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隠岐隠岐島前高校と地域の魅力化の取り組みに学ぶ

2022.04.11文部科学教育通信掲載

隠岐島前高校の魅力化の取り組みをご紹介します。

隠岐島前高校の危機存続

昭和25年には、6500人いた島の住民は、平成17年には、2500人に減少し、高齢化率は40%になっていました。昭和40年代には在籍数が300人を超えていた隠岐島前高校も、平成9年には、77人(2学級)、平成20年には、28人(1学級)となり、平成25年には、島根県の高校統廃合基準である入学生21人を下回っていくという統廃合の危機に直面します。

地域が隠岐島前高校を失うと、地域の子どもたちは、中学を卒業すると島を離れなければならなくなります。島外の寮で暮らした高校生は、島に対する愛着も失い、島に戻る若者は減少していきます。その結果、地域の衰退は避けられなくなります。

島前3町村にとって、隠岐島前高校の存続は、島前3町村の存続に不可欠です。そこで、立ち上がったのが海士町副町長の吉元操さんです。2004年に高校の存続問題に取り組む重要性を盛り込んだ「自立促進プラン」を策定し、2008年から本格的に隠岐島前高校魅力化プロジェクトを立ち上げます。吉本さんを支援したのが、現在、地域・教育魅力化プラットフォーム代表の岩本悠さんです。岩本さんは、ソニーで人材育成・組織開発・社会貢献事業に従事されていた方です。岩本さん以外にも、現在プリマペンギン代表の藤岡慎二さん、学習センター長を務めら、現在は、海士町の大人留学に取り組む豊田庄吾さんが、地域と隠岐島前高校の魅力化の立ち上げに取り組んで来られました。

 

いけている大人たち

日本教育大学院大学では、隠岐島前高校魅力科プロジェクトが立ち上がった頃に、吉元さん、岩本さん、藤岡さんをお招きし、毎年、講演会を行っていました。島留学のスタート時には、生徒募集を兼ねたイベントを開催したこともあります。今では、日本中で地域創生の取り組みが行われていますが、その当時には、地方創生という言葉を耳にすることはほとんどなく、吉元さんの「自立促進プラン」に込めた思いに、心が打たれたことを思い出します。高校が消えたら、島が消える。だから、高校を絶対に存続させなければならない。吉元さんの強い思いが、岩本さんを始めとする「いけている大人たち」を魅了し、奇跡を起こすことができたのだと思います。

今日も、島前高校魅力化プロジェクトには、たくさんの「いけている大人たち」が関わっています。教育の専門家である大学教授、企業で活躍されたリーダー、探求教育の専門家、教育委員会の方々、学校の先生、先生と共に生徒の教育を支援するコーディネーター、学習センターの皆さん、寮で生活を見守る大人たち、みんなが、生徒の育ちをサポートしている様子に、心を打たれました。「いけている大人たち」という言葉で一括にするのは少し失礼かもしれませんが、いけている大人たちには、以下の5つの特性があります。①自分を知っている、②生徒の多様性を包摂できる、③生徒の過去ではなく、未来を見る、④願いを押し付けず、伝える、⑤待てる  いけていない大人は、この真逆の特徴を持ちます。

 

島留学

隠岐島前高校の総生徒数は、158人、そのうち留学生が、90人を占める高校です。スタートした当初は、説明会を実施できる大都市からの留学生が多かったそうですが、現在では、オンライン説明会も可能となり、日本全国から留学生が来るようになったそうです。このため、生徒は、とても多様です。島で育った生徒と、東京をはじめとする他県で育った生徒が、一緒の教室で学びます。

島親制度があり、すべての留学生には、島親さんが付きます。寮には、ハウスマスターがいて、近くには学習センターがあり、放課後に学ぶ場所もあります。

 

島前3島がまるごと学校

隠岐島前高校の魅力の一つが、学校と地域の境目が溶けてなくなっていることです。このため、学校、寮、学習センターだけではなく、学校のある海士町、漁業と観光を主な産業とする景勝地「魔天崖」のある西ノ島町、畜産を主な産業とし、国の名勝天然記念物「赤壁」を有する知夫村がすべて、生徒の学びの舞台になっています。地域の住民が、生徒を歓迎し、生徒が学びたいこと、やってみたいことを応援する地域文化が醸成されています。 地域の人々に歓迎され、暖かく見守ってもらえる生徒は、安心して行動することができます。

 

隠岐島前高校が目指す生徒像

隠岐島前高校は、「グローカル人材」の育成を目標に、以下の4項目を定義しています。

  • 真理の探求に向け、協働的に粘り強く挑戦する人の育成
  • 理想を追求し、自己を高め、地域社会に貢献する人の育成
  • 進取の気象をもち、主体的、意欲的に行動する人の育成
  • 心身ともに健康、情操豊かで、他人を思いやる人の育成

 

海士町にある隠岐島前高校の高校1年生と2年生に、「リフレクションの習慣」を届けに行きました。隠岐島前高校の生徒たちは、行動する高校生なので、リフレクションの題材をたくさん持っています。このため、驚くほど、リフレクションの価値をすぐに理解してくれたことがとても印象的でした。

隠岐島前高校で生徒と過ごしたのは、2日間だけでしたが、①から④の項目は、生徒の中に染み込んでいるかもしれないと思いました。リフレクションを行った際にも、一人ひとりが、自らの意思で取り組んだことがあり、振り返りのテーマも多様でした。進取の気象を持ち、主体的、意欲的に行動することを許可されていることは、高校生の成長において、とても大切なことです。行動力に、リフレクションの習慣が加われば、経験を意味づけ、経験から学ぶことができます。また、自分で決めて行動することが許されているので、リフレクションは、自分を知る大切な機会になります。

地域共創科のカリキュラム

この春から地域共創科がスタートし、値域共創科で学ぶ生徒は、毎週金曜日は、一日地域に出て学ぶことができるようになります。

【伸ばしたい資質・能力=人生の宝物】

新学科「地域共創科」では、意思ある未来を共に創っていくために、4つの観点を大切する。

主体性:未知なる物事に対して一歩踏み出す・踏み込むことができる・踏み込むことができる

協働性・自分を活かしながら、多様な人と協働することができる

探求性:適切に問い続けることができる、適切に振り返ることができる

社会性:小さな行動・小さな越境を粘り強く続け、周囲に貢献することができる

値域共創科で学ぶ生徒たちには、リフレクションの達人になってもらいたいです。そのために、先生たちとも、リフレクションの勉強会を行いました。

 

先生の勉強会

先生の勉強会でお伝えした一番やってはいけないことは、「評価のために振り返る習慣」を身に付けさせることです。

リフレクションの習慣は、人生の宝物です。答えのない時代に、答えを見つけるために欠かせない、とても大切なツールだからです。しかし、学校では、生徒のリフレクションを評価するという動きがあります。その際に、教育関係者にお願いしたいのは、評価のために振り返るという意思のないリフレクションを生徒に習慣化させないことです。かつて、関心意欲態度の評価のために、授業中に手を挙げる、授業後に先生に質問に行く等々、生徒は、見せかけの関心意欲態度にも価値があることを学びました。しかし、見せかけが通用するのは学校社会だけで、現実社会はそれほど甘くはありません。

次回は、生徒が行ったリフレクションについてご紹介したいと思います。

クエストエデュケーション

2022.03.28、文部科学教育通信掲載

クエストエデュケーションとは、教育と探求社が行う、学校の授業の中で、現実社会と連動しながら生徒が主体となって取り組む探究型の教育プログラムです。学ぶ内容、学び方、学ぶ目標を革新しながら導入校は着実に拡大し、小年度は、全国36都道府県320校が導入し、約61,000名の生徒が取り組みました。

2022年から、高校でも「総合的な探求の時間」が必修科目となりますが、クエストエデュケーションは、日本経済新聞社から、2004年に独立した代表の宮地勘司氏が、2005年に開始し、15年以上の試行錯誤を繰り返してきた探求型の教育プログラムです。

  • 4つのコース

クエストエデュケーションは、目指したい生徒像、身につけたい力、関心のあるテーマ等N合わせて、企業探求コース、進路探求コース、企業コース、社会課題探求コースの4つのコースの中から、プログラムを選択することができます。

