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クエストエデュケーション

2022.03.28、文部科学教育通信掲載

クエストエデュケーションとは、教育と探求社が行う、学校の授業の中で、現実社会と連動しながら生徒が主体となって取り組む探究型の教育プログラムです。学ぶ内容、学び方、学ぶ目標を革新しながら導入校は着実に拡大し、小年度は、全国36都道府県320校が導入し、約61,000名の生徒が取り組みました。

2022年から、高校でも「総合的な探求の時間」が必修科目となりますが、クエストエデュケーションは、日本経済新聞社から、2004年に独立した代表の宮地勘司氏が、2005年に開始し、15年以上の試行錯誤を繰り返してきた探求型の教育プログラムです。

  • 4つのコース

クエストエデュケーションは、目指したい生徒像、身につけたい力、関心のあるテーマ等N合わせて、企業探求コース、進路探求コース、企業コース、社会課題探求コースの4つのコースの中から、プログラムを選択することができます。

進路探求コース

【ロールモデル】

日本経済新聞社「私の履歴書」を執筆した先人の人生を探求し、身分たちで制作したドキュメンタリー作品を発表します。

【マイストーリー】

自分の人生を、私の物語として執筆し、新たな視点で過去を捉え、探求した自分史を発表します。

【ザ・ビジョン】

社会で活躍する大人たちのビジョンから自分らしい人生を探求し、自分の中から見えてきたビジョンを発表します。

企業探求コース

企業が提示するミッションに取り組み、新しい価値創造や課題解決の提案を行います。

社会課題探求コース

生徒自身が、社会課題を発見し、その課題の解決について考え抜き、企画提案を行います。

起業家コース

日常生活の中からビジネスの種を発見し、ゼロから新商品の開発に臨み、ピッチ(短いプレゼンテーション)を行います。

 

  • クエストカップ

毎年、開催されるクエストカップでは、中高生が、自らの探求の成果を社会に向けて発信します。今年は、クエストエデュケーションに参加する約半分の学校に当たる154校から4098作品の応募がありました。

2022年2月26日に開催されたクエストカップ2022 企業探求コースの審査員を勤めさせて頂きました。中高生が、1年間、仲間とともに探求に取り組んだ成果を発表し、社会が、生徒の発想や成長した姿、決して簡単ではない探求活動の過程とアウトプット等々のすべてを、称賛するクエストカップの理念にとても賛同しました。

クエストカップ2022のテーマは、「あふるる、ゼロ」 です。

ゼロ。キミはこの数を見て、何を思うだろう。無であるからこそ、自由。

他にはない、唯一無二。終わりのない、始まりの地。

心を無にするといつの間にやら身体のど真ん中にあるエネルギーの貯蔵地が爆発寸前だ。

+と-の間にあるゼロ。可能性無限大。

 

  • 企業からのミッション

私が審査員を勤めた企業探求コースの特徴は、企業が、本物のミッションを生徒に提示する点です。審査を担当した12校のプレゼンテーションでは、アデコグループ、カルビー、博報堂、富士通、三菱地所、メニコンが、企業探求コースのミッションを生徒に提示していました。

アデコグループ

一人ひとりの「やりたいが目覚める瞬間」が溢れ出すアデコグループならではの新規事業を提案せよ!

カルビー

大自然と人間の「ドキドキな関係」をつむぐカルビーのシン・サービスを提案せよ!

博報堂

「君の疑う力」から世界をつくり変える新しい教科を提案せよ!

富士通

これからも変わり続ける「幸せのカタチ」を共に描く富士通らしい新しいサービスを提案せよ!

三菱地所

未来を生きる私たちが、「そこに集う喜び」を感じられる場と仕組みを提案せよ!

メニコン

人と人の「心の変化」を生み出す全く新しいみるに挑戦するサービスを提案せよ!

 

生徒たちは、ミッションを果たすために、企業のパーパス(存在理由)に立ち返り、企業の魅力を掘り下げます。また、その企業の提供している事業やサービス、商品が、どのような社会価値を提供しているのかを探求します。そのうえで、自らの原体験を元にアイディアを生み出し、仲間と一緒に話し合い、これまでにないアイディアで、ミッションに答えます。

企業から提示されたミッションを読むと、大人でもワクワクしますから、高校生たちも、同様の気持ちで、探求に取り組んだのではないかと思います。

企業探求コースでは、ミッションを提示した企業人が自ら、中高生にミッションを説明する機会を得ることができるので、この交流にもとても価値があると思いました。企業探求コースは、進路探求コースではありませんが、生徒にとって、仕事ってなにか?働くって何か?新しい価値を創造するって何か?を考える機会になっていると思います。

 

  • プレゼンテーション

企業探求コースで、最終プレゼンに選ばれたのは24チームです。1日の発表会なので、審査は、2つに分かれて行われました。私が担当した12チームは次の通りです。

岐阜県立増田清風高等学校

滝川第ニ中学校 (アデコグループ・チーム)

クラーク記念国際口頭学校横浜青葉キャンパス ★準グランプリ★

多治見西高等学校

常翔学園高等学校

千葉県立東葛西中学校(博報堂チーム)★グランプリ★

法政大学高等学校

福山市立城南中学校

滝川第二中学校(三菱住所チーム)

百合学院高等学校

千葉県立東葛西中学校(メニコン・チーム)

新潟県立津南中等教育学校

 

すべてのチームのプレゼンテーションにグランプリを渡したかったのですが、審査員に与えられたミッションは、12チームの中から、グランプリと準グランプリを選ぶことでした。

グランプリに選ばれたのは、博報堂のミッション「君の疑う力」から世界をつくり変える新しい教科を提案せよ!に対する企画提案を行った千葉県立東葛西中学校でした。アプリを使って、世の中を良くしていこうという教科です。いじめを始めとするさまざまな社会課題のテーマについて、アプリを活用し対話することができる教材の特徴は、バーチャル空間とリアルが融合です。

私たち大人が、直面している、気候変動等の課題について、すでに科学的な分析に基づき、我々が取り組むべきアクションが提示されているにも関わらず、多くの人たちが、日常の仕事や生活に没頭し、未来のための課題解決を先延ばしにしている様子も、彼らの教材のヒントなったのではないかと思います。

 

  • 利他の精神

グランプリ以外のすべての作品に共通の特徴として、よりよい社会を願う心、人々の幸せを願う心、人々を思いやる心等が土台にあることも、とても素敵な共通点でした。課題解決の第一歩は、共感であると述べたのは、社会起業家という言葉の生みの親であるビル・ドレイトン氏です。利他の精神や、誰かを思う気持ちが、良い発想が生まれる原動力です。そこに、学問で得た知識や智慧が加わると、解決策の可能性が広がります。

 

  • 探求学習の未来

探求学習には、教科学習では得られない魅力があります。何かについて深く考える機会は、探求するテーマについての理解を深めるだけではなく、自分を知る機会に繋がります。既知の情報を集めるだけでは、意味がなく、その情報に意味付けを行うことに探求の価値があるからです。その意味付けを行う際に現れてくるのが、「自分」です。自分のものの見方や、大切にしていることが、物事を評価し、優先順位付けを行います。

探求学習で自分を知る機会を持ち、自分の内にある利他の心と出会い、大人がその環境を創り見守る。これが、未来の教育の姿ではないでしょうか。

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