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社会起業大学

2022.02.28文部科学教育通信掲載

社会起業大学は、2010年に設立された日本初の社会起業家育成に特化したソ-シャルビジネススクールです。600人を超える卒業生が日本各地、世界各地で社会起業家として活躍しています。

学長の林浩喜氏は、商社で活躍されてこられたビジネスパーソンで、米国コーネル大学ホテル経営大学院に留学された後、日本初のベーグル専門店『ベーグル&ベーグル』を創業し、世界第4位のベーグル専門店の育てあげた方です。ビジネスど真ん中で活躍されていた林さんは、御自身の経験や知識を社会に還元したいという思いで、社会起業家大学の学長に就任されました。

社会起業大学のミッションは、『ソ-シャルミッションの普及、社会起業家の育成・支援』、ビジョンは、『卒業生が社会起業家精神を持って活躍し、次世代により良いバトンを渡す世界』です。その前提に、『人がもっとも深い喜びを感じるのは、自分の才能を生かして誰かの役に立った時である』 という思想があります。

1月26日に、学長特別対談でリフレクションをテーマに講演を行う機会を頂きました。講演後には、林学長との対談、参加してくださった皆さんとの対話を行いました。

 

社会起業大学と学びの羅針盤2030

リフレクションは、未来を創造する力です。OECDが2003年に発表したVUCA時代を幸せに生きる子どもたちのための敎育に関するガイドラインで、リフレクションは要であると記載されていることを知り、その重要性を広める活動をはじめました。

OECDの敎育に関するガイドラインも、その前提に、持続可能な社会の発展と、人々の幸福があります。OECDは、その後、このガイドラインを改定し『学びの羅針盤2030』を発表していますが、その前提には、社会企業大学のビジョン『卒業生が社会起業家精神を持って活躍し、次世代により良いバトンを渡す世界』ととても共通する部分があります。

学びの羅針盤2030には、生徒エージェンシーという言葉が登場します。生徒は、よりよい社会を創造する主体であるという考え方です。また、教員も、よりよい社会を創造する主体であり、生徒と教員が共によりよい社会を創造する仲間『共同エージェンシー』として、活動していくことを提唱しています。そこには、教える人、学ぶ人という主従関係はありません。子どもも、大人も、社会の一員として、社会をよりよくするために行動することができるからです。

トランスフォメ-ション

学びの羅針盤2030は、よりよい未来を創造する成人を育むために、トランスフォメーションを実現する力を育むことを目指します。

社会人の敎育に携わる中で、ラーニングには、トランザクションナル・ラーニングと、トランスフォメ-ショナル・ラーニングの2種類があると教わりました。知識の習得を目的とした学びが、トランザクソナル・ラーニングで、ものの見方や価値観の転換を伴う学びが、トランスフォメ-ショナル・ラーニングです。従来の学力向上を目指す学習は、トランザクショナル・ラーニングで、社会課題解決力向上を目指す学習は、トランスフォメ-ショナル・ラーニングです。このため、学びの羅針盤2030では、知識、スキル、態度、価値観の4つが学びの領域に含まれます。

学びの羅針盤2030は、よりよい社会・未来の実現に主体的に参画する地球市民を育むことを目指しており、『卒業生が社会起業家精神を持って活躍し、次世代により良いバトンを渡す世界』の実現を目指す社会起業大学のビジョンと「目指す姿」は同じです。

 

ウェルビーイング

学びの羅針盤2030の究極のゴールは、ウェルビーイング(幸福)です。それは、一人ひとりの幸福であり、また、人類の幸福でもあります。気候変動を始めとする地球共通の課題を解決するために、今、世界は、SDGsという共通目標を掲げて、活動を始めています。その取り組みには、国、組織、個人レベルで、濃淡がありますが、2030年のゴールに向けて、世界が共通の目標を掲げ、個人レベルでの参画を実感することができる共通目標の達成に向けた取り組みは、SDGsが初めてなのではないかと思います。そう考えると、SDGsは、学びの羅針盤2030の社会実装と捉えることができます。

 

 

ポジティブ心理学の父と言われているセリグマン博士は、幸福の主観的領域を5つ提示しています。5領域とは,P(Positive emotion,ポジティブ感情),E(Engagement,物事への積極的な関わり),R(Relationship,他者とのよい関係),M(Meaning,人生の意味や意義の自覚),および,A(Accomplishment,達成とそのための努力)のことです。

ポジティブ思考を持ち、よりよい社会を実現するために、信頼できる仲間と共に行動し、自分が社会や人々のために役に立っている事を実感し、社会がよりよくなるという結果自己の貢献を確かめることができれば、人は幸せに生きることができると捉えることができます。

社会起業大学の思想である『人がもっとも深い喜びを感じるのは、自分の才能を生かして誰かの役に立った時である』にも、共通する部分があります。

ウェルビーイングとリフレクション

リフレクションは、ウェルビーイングを実現するための手段の一つです。なぜなら、自分を知ることが、自分を活かす上で、大前提だからです。自分が誰と一緒にいると幸せなのか、自分が何をしている時に幸福を実感するのか、自分は何に貢献したいのか、自分にとって何が大切なのかを知ることで、自らの幸福度を高めることが可能になります。同様に、自分が、幸福を感じられないときはどんな時なのかを理解することで、幸せでない状態にならないように工夫することができます。

社会課題とリフレクション

同じ社会に生きながらも、人の興味関心は多様で、誰もが同じことを課題だと感じる訳ではありません。人が課題を発見するレンズは、自分の大切にしていることと密接に関わっています。敎育問題の解決に貢献したいと考える人も、実現したいテーマは、非認知能力開発、21世紀スキル、体育やスポーツ、プログラミング教育等様々です。

自分のレンズ(センサー)が課題を発見した際には、その瞬間を逃さず、リフレクションです。

なぜ、私はそのことが課題だと思うのか。

私は何を大事にしているから、そう思うのか。

私の願う「ありたい姿」はなにか。

そのために、私にできることは何か。

自分に尋ねてみることで、誰もが、社会を変えるために、今、自分にできることで貢献をする社会が実現するのではないでしょうか。

システムコーチング

2022.02.14文部科学教育通信掲載

皆さんは、システム・コーチングをご存知でしょうか。

通常のコーチングは、1対1で行われますが、システム・コーチングは、チームや組織単位でコーチングを受けるのが特徴です。チーム単位で行うコーチングなので、一般的には、ワークショップ形式でコーチングを受けることになります。

NPOラーニングフォーオールのリーダーと共に、システム・コーチングを受ける機会を得ました。コーチは、約10年前に、システム・コーチングを、日本に導入し、紹介してくれた森川有里さんです。

10年前に、日本で最初に行われたワークショップに私自身も、参加し、システム・コーチングについて学びました。それ以降、チームや組織が課題を抱えた時や、節目となるタイミングで、システム・コーチングを実施することにしています。

 

3つの現実レベル

システム・コーチングでは、3つの現実レベルを大切にしています。

1つ目は、目に見える、誰もが理解できる現実です。私達が、通常、現実という言葉で想像するのは、この現実のレベルです。

2つ目の現実は、ドリーミングです。ドリーミングは、まだ、人々の心の中に存在するものなので、一番目の現実のように目で見ることはできません。しかし、ドリーミングの多くは、時間の経過とともに、現実へと移行していきます。夢は、かなわないこともありますが、明確な願いを持ち、行動し続けることで、未来を変える力となります。

3つ目の現実は、エッセンスと呼ばれるものです。エッセンスは、ドリーミングのように具体的なイメージになっていない、心の奥に存在するものです。例えば、よくわからないけれど、なにかもやもやする、ザワザワする等 感情が先に、その存在を察知するのですが、認知レベルでは、言葉にできないものが、エッセンスレベルの現実です。

ワークショップでは、3つの現実レベルを同時に扱います。このため、コーチのスキルが問われます。

 

神話の起源

今回のワークショップでは、まず、神話の起源を深堀りました。スタートから今日までに起きた主要な出来事を振り返り、その時々に起きた出来事とともに、一人ひとりが、その時何を考え、何を感じていたのか。何に喜び、何に苦しんできたのかを振り返りました。

