための工夫が見られます。完璧なオンラインの講義とは、こういうものかと、大変勉強になりました。そして、改めて自分のプレゼンを見直し、恥ずかしく思いました。2021年には、少し改良を加えていきたいと思います。

オンラインは、リアルよりも、プレゼンを聴いている方の体験が薄くなるため、聴衆の関心を引き付けることが難しいと云います。このため、最低限注意しなければならないことは、目線をカメラに向かって真っすぐ自然な角度に合わせることだそうです。カメラをまっすぐ見ることで、相手の顔を見て話す状態になります。照明の明るさやマイクなどに、こだわる方もいるようです。ZOOMの背景も大切になります。リアルでは、身だしなみが大事と言われていましたが、オンラインになると、また、違った配慮が必要になることがとても興味深いです。

メラビアンの法則によれば、言語情報が7%、聴覚情報が38%、視覚情報が55%なので、画面の背景や、自分の顔や目線に意識を向けることは大切なことです。同時に、聴覚情報にも、注意を払わなければなりません。そこで、ポイントとなるのが、緩急だそうです。注意を惹きたい時に少し話すスピードを落とすなど、話すスピードを変えて、変化をつくることで、聴衆が注意を向けるよう促すことができます。声の大きさや高さを変えることも、同様に、聴衆の注意を喚起するために役立ちます。オンラインに移行することで、誰もが、新しい自己表現の力を身に付け機会になっています。

対話力

主催している21世紀学び研究所では、意見だけではなく、その背景にある経験、感情、価値観まで含めて、伝え、聴き合う対話のコミュニケーションを広める活動をしています。この対話のアプローチが、オンラインになり、とても役立つというお言葉をたくさん頂きました。初対面の人でも、この対話を実践すると、どんな経験の持ち主で、何を大切だと思っているのかを知ることができるからです。

私も、意見、経験、感情、価値観を活用して、オンライン初対面の人間関係の構築に挑戦しています。一緒に暮らしたことも、仕事をしたこともない他人のことを知るということは、簡単なことではありません。特に、異なる経験を持っている人のことを知ることは、難しいものです。そんな時にも、意見、経験、感情、価値観の4つを聴き取るように心がけてみてください。そして、ご自身も、この4つを伝えてみてください。たった15分の対話でも、相手をよく理解できたと感じることができるはずです。

これからも、オンライン化に適応し、進化を遂げたいと思います。

ブルーミング実践コミュニティ

2020.12.28文部科学教育通信掲載

ブルーミングとは、花が咲いている状態のこと。人が夢を叶えている状態を、花にたとえて、ブルーミングと名付けることにしました。そして、年明けから、ブルーミング実践コミュニティを立ち上げることになりました。

実践と相互学習

参加者は、ブルーイングの手法を学び、自組織で実践し、その結果をコミュニティに共有する使命を持ちます。コミュニティは、お互いの実践事例を通して、学びを深める、リアルなアクションラーニングの場です。組織開発やリーダーシップ開発では、知識のインプットは、学びの2割位に当たり、実践を通して試行錯誤する中で得る学びが、学びに占める割合は8割ぐらいではないかと思います。この割合は、人によって異なるかもしれませんが、知識のインプットだけでは、学びを手に入れることができないというのは誰にとっても真実です。このため、アクションと共に欠かせないのがリフレクションです。

経験の意味付け

経験をどのように捉えるのかは、個人のものの見方により決まります。多面的に状況を捉える上で、知識のインプットが役立ちます。例えば、「リーダーシップは他者に与える影響力のことで、その評価は受けて主導であり、自分が意図を持ち、相手に働きかけ、相手がその通りに主体的に反応してくれたら、リーダーシップを発揮したと云える」という知識があれば、意図を持ち、相手に働きかけ、相手の反応に注意を払い、その結果を前提に、自分の言動ヲ振り返ることができます。リフレクションでは、結果の振り返りだけでなく、そのために、自分がどのような働きかけをしたのか、その前提にどのような仮説を持っていたのかを振り返ります。知識があることで、リフレクションの的を的確に絞り込むことができます。

多様性の価値

実践学習において、経験を振り返るリフレクションは、欠かせません。しかし、誰もが、起きた出来事のすべてを俯瞰的に捉えることはできず、経験を振り返るリフレクションでは、多様な経験を持つメンバーの存在が欠かせません。他人のレンズ・ものの見方を借りることで新しい学びを手に入れることが可能になります。例えば、アクションの前提となる仮説は、過去の経験に基づく知恵で、当人にとっては、空気のように当たり前のことになっている場合が多く、自分では気づくことができないことも多いです。そんな時に、「どうして、このアクションを選んだのですか」と誰かが質問を投げかけてくれることで初めて、「自分が何を前提にしていたのか」と、過去の経験に、その答えを探し始めることができます。