進路探求コース

【ロールモデル】

日本経済新聞社「私の履歴書」を執筆した先人の人生を探求し、身分たちで制作したドキュメンタリー作品を発表します。

【マイストーリー】

自分の人生を、私の物語として執筆し、新たな視点で過去を捉え、探求した自分史を発表します。

【ザ・ビジョン】

社会で活躍する大人たちのビジョンから自分らしい人生を探求し、自分の中から見えてきたビジョンを発表します。

企業探求コース

企業が提示するミッションに取り組み、新しい価値創造や課題解決の提案を行います。

社会課題探求コース

生徒自身が、社会課題を発見し、その課題の解決について考え抜き、企画提案を行います。

起業家コース

日常生活の中からビジネスの種を発見し、ゼロから新商品の開発に臨み、ピッチ(短いプレゼンテーション)を行います。

 

  • クエストカップ

毎年、開催されるクエストカップでは、中高生が、自らの探求の成果を社会に向けて発信します。今年は、クエストエデュケーションに参加する約半分の学校に当たる154校から4098作品の応募がありました。

2022年2月26日に開催されたクエストカップ2022 企業探求コースの審査員を勤めさせて頂きました。中高生が、1年間、仲間とともに探求に取り組んだ成果を発表し、社会が、生徒の発想や成長した姿、決して簡単ではない探求活動の過程とアウトプット等々のすべてを、称賛するクエストカップの理念にとても賛同しました。

クエストカップ2022のテーマは、「あふるる、ゼロ」 です。

ゼロ。キミはこの数を見て、何を思うだろう。無であるからこそ、自由。

他にはない、唯一無二。終わりのない、始まりの地。

心を無にするといつの間にやら身体のど真ん中にあるエネルギーの貯蔵地が爆発寸前だ。

+と-の間にあるゼロ。可能性無限大。

 

  • 企業からのミッション

私が審査員を勤めた企業探求コースの特徴は、企業が、本物のミッションを生徒に提示する点です。審査を担当した12校のプレゼンテーションでは、アデコグループ、カルビー、博報堂、富士通、三菱地所、メニコンが、企業探求コースのミッションを生徒に提示していました。

アデコグループ

一人ひとりの「やりたいが目覚める瞬間」が溢れ出すアデコグループならではの新規事業を提案せよ!

カルビー

大自然と人間の「ドキドキな関係」をつむぐカルビーのシン・サービスを提案せよ!

博報堂

「君の疑う力」から世界をつくり変える新しい教科を提案せよ!

富士通

これからも変わり続ける「幸せのカタチ」を共に描く富士通らしい新しいサービスを提案せよ!

三菱地所

未来を生きる私たちが、「そこに集う喜び」を感じられる場と仕組みを提案せよ!

メニコン

人と人の「心の変化」を生み出す全く新しいみるに挑戦するサービスを提案せよ!

 

生徒たちは、ミッションを果たすために、企業のパーパス(存在理由)に立ち返り、企業の魅力を掘り下げます。また、その企業の提供している事業やサービス、商品が、どのような社会価値を提供しているのかを探求します。そのうえで、自らの原体験を元にアイディアを生み出し、仲間と一緒に話し合い、これまでにないアイディアで、ミッションに答えます。

企業から提示されたミッションを読むと、大人でもワクワクしますから、高校生たちも、同様の気持ちで、探求に取り組んだのではないかと思います。

企業探求コースでは、ミッションを提示した企業人が自ら、中高生にミッションを説明する機会を得ることができるので、この交流にもとても価値があると思いました。企業探求コースは、進路探求コースではありませんが、生徒にとって、仕事ってなにか?働くって何か?新しい価値を創造するって何か?を考える機会になっていると思います。

 

  • プレゼンテーション

企業探求コースで、最終プレゼンに選ばれたのは24チームです。1日の発表会なので、審査は、2つに分かれて行われました。私が担当した12チームは次の通りです。

岐阜県立増田清風高等学校

滝川第ニ中学校 (アデコグループ・チーム)

クラーク記念国際口頭学校横浜青葉キャンパス ★準グランプリ★

多治見西高等学校

常翔学園高等学校

千葉県立東葛西中学校(博報堂チーム)★グランプリ★

法政大学高等学校

福山市立城南中学校

滝川第二中学校(三菱住所チーム)

百合学院高等学校

千葉県立東葛西中学校(メニコン・チーム)

新潟県立津南中等教育学校

 

すべてのチームのプレゼンテーションにグランプリを渡したかったのですが、審査員に与えられたミッションは、12チームの中から、グランプリと準グランプリを選ぶことでした。

グランプリに選ばれたのは、博報堂のミッション「君の疑う力」から世界をつくり変える新しい教科を提案せよ!に対する企画提案を行った千葉県立東葛西中学校でした。アプリを使って、世の中を良くしていこうという教科です。いじめを始めとするさまざまな社会課題のテーマについて、アプリを活用し対話することができる教材の特徴は、バーチャル空間とリアルが融合です。

私たち大人が、直面している、気候変動等の課題について、すでに科学的な分析に基づき、我々が取り組むべきアクションが提示されているにも関わらず、多くの人たちが、日常の仕事や生活に没頭し、未来のための課題解決を先延ばしにしている様子も、彼らの教材のヒントなったのではないかと思います。

 

  • 利他の精神

グランプリ以外のすべての作品に共通の特徴として、よりよい社会を願う心、人々の幸せを願う心、人々を思いやる心等が土台にあることも、とても素敵な共通点でした。課題解決の第一歩は、共感であると述べたのは、社会起業家という言葉の生みの親であるビル・ドレイトン氏です。利他の精神や、誰かを思う気持ちが、良い発想が生まれる原動力です。そこに、学問で得た知識や智慧が加わると、解決策の可能性が広がります。

 

  • 探求学習の未来

探求学習には、教科学習では得られない魅力があります。何かについて深く考える機会は、探求するテーマについての理解を深めるだけではなく、自分を知る機会に繋がります。既知の情報を集めるだけでは、意味がなく、その情報に意味付けを行うことに探求の価値があるからです。その意味付けを行う際に現れてくるのが、「自分」です。自分のものの見方や、大切にしていることが、物事を評価し、優先順位付けを行います。

探求学習で自分を知る機会を持ち、自分の内にある利他の心と出会い、大人がその環境を創り見守る。これが、未来の教育の姿ではないでしょうか。

仮説の質を高めるリフレクション

2022.03.14文部科学教育通信掲載

経験から学ぶリフレクションの指導を繰り返す中で、新たな気付きが有りました。それは、リフレクションの質が高まると、仮説の質も高まるということです。

AARサイクル

OECDが提唱する学びの羅針盤2030は、子どもたちがトランスフォーマティブ・コンピテンシーを身につける敎育へのシフトを奨励しています。AAR(Anticipation, Action, Reflection)サイクルは、学びの羅針盤2030で紹介されたリフレクションのためのツールです。仮説を持って、行動し、リフレクションを通して学び、次の仮説に活かす。前例のない時代に必要なアジャイル思考や、プロトタイプ思考にもつながる、試しながら結果を創造するプロセスに、欠かせない思考習慣です。

 

経験から学ぶリフレクション

21世紀学び研究所は、経験学習サイクルを元に、経験から学ぶリフレクションを、5つのステップで行うことを奨励しています。経験学習サイクルは、皆さんのも御存知の通り、経験をしたら、経験を振り返り、法則を発見し、次の計画に活かすというシンプルでパワフルな経験学習のツールです。経験から学ぶリフレクションも、この経験学習サイクルを土台にしています。

 

経験から学ぶリフレクション 5つのステップ

  • 想定していた結果と、実際の結果を振り返ります。
  • 行動する前に考えていた行動計画と仮説を振り返ります。
  • 経験と感情を振り返ります。
  • 経験から学び、法則を見出します。
  • 法則を次の計画に活かします。

 

行動計画と仮説

経験を振り返る際に、行動は振り返るものの、行動計画を振り返る人は少ないかもしれません。また、その行動計画の前提となる仮説を振り返る人はとても少ないようです。しかし、実は、行動計画と仮説の振り返りが、未来を変える上でとても重要なものであることに、改めて気付かされています。

 

幸せになるために

経験から学ぶリフレクションを多くの方たちと実践する中で、「人は幸せになるために生きている」ことに確信を持つようになりました。それは、人生がすべて幸せで満ち溢れているという意味ではなく、私達は、幸せになるために行動しているという意味です。この気付きは、行動計画と仮説のリフレクションを通して得たものです。実際の結果が想定とかけ離れたものであったとしても、行動の時点では、「こうすればうまくいくはずだ」という前提で、人は行動を選択しています。