ラーニングフォーオールは、この10年間成長し続けています。その成長の過程には、いろいろな苦労があり、また、メンバーも新旧混在しているため、入職したタイミングによって、経験も異なります。強いチームでいるためには、そのすべてを全員が共有した状態であることが望ましいと考え、ワークショップを実施しました。

 

現実

私達が現実を創るプロセスは、感情から始まります。論理的思考を大事にしている方には、違和感を覚える意見かもしれません。しかし、この違和感も感情の機能によるものです。感情による選択が、思考に発展し、思考が行動につながることで、現実が現れて来ます。論理的思考を大切にしている人は、論理的に考えるという道を選び、その結果、行動計画が作成され、実行に移されることになります。しかし、多くの場合、私達は、この感情のパートを言葉にすることはなく、また、多くの場合、無意識に行っています。しかし、願いが叶わなかったり、思い通りにならない時には、感情が動き残念な気持ちになります。

 

認知の4点セット

昨年、リフレクションの本を出版し、認知の4点セットを紹介しました。認知の4点セットは、意見、経験、感情、価値観の4点セットです。自分の意見を、意見だけではなく、その背景となる経験、感情、価値観をセットで俯瞰することができるメタ認知のためのツールです。システム・コーチングでは、人と人の間にある関係性に注目を当てるため、感情と価値観レベルでの対話に焦点が当たります。私はなぜそう思うのか。私は何を大切にしているのか。あの人は何を思っているのか。あの人は何を大切にしているのか。私達は何を思っているのか。私達は何を大切にしているのか。私、他者、チームへと、問いが発展しています。

 

実践事例

企業では、例えば、部門間のかべを超え、一丸となって行動したいと考えているリーダーが、真のチームビルディングを実現するために、システム・コーチングを行います。ワークショップ形式で行われるシステム・コーチングの特徴の一つは、場を活用することです。実際に、部屋の中に、製造部、財務部、営業部など、部門のスペースをつくり、その部門のスペースに立って、そこにいる人達が何を考えているのかを想像します。その考えを、声に出してみることで、部門の様子が、その場に再現されます。例えば、製造部門の人は、いつも、良い商品を製造することを最優先していますが、営業部門は、売上を重視します。その結果、営業は製造に、価格競争力を高めるために、コストダウンの要求をすることがありますこのように、異なる価値観が対立をすることで、部門間に亀裂が生まれるということは、とても良くあることです。

こうした対立を、自分の立場だけを主張して、相手が理解しないのが間違っているというスタンスで捉え続けていても、良いチームになることはありません。お互いのニーズを理解した上で、何を優先するのかを一緒に決めて行く必要があります。システム・コーチングを行うことで、異なる部門の人たちが何を大切にしているのかを正しく理解することが、チームや組織を強くします。

 

ワールドワーク・氷山モデル

システム・コーチングは、コーチングを行うプロたちが、繰り返し現れてくるクライアントの悩みの多くが、人や組織との関係性に根付くものだという気付きから生まれたと聴いています。

システム・コーチングには、ワールドワークというアプローチが用いられています。ワールドワークとは、人との関係性の中で、あるいは組織や社会の中で起きている問題や課題を、プロセスワーク(深層心理学)の立場から紐解いて行きます。

システム・コーチングでは、氷山モデルにおける水面下の目に見えない部分を扱います。このため、ワークショップを行うと、どのような社会通念や、カルチャー、価値観などが、現実を創り出しているのかを俯瞰することができます。集団で行うため、一人の気付きが、他者に与える影響も活用できるので、集団全体のメタ認知力も高まって行きます。

 

場の変化

チームや組織に、第3者がコーチとして介入することによって、場に起きる変化は大変興味深いです。変化は、3つの現実レベルで起きるので、コーチは、小さいシグナルを広い、チームに揺さぶりをかける問いを投げかけ、場にゆらぎを起こし、場が自ら、出現したい方向に動いていく事を支援します。シグナルは現実レベルで目に見えるものですが、それ以外のドリーミングやエッセンスは、人々の内面に存在する見えないものです。

私は、システム・コーチングを通して場が変わる体験を何度もしています。その変化は、

一人ひとりの内面に起きる変化と、メンバー同士が相互に影響しあって起きる変化と、メンバー同士の関係性に起きる変化の大きくは3つあります。

 

目に見えないもの

システム・コーチングが扱う領域は、目に見えない現実であり、それは、人々の願いや潜在意識、感情や価値観です。また、目に見えない人と人の繋がりや、場に現れてくるエネルギーなどです。これらはすべて、私達が創り出している世界そのものに存在するものです。ぜひ、皆さんも、目に見えないものにも、意識を向けてみてください。

箕面市の子ども成長見守りシステム

2022.01.24文部科学教育通信掲載

こども庁創設の準備が始まり、こどもを中心に置いた社会づくりの第一歩が始まろうとしています。名称が、こども庁から、こども家庭庁に変更されたことは大変残念ですが、縦割り行政の弊害をなくし、すべての子どもたちの成長と発達を支援する社会を目指すことは、素晴らしいことです。

 

縦割り行政の壁

NPOラーニングフォーオールの活動を通して、子どもの学習支援を行う際にも、省庁や、自治体の部署の壁にぶつかることが多く有りました。例えば、学習支援事業を行う際も、福祉の予算の場合、学校での学習支援が実施できないなど、子どもたちの事情ではなく、大人の事情で物事を推進していかなければなりません。それは、まるで、一人の子どもの一日の暮らしを、福祉と教育で区分するような発想は、人間の営みから見ると、とても不自然な在り方です。また、縦割り行政では、妊娠期、小児期を経て大人になるまで、切れ目のない支援体制を実現することがとても難しいです。

こども家庭庁創立にあたり、子どもを中心に置いた取り組みのベストプラクティスの勉強会が行われています。そこで、ベストプラクティスの代表例である箕面市の「子ども成長見守りシステム」をご紹介したいと思います。

 

貧困の連鎖を断ち切るために

大阪府箕面市の人口13万8千人。そのうち、0から18歳が2万7千人います。箕面市では、貧困の連鎖を断ち切ることを目的とし、生活困窮世帯の子どもに対して支援を行っています。多くの場合、生活困窮世帯の子どもたちに対する支援は、「せめて学校についてこられるように最低限の手当をする」という考え方が一般的のようですが、箕面市は、最低限の手当をするだけでは不十分であると言い切っています。

  • 箕面市の役割認識

箕面市では、課題が健在化している子どもだけを対象に支援を行うのではなく、今、“健全”に見える子どもたちでも、「家庭の貧困」という今後課題を抱える危険をはらむ「環境因子」のある子どもたちに目を向けて、見守り続ける取り組みを行っています。

また、最低限の支援ではなく、社会に出でる選択肢の前に立つ18歳まで、子どもの能力・自信・気概を高いレベルにまで押し上げるために、継続して切れ目のない支援を行うことが大切であると考えています。そして、それは、子どもの義務教育を担い、住民の基礎情報を持つ継続的な組織である市町村だからこそできることだと考えています。

  • 教育と福祉の融合

箕面市では、組織改編を繰り返し、現在では、「子どもに関することはすべて教育委員会で」と、すべての子どもに関連する施策を教育委員会に一元化しています。福祉と教育の役割を明確に切り分けるのが、一般的な考え方なので、とても先進的な取り組みです。教育と福祉が融合することで、子育て支援と母子保健の融合が進み、就学前の子どもを一元化して、幼稚園、保育園、在宅保育のすべての0~5才児を教育委員会で一元的に見ることができる体制を整えることができます。また、その前提として、子どもの貧困の連鎖の根絶は、敎育大綱における方針に位置づけられ、組織全体の重点事項として取り組まれています。

  • こども成長見守り室

平成28の構造改革に合わせて敎育委員会の子育て担当部門に、新たに「子ども成長見守り室」が設置されました。子ども成長見守り室は、子どもに関する市役所内に分散している情報を集約するハブとしての機能を果たします。また、子どもに関する情報を定点観測し、支援の必要な子どもを見つけたり、支援をしている子どもの変化をおとなになるまで追い続けて、随時、必要な支援を行うために、市役所内の司令塔の役割を果たします。

