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システムコーチング

2022.02.14文部科学教育通信掲載

皆さんは、システム・コーチングをご存知でしょうか。

通常のコーチングは、1対1で行われますが、システム・コーチングは、チームや組織単位でコーチングを受けるのが特徴です。チーム単位で行うコーチングなので、一般的には、ワークショップ形式でコーチングを受けることになります。

NPOラーニングフォーオールのリーダーと共に、システム・コーチングを受ける機会を得ました。コーチは、約10年前に、システム・コーチングを、日本に導入し、紹介してくれた森川有里さんです。

10年前に、日本で最初に行われたワークショップに私自身も、参加し、システム・コーチングについて学びました。それ以降、チームや組織が課題を抱えた時や、節目となるタイミングで、システム・コーチングを実施することにしています。

 

3つの現実レベル

システム・コーチングでは、3つの現実レベルを大切にしています。

1つ目は、目に見える、誰もが理解できる現実です。私達が、通常、現実という言葉で想像するのは、この現実のレベルです。

2つ目の現実は、ドリーミングです。ドリーミングは、まだ、人々の心の中に存在するものなので、一番目の現実のように目で見ることはできません。しかし、ドリーミングの多くは、時間の経過とともに、現実へと移行していきます。夢は、かなわないこともありますが、明確な願いを持ち、行動し続けることで、未来を変える力となります。

3つ目の現実は、エッセンスと呼ばれるものです。エッセンスは、ドリーミングのように具体的なイメージになっていない、心の奥に存在するものです。例えば、よくわからないけれど、なにかもやもやする、ザワザワする等 感情が先に、その存在を察知するのですが、認知レベルでは、言葉にできないものが、エッセンスレベルの現実です。

ワークショップでは、3つの現実レベルを同時に扱います。このため、コーチのスキルが問われます。

 

神話の起源

今回のワークショップでは、まず、神話の起源を深堀りました。スタートから今日までに起きた主要な出来事を振り返り、その時々に起きた出来事とともに、一人ひとりが、その時何を考え、何を感じていたのか。何に喜び、何に苦しんできたのかを振り返りました。

ラーニングフォーオールは、この10年間成長し続けています。その成長の過程には、いろいろな苦労があり、また、メンバーも新旧混在しているため、入職したタイミングによって、経験も異なります。強いチームでいるためには、そのすべてを全員が共有した状態であることが望ましいと考え、ワークショップを実施しました。

 

現実

私達が現実を創るプロセスは、感情から始まります。論理的思考を大事にしている方には、違和感を覚える意見かもしれません。しかし、この違和感も感情の機能によるものです。感情による選択が、思考に発展し、思考が行動につながることで、現実が現れて来ます。論理的思考を大切にしている人は、論理的に考えるという道を選び、その結果、行動計画が作成され、実行に移されることになります。しかし、多くの場合、私達は、この感情のパートを言葉にすることはなく、また、多くの場合、無意識に行っています。しかし、願いが叶わなかったり、思い通りにならない時には、感情が動き残念な気持ちになります。

 

認知の4点セット

昨年、リフレクションの本を出版し、認知の4点セットを紹介しました。認知の4点セットは、意見、経験、感情、価値観の4点セットです。自分の意見を、意見だけではなく、その背景となる経験、感情、価値観をセットで俯瞰することができるメタ認知のためのツールです。システム・コーチングでは、人と人の間にある関係性に注目を当てるため、感情と価値観レベルでの対話に焦点が当たります。私はなぜそう思うのか。私は何を大切にしているのか。あの人は何を思っているのか。あの人は何を大切にしているのか。私達は何を思っているのか。私達は何を大切にしているのか。私、他者、チームへと、問いが発展しています。

 

実践事例

企業では、例えば、部門間のかべを超え、一丸となって行動したいと考えているリーダーが、真のチームビルディングを実現するために、システム・コーチングを行います。ワークショップ形式で行われるシステム・コーチングの特徴の一つは、場を活用することです。実際に、部屋の中に、製造部、財務部、営業部など、部門のスペースをつくり、その部門のスペースに立って、そこにいる人達が何を考えているのかを想像します。その考えを、声に出してみることで、部門の様子が、その場に再現されます。例えば、製造部門の人は、いつも、良い商品を製造することを最優先していますが、営業部門は、売上を重視します。その結果、営業は製造に、価格競争力を高めるために、コストダウンの要求をすることがありますこのように、異なる価値観が対立をすることで、部門間に亀裂が生まれるということは、とても良くあることです。

こうした対立を、自分の立場だけを主張して、相手が理解しないのが間違っているというスタンスで捉え続けていても、良いチームになることはありません。お互いのニーズを理解した上で、何を優先するのかを一緒に決めて行く必要があります。システム・コーチングを行うことで、異なる部門の人たちが何を大切にしているのかを正しく理解することが、チームや組織を強くします。

 

ワールドワーク・氷山モデル

システム・コーチングは、コーチングを行うプロたちが、繰り返し現れてくるクライアントの悩みの多くが、人や組織との関係性に根付くものだという気付きから生まれたと聴いています。

システム・コーチングには、ワールドワークというアプローチが用いられています。ワールドワークとは、人との関係性の中で、あるいは組織や社会の中で起きている問題や課題を、プロセスワーク(深層心理学)の立場から紐解いて行きます。

システム・コーチングでは、氷山モデルにおける水面下の目に見えない部分を扱います。このため、ワークショップを行うと、どのような社会通念や、カルチャー、価値観などが、現実を創り出しているのかを俯瞰することができます。集団で行うため、一人の気付きが、他者に与える影響も活用できるので、集団全体のメタ認知力も高まって行きます。

 

場の変化

チームや組織に、第3者がコーチとして介入することによって、場に起きる変化は大変興味深いです。変化は、3つの現実レベルで起きるので、コーチは、小さいシグナルを広い、チームに揺さぶりをかける問いを投げかけ、場にゆらぎを起こし、場が自ら、出現したい方向に動いていく事を支援します。シグナルは現実レベルで目に見えるものですが、それ以外のドリーミングやエッセンスは、人々の内面に存在する見えないものです。

私は、システム・コーチングを通して場が変わる体験を何度もしています。その変化は、

一人ひとりの内面に起きる変化と、メンバー同士が相互に影響しあって起きる変化と、メンバー同士の関係性に起きる変化の大きくは3つあります。

 

目に見えないもの

システム・コーチングが扱う領域は、目に見えない現実であり、それは、人々の願いや潜在意識、感情や価値観です。また、目に見えない人と人の繋がりや、場に現れてくるエネルギーなどです。これらはすべて、私達が創り出している世界そのものに存在するものです。ぜひ、皆さんも、目に見えないものにも、意識を向けてみてください。

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