例えば、「これくらいでだいじょうぶだろう」とあるレベルを想定し、行動する時、人は、そのレベルで望んでいる結果を手に入れることができると考えています。そして、そのレベルの選定は、過去の成功体験に基づき設定されています。ヤマカンがあたって100点が取れた経験を持つ人が、次も、ヤマカンで90点は取れるだろうと、テストの準備に力を入れるのを止めるかもしれません。ところが、次のテストでは、ヤマカンが外れてしまった。そんな経験は、人生に付き物です。この2つの経験を経て、人生はそんなに甘くないと、地道に努力する大切さを学び、計画的に勉強することで、よい成績を取ることを目指すようになります。(ただし、人は幸せになるために生きているため、目の前に、ゲームなど、今の自分をもっと幸せにすることができる目的が現れると、勉強の習慣は後回しになってしまうかもしれません。これは、幸せの定義や人生の目的の話になりますので、また、別の機会で解説できればと思います。)

 

仮説に無自覚

「こうすればうまくいくはずだ」は、行動の前提にある仮説です。ところが、多くの人は、この仮説に無自覚なことが多いです。仮説を分析したり、評価したりする人はとても少ないです。もし、行動前に、行動の前提となる仮説をしっかりと点検することができたら、成功の確立が上がると思いませんか。

私達は、一日に3万5千回も決断をしているそうなので、一つひとつの決断の前提を自分に尋ねることは難しいです。しかし、自分が成功させたい、望む結果を手に入れたいと思う特別な決断に対しては、特別に扱ってもよいのではないでしょうか。その際に、計画や、シミュレーションなどを行うことも大切ですが、以外な盲点が、自分が立っている前提です。あなたが想定している「こうすればうまくいく」は本当ですかという問いかけをおすすめするのが、仮説のリフレクションです。

仮説の背景には、必ず経験を通して知っていることがあります。今日のように、変化の激しい時代には、過去の経験が通用しないこともありますから、更に、仮説の検証は重要になっています。

 

仮説のリフレクション

仮説はなにか。

仮説の背景には、どのような過去の経験があるのか。

例えば、自己紹介のプレゼンテーションを成功させるために、しっかりと練習することを計画した人には、どんな経験があるのでしょうか。

 

仮説の前提となる経験

大学の授業で行ったプレゼンで、資料づくりにエネルギーを使い果たし、発表の準備をせず本番に臨んだ。寝ずに準備したプレゼンの内容には自信があったのに、時間内にうまく説明できず悔しい思いをした。

この経験を通して、プレゼンテーションは、内容の準備のみならず、発表の準備も忘れては行けない事を学びました。また、発表は、時間の枠の中で収まるように準備しなければならないことに気付かされました。

この経験を経て、周到な準備には、プレゼンの内容やパワーポイントの準備に加えて、発表そのものを時間内に効果的に行える準備も大切であると意識するようになりました。そして、この気づきを、次のプレゼンに、その経験を生かしています。

 

AARサイクルと幸せな未来

OECDは、学びの羅針盤2030の中で、『計画的な行動と経験をリフレクションすることを通して、学習者は、物事に対する理解を深め、視野を拡大していく。AARサイクルは、個人と社会の幸福につながる学習方法』と説明しています。

AARサイクルは、前例のない時代に、未来を創造するプロセスでもあります。仮説を持って行動し、結果を検証し、軌道修正することの大切さは、今日、企業活動でも盛んに言われています。念入りな計画を作成し、計画通りに物事を推進することで成果が出る時代は終わりました。このため、一人ひとりに、より高い主体性が求められるようになりました。自ら、考え、行動し、経験から学び、仮説を組み立て行動し、必要なら軌道修正も行わなければならない。この新しい時代の仕事にも、AARサイクルは役立ちます。

 

生徒エージェンシーへの期待

学びの羅針盤2030では、生徒は、よりよい社会を創造する主体(エージェンシー)であると定義しています。誰もが、主体的に、自分と社会、今では社会は世界とつながっているので、合わせて世界を幸せにするために、様々な活動に参画し、寄与していくことになります。一人ひとりが、自分の判断と行動に意識を向けて、決断を下すことができるようになると、その結果、一人ひとりが願いを叶えることになり、また、社会全体でも、幸福度が増すはずです。

今日では、ESG投資やSDGs等 地球規模で同じゴールに向かって活動することが可能になりました。テクノロジーの進化により、生徒が、社会の一員として、よりよい社会に貢献しやすい環境も生まれています。

前例のない変化の激しい時代に生きる私たちが願いを叶えるためには、計画や行動の質に加えて、その前提となる『仮説の質』を高めるリフレクションが大切です。『PDCA&AARサイクル』の時代です。

社会起業大学

2022.02.28文部科学教育通信掲載

社会起業大学は、2010年に設立された日本初の社会起業家育成に特化したソ-シャルビジネススクールです。600人を超える卒業生が日本各地、世界各地で社会起業家として活躍しています。

学長の林浩喜氏は、商社で活躍されてこられたビジネスパーソンで、米国コーネル大学ホテル経営大学院に留学された後、日本初のベーグル専門店『ベーグル&ベーグル』を創業し、世界第4位のベーグル専門店の育てあげた方です。ビジネスど真ん中で活躍されていた林さんは、御自身の経験や知識を社会に還元したいという思いで、社会起業家大学の学長に就任されました。

社会起業大学のミッションは、『ソ-シャルミッションの普及、社会起業家の育成・支援』、ビジョンは、『卒業生が社会起業家精神を持って活躍し、次世代により良いバトンを渡す世界』です。その前提に、『人がもっとも深い喜びを感じるのは、自分の才能を生かして誰かの役に立った時である』 という思想があります。

1月26日に、学長特別対談でリフレクションをテーマに講演を行う機会を頂きました。講演後には、林学長との対談、参加してくださった皆さんとの対話を行いました。

 

社会起業大学と学びの羅針盤2030

リフレクションは、未来を創造する力です。OECDが2003年に発表したVUCA時代を幸せに生きる子どもたちのための敎育に関するガイドラインで、リフレクションは要であると記載されていることを知り、その重要性を広める活動をはじめました。

OECDの敎育に関するガイドラインも、その前提に、持続可能な社会の発展と、人々の幸福があります。OECDは、その後、このガイドラインを改定し『学びの羅針盤2030』を発表していますが、その前提には、社会企業大学のビジョン『卒業生が社会起業家精神を持って活躍し、次世代により良いバトンを渡す世界』ととても共通する部分があります。

学びの羅針盤2030には、生徒エージェンシーという言葉が登場します。生徒は、よりよい社会を創造する主体であるという考え方です。また、教員も、よりよい社会を創造する主体であり、生徒と教員が共によりよい社会を創造する仲間『共同エージェンシー』として、活動していくことを提唱しています。そこには、教える人、学ぶ人という主従関係はありません。子どもも、大人も、社会の一員として、社会をよりよくするために行動することができるからです。

トランスフォメ-ション

学びの羅針盤2030は、よりよい未来を創造する成人を育むために、トランスフォメーションを実現する力を育むことを目指します。

社会人の敎育に携わる中で、ラーニングには、トランザクションナル・ラーニングと、トランスフォメ-ショナル・ラーニングの2種類があると教わりました。知識の習得を目的とした学びが、トランザクソナル・ラーニングで、ものの見方や価値観の転換を伴う学びが、トランスフォメ-ショナル・ラーニングです。従来の学力向上を目指す学習は、トランザクショナル・ラーニングで、社会課題解決力向上を目指す学習は、トランスフォメ-ショナル・ラーニングです。このため、学びの羅針盤2030では、知識、スキル、態度、価値観の4つが学びの領域に含まれます。

学びの羅針盤2030は、よりよい社会・未来の実現に主体的に参画する地球市民を育むことを目指しており、『卒業生が社会起業家精神を持って活躍し、次世代により良いバトンを渡す世界』の実現を目指す社会起業大学のビジョンと「目指す姿」は同じです。

 

ウェルビーイング

学びの羅針盤2030の究極のゴールは、ウェルビーイング(幸福)です。それは、一人ひとりの幸福であり、また、人類の幸福でもあります。気候変動を始めとする地球共通の課題を解決するために、今、世界は、SDGsという共通目標を掲げて、活動を始めています。その取り組みには、国、組織、個人レベルで、濃淡がありますが、2030年のゴールに向けて、世界が共通の目標を掲げ、個人レベルでの参画を実感することができる共通目標の達成に向けた取り組みは、SDGsが初めてなのではないかと思います。そう考えると、SDGsは、学びの羅針盤2030の社会実装と捉えることができます。

 

 

ポジティブ心理学の父と言われているセリグマン博士は、幸福の主観的領域を5つ提示しています。5領域とは,P(Positive emotion,ポジティブ感情),E(Engagement,物事への積極的な関わり),R(Relationship,他者とのよい関係),M(Meaning,人生の意味や意義の自覚),および,A(Accomplishment,達成とそのための努力)のことです。