こども成長見守り室が中心となり、市内の小中学校30校が、年2回のシステムの情報更新と、見守りシステム活用会議を実施し、子どもの状況のフィードバックを行うなど、情報共有と連携が進められています。

  • 子どもを支援するためのデータベース

子どもの支援を行うためのデータベースには、①親の経済的困難を想定できる情報、②経済的困窮を要因として発生している現象の2つがあります。

子どもの状況が見えるが根本にある貧困が見えない情報

  • 学力・体力調査結果
  • 生活状況調査結果
  • 日常の行動・衣服などの状況
  • 学校検診・乳幼児検診の結果
  • 虐待に関する通報・対応状況

家庭の困窮は推定できるが子どもの状況が見えない情報

  • 生活保護の受給状況
  • 児童扶養手当の受給状況
  • 保育料算定時の所得状況
  • 給食費の滞納状況
  • 就学援助の受給状況

子ども個人をキーに名寄せをすると、子どもを支援するために必要な情報が明らかになります。

  • 見守りが必要な子どもが見えてくる(経済的困窮)
  • 支援が必要な子どもが見えてくる(経済的困窮と子どもの変化)
  • 支援を受けている子どもの現状が分かる(親の状況と子どもの状況)
  • 支援を受けている子どもの経年変化を追跡できる(子どもの変化と集団の変化)

・子ども成長見守りシステムによる判定

子ども見守りシステムでは、生活困窮判定、学力判定、非認知能力判定の3つの判定を行い、3つの要素を統合して子どもの状態の総合判定を行います。判定は、年に2度行われ、それ以外にも、必要に応じて、個別に判定を行います。

2018年後半の判定では、0歳から18歳の子どものうち、4774人が見守り・支援の対象としてリストアップされ、そのうち462人の小中学生が、重点支援が必要と判定されました。しかし、そのうち116人(25%)は、学校などでは見守りの対象になっておらず、ノーマークの子どもたちだったそうです。

ノーマークの子どもたちは、学校で、低学力であることは認識されていても、特に目立つことがなく、特に気になることがない場合には、「おとなしい子ども」という認識で、学校現場では、特に支援が必要な子どもであることに気づき難いようです。

子ども成長見守りシステムでは、学力偏差値、非認知能力の一部の数値が乱高下している等の異常値を見つけることができるため、学力や気持ちが不安定であることがわかり、学校現場では気づけない、支援の必要な子どもを特定できたそうです。

最近では、政府もDXを奨励していますが、箕面市の子ども成長見守りシステムは、まさに、データ駆動型行政システムのモデルケースだと思いました。

 

  • 個人情報保護条例への対応

子ども成長見守りシステムを実現するためには、個人情報保護条例による「実施機関のかべ」と「収集目的のかべ」という2つの壁を取り除く必要があったそうです。そこで、平成27年度に条例を改正し、切れ目のない支援を実現するために情報共有ができる環境を整備しました。

また、平成24年度から、子ども達一人ひとりの状況を、学力、体力、生活の観点で調査し把握するステップアップ調査を実施し、見守りや支援を受けている一人ひとりの子どもの変化を把握しています。調査結果は、支援の効果を評価するために活かされ、支援の見直しにも活用されています。

 

箕面市のさらなる願い

高校との情報共有を、市町村単位で行うことが難しく、現在の仕組みでは、中学校を卒業した子どもたちの状況を把握することができないことが課題だといいます。

多くの自治体では、中学校を卒業するまでの子どもたちの情報は一元管理されておらず、支援を必要とする子どもたち全員にリーチすることが困難な状態です。箕面市の事例が、日本中に広がることを期待したいです。

ダイバーシティ経営

2022.01.10文部科学通信掲載

なぜ、ダイバーシティ経営が企業の持続的発展に欠かせないのか ~ダイバーシティ経営の真の価値とは~ というタイトルで、セミナーを実施致しました。その一部をご紹介させていただきます。

202030

昭和女子大学キャリアカレッジでは、2014年から本テーマに向き合い活動を進めています。2014年は女性活躍推進が、成長戦略に位置づけられ、企業における女性活躍推進が本格化した年です。

202030は、安倍前首相が、2012年に世界に向けて発信した宣言で、2020年には、女性管理職比率30%を達成するという目標です。その後、働き方改革関連法が制定され、長時間労働をなくす動きが始まり、女性が出産後も働くことができる環境が整備されつつあります。

世の中は、グラデーションで出来ているので、今日においても、この動きに全く気づいていないリーダーも企業も存在しています。一方、感度の高い企業は、2014年から地道な取り組みを行い、働き方を始め、企業風土の改革を進めています。

日本における女性活躍推進は、ポジティブアクションとしてではなく、労働人口減少対策として本格化しましたが、日本社会に大きな変化をもたらしました。一つは、長時間労働をなくし、ワークライフバランスを重視するという新しい働き方です。もう一つは、女性が出産後に時短で働くことが当たり前になったことです。

ワークライフバランス

2020年に女性管理職比率30%は実現しませんでしたが、女性活躍の取り組みは、共働き社会に向けて着実な変化を遂げる事になりました。その結果、若い男性にとっては、ワークライフバランスは家庭円満の前提条件と考えられ、企業側も、長時間働くことが優秀な社員の証という考え方を手放す必要が出てきました。

先日も、ある企業で入社3年目の研修を実施させていただきましたが、誰もが生産性を高める工夫をしており、無駄な仕事、意味のない時間の過ごし方に対してはとてもシビアな目を持っていることに感銘を受けました。勤勉で意欲の高い優秀な若者は、ワークライフバランスの本当の意味を知っているように見えました。

ダイバーシティ経営

経済産業省は、ダイバーシティ経営を、多様な人材が、その潜在能力を開花させることで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげていく経営と定義しています。文章を読めば、おそらく誰も異論を唱えないとおもいます。しかし、現実はどうでしょうか。

女性活躍推進が進めば、イノベーションが起きるのか。現実は、単純では有りません。ダイバーシティ経営の第1歩は、多様性の尊重と多様な人材の登用です。しかし、これは、あくまでも第1歩です。その先に、2歩、3歩と取り組まなければならないことがあります。

起業家精神に溢れた組織文化

  • 答えのない時代に、立ち止まらず機敏に学習する組織
  • かつてないほど、アジャイルで起業家精神溢れる企業文化

そのような環境があれば、多様な人々が無限の可能性を引き出すことができると言われています。

そのために、心理的安全性、アンコンシャスバイアス、エンゲージメントが欠かせません。

心理的安全性

そのために、心理的安全性は欠かせません。心理的安全性とは、思ったことを口に出せる環境です。こんなことを言ったら、誰かに馬鹿にされるかもしれない等と心配することなく、思ったことを口に出すことができる環境であれば、人は、伸び伸びと自分を出すことが出来ます。イノベーションが生まれやすい組織では、ブレインストーミングも活発です。ブレインストーミングの特徴は、誰もが、アイディアを出すことに貢献しますが、そのアイディアが正解である必要はありません。正解ではないアイディアを出すことが大切なのは、お互いの脳を刺激し合うからです。アイディアを出し続けているうちに、みんなで正解を創造することも可能になります。

アンコンシャスバイアス

一人ひとりの潜在能力を開花させるために、一人ひとりが注意しなければならないのがアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)です。誰もが、気づかないうちに、誰かの能力を潰すような発言をしてしまうということはよくあることです。例えば、「新しいアイディアを生み出すチームを創りたいので、若い人を集めよう」等と言うことがあります。一人ひとりの潜在能力を開花させることに真剣に取り組むグーグルでは、この発言は禁止されています。

なぜだかわかりますか。この発言が、年をとった人たちが、自分には新しいアイディアは出せないと、自分を諦めてしまうからです。もちろん、男性だから○○、女性だから○○も禁句です。