チームダイナミックス

チームダイナミックスとは、個人がチームに与える影響、チームが個人に与える影響のことです。どのチームにも、特有のチームダイナミックスがあり、指導者は、そのダイナミックスに責任を持たなければなりません。一人ひとりが、その個性を最大限発揮し、全員がリーダーシップを発揮するチームにすることができると、学びが最大化します。誰かが遠慮して本当のことを言えない状況の中では、潜在的な学びが失われてしまいます。同時に、テーマが同じでも、メンバーの実践学習の様子が異なり、また、チームダイナミックスもチーム特有のものなので、ワークショップは決して予定調和で終わることがない所が、講師にとっても魅力です。ワークショップは、いつも、驚きの連続で、飽きることはありません。

コミュニティで学ぶこと

コミュニティで学ぶことは、以下の通りです。1か月に一つのテーマを掲げ、その実践を通して学びを深めて生きます。

  • 動機の源を知る
  • なりたい自分を見つける
  • 対話と傾聴のスキルを身に付ける
  • 経験から学ぶリフレクションの質を高める
  • 自己変容のスキルを磨く
  • ブルーミングを支援する人になる
  • ブルーミングに相応しい環境を創る
  • 学習する自律型組織を創る
  • 組織開発に取り組む

主体性を育むということ

ブルーミングは、花が咲いている状態のことです。そのためには、「自分が何者なのか」を知り、「なりたい自分を見つける」必要があります。生きていれば、小さい単位では、常に、私たちは、この問いに答えているのですが、人生やキャリアという単位になると、簡単に明快な答えを手に入れることができません。

デンマークやオランダを訪れると、幼児期から、「自分が何者なのか」と「なりたい自分を見つける」ために、大人が、子どもに対してブルーミングを自然に行っていることが解ります。例えば、オランダでは、幼稚園の遊びのスペースが、マルチプルインテリジェンス仕様になっていて、言語、算数、音楽、絵画等のコーナーが用意されています。勿論、お庭遊びや植物のコーナーもあります。そして、子どもたちは、毎日、どこで遊ぶのかを選びます。私が訪問した園では、子どもたちは、コーナーが絵かれているタペストリーに、自分の名前のついたカードを置き、「自分の計画を表明してから遊ぶ」というのが日課であると教わりました。先生は、その記録を持ち、子どもたちの特性を把握したり、時には違うコーナーで遊ぶことを提案します。この小さい積み重ねが、「自分が何者なのか」を知る大切なプロセスなのです。

就活と自分探し

日本では、残念ながら、幼児期から、その子の特性を見るという習慣がなく、学力、偏差値、部活の選択が、子どもを捉える視点となります。しかし、人間の個性の複雑性を、この3つの視点で把握することは不可能です。そして、就活生になると、いきなり、自分が何者なのかを説明するために、様々なアセスメントを実施し、自己認識を深める実践が始まります。しかし、就活対策で行う自分探しのゴールは、就活の成功であり、自分を知り尽くすことではありません。学生の話を聴いても、「自分は何者か」に対する答えを見出せていないと感じます。

学校教育にもブルーミング

VUCA時代に入り、安定と幸福の象徴であった大企業に異変が見られます。高い偏差値と学歴を手に入れた人たちだけが、手に入れられた幸福と成功は、大学卒業後に就職する企業選択に繋がっていました。だから、学力や偏差値で子どもを評価することが、正しく合理的な幸福の追求方法でした。しかし、この方程式が通用しなくなった今日、もし、親や学校や塾が、このもの差しで、子どもたちの教育に当たっているとしたら、とても恐ろしい間違いを犯していることになります。

こう話すと、インターネットの時代になり暗記はいらないと、高学歴者の多くが気軽に語ります。しかし、これも大きな間違いです。インターネットの時代だからこそ、検索能力と、検索結果を読み解く力を磨く必要があり、そのためには、前提となる知識が欠かせません。世界中の大学の研究成果を手に入れることはできても、それを理解できるかどうかは、土台となる知識の質と量により変わります。興味を持って、探求し、学んだことを実社会に活かしていく学び方と共に土台となる基礎学力をしっかりと身に付けることが、本当に大切な時代です。

いつの日か、ブルーミングが学校教育の当たり前になることを願って、まずは、社会でブルーミングの実装を試みたいと思います。

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