ポジティブ思考を持ち、よりよい社会を実現するために、信頼できる仲間と共に行動し、自分が社会や人々のために役に立っている事を実感し、社会がよりよくなるという結果自己の貢献を確かめることができれば、人は幸せに生きることができると捉えることができます。

社会起業大学の思想である『人がもっとも深い喜びを感じるのは、自分の才能を生かして誰かの役に立った時である』にも、共通する部分があります。

ウェルビーイングとリフレクション

リフレクションは、ウェルビーイングを実現するための手段の一つです。なぜなら、自分を知ることが、自分を活かす上で、大前提だからです。自分が誰と一緒にいると幸せなのか、自分が何をしている時に幸福を実感するのか、自分は何に貢献したいのか、自分にとって何が大切なのかを知ることで、自らの幸福度を高めることが可能になります。同様に、自分が、幸福を感じられないときはどんな時なのかを理解することで、幸せでない状態にならないように工夫することができます。

社会課題とリフレクション

同じ社会に生きながらも、人の興味関心は多様で、誰もが同じことを課題だと感じる訳ではありません。人が課題を発見するレンズは、自分の大切にしていることと密接に関わっています。敎育問題の解決に貢献したいと考える人も、実現したいテーマは、非認知能力開発、21世紀スキル、体育やスポーツ、プログラミング教育等様々です。

自分のレンズ(センサー)が課題を発見した際には、その瞬間を逃さず、リフレクションです。

なぜ、私はそのことが課題だと思うのか。

私は何を大事にしているから、そう思うのか。

私の願う「ありたい姿」はなにか。

そのために、私にできることは何か。

自分に尋ねてみることで、誰もが、社会を変えるために、今、自分にできることで貢献をする社会が実現するのではないでしょうか。

システムコーチング

2022.02.14文部科学教育通信掲載

皆さんは、システム・コーチングをご存知でしょうか。

通常のコーチングは、1対1で行われますが、システム・コーチングは、チームや組織単位でコーチングを受けるのが特徴です。チーム単位で行うコーチングなので、一般的には、ワークショップ形式でコーチングを受けることになります。

NPOラーニングフォーオールのリーダーと共に、システム・コーチングを受ける機会を得ました。コーチは、約10年前に、システム・コーチングを、日本に導入し、紹介してくれた森川有里さんです。

10年前に、日本で最初に行われたワークショップに私自身も、参加し、システム・コーチングについて学びました。それ以降、チームや組織が課題を抱えた時や、節目となるタイミングで、システム・コーチングを実施することにしています。

 

3つの現実レベル

システム・コーチングでは、3つの現実レベルを大切にしています。

1つ目は、目に見える、誰もが理解できる現実です。私達が、通常、現実という言葉で想像するのは、この現実のレベルです。

2つ目の現実は、ドリーミングです。ドリーミングは、まだ、人々の心の中に存在するものなので、一番目の現実のように目で見ることはできません。しかし、ドリーミングの多くは、時間の経過とともに、現実へと移行していきます。夢は、かなわないこともありますが、明確な願いを持ち、行動し続けることで、未来を変える力となります。

3つ目の現実は、エッセンスと呼ばれるものです。エッセンスは、ドリーミングのように具体的なイメージになっていない、心の奥に存在するものです。例えば、よくわからないけれど、なにかもやもやする、ザワザワする等 感情が先に、その存在を察知するのですが、認知レベルでは、言葉にできないものが、エッセンスレベルの現実です。

ワークショップでは、3つの現実レベルを同時に扱います。このため、コーチのスキルが問われます。

 

神話の起源

今回のワークショップでは、まず、神話の起源を深堀りました。スタートから今日までに起きた主要な出来事を振り返り、その時々に起きた出来事とともに、一人ひとりが、その時何を考え、何を感じていたのか。何に喜び、何に苦しんできたのかを振り返りました。

ラーニングフォーオールは、この10年間成長し続けています。その成長の過程には、いろいろな苦労があり、また、メンバーも新旧混在しているため、入職したタイミングによって、経験も異なります。強いチームでいるためには、そのすべてを全員が共有した状態であることが望ましいと考え、ワークショップを実施しました。

 

現実

私達が現実を創るプロセスは、感情から始まります。論理的思考を大事にしている方には、違和感を覚える意見かもしれません。しかし、この違和感も感情の機能によるものです。感情による選択が、思考に発展し、思考が行動につながることで、現実が現れて来ます。論理的思考を大切にしている人は、論理的に考えるという道を選び、その結果、行動計画が作成され、実行に移されることになります。しかし、多くの場合、私達は、この感情のパートを言葉にすることはなく、また、多くの場合、無意識に行っています。しかし、願いが叶わなかったり、思い通りにならない時には、感情が動き残念な気持ちになります。

 

認知の4点セット

昨年、リフレクションの本を出版し、認知の4点セットを紹介しました。認知の4点セットは、意見、経験、感情、価値観の4点セットです。自分の意見を、意見だけではなく、その背景となる経験、感情、価値観をセットで俯瞰することができるメタ認知のためのツールです。システム・コーチングでは、人と人の間にある関係性に注目を当てるため、感情と価値観レベルでの対話に焦点が当たります。私はなぜそう思うのか。私は何を大切にしているのか。あの人は何を思っているのか。あの人は何を大切にしているのか。私達は何を思っているのか。私達は何を大切にしているのか。私、他者、チームへと、問いが発展しています。

 

実践事例

企業では、例えば、部門間のかべを超え、一丸となって行動したいと考えているリーダーが、真のチームビルディングを実現するために、システム・コーチングを行います。ワークショップ形式で行われるシステム・コーチングの特徴の一つは、場を活用することです。実際に、部屋の中に、製造部、財務部、営業部など、部門のスペースをつくり、その部門のスペースに立って、そこにいる人達が何を考えているのかを想像します。その考えを、声に出してみることで、部門の様子が、その場に再現されます。例えば、製造部門の人は、いつも、良い商品を製造することを最優先していますが、営業部門は、売上を重視します。その結果、営業は製造に、価格競争力を高めるために、コストダウンの要求をすることがありますこのように、異なる価値観が対立をすることで、部門間に亀裂が生まれるということは、とても良くあることです。

こうした対立を、自分の立場だけを主張して、相手が理解しないのが間違っているというスタンスで捉え続けていても、良いチームになることはありません。お互いのニーズを理解した上で、何を優先するのかを一緒に決めて行く必要があります。システム・コーチングを行うことで、異なる部門の人たちが何を大切にしているのかを正しく理解することが、チームや組織を強くします。

 

ワールドワーク・氷山モデル

システム・コーチングは、コーチングを行うプロたちが、繰り返し現れてくるクライアントの悩みの多くが、人や組織との関係性に根付くものだという気付きから生まれたと聴いています。

システム・コーチングには、ワールドワークというアプローチが用いられています。ワールドワークとは、人との関係性の中で、あるいは組織や社会の中で起きている問題や課題を、プロセスワーク(深層心理学)の立場から紐解いて行きます。

システム・コーチングでは、氷山モデルにおける水面下の目に見えない部分を扱います。このため、ワークショップを行うと、どのような社会通念や、カルチャー、価値観などが、現実を創り出しているのかを俯瞰することができます。集団で行うため、一人の気付きが、他者に与える影響も活用できるので、集団全体のメタ認知力も高まって行きます。

 

場の変化

チームや組織に、第3者がコーチとして介入することによって、場に起きる変化は大変興味深いです。変化は、3つの現実レベルで起きるので、コーチは、小さいシグナルを広い、チームに揺さぶりをかける問いを投げかけ、場にゆらぎを起こし、場が自ら、出現したい方向に動いていく事を支援します。シグナルは現実レベルで目に見えるものですが、それ以外のドリーミングやエッセンスは、人々の内面に存在する見えないものです。

私は、システム・コーチングを通して場が変わる体験を何度もしています。その変化は、

一人ひとりの内面に起きる変化と、メンバー同士が相互に影響しあって起きる変化と、メンバー同士の関係性に起きる変化の大きくは3つあります。

 

目に見えないもの

システム・コーチングが扱う領域は、目に見えない現実であり、それは、人々の願いや潜在意識、感情や価値観です。また、目に見えない人と人の繋がりや、場に現れてくるエネルギーなどです。これらはすべて、私達が創り出している世界そのものに存在するものです。ぜひ、皆さんも、目に見えないものにも、意識を向けてみてください。