エンゲージメント

エンゲージメントとは、仕事にやりがいを持ち、充実していると感じられる、仕事に対するポジティブな心理状態のことです。エンゲージメントという言葉を世界中に広めたギャロップ社が2017年に行ったエンゲージメント調査で、日本は6%という結果でした。6%の人達しか、仕事に対するポジティブな心理状態にいないという結果です。アメリカは、32%なので、かなりの差があります。

一人ひとりが、潜在的能力を開花させるためには、エンゲージメントが高い状態であることは必須です。エンゲージメントは、4つの視点で高めることが可能です。

  • 目的:何のために仕事をするのか。意味のある仕事だと感じられることが大切です。最近では、パーパス(存在意義)経営という言葉も使われるようになりました。
  • 強みと役割:自分の強みを活かせているか。組織の目的に貢献している実感を持つことと同時に、自分の強みを活かして貢献していることが大切であると言われています。苦手を克服することも大切ですが、人が本当に貢献実感を持てる状態とは、自分の才能を活かし役にたっていて、それを周囲が認めてくれていると実感できる時です。
  • 成長:自分は成長しているか。組織の役に立っていても、成長を感じられないと人は、幸せに感じることはできません。成長意欲が高くないという人でも、マンネリは嫌いなはずです。勿論、同じことに取り組んでいても、自分の意思で技を磨き続けることができますから、成長のための環境は、自ら創るものということもできます。成長することは、①の目的や、②の強みと役割にも繋がっていて、よりよい貢献、より大きな貢献ができるようになる成長を、潜在的には誰もが求めているのかもしれません。
  • 繋がり:人間関係は良好か。イノベーションが生まれやすい環境には、心理的安全性が欠かせません。このため、人間関係においても、トラブルがないというレベルではなく、友人同士のような関係、ラグビーやサッカーの強いチームに見られるような深い信頼関係に支えられた関係が理想だと言われています。

特権という議論

最近では、ダイバーシティ推進において「特権」という言葉を耳にするようになりました。子どもの教育の世界では、よく耳にしていたのですが、ダイバーシティ推進においても、特権という概念を使うと説明が楽になります。特権の議論では、マジョリティは、自分が、下駄を履いていることに気づいていないと指摘します。

最後に

企業のダイバーシティ推進に取り組む際に、最初に行うのが、学校教育で染み付いた画一性を重んじる心を手放すことです。その必要がなくなる日が待ち遠しいです。

人材育成に取り組むリーダーたち

2021.12.27文部科学教育通信掲載

自律型人材を増やし、自律型組織を創るビジョンに賛同してくださる企業と共に、リーダーが育成力を高めるために研修に取り組んでいます。リーダーの皆さんは、約半年かけて、5回の研修で手法を学び、現場で、試行錯誤を通してスキルを磨きます。

 

成人発達理論

成人発達理論では、子どもだけでなく、大人も成長に支援が必要であると述べています。また、年齢が高くなるほど、支援の有無による成長度合いの差は大きくなります。仕事の難易度が上がり、複合的な視点で物事を捉え、判断することが迫られる一方で、過去の成功体験を手放し、新たな視点や行動様式で物事に向き合う必要もあります。クリティカル思考を持つことや、自分自身を俯瞰するためにも、他者の支援が欠かせません。時には、弱音や不安を言葉にすることが許される環境で、本音を口にすることも必要です。

飲みニケーション

コロナ禍で、飲みニケーションの機会が減ったことで、多くのリーダーが育成の機会を失ったと感じているようですが、本当にそうでしょうか。最近の調査では、飲みニケーションはどちらかといえば不要または不要と答えた人が全体の6割を超えたと報告されています。これからは、飲みニケーション以外の場で育成に取り組むことが期待されています。

部下育成において最も大切な力の一つが、フィードバックを提供する力です。気づきを与えることができるフィードバックが提供できなければ、育成を成功させることはできません。

観察のメタ認知

フィードバックは、正しい事実の把握から始まります。部下の様子を観察し、正しく事実を把握した上で、何をフィードバックするのかを考える必要があります。上司は、部下の言動や成果に不満を持つことがあります。しかし、この不満をそのまま、部下に伝えても、気づきを促すことは難しいです。そこで、不満に感じたことを、観察した事実として伝える準備を行う必要があります。

 

私は、何に不満を持っているのか。

それは、部下のどのような言動なのか。

それは、どのような結果なのか。

それは、どのような状況なのか。

不満の原因を理解し、その上で、不満の原因となる事実に目を向けます。事実の中でも、特に注目する必要があるのが、「行動」です。

 

私が不満を持っているのは、部下のどのような行動なのか。

なぜ、その行動が望ましくないのか。

その行動が、どのような結果をもたらしているのか。

理想の行動は、どのような行動なのか。

 

フィードバックは、実際の行動、行動の結果、理想の行動の3点で行うことがポイントです。そのためには、まず、部下の様子を観察し、課題をメタ認知することから始める必要があります。

感情に訴えるコミュニケーション

部下の行動変容につながるフィードバックの使命は、部下に気づきを与えることです。そのためには、部下の感情に訴えるコミュニケーションが期待されます。観察した事実を俯瞰した後は、いかに、その事実を効果的に伝えるかを考える必要があります。

フィードバックの3点セット

実際の行動、行動の結果、理想の行動では、行動の結果が、感情に訴えるコミュニケーションの鍵を握ります。なぜ、その行動が望ましくないのかを実感できるメッセージを考えます。

 

事例:感情に響かないメッセージ

実際の行動

依頼した資料が、締め切りを過ぎても提出されない。何の報告もない。

行動の結果

会議の開催が延期された。

理想の行動

計画的に仕事に取り組み、納期を守る。

納期が遅れる場合には、早めに相談する。

 

事例:感情に響くメッセージ

実際の行動

依頼した資料が、締め切りを過ぎても提出されない。何の報告もない。

行動の結果

資料の準備が遅れたため、予定していた会議が延期になった。複数の部署の関係者が集まる会議だったので、日程調整に時間を要し、会議の開催が2週間遅れてしまった。会議の遅れにより、全体スケジュールの見直しが必要になった。その結果、プロジェクトの納期が迫る中で、残業を強いられるメンバーも出てしまった。

理想の行動

計画的に仕事に取り組み、納期を守る。

納期が遅れる場合には、早めに相談する。

行動変容の気づきにつながる暖かく、鋭いフィードバックを与えることができるリーダーが増えることを期待したいです。

 

褒め貯金

ネガティブなフィードバックをストレートに行うためには、褒め貯金を行うことが大切です。ネガティブなメッセージは、ポジティブなメッセージよりも、3倍大きく心に残ると言われています。このため、3回褒めておくことで、始めて、ネガティブなフィードバックを1回できると言われています。

現在のリーダーの皆さんは、誰からも褒められないで育った世代です。このため、褒められることにも、褒めることにも慣れている人が少ないです。このため、褒めることも、ネガティブなフィードバック同様に、新しいスキルセットとして習得する必要があります。

小さいことでも、日頃から、見つけたら褒める、気づいたら褒めるという習慣を心がけることが大切です。 人は、人柄を褒められるのが一番嬉しいそうです。褒める際には、思いやりがある人、誠実な人、勤勉な人等々 人柄に注目し、具体的な事実を添えて伝えることがポイントです。2番目に嬉しいのが、業績を褒められることです。具体的な成果物や実績などを褒めます。

オランダのシチズンシップ教育ピースフルスクールでは、幼児期から、ポジティブなメッセージを伝える練習をしています。お友だちのよいところを見つけて褒めることは、日常生活の一部になっています。例えば、「今日の人」に選ばれた子どもが、バッチを付けて一日を過ごします。「今日の人」は、その日一日中、みんなから褒め言葉のシャワーを浴びることになります。小さいうちから、このような練習をしておくと、おとなになっても、苦労なく上手に褒めることができるようになるのではないかと思います。

フィードバックの受け止め方

リーダーが育成に取り組み始めると、受け手側にも、フィードバックを正しく、前向きに受け止める力が必要になります。前提として、自分を成長させたいという意思があること、そして、リフレクションの習慣があることが大切です。フィードバックを受け取った後に、気づきを行動変容に繋げるためには、自己内省が必要になります。

なぜ、その行動をしてしまったのか。

自分は、その時何を優先していたのか。

自分は、なぜ大切なことに気づけなかったのか。

この出来ことから自分は何を学べるのか。

同じことを繰り返さないために、何に気をつければよいのか。

自分に問いかけなければ、わからないことがあります。

フィードバックをきっかけに、リフレクションを行い、根本原因を把握することができれば、大きな成長の機会となります。

ものの見方

人材育成に関与すると、課題となる行動の背景にある思考と感情に目を向ける重要性を感じることが多いです。人が行動する際には、その前提に何らかの判断があります。その判断の前提には、ものの見方があります。ものの見方は感情と繋がり、判断を支えています。このため、行動を変えるためには、ものの見方を俯瞰する必要があります。自己成長においても、メタ認知力が大切なのはこのためです。

部下のメタ認知力を高めるリーダーが増えることを願って、人材育成力の向上に貢献して行きたいと思います。

 

子どもの個性を育む学校

2021.12.13文部科学教育通信掲載

子どもの個性を育める環境

先日、ソニー科学教育研究会主催の講演会で2000年にノーベル化学賞を受賞された白川英樹先生のお話を伺う機会がありました。その際に、子どもの個性を育む教育を実現するためには、20人学級が適切であろうという意見をお持ちであることを知りました。ヨーロッパ諸国では、すでに実践されている学級のサイズです。

日本では、約40年ぶりに学級編成の標準が一律引き下げられ、小学校で35人学級が実現することになりました。学級人数をさらに15人減らすのに、後何年かかるのだろうかと考えると気が遠くなります。

子どもの興味関心の多様性

子どもは、大人と違い、自由に自分の意思に基づき行動することが許されます。赤ちゃんが乳母車の中で、空を眺めようと、親の携帯で遊ぼうと、先生に叱られることはありません。その時に、子どもが、何に関心を持つのかに意識を向けると、親は、子どもの個性を学ぶ事ができます。

オランダの幼稚園では、遊びのコーナーが、マルチプルインテリジェンス理論に基づきデザインされていて、一人ひとりの子どもが何に強い関心を持っているのかを先生が見守ることが出来ます。

 

CDプレイヤーとヘッドホーンが用意された 音楽を聞けるコーナー

植物や自然に触れられる お庭のコーナー

言葉のパズルで遊べる電子黒板が用意された 言語コーナー

数や図形で遊べる 算数コーナー

絵や図工ができる 絵画コーナ-

体を動かせる 運動コーナー

静かに本を読んだり、考え事ができる 内省コーナー

 

子どもが、毎日、どのコーナーで遊んでいるのかを記録することで、一人ひとりの子どもの個性を把握することができます。また、いつも同じコーナーで遊んでいる子どもには、違うコーナーで遊んでみることを提案し、色々な世界に触れることを奨励しています。

マルチプルインテリジェンス(MI)理論

マルチプルインテリジェンス(MI)理論は、ハーバード大学教育大学院認知心理学ハワード・ガードナー教授が提唱した理論です。1983年にこの理論が発表されたことで、知能という概念が大きく進歩することになります。

MI理論 8つの知能
①言語的知能 (Verbal – Linguistic)
②論理・数学的知能 (Logical – Mathematical)
③空間的知能 (Visual – Spacial)
④音楽的知能 (Musical)
⑤身体運動的知能 (Bodily – Kinesthetic)
⑥対人的知能 (Interpersonal)
⑦内省的知能 (Intrapersonal)
⑧博物的知能 (Naturalistic)

人間は誰でもこの8つの知能を持って生まれ、どの知能が強いか弱いかという“程度”と“組み合わせ”が一人ひとりの「個性」になります。

従来(現在)の学校教育は、①言語的知能 (Verbal – Linguistic)、②論理・数学的知能 (Logical – Mathematical)だけを知能と捉え、伸ばすことに注力してきました。今までの人間社会がこの2つの能力を職業との関連で要求してきたためです。

学びの扉

マルチプルインテリジェンス理論は、人間の知能と個性を理解する上でとても役立つ理論ですが、学びという視点では、更に重要な理論を提示してくれています。それが、学びの扉(エントリーポイント)という考え方です。

教室における個性・多様性において、学びの扉が最も大切なものではないかと思います。生徒一人ひとりが、同じテーマについて、自分の興味関心の扉から学ぶことを許されるのであれば、どれだけ多くの生徒が、主体的に学びに向かうことができるでしょうか。想像しただけで、ワクワクしてきます。

皆さんは、どの扉から学びたいですか。

6つの「学びの扉(EP)」 

The Aesthetic Window(審美的)

このEP(エントリーポイント)を通して学習者は、テーマや芸術的作品の形や感覚の品質に答える。例えば色、線、表現や絵画の構成、蜂の巣の表面の複雑なパターンや詩の頭韻法や韻律。

The Narrative Window(説話的)

このEPを通して学習者は、テーマや芸術的作品の説話的要素に答える。例えば、絵画の中の描写される伝説、歴史のある時期の出来事のシーン、摩天楼建設の背景の話。

The Logical/Quantitative Window(理論/数量的)

このEPを通して、学習者は、理論的か数字的考察を招く芸術的テーマか作品の様相に応じる。例えば、ある芸術作品の創造にどんな決断がなされたか、自動車の総合的な寸法の計算の問題やミステリーのどの役が本当の悪役かの決定など。

The Foundational Window(根拠的)

このEPを通して学習者は、テーマや芸術的作品によってあげられた、より広い概念や哲学的問題に応じる。例えば微積分学は社会で重要か否か。メタファーは真実を描写するか否か。何故スープの缶が芸術なのか。

The Experiential Window(経験的)

このEPを通して学習者は、手や体を使って実際に何かをすることにより、テーマや芸術作品に応じる。例えば、近所の歴史の劇を演じることや、音楽に合わせた詩を用意すること。

The Interpersonal/Collaborative Window(協働的)

学習者は、協働活動を通して学ぶ。うまく設計されたグループ活動。グループプロジェクト、議論、討議、ロールプレイ活動における学生の特別な、卓越した貢献。

子どもの個性は、とても多様で、何か一つのレンズで図れるものでは有りませんが、マルチプルインテリジェンスや、学びの扉のレンズを持つことで、多様性を共通言語で捉え、教育活動に活かすことができるのではないでしょうか。

脳科学が証明している通り、興味関心を持てないと、人は学ぶことができません。感情が反応しない事柄は、記憶にも残りません。短期記憶でテスト対策は出来ても、生涯に渡り価値のある学びにはつながりません。むしろ、学びに対する間違った思考回路が習慣化してしまい、興味関心を持ち学ぶことができない大人に育つ危険性すらあります。

 

個性を育む機能を持たない学校システム

学校教育が、個性や多様性を育むことが難しい理由は、明確です。学年ごとに先生が教えなければならないことが決まっていて、先生は、学習指導要領で定めらた学習目標を達成するために必要な教育内容を一定の期間内に教える使命を持ちます。一人の先生が、35人一人ひとりのマルチプルインテリジェンスや学びの扉を尊重する環境を整えることは、現状の教育環境では不可能です。

もう一つの障壁は、評価です。テストの点数というわかりやすい評価が当てはめられる成績が、最もわかりやすい個性の定義となります。人間の持つ個性の豊かさは、数値で図ることは難しく、成績に比べると、捉えどころのない評価になってしまいます。その結果、個性は大事で、個性は大切に育まなければならないと誰もが思いながらも、個性を育む教育を実現することができないというのが、今の学校教育の限界なのだと思います。

個性を育む機能を持つ学校システム

個性を育むことに成功しているオランダの小学校では、学年ごとの到達目標はなく、その代わり、小学校卒業時点で試験を行います。そして、小学校卒業の学力を持たない子どもは、卒業しない仕組みになっています。また、定期的に行われるテストは、子どもの発達を測定することを目的としているため、テストの内容も、子どもに合わせて用意されるそうです。100点を取るテストをしてしまうと、その子の発達を正しく測定できないからだそうです。テストの結果は、問題解決に生かされます。子どもの発達の遅れには、2つの原因が考えられます。一つは、子ども自身に発達の課題がある場合、もう一つは、指導に課題がある場合です。この2つの視点で、課題を見定め、課題を解決することで、誰もが、生きるために必要な発達を実現することができます。

学級人数も、過去からの延長ではなく、未来志向で考える必要があるのではないでしょうか。

 

中学生向けリフレクション

2021.11.22文部科学教育通信掲載

プロのプロセス

皆さんは、プロのプロセスというNHKの教育番組をご存知でしょうか。社会で活躍する様々なプロから、情報を扱うテクニンクを学ぶ番組です。

インタビューの仕方や、計画の立て方、プレゼンの仕方など、社会にでると必要になるテクニックを、中学生でも理解できるように教えてくれるプログラムです。

今回、リフレクションが、この番組のテーマに選ばれ、私も、人生出始めて、プロの皆さんと番組制作に関わらせて頂きました。

出演するのは、チョコレートプラネットの長田庄平さんと、松尾駿さんです。

 

プロの仕事

番組制作では、リフレクションのプロとして参加させていただきましたが、この番組制作に関与しているみなさんがプロでした。題材は、私の著書でしたが、中学生向けにわかりやすい内容にしていただきました。私は、指示に従い、パーツの動画の収録を行いましたが、完成版は、パーツがとても上手に組み合わさっていてわかりやすさ、流れや区切りがとても上手に演出されています。また、私自身はお会いすることができませんでしたが、一つひとつの言葉使いについては、学校の先生や教育関係者がアドバイスをしてくださっていたようです。例えば、振り返りに欠かせない「仮説」という言葉は、中学生には分かり難いという理由で、「ねらい」という言葉に変えました。そして、最も凄いのは、出演者の選定です。チョコレートプラネットの長田くんと松尾くんの白熱の演技を思い出すたびに、今でもワクワクが止まりません。収録は、都内にある廃校の教室で行われたのですが、二人の演技があまりにも素晴らしく、そこがまるで劇場の舞台のようでした。私はなぜか舞台に上がり、劇を視聴しているような感覚で、終始その場にいました。

さて、本題の「長田くんと松尾くんがどのような振り返りを行ったのか」を紹介したいと思います。

  • 感想ではなく、振り返り

導入は、松尾くんが、ノートに体育祭の振り返りを書くシーンからです。松尾くんの書いた振り返りを長田くんが読み上げるのですが、そこには、「今年の体育祭はぶわーとなってぐわーとなて キュンでした」と書かれているだけです。長田くんが、「これはやばい感想だ」と松尾くんに伝えます。

こうして、振り返りは、感想とは違うということを明確にします。今回、振り返りがテーマに選ばれた理由として、学校の先生が、生徒によい振り返りを指導するのに苦労しているという背景がありました。振り返りと言いながらも、感想で終わっていることが多いのが現実なのではないでしょうか。

長田くんが、ここで、振り返りの定義を紹介します。「振り返りとは経験を知恵に変えるもの リフレクションだ! しっかり振り返りをして 経験を学びに変えよう」 こうして、松尾くんの体育祭の振り返りはスタートします。

  • テーマを絞る

振り返りでは、テーマを絞ることが大事です。体育祭全体を振り返ると、ぼんやりとした振り返りしかできません。そこで、松尾くんは、自分が担当した体育祭のスローガンを決める係について振り返ることにします。

  • 想定していた結果と実際の結果を明らかにする

結果を明確にする はじめに 想定した結果と実際の結果を書き出します。

松尾くんが、こうなったらいいなと思っていたのは

全校から300以上応募があって/選ばれたスローガンがみんなの合言葉になって/体育祭を盛り上げること

実際の結果は

応募は150ほど/選ばれたスローガンは「全力疾走!体育祭は汗臭い」/しかし評判があまりよくなかった

  • 想定していた結果と実際の結果にギャップに注目!

多くの場合、想定していた結果と実際の結果にはギャップが生じます。こギャップに注目して振り返ることがポイントです。ここからが、振り返りの本番です。

  • 過去の自分がどう考えていたのかを振り返る

計画を振り返る

スローガン募集ポスターを貼って募集し 体育の先生に選んでもらう

その計画を立てたときどんな狙いがあったか振り返る そうすることによって 内面、つまり過去の自分がどう考えていたかわかります。

マツオの狙いは スローガン募集で盛り上がり/掲示板の募集ポスターがみんなの目にとまり/体育の先生に選んでもらったから みんな納得できる

出来事+気持ち で振り返る 過去の自分が見えてきたら、次に経験を振り返ります。

経験を振り返る

ポイントは 出来事とそのときの気持ちをセットで振り返ることです。

気持ち(自分の内面)を、経験と一緒に振り返ることで この先自分がどうしたいかが明確になります。

応募が150あった。 その時の気持ちは もうちょっと来てほしい。

一番くやしかったのは、選ばれたスローガンの評判がイマイチだったこと。

出来事と気持ちを一緒に振り返ることで、未来に向けて どうしたいかが見えてきます。

  • どうしてそうなったのかを考える

理由を考え、法則を見つける 

経験の振り返りを見つめ直して どうしてそうなったのか理由を考えてみましょう。

そうすると自分なりの法則が見えてくるはずです。この法則を見つけることが リフレクションで一番のポイントです。

廊下の掲示板にもポスターを貼ったのに、どうして応募が150通しかこなかったのか。

友だちと一緒に振り返ると発想が広がる

ここで、親友の長田くんが疑問を投げかけてくれました。「掲示板って他にも張り紙があるから 以外と目立たないのでは?」

この問いがヒントとなり、長田くんは、「ポスター以外にも呼びかけをやればよかった」という気づきを得ます。

友だちと一緒にやる振り返ることで、発想が広がります。

  • ポスターは貼る場所も大事
  • 複数の方法でお知らせする
  • 見つけた法則を未来に活かす

どうしてスローガンの評判がイマイチだったのか。

  • みんなのスローガンだったから みんなで選べばよかった
  • みんなに納得してもらうためには 決め方も大事

自分の行動と内面を振り返った松尾くんは、いろいろ改善したいことが見えてきました!

振り返りで見つけた法則を 未来の計画にしっかり活かす。これを繰り返すことで、自分自身やチームがどんどんバージョンアップしていく。これが、振り返りの魅力です。

  • リフレクションを次につなげる

文化祭のスローガン募集プロジェクトを次にやるときには、

  • ポスターは 掲示版だけではなく各教室に貼ろう。
  • 校内放送でもPRしよう。
  • 選ぶ人は先生ではなくて、もっと広げて、みんなに投票してもらおう。

長田くんと松尾くんの振り返り体験から学び、ちょっとしたことの振り返りでも おもしろかった だけでなく、なぜおもしろかったのか?その理由を考えると 次につながるリフレクションができるということを、たくさんの中学生に知って欲しいです!

発達障害を持つ子どもたち

2021.10.25 文部科学教育通信掲載

発達わんぱく会というNPO法人を立ち上げ、理事長として活躍されている小田知宏氏との出会いがあり、現在、発達障害を持つ子どもたちの発達のために、社会に何ができるのかについて議論を重ねています。

早期療育の機会

発達障害を持つ子どもたちは、全体の6.5%ですが、その多くは、早期療育を受けないまま、幼児期を過ごし小学校に入学します。早期療育を受けていない子どもたちの中には、親が、子どもの個性を理解し、子育ての中で療育の考え方を取り入れている場合もあります。しかし、発達障害を持つ子どもたちの多くは、早期療育の機会を得ず、幼児期を終えています。私は、この議論に参画し、早期療育が9割近くの発達障害を持つ子どもたちに届けられていないという事実に衝撃を受けました。

なぜ、そうなのか

発達障害の有無については、1歳半検診の段階で、診断可能です。しかし、検診で、保護者に、発達障害に触れられるのは、親が、その事に気づいていて、親から質問が出る時のみです。このため、多くの親は、1歳半検診で、子どもの発達障害のことを知らされることなく、子育てを行っています。その理由は、保護者が、発達障害を知ることで不安になってしまうからなのだそうです。

子ども不在

いつも、そう思うのですが、教育の議論は、子ども不在になることが多いです。1歳半検診で子どもの状況を保護者に伝えない方がよいという考えも、子ども不在のものです。子どもの脳は、私達の想像を超えるスピードで発達します。特に、五感(視る、聴く、触る、嗅ぐ、味わう)の脳は、3歳頃までに大人と同じ位まで発達します。この時期に、子どもに適した発達環境を用意してあげることで、発達障害を持つ子どもたちも、自分に必要な発達を苦労なく実現することが出来ます。1歳半の子どもには、療育の必要性を親に訴える力はありませんが、もし、子どもにその力があったなら「自分の一生の事を考えた時に、今が一番効率的に発達できるのだから、この時期に療育を受けさせてほしい」そう言うに違いありません。しかし、多くの子どもたちは、療育を受けず、幼稚園、小学校への進み、集団生活の中でその特性が健在化した時に始めて、自分の個性にあった学びの環境の必要性に気づくことになります。

 子育ての専門性

この議論をしながら、改めて、自分の子育てを振り返っても、素人だったなと反省することばかりです。私達は、誰からも、子育てについて教わることなく、大人になると親になります。常に、手探りで、アクションラーニングしながら、人間を大人に育て上げるのですから、とてもリスキーな話です。私も、幼児期の脳の発達について教わったのは、子育てを終えた後でした。日本には、「三つ子の魂百まで」という言葉があるので、昔の人の智慧はすごいと改めて驚いた記憶があります。核家族化し、子育ての先輩が近くにいない子育てが当たり前になった今日、誰もが親になる前に、子育ての基礎知識を持つことができるとよいのではないかと思います。

すべての子どもの発達の遅れ

発達障害の子どもたちの発達の機会についての議論を進める中で、今、すべての子どもたちの発達に遅れが出始めているという話題が出ました。宮城県の小学校1年生の体力・運動能力の経年変化を見ると、子どもたちの50メートル走のタイムは年々下がり続けていて、昭和57年から平成24年の10年間に、1秒の差が出ています。また、直近では、英ガーディアンが、ブラウン大学の研究結果を引用し、「パンデミック以前に生まれた3ヶ月~3歳の幼児の平均IQは100前後だった一方、パンデミック期間に生まれた幼児の平均IQは78だった」と報告しています。(プレジデント・オンライン2021.9.6) パンデミックにより、子どもたちが、外で遊ぶことや、親以外のいろいろな人、もの、出来事に出会う機会が減り、脳が発達する機会を奪われてしまっているのだろうと想像します。

就学前教育機関に対する予算

世界との比較でみると、日本の就学前教育に対する予算は圧倒的に低く、このテーマに対する国の優先度の違いに驚きます。【図1】子育ての専門知識が広がらない背景にもなっていると思います。ノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学の労働経済学者、ジェームズ・J・ヘックマンは、「ペリー就学前プロジェクト」の結果を踏まえて、就学前教育の重要性を説いています。日本では、共働き社会への移行が進む中で、家族の子育てを支える社会への移行も不可欠です。就学前教育に対する予算が増えることを期待したいです。

  • ありたい姿についての仮説

議論を通して作成した「ありたい姿」は以下の通りです。

  • 社会全体が、幼児期の子どもの発達について基礎となる知識を持ち、子どもの個性にあった発達環境を、すべての子どもが得られるようになる。(無知や偏見がなくなる)
  • 親も安心して、幼児期の子どもの発達に向きあえるようになる。(親の安心)
  • 専門家も、子どもの個性について、親とオープンに話せるようになる。(専門知識の活用)
  • 発達障害を持つ子どもも健常児も、すべての子どもが自分の個性に合った発達の機会を得ることができる。
  • 国の支援/予算が充実する。
  • セオリーオブチェンについての仮説

社会課題を解決するために使用されるセオリーオブチェンジに当てはめて考えていました。

ステップ1:誰の課題なのか

ステップ2:どのようなニーズが満たされていないことが課題なのか

ステップ3:なぜ、ニーズが満たされていないのか、この課題が存在する背景はなにか

ステップ4:どのような課題に取り組むのか

このフレームワークを活用すると、人間を中心に、課題を再整理することができます。

 

なぜこうなのだろうか

多様なステイクホルダーと「なぜこうなのだろうか」について議論を始めています。

課題が生まれる/存在する理由

  • 専門家が不足している。
  • 親に専門性がない。
  • 発達障害に対する無知と偏見がある。
  • インスタグラムが親の教科書になっている。
  • 幼児教育における国・行政の予算が圧倒的に低い。
  • 親、子育て支援者、その関係性等、大人のニーズが優先され、子どものニーズが後回しになる。
  • 子どものためにという思いと、実際の行動に乖離があることに、気づけない。

皆さんに尋ねている問い

  • どのような社会通念や人々のもの見方が、この現実を支えていると思いますか。
  • この現実を創り出している「システム」の関係者はだれでしょうか。(例:子ども、親、・・・・・・)

 

まだ、答えは見えていませんが、引き続き、議論を続けていこうと思います。皆さんは、どうお考えになりますか。

学習する学校

2021.09.27文部科学通信掲載

最近、学校教育の世界で、学習する学校という言葉をよく耳にするようになりました。8月に開催された「未来の先生フォーラム2021」においても、学習する学校が紹介されていました。

 

学習する学校は、マサチューセッツ工科大学(MIT)経営大学院上級講師ピーター・センゲ氏が、その著書 『学習する学校』(英治出版)で紹介した学校のための組織論です。今日では、世界中の学校で実践されています。

 

ピーター・センゲ氏の著書では、『学習する組織 システムで未来を創造する』(英治出版)の方が有名で、この本は、世界100万部を突破し、ビジネス界に一大ムーブメントを巻き起こしました。海外では、1990年代に多くの企業や団体が、その導入を進め、GEのジャック・ウェルチ氏が、企業変革を推進する際に、学習する組織論を実践したことは、ビジネス界ではよく知られています。

 

学習する組織論

学習する学校という言葉を初めて聞かれる方は、学校が学習する場なのは当たり前なのに、なぜ、改めて学習する学校という言葉を使うのだろうという疑問を持たれる方がいるかも知れません。そこで、学習する組織論の特徴についてご紹介してみたいと思います。

 

学習する組織とは、起こりうる最良の未来を実現する組織です。起こりうる最良の未来を実現するためには、2つのことが必要です。組織が最良の未来が何かを知っていること、そして、もう一つは、そこに向かう力を、組織の構成員が持っていることです。実は、学習する組織になるということは、それほど簡単なことではないということを、皆さんもお解りいただけると思います。日本企業の多くも、バブル崩壊後の2000年代に、その導入を試みましたが、そのほとんどは、失敗に終わっています。

 

学習する組織になるために

学習する組織になるために必要なこと、それは、5つの規律だとピーター・センゲ氏は言います。

1)メンタルモデル (認知の4点セット)
「メンタルモデル」とは、マインドセットやパラダイムを含め、それぞれの人がもつ「世の中の人やものごとに関する前提」である。自らのメンタルモデルとその影響に注意を払い、うまくいかないときには外にその原因を求めるのではなく、自らのメンタルモデルの欠陥を探求する。

 

2)チーム学習/ダイアログ 対話
「チーム学習」とは、チーム・組織内外の人たちとの対話を通じて、自分たちのメンタルモデルや問題の全体像を探求し、関係者らの意図あわせを行うプロセスである。中でも、「本音で腹を割って話す」ことに主眼を置き、集団で気づきの状態を高めて真の問題要因や目的を探求する一連の手法を「ダイアログ」という。

 

3)システム思考
「システム思考」とは、ものごとを一連の要素のつながりとして捉え、そのつながりの質や相互作用に着目するものの見方である。しばしば、全体最適化や複雑な問題解決への手法としても応用され、「生きているシステム」の考え方の根幹をなす考えでもある。

 

4)パーソナルマスタリー 動機の源、クリエイティブテンション
「パーソナルマスタリー」とは、自分が「どのようにありたいのか」 「何を創り出したいのか」について明確なビジョンを持ちながら、ビジョンと現実との間の緊張関係を、創造的な力に変えて、内発的な動機を築くプロセスである。

 

5)共有ビジョン
「共有ビジョン」とは、構成員それぞれのビジョンを重ね合わせて、組織として共有・浸透するビジョンを創り出すプロセスである。ひとたび、ビジョンが共有されれば、それが組織の行動、成果、学習の指針をコンパスのように示す。

 

15年前に、この5つの規律に出会った時には、私自身、なぜ、この5つなのかが分かりませんでした。しかし、実践を繰り返す中で、今では、この5つの規律の一つでも欠けていると、集団として最良の未来を実現することは不可能だという確信に至っています。

 

本日のテーマは、学校組織ですが、世界では、持続可能な発展を遂げている企業、行政、非営利組織、国すべてに、学習する組織論が導入されていると言っても過言ではありません。

 

組織論から見た学校

企業の組織論からみた学校は、「組織ではない」というのが、初めて学校組織を分析した際の率直な感想でした。

学習する組織では、組織を眺める際にも、システム思考を応用します。システムは、目的と要素と要素同士のつながりの3つで構成されています。学校には、学校の目的があり、児童・生徒、保護者、先生、管理職、地域住民、教育委員会、文科省、(メディア)等の様々な要素があり、その要素同士が繋がることで、学校が、その存在目的を実現するのが、「組織である」という意味です。

企業組織を例にとれば、とてもわかりやすいと思います。企業には、その存在理由があり、サービスや製品をお客様に提供しています。企業には、社員、管理職、経営者がいて、その先にはお客様、取引先、株主、社会があります。これらのステイクホルダー全てに対して、その役割を果たしていないと、企業は存在することができません。誰かが不満を抱えている状態は、長期間継続出来ない仕組みになっています。

学校はどうでしょうか。児童・生徒、親、先生、管理職は、同じ目的を共有しているのでしょうか。学校と教育委員会、教育委員会と文科省は、同じ目的を共有しているのでしょうか。学校と地域社会はどうでしょうか。残念ながら、今日の学校に対するものの見方は様々で、その目的に対しても、統一見解は存在しないのではないかと思います。

学習する組織の規律 共有ビジョン、対話、システム思考は、学校という組織(コミュニティ)には、存在しません。

 

共同エージェンシー

OECD学びの羅針盤2030は、共同エージェンシーの実践を提唱しています。これは、学習する学校を前提とした考え方です。共同エージェンシーの前提には、生徒の主体性があります。先生や親、社会が、生徒は、よりよい未来を創造する主体であると捉えることが、共同エージェンシーの前提です。また、生徒と協働する先生も、エージェンシーであることが期待されます。一人の人間として、一人の先生として、エンパワーされた(権限や力を与えられた)状態であることが、その前提です。先生と生徒は、立場は違いますが、協働する際には、共に学習者であるという姿勢で、フラットであることが期待されます。

学校教育を支えるすべての関係者が、この前提で合意した時に、初めて、学習する学校も、共同エージェンシーも、本物になります。

 

どこから始める?

学習する学校づくりには、対話が欠かせません。生徒と先生、先生同士、先生と管理職、学校と教育委員会、教育委員会と文科省、社会と学校、親子、親と先生、親と学校 立場の違う人たちが対話を通して相互理解を深めることができれば、学習する学校を実現することができます。また、その中で、願いやありたい姿を共有していくことがとても大事です。このような対話を経て、関係者すべてが、ありたい姿を具体的にイメージすることが出来たら、学習する学校としての一歩を踏み出す事ができます。

対話では、意見の交換にとどまらず、夫々の経験や気持ち、大切にしている価値観まで共有することが鍵を握ります。認知の4点セット(①自分の考え、②考えの背景にある経験、③気持ち、④考えの背景にある判断の尺度)を伝え、聴き合う対話から始めてみてはいかがでしょうか。

1on1 活用術 

2021.09.13文部科学教育通信掲載

リフレクションの活かし方として、1on1活用術について、あるセミナーで講演をさせていただきました。その内容を紹介したいと思います。

1on1

企業では、部下育成の新しい形として1on1という取り組みが始まっています。1on1

は,上司と部下の1対1の面談のことです。これまでも、上司と部下の面談はありましたが、これまでの面談は、上司が部下に指示を行う、進捗管理を行う、評価を伝えるなど、上司のための面談という位置づけでした。これに対して、1on1は、部下のための面談と言われており、部下が、自分のために上司の時間を使う場と考えられています。

セミナーでは、4つの視点で、1on1の質を高める方法をご紹介しました。

はじまりは、信頼関係から

今、職場で期待される人間関係のレベルに変化が見られます。

これまでの人間関係

レベル1

単なる業務上の役割や規則に基づいて、監督・管理したり、サービスを提供したりする関係。大半の「程々の距離感を保った」支援関係

これからの人間関係

レベル2

友人同士や有能なチームに見られるような、個人的で、互いに助け合い、信頼し合う関係

『謙虚なリーダーシップ/エドガー・H・シャイン,ピーター・A・シャイン(英治出版/2020))より引用

VUCA時代を生き抜く組織は、これまで以上に強いチーム力が求められることになります。その前提として、人間関係も、変わる必要があります。1on1の習慣も、新しい人間関係のレベルを期待しています。これまでは、仕事以外の話を職場でしない方がよい、仕事とプライベートを切り分けた方がよい、という考えが常識でした。しかし、これからは、職場でもプライベートの話をしてもよいことになります。また、これまでは、職場で、「気持ち」には言及しないというのが常識でしたが、今日では、「気持ち」を言葉にすることができる心理的安全性が大事であると言われるようになりました。

認知の4点セット【図】を活用した対話と傾聴は、レベル2の人間関係に欠かせません。自分が何を考えているのかだけではなく、その背景にある経験や感情、そして、大切にしている価値観やものの見方まで、相互理解することができるので、人との距離が縮まります。

また、多くの人々は、人の話を聴く際に、意見の背景にある経験、感情、価値観に意識を向けていません。この時、多くの人は、無意識に、人の意見に、自分の経験、感情、価値観を当てはめて、自分の解釈を加えて、相手の話を理解したと思い込んでいます。このため、実は、相手の話を本当に理解している確率はとても低いです。

 

自分ごと化の連鎖

VUCA時代には、自律型人材の存在が欠かせません。自ら定めた目的に対して主体的に取り組むことができる自律型人材は、たとえ、それが、会社や組織から与えられたミッションであったとしても、行動に移す前に、「自分はなぜ、そのことに取り組むのか」と自分に問いかけます。その結果、与えられたミッションも、自分ごと化することが可能になります。

1on1を、部下の主体性を引き出す機会にするために、オススメなのが、ビジョン語りです。正しくビジョンを伝えることができれば、ビジョンは、自分ごと化の連鎖を生む力を持ちます。事例をご覧いただければ、その効果は、一目瞭然です。【図:ビジョンの伝え方】

自身のビジョンを語った後は、部下のビジョンを引き出します。その際にも、認知の4点セットを活用することができます。「何に取り組みたいのか。何を実現したいのか」やりたいことを尋ねた後に、なぜ、そうなのかを、経験、感情、価値観レベルで質問することで、部下が、リフレクションを通して、自分がやりたいことを明確にし、自分ごと化させることが可能になります。

 

リフレクションの促進

リフレクションでは、自分を知り、課題を直視し、ありたい姿を明確にし、ありたい姿に向かい行動する自分をメタ認知すること、そして、経験から学ぶことを支援します。この一連のプロセスを、自分一人で行うことがとても難しく、伴走者がいることは、とても心強いです。特に、自分のものの見方が、自分を縛り付けている時に、そのことに自分自身で気づくことは容