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ダイバーシティ経営

2022.01.10文部科学通信掲載

なぜ、ダイバーシティ経営が企業の持続的発展に欠かせないのか ~ダイバーシティ経営の真の価値とは~ というタイトルで、セミナーを実施致しました。その一部をご紹介させていただきます。

202030

昭和女子大学キャリアカレッジでは、2014年から本テーマに向き合い活動を進めています。2014年は女性活躍推進が、成長戦略に位置づけられ、企業における女性活躍推進が本格化した年です。

202030は、安倍前首相が、2012年に世界に向けて発信した宣言で、2020年には、女性管理職比率30%を達成するという目標です。その後、働き方改革関連法が制定され、長時間労働をなくす動きが始まり、女性が出産後も働くことができる環境が整備されつつあります。

世の中は、グラデーションで出来ているので、今日においても、この動きに全く気づいていないリーダーも企業も存在しています。一方、感度の高い企業は、2014年から地道な取り組みを行い、働き方を始め、企業風土の改革を進めています。

日本における女性活躍推進は、ポジティブアクションとしてではなく、労働人口減少対策として本格化しましたが、日本社会に大きな変化をもたらしました。一つは、長時間労働をなくし、ワークライフバランスを重視するという新しい働き方です。もう一つは、女性が出産後に時短で働くことが当たり前になったことです。

ワークライフバランス

2020年に女性管理職比率30%は実現しませんでしたが、女性活躍の取り組みは、共働き社会に向けて着実な変化を遂げる事になりました。その結果、若い男性にとっては、ワークライフバランスは家庭円満の前提条件と考えられ、企業側も、長時間働くことが優秀な社員の証という考え方を手放す必要が出てきました。

先日も、ある企業で入社3年目の研修を実施させていただきましたが、誰もが生産性を高める工夫をしており、無駄な仕事、意味のない時間の過ごし方に対してはとてもシビアな目を持っていることに感銘を受けました。勤勉で意欲の高い優秀な若者は、ワークライフバランスの本当の意味を知っているように見えました。

ダイバーシティ経営

経済産業省は、ダイバーシティ経営を、多様な人材が、その潜在能力を開花させることで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげていく経営と定義しています。文章を読めば、おそらく誰も異論を唱えないとおもいます。しかし、現実はどうでしょうか。

女性活躍推進が進めば、イノベーションが起きるのか。現実は、単純では有りません。ダイバーシティ経営の第1歩は、多様性の尊重と多様な人材の登用です。しかし、これは、あくまでも第1歩です。その先に、2歩、3歩と取り組まなければならないことがあります。

起業家精神に溢れた組織文化

  • 答えのない時代に、立ち止まらず機敏に学習する組織
  • かつてないほど、アジャイルで起業家精神溢れる企業文化

そのような環境があれば、多様な人々が無限の可能性を引き出すことができると言われています。

そのために、心理的安全性、アンコンシャスバイアス、エンゲージメントが欠かせません。

心理的安全性

そのために、心理的安全性は欠かせません。心理的安全性とは、思ったことを口に出せる環境です。こんなことを言ったら、誰かに馬鹿にされるかもしれない等と心配することなく、思ったことを口に出すことができる環境であれば、人は、伸び伸びと自分を出すことが出来ます。イノベーションが生まれやすい組織では、ブレインストーミングも活発です。ブレインストーミングの特徴は、誰もが、アイディアを出すことに貢献しますが、そのアイディアが正解である必要はありません。正解ではないアイディアを出すことが大切なのは、お互いの脳を刺激し合うからです。アイディアを出し続けているうちに、みんなで正解を創造することも可能になります。

アンコンシャスバイアス

一人ひとりの潜在能力を開花させるために、一人ひとりが注意しなければならないのがアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)です。誰もが、気づかないうちに、誰かの能力を潰すような発言をしてしまうということはよくあることです。例えば、「新しいアイディアを生み出すチームを創りたいので、若い人を集めよう」等と言うことがあります。一人ひとりの潜在能力を開花させることに真剣に取り組むグーグルでは、この発言は禁止されています。

なぜだかわかりますか。この発言が、年をとった人たちが、自分には新しいアイディアは出せないと、自分を諦めてしまうからです。もちろん、男性だから○○、女性だから○○も禁句です。

エンゲージメント

エンゲージメントとは、仕事にやりがいを持ち、充実していると感じられる、仕事に対するポジティブな心理状態のことです。エンゲージメントという言葉を世界中に広めたギャロップ社が2017年に行ったエンゲージメント調査で、日本は6%という結果でした。6%の人達しか、仕事に対するポジティブな心理状態にいないという結果です。アメリカは、32%なので、かなりの差があります。

一人ひとりが、潜在的能力を開花させるためには、エンゲージメントが高い状態であることは必須です。エンゲージメントは、4つの視点で高めることが可能です。

  • 目的:何のために仕事をするのか。意味のある仕事だと感じられることが大切です。最近では、パーパス(存在意義)経営という言葉も使われるようになりました。
  • 強みと役割:自分の強みを活かせているか。組織の目的に貢献している実感を持つことと同時に、自分の強みを活かして貢献していることが大切であると言われています。苦手を克服することも大切ですが、人が本当に貢献実感を持てる状態とは、自分の才能を活かし役にたっていて、それを周囲が認めてくれていると実感できる時です。
  • 成長:自分は成長しているか。組織の役に立っていても、成長を感じられないと人は、幸せに感じることはできません。成長意欲が高くないという人でも、マンネリは嫌いなはずです。勿論、同じことに取り組んでいても、自分の意思で技を磨き続けることができますから、成長のための環境は、自ら創るものということもできます。成長することは、①の目的や、②の強みと役割にも繋がっていて、よりよい貢献、より大きな貢献ができるようになる成長を、潜在的には誰もが求めているのかもしれません。
  • 繋がり:人間関係は良好か。イノベーションが生まれやすい環境には、心理的安全性が欠かせません。このため、人間関係においても、トラブルがないというレベルではなく、友人同士のような関係、ラグビーやサッカーの強いチームに見られるような深い信頼関係に支えられた関係が理想だと言われています。

特権という議論

最近では、ダイバーシティ推進において「特権」という言葉を耳にするようになりました。子どもの教育の世界では、よく耳にしていたのですが、ダイバーシティ推進においても、特権という概念を使うと説明が楽になります。特権の議論では、マジョリティは、自分が、下駄を履いていることに気づいていないと指摘します。

最後に

企業のダイバーシティ推進に取り組む際に、最初に行うのが、学校教育で染み付いた画一性を重んじる心を手放すことです。その必要がなくなる日が待ち遠しいです。

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