箕面市の子ども成長見守りシステム

2022.01.24文部科学教育通信掲載

こども庁創設の準備が始まり、こどもを中心に置いた社会づくりの第一歩が始まろうとしています。名称が、こども庁から、こども家庭庁に変更されたことは大変残念ですが、縦割り行政の弊害をなくし、すべての子どもたちの成長と発達を支援する社会を目指すことは、素晴らしいことです。

 

縦割り行政の壁

NPOラーニングフォーオールの活動を通して、子どもの学習支援を行う際にも、省庁や、自治体の部署の壁にぶつかることが多く有りました。例えば、学習支援事業を行う際も、福祉の予算の場合、学校での学習支援が実施できないなど、子どもたちの事情ではなく、大人の事情で物事を推進していかなければなりません。それは、まるで、一人の子どもの一日の暮らしを、福祉と教育で区分するような発想は、人間の営みから見ると、とても不自然な在り方です。また、縦割り行政では、妊娠期、小児期を経て大人になるまで、切れ目のない支援体制を実現することがとても難しいです。

こども家庭庁創立にあたり、子どもを中心に置いた取り組みのベストプラクティスの勉強会が行われています。そこで、ベストプラクティスの代表例である箕面市の「子ども成長見守りシステム」をご紹介したいと思います。

 

貧困の連鎖を断ち切るために

大阪府箕面市の人口13万8千人。そのうち、0から18歳が2万7千人います。箕面市では、貧困の連鎖を断ち切ることを目的とし、生活困窮世帯の子どもに対して支援を行っています。多くの場合、生活困窮世帯の子どもたちに対する支援は、「せめて学校についてこられるように最低限の手当をする」という考え方が一般的のようですが、箕面市は、最低限の手当をするだけでは不十分であると言い切っています。

  • 箕面市の役割認識

箕面市では、課題が健在化している子どもだけを対象に支援を行うのではなく、今、“健全”に見える子どもたちでも、「家庭の貧困」という今後課題を抱える危険をはらむ「環境因子」のある子どもたちに目を向けて、見守り続ける取り組みを行っています。

また、最低限の支援ではなく、社会に出でる選択肢の前に立つ18歳まで、子どもの能力・自信・気概を高いレベルにまで押し上げるために、継続して切れ目のない支援を行うことが大切であると考えています。そして、それは、子どもの義務教育を担い、住民の基礎情報を持つ継続的な組織である市町村だからこそできることだと考えています。

  • 教育と福祉の融合

箕面市では、組織改編を繰り返し、現在では、「子どもに関することはすべて教育委員会で」と、すべての子どもに関連する施策を教育委員会に一元化しています。福祉と教育の役割を明確に切り分けるのが、一般的な考え方なので、とても先進的な取り組みです。教育と福祉が融合することで、子育て支援と母子保健の融合が進み、就学前の子どもを一元化して、幼稚園、保育園、在宅保育のすべての0~5才児を教育委員会で一元的に見ることができる体制を整えることができます。また、その前提として、子どもの貧困の連鎖の根絶は、敎育大綱における方針に位置づけられ、組織全体の重点事項として取り組まれています。

  • こども成長見守り室

平成28の構造改革に合わせて敎育委員会の子育て担当部門に、新たに「子ども成長見守り室」が設置されました。子ども成長見守り室は、子どもに関する市役所内に分散している情報を集約するハブとしての機能を果たします。また、子どもに関する情報を定点観測し、支援の必要な子どもを見つけたり、支援をしている子どもの変化をおとなになるまで追い続けて、随時、必要な支援を行うために、市役所内の司令塔の役割を果たします。

こども成長見守り室が中心となり、市内の小中学校30校が、年2回のシステムの情報更新と、見守りシステム活用会議を実施し、子どもの状況のフィードバックを行うなど、情報共有と連携が進められています。

  • 子どもを支援するためのデータベース

子どもの支援を行うためのデータベースには、①親の経済的困難を想定できる情報、②経済的困窮を要因として発生している現象の2つがあります。

子どもの状況が見えるが根本にある貧困が見えない情報

  • 学力・体力調査結果
  • 生活状況調査結果
  • 日常の行動・衣服などの状況
  • 学校検診・乳幼児検診の結果
  • 虐待に関する通報・対応状況

家庭の困窮は推定できるが子どもの状況が見えない情報

  • 生活保護の受給状況
  • 児童扶養手当の受給状況
  • 保育料算定時の所得状況
  • 給食費の滞納状況
  • 就学援助の受給状況

子ども個人をキーに名寄せをすると、子どもを支援するために必要な情報が明らかになります。

  • 見守りが必要な子どもが見えてくる(経済的困窮)
  • 支援が必要な子どもが見えてくる(経済的困窮と子どもの変化)
  • 支援を受けている子どもの現状が分かる(親の状況と子どもの状況)
  • 支援を受けている子どもの経年変化を追跡できる(子どもの変化と集団の変化)

・子ども成長見守りシステムによる判定

子ども見守りシステムでは、生活困窮判定、学力判定、非認知能力判定の3つの判定を行い、3つの要素を統合して子どもの状態の総合判定を行います。判定は、年に2度行われ、それ以外にも、必要に応じて、個別に判定を行います。

2018年後半の判定では、0歳から18歳の子どものうち、4774人が見守り・支援の対象としてリストアップされ、そのうち462人の小中学生が、重点支援が必要と判定されました。しかし、そのうち116人(25%)は、学校などでは見守りの対象になっておらず、ノーマークの子どもたちだったそうです。

ノーマークの子どもたちは、学校で、低学力であることは認識されていても、特に目立つことがなく、特に気になることがない場合には、「おとなしい子ども」という認識で、学校現場では、特に支援が必要な子どもであることに気づき難いようです。

子ども成長見守りシステムでは、学力偏差値、非認知能力の一部の数値が乱高下している等の異常値を見つけることができるため、学力や気持ちが不安定であることがわかり、学校現場では気づけない、支援の必要な子どもを特定できたそうです。

最近では、政府もDXを奨励していますが、箕面市の子ども成長見守りシステムは、まさに、データ駆動型行政システムのモデルケースだと思いました。

 

  • 個人情報保護条例への対応

子ども成長見守りシステムを実現するためには、個人情報保護条例による「実施機関のかべ」と「収集目的のかべ」という2つの壁を取り除く必要があったそうです。そこで、平成27年度に条例を改正し、切れ目のない支援を実現するために情報共有ができる環境を整備しました。

また、平成24年度から、子ども達一人ひとりの状況を、学力、体力、生活の観点で調査し把握するステップアップ調査を実施し、見守りや支援を受けている一人ひとりの子どもの変化を把握しています。調査結果は、支援の効果を評価するために活かされ、支援の見直しにも活用されています。

 

箕面市のさらなる願い

高校との情報共有を、市町村単位で行うことが難しく、現在の仕組みでは、中学校を卒業した子どもたちの状況を把握することができないことが課題だといいます。

多くの自治体では、中学校を卒業するまでの子どもたちの情報は一元管理されておらず、支援を必要とする子どもたち全員にリーチすることが困難な状態です。箕面市の事例が、日本中に広がることを期待したいです。

ダイバーシティ経営

2022.01.10文部科学通信掲載

なぜ、ダイバーシティ経営が企業の持続的発展に欠かせないのか ~ダイバーシティ経営の真の価値とは~ というタイトルで、セミナーを実施致しました。その一部をご紹介させていただきます。

202030

昭和女子大学キャリアカレッジでは、2014年から本テーマに向き合い活動を進めています。2014年は女性活躍推進が、成長戦略に位置づけられ、企業における女性活躍推進が本格化した年です。

202030は、安倍前首相が、2012年に世界に向けて発信した宣言で、2020年には、女性管理職比率30%を達成するという目標です。その後、働き方改革関連法が制定され、長時間労働をなくす動きが始まり、女性が出産後も働くことができる環境が整備されつつあります。

世の中は、グラデーションで出来ているので、今日においても、この動きに全く気づいていないリーダーも企業も存在しています。一方、感度の高い企業は、2014年から地道な取り組みを行い、働き方を始め、企業風土の改革を進めています。

日本における女性活躍推進は、ポジティブアクションとしてではなく、労働人口減少対策として本格化しましたが、日本社会に大きな変化をもたらしました。一つは、長時間労働をなくし、ワークライフバランスを重視するという新しい働き方です。もう一つは、女性が出産後に時短で働くことが当たり前になったことです。

ワークライフバランス

2020年に女性管理職比率30%は実現しませんでしたが、女性活躍の取り組みは、共働き社会に向けて着実な変化を遂げる事になりました。その結果、若い男性にとっては、ワークライフバランスは家庭円満の前提条件と考えられ、企業側も、長時間働くことが優秀な社員の証という考え方を手放す必要が出てきました。

先日も、ある企業で入社3年目の研修を実施させていただきましたが、誰もが生産性を高める工夫をしており、無駄な仕事、意味のない時間の過ごし方に対してはとてもシビアな目を持っていることに感銘を受けました。勤勉で意欲の高い優秀な若者は、ワークライフバランスの本当の意味を知っているように見えました。

ダイバーシティ経営

経済産業省は、ダイバーシティ経営を、多様な人材が、その潜在能力を開花させることで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげていく経営と定義しています。文章を読めば、おそらく誰も異論を唱えないとおもいます。しかし、現実はどうでしょうか。

女性活躍推進が進めば、イノベーションが起きるのか。現実は、単純では有りません。ダイバーシティ経営の第1歩は、多様性の尊重と多様な人材の登用です。しかし、これは、あくまでも第1歩です。その先に、2歩、3歩と取り組まなければならないことがあります。

起業家精神に溢れた組織文化

  • 答えのない時代に、立ち止まらず機敏に学習する組織
  • かつてないほど、アジャイルで起業家精神溢れる企業文化

そのような環境があれば、多様な人々が無限の可能性を引き出すことができると言われています。

そのために、心理的安全性、アンコンシャスバイアス、エンゲージメントが欠かせません。

心理的安全性

そのために、心理的安全性は欠かせません。心理的安全性とは、思ったことを口に出せる環境です。こんなことを言ったら、誰かに馬鹿にされるかもしれない等と心配することなく、思ったことを口に出すことができる環境であれば、人は、伸び伸びと自分を出すことが出来ます。イノベーションが生まれやすい組織では、ブレインストーミングも活発です。ブレインストーミングの特徴は、誰もが、アイディアを出すことに貢献しますが、そのアイディアが正解である必要はありません。正解ではないアイディアを出すことが大切なのは、お互いの脳を刺激し合うからです。アイディアを出し続けているうちに、みんなで正解を創造することも可能になります。

アンコンシャスバイアス

一人ひとりの潜在能力を開花させるために、一人ひとりが注意しなければならないのがアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)です。誰もが、気づかないうちに、誰かの能力を潰すような発言をしてしまうということはよくあることです。例えば、「新しいアイディアを生み出すチームを創りたいので、若い人を集めよう」等と言うことがあります。一人ひとりの潜在能力を開花させることに真剣に取り組むグーグルでは、この発言は禁止されています。

なぜだかわかりますか。この発言が、年をとった人たちが、自分には新しいアイディアは出せないと、自分を諦めてしまうからです。もちろん、男性だから○○、女性だから○○も禁句です。

エンゲージメント

エンゲージメントとは、仕事にやりがいを持ち、充実していると感じられる、仕事に対するポジティブな心理状態のことです。エンゲージメントという言葉を世界中に広めたギャロップ社が2017年に行ったエンゲージメント調査で、日本は6%という結果でした。6%の人達しか、仕事に対するポジティブな心理状態にいないという結果です。アメリカは、32%なので、かなりの差があります。

一人ひとりが、潜在的能力を開花させるためには、エンゲージメントが高い状態であることは必須です。エンゲージメントは、4つの視点で高めることが可能です。

  • 目的:何のために仕事をするのか。意味のある仕事だと感じられることが大切です。最近では、パーパス(存在意義)経営という言葉も使われるようになりました。
  • 強みと役割:自分の強みを活かせているか。組織の目的に貢献している実感を持つことと同時に、自分の強みを活かして貢献していることが大切であると言われています。苦手を克服することも大切ですが、人が本当に貢献実感を持てる状態とは、自分の才能を活かし役にたっていて、それを周囲が認めてくれていると実感できる時です。
  • 成長:自分は成長しているか。組織の役に立っていても、成長を感じられないと人は、幸せに感じることはできません。成長意欲が高くないという人でも、マンネリは嫌いなはずです。勿論、同じことに取り組んでいても、自分の意思で技を磨き続けることができますから、成長のための環境は、自ら創るものということもできます。成長することは、①の目的や、②の強みと役割にも繋がっていて、よりよい貢献、より大きな貢献ができるようになる成長を、潜在的には誰もが求めているのかもしれません。
  • 繋がり:人間関係は良好か。イノベーションが生まれやすい環境には、心理的安全性が欠かせません。このため、人間関係においても、トラブルがないというレベルではなく、友人同士のような関係、ラグビーやサッカーの強いチームに見られるような深い信頼関係に支えられた関係が理想だと言われています。

特権という議論

最近では、ダイバーシティ推進において「特権」という言葉を耳にするようになりました。子どもの教育の世界では、よく耳にしていたのですが、ダイバーシティ推進においても、特権という概念を使うと説明が楽になります。特権の議論では、マジョリティは、自分が、下駄を履いていることに気づいていないと指摘します。

最後に

企業のダイバーシティ推進に取り組む際に、最初に行うのが、学校教育で染み付いた画一性を重んじる心を手放すことです。その必要がなくなる日が待ち遠しいです。

人材育成に取り組むリーダーたち

2021.12.27文部科学教育通信掲載

自律型人材を増やし、自律型組織を創るビジョンに賛同してくださる企業と共に、リーダーが育成力を高めるために研修に取り組んでいます。リーダーの皆さんは、約半年かけて、5回の研修で手法を学び、現場で、試行錯誤を通してスキルを磨きます。

 

成人発達理論

成人発達理論では、子どもだけでなく、大人も成長に支援が必要であると述べています。また、年齢が高くなるほど、支援の有無による成長度合いの差は大きくなります。仕事の難易度が上がり、複合的な視点で物事を捉え、判断することが迫られる一方で、過去の成功体験を手放し、新たな視点や行動様式で物事に向き合う必要もあります。クリティカル思考を持つことや、自分自身を俯瞰するためにも、他者の支援が欠かせません。時には、弱音や不安を言葉にすることが許される環境で、本音を口にすることも必要です。

飲みニケーション

コロナ禍で、飲みニケーションの機会が減ったことで、多くのリーダーが育成の機会を失ったと感じているようですが、本当にそうでしょうか。最近の調査では、飲みニケーションはどちらかといえば不要または不要と答えた人が全体の6割を超えたと報告されています。これからは、飲みニケーション以外の場で育成に取り組むことが期待されています。

部下育成において最も大切な力の一つが、フィードバックを提供する力です。気づきを与えることができるフィードバックが提供できなければ、育成を成功させることはできません。

観察のメタ認知

フィードバックは、正しい事実の把握から始まります。部下の様子を観察し、正しく事実を把握した上で、何をフィードバックするのかを考える必要があります。上司は、部下の言動や成果に不満を持つことがあります。しかし、この不満をそのまま、部下に伝えても、気づきを促すことは難しいです。そこで、不満に感じたことを、観察した事実として伝える準備を行う必要があります。

 

私は、何に不満を持っているのか。

それは、部下のどのような言動なのか。

それは、どのような結果なのか。

それは、どのような状況なのか。

不満の原因を理解し、その上で、不満の原因となる事実に目を向けます。事実の中でも、特に注目する必要があるのが、「行動」です。

 

私が不満を持っているのは、部下のどのような行動なのか。

なぜ、その行動が望ましくないのか。

その行動が、どのような結果をもたらしているのか。

理想の行動は、どのような行動なのか。

 

フィードバックは、実際の行動、行動の結果、理想の行動の3点で行うことがポイントです。そのためには、まず、部下の様子を観察し、課題をメタ認知することから始める必要があります。

感情に訴えるコミュニケーション

部下の行動変容につながるフィードバックの使命は、部下に気づきを与えることです。そのためには、部下の感情に訴えるコミュニケーションが期待されます。観察した事実を俯瞰した後は、いかに、その事実を効果的に伝えるかを考える必要があります。

フィードバックの3点セット

実際の行動、行動の結果、理想の行動では、行動の結果が、感情に訴えるコミュニケーションの鍵を握ります。なぜ、その行動が望ましくないのかを実感できるメッセージを考えます。

 

事例:感情に響かないメッセージ

実際の行動

依頼した資料が、締め切りを過ぎても提出されない。何の報告もない。

行動の結果

会議の開催が延期された。

理想の行動

計画的に仕事に取り組み、納期を守る。

納期が遅れる場合には、早めに相談する。

 

事例:感情に響くメッセージ

実際の行動

依頼した資料が、締め切りを過ぎても提出されない。何の報告もない。

行動の結果

資料の準備が遅れたため、予定していた会議が延期になった。複数の部署の関係者が集まる会議だったので、日程調整に時間を要し、会議の開催が2週間遅れてしまった。会議の遅れにより、全体スケジュールの見直しが必要になった。その結果、プロジェクトの納期が迫る中で、残業を強いられるメンバーも出てしまった。

理想の行動

計画的に仕事に取り組み、納期を守る。

納期が遅れる場合には、早めに相談する。

行動変容の気づきにつながる暖かく、鋭いフィードバックを与えることができるリーダーが増えることを期待したいです。

 

褒め貯金

ネガティブなフィードバックをストレートに行うためには、褒め貯金を行うことが大切です。ネガティブなメッセージは、ポジティブなメッセージよりも、3倍大きく心に残ると言われています。このため、3回褒めておくことで、始めて、ネガティブなフィードバックを1回できると言われています。

現在のリーダーの皆さんは、誰からも褒められないで育った世代です。このため、褒められることにも、褒めることにも慣れている人が少ないです。このため、褒めることも、ネガティブなフィードバック同様に、新しいスキルセットとして習得する必要があります。

小さいことでも、日頃から、見つけたら褒める、気づいたら褒めるという習慣を心がけることが大切です。 人は、人柄を褒められるのが一番嬉しいそうです。褒める際には、思いやりがある人、誠実な人、勤勉な人等々 人柄に注目し、具体的な事実を添えて伝えることがポイントです。2番目に嬉しいのが、業績を褒められることです。具体的な成果物や実績などを褒めます。

オランダのシチズンシップ教育ピースフルスクールでは、幼児期から、ポジティブなメッセージを伝える練習をしています。お友だちのよいところを見つけて褒めることは、日常生活の一部になっています。例えば、「今日の人」に選ばれた子どもが、バッチを付けて一日を過ごします。「今日の人」は、その日一日中、みんなから褒め言葉のシャワーを浴びることになります。小さいうちから、このような練習をしておくと、おとなになっても、苦労なく上手に褒めることができるようになるのではないかと思います。

フィードバックの受け止め方

リーダーが育成に取り組み始めると、受け手側にも、フィードバックを正しく、前向きに受け止める力が必要になります。前提として、自分を成長させたいという意思があること、そして、リフレクションの習慣があることが大切です。フィードバックを受け取った後に、気づきを行動変容に繋げるためには、自己内省が必要になります。

なぜ、その行動をしてしまったのか。

自分は、その時何を優先していたのか。

自分は、なぜ大切なことに気づけなかったのか。

この出来ことから自分は何を学べるのか。

同じことを繰り返さないために、何に気をつければよいのか。

自分に問いかけなければ、わからないことがあります。

フィードバックをきっかけに、リフレクションを行い、根本原因を把握することができれば、大きな成長の機会となります。

ものの見方

人材育成に関与すると、課題となる行動の背景にある思考と感情に目を向ける重要性を感じることが多いです。人が行動する際には、その前提に何らかの判断があります。その判断の前提には、ものの見方があります。ものの見方は感情と繋がり、判断を支えています。このため、行動を変えるためには、ものの見方を俯瞰する必要があります。自己成長においても、メタ認知力が大切なのはこのためです。

部下のメタ認知力を高めるリーダーが増えることを願って、人材育成力の向上に貢献して行きたいと思います。

 

子どもの個性を育む学校

2021.12.13文部科学教育通信掲載

子どもの個性を育める環境

先日、ソニー科学教育研究会主催の講演会で2000年にノーベル化学賞を受賞された白川英樹先生のお話を伺う機会がありました。その際に、子どもの個性を育む教育を実現するためには、20人学級が適切であろうという意見をお持ちであることを知りました。ヨーロッパ諸国では、すでに実践されている学級のサイズです。

日本では、約40年ぶりに学級編成の標準が一律引き下げられ、小学校で35人学級が実現することになりました。学級人数をさらに15人減らすのに、後何年かかるのだろうかと考えると気が遠くなります。

子どもの興味関心の多様性

子どもは、大人と違い、自由に自分の意思に基づき行動することが許されます。赤ちゃんが乳母車の中で、空を眺めようと、親の携帯で遊ぼうと、先生に叱られることはありません。その時に、子どもが、何に関心を持つのかに意識を向けると、親は、子どもの個性を学ぶ事ができます。

オランダの幼稚園では、遊びのコーナーが、マルチプルインテリジェンス理論に基づきデザインされていて、一人ひとりの子どもが何に強い関心を持っているのかを先生が見守ることが出来ます。

 

CDプレイヤーとヘッドホーンが用意された 音楽を聞けるコーナー

植物や自然に触れられる お庭のコーナー

言葉のパズルで遊べる電子黒板が用意された 言語コーナー

数や図形で遊べる 算数コーナー

絵や図工ができる 絵画コーナ-

体を動かせる 運動コーナー

静かに本を読んだり、考え事ができる 内省コーナー

 

子どもが、毎日、どのコーナーで遊んでいるのかを記録することで、一人ひとりの子どもの個性を把握することができます。また、いつも同じコーナーで遊んでいる子どもには、違うコーナーで遊んでみることを提案し、色々な世界に触れることを奨励しています。

マルチプルインテリジェンス(MI)理論

マルチプルインテリジェンス(MI)理論は、ハーバード大学教育大学院認知心理学ハワード・ガードナー教授が提唱した理論です。1983年にこの理論が発表されたことで、知能という概念が大きく進歩することになります。

MI理論 8つの知能
①言語的知能 (Verbal – Linguistic)
②論理・数学的知能 (Logical – Mathematical)
③空間的知能 (Visual – Spacial)
④音楽的知能 (Musical)
⑤身体運動的知能 (Bodily – Kinesthetic)
⑥対人的知能 (Interpersonal)
⑦内省的知能 (Intrapersonal)
⑧博物的知能 (Naturalistic)

人間は誰でもこの8つの知能を持って生まれ、どの知能が強いか弱いかという“程度”と“組み合わせ”が一人ひとりの「個性」になります。

従来(現在)の学校教育は、①言語的知能 (Verbal – Linguistic)、②論理・数学的知能 (Logical – Mathematical)だけを知能と捉え、伸ばすことに注力してきました。今までの人間社会がこの2つの能力を職業との関連で要求してきたためです。

学びの扉

マルチプルインテリジェンス理論は、人間の知能と個性を理解する上でとても役立つ理論ですが、学びという視点では、更に重要な理論を提示してくれています。それが、学びの扉(エントリーポイント)という考え方です。

教室における個性・多様性において、学びの扉が最も大切なものではないかと思います。生徒一人ひとりが、同じテーマについて、自分の興味関心の扉から学ぶことを許されるのであれば、どれだけ多くの生徒が、主体的に学びに向かうことができるでしょうか。想像しただけで、ワクワクしてきます。

皆さんは、どの扉から学びたいですか。

6つの「学びの扉(EP)」 

The Aesthetic Window(審美的)

このEP(エントリーポイント)を通して学習者は、テーマや芸術的作品の形や感覚の品質に答える。例えば色、線、表現や絵画の構成、蜂の巣の表面の複雑なパターンや詩の頭韻法や韻律。

The Narrative Window(説話的)

このEPを通して学習者は、テーマや芸術的作品の説話的要素に答える。例えば、絵画の中の描写される伝説、歴史のある時期の出来事のシーン、摩天楼建設の背景の話。

The Logical/Quantitative Window(理論/数量的)

このEPを通して、学習者は、理論的か数字的考察を招く芸術的テーマか作品の様相に応じる。例えば、ある芸術作品の創造にどんな決断がなされたか、自動車の総合的な寸法の計算の問題やミステリーのどの役が本当の悪役かの決定など。

The Foundational Window(根拠的)

このEPを通して学習者は、テーマや芸術的作品によってあげられた、より広い概念や哲学的問題に応じる。例えば微積分学は社会で重要か否か。メタファーは真実を描写するか否か。何故スープの缶が芸術なのか。

The Experiential Window(経験的)

このEPを通して学習者は、手や体を使って実際に何かをすることにより、テーマや芸術作品に応じる。例えば、近所の歴史の劇を演じることや、音楽に合わせた詩を用意すること。

The Interpersonal/Collaborative Window(協働的)

学習者は、協働活動を通して学ぶ。うまく設計されたグループ活動。グループプロジェクト、議論、討議、ロールプレイ活動における学生の特別な、卓越した貢献。

子どもの個性は、とても多様で、何か一つのレンズで図れるものでは有りませんが、マルチプルインテリジェンスや、学びの扉のレンズを持つことで、多様性を共通言語で捉え、教育活動に活かすことができるのではないでしょうか。

脳科学が証明している通り、興味関心を持てないと、人は学ぶことができません。感情が反応しない事柄は、記憶にも残りません。短期記憶でテスト対策は出来ても、生涯に渡り価値のある学びにはつながりません。むしろ、学びに対する間違った思考回路が習慣化してしまい、興味関心を持ち学ぶことができない大人に育つ危険性すらあります。

 

個性を育む機能を持たない学校システム

学校教育が、個性や多様性を育むことが難しい理由は、明確です。学年ごとに先生が教えなければならないことが決まっていて、先生は、学習指導要領で定めらた学習目標を達成するために必要な教育内容を一定の期間内に教える使命を持ちます。一人の先生が、35人一人ひとりのマルチプルインテリジェンスや学びの扉を尊重する環境を整えることは、現状の教育環境では不可能です。

もう一つの障壁は、評価です。テストの点数というわかりやすい評価が当てはめられる成績が、最もわかりやすい個性の定義となります。人間の持つ個性の豊かさは、数値で図ることは難しく、成績に比べると、捉えどころのない評価になってしまいます。その結果、個性は大事で、個性は大切に育まなければならないと誰もが思いながらも、個性を育む教育を実現することができないというのが、今の学校教育の限界なのだと思います。

個性を育む機能を持つ学校システム

個性を育むことに成功しているオランダの小学校では、学年ごとの到達目標はなく、その代わり、小学校卒業時点で試験を行います。そして、小学校卒業の学力を持たない子どもは、卒業しない仕組みになっています。また、定期的に行われるテストは、子どもの発達を測定することを目的としているため、テストの内容も、子どもに合わせて用意されるそうです。100点を取るテストをしてしまうと、その子の発達を正しく測定できないからだそうです。テストの結果は、問題解決に生かされます。子どもの発達の遅れには、2つの原因が考えられます。一つは、子ども自身に発達の課題がある場合、もう一つは、指導に課題がある場合です。この2つの視点で、課題を見定め、課題を解決することで、誰もが、生きるために必要な発達を実現することができます。

学級人数も、過去からの延長ではなく、未来志向で考える必要があるのではないでしょうか。

 

中学生向けリフレクション

2021.11.22文部科学教育通信掲載

プロのプロセス

皆さんは、プロのプロセスというNHKの教育番組をご存知でしょうか。社会で活躍する様々なプロから、情報を扱うテクニンクを学ぶ番組です。

インタビューの仕方や、計画の立て方、プレゼンの仕方など、社会にでると必要になるテクニックを、中学生でも理解できるように教えてくれるプログラムです。

今回、リフレクションが、この番組のテーマに選ばれ、私も、人生出始めて、プロの皆さんと番組制作に関わらせて頂きました。

出演するのは、チョコレートプラネットの長田庄平さんと、松尾駿さんです。

 

プロの仕事

番組制作では、リフレクションのプロとして参加させていただきましたが、この番組制作に関与しているみなさんがプロでした。題材は、私の著書でしたが、中学生向けにわかりやすい内容にしていただきました。私は、指示に従い、パーツの動画の収録を行いましたが、完成版は、パーツがとても上手に組み合わさっていてわかりやすさ、流れや区切りがとても上手に演出されています。また、私自身はお会いすることができませんでしたが、一つひとつの言葉使いについては、学校の先生や教育関係者がアドバイスをしてくださっていたようです。例えば、振り返りに欠かせない「仮説」という言葉は、中学生には分かり難いという理由で、「ねらい」という言葉に変えました。そして、最も凄いのは、出演者の選定です。チョコレートプラネットの長田くんと松尾くんの白熱の演技を思い出すたびに、今でもワクワクが止まりません。収録は、都内にある廃校の教室で行われたのですが、二人の演技があまりにも素晴らしく、そこがまるで劇場の舞台のようでした。私はなぜか舞台に上がり、劇を視聴しているような感覚で、終始その場にいました。

さて、本題の「長田くんと松尾くんがどのような振り返りを行ったのか」を紹介したいと思います。

  • 感想ではなく、振り返り

導入は、松尾くんが、ノートに体育祭の振り返りを書くシーンからです。松尾くんの書いた振り返りを長田くんが読み上げるのですが、そこには、「今年の体育祭はぶわーとなってぐわーとなて キュンでした」と書かれているだけです。長田くんが、「これはやばい感想だ」と松尾くんに伝えます。

こうして、振り返りは、感想とは違うということを明確にします。今回、振り返りがテーマに選ばれた理由として、学校の先生が、生徒によい振り返りを指導するのに苦労しているという背景がありました。振り返りと言いながらも、感想で終わっていることが多いのが現実なのではないでしょうか。

長田くんが、ここで、振り返りの定義を紹介します。「振り返りとは経験を知恵に変えるもの リフレクションだ! しっかり振り返りをして 経験を学びに変えよう」 こうして、松尾くんの体育祭の振り返りはスタートします。

  • テーマを絞る

振り返りでは、テーマを絞ることが大事です。体育祭全体を振り返ると、ぼんやりとした振り返りしかできません。そこで、松尾くんは、自分が担当した体育祭のスローガンを決める係について振り返ることにします。

  • 想定していた結果と実際の結果を明らかにする

結果を明確にする はじめに 想定した結果と実際の結果を書き出します。

松尾くんが、こうなったらいいなと思っていたのは

全校から300以上応募があって/選ばれたスローガンがみんなの合言葉になって/体育祭を盛り上げること

実際の結果は

応募は150ほど/選ばれたスローガンは「全力疾走!体育祭は汗臭い」/しかし評判があまりよくなかった

  • 想定していた結果と実際の結果にギャップに注目!

多くの場合、想定していた結果と実際の結果にはギャップが生じます。こギャップに注目して振り返ることがポイントです。ここからが、振り返りの本番です。

  • 過去の自分がどう考えていたのかを振り返る

計画を振り返る

スローガン募集ポスターを貼って募集し 体育の先生に選んでもらう

その計画を立てたときどんな狙いがあったか振り返る そうすることによって 内面、つまり過去の自分がどう考えていたかわかります。

マツオの狙いは スローガン募集で盛り上がり/掲示板の募集ポスターがみんなの目にとまり/体育の先生に選んでもらったから みんな納得できる

出来事+気持ち で振り返る 過去の自分が見えてきたら、次に経験を振り返ります。

経験を振り返る

ポイントは 出来事とそのときの気持ちをセットで振り返ることです。

気持ち(自分の内面)を、経験と一緒に振り返ることで この先自分がどうしたいかが明確になります。

応募が150あった。 その時の気持ちは もうちょっと来てほしい。

一番くやしかったのは、選ばれたスローガンの評判がイマイチだったこと。

出来事と気持ちを一緒に振り返ることで、未来に向けて どうしたいかが見えてきます。

  • どうしてそうなったのかを考える

理由を考え、法則を見つける 

経験の振り返りを見つめ直して どうしてそうなったのか理由を考えてみましょう。

そうすると自分なりの法則が見えてくるはずです。この法則を見つけることが リフレクションで一番のポイントです。

廊下の掲示板にもポスターを貼ったのに、どうして応募が150通しかこなかったのか。

友だちと一緒に振り返ると発想が広がる

ここで、親友の長田くんが疑問を投げかけてくれました。「掲示板って他にも張り紙があるから 以外と目立たないのでは?」

この問いがヒントとなり、長田くんは、「ポスター以外にも呼びかけをやればよかった」という気づきを得ます。

友だちと一緒にやる振り返ることで、発想が広がります。

  • ポスターは貼る場所も大事
  • 複数の方法でお知らせする
  • 見つけた法則を未来に活かす

どうしてスローガンの評判がイマイチだったのか。

  • みんなのスローガンだったから みんなで選べばよかった
  • みんなに納得してもらうためには 決め方も大事

自分の行動と内面を振り返った松尾くんは、いろいろ改善したいことが見えてきました!

振り返りで見つけた法則を 未来の計画にしっかり活かす。これを繰り返すことで、自分自身やチームがどんどんバージョンアップしていく。これが、振り返りの魅力です。

  • リフレクションを次につなげる

文化祭のスローガン募集プロジェクトを次にやるときには、

  • ポスターは 掲示版だけではなく各教室に貼ろう。
  • 校内放送でもPRしよう。
  • 選ぶ人は先生ではなくて、もっと広げて、みんなに投票してもらおう。

長田くんと松尾くんの振り返り体験から学び、ちょっとしたことの振り返りでも おもしろかった だけでなく、なぜおもしろかったのか?その理由を考えると 次につながるリフレクションができるということを、たくさんの中学生に知って欲しいです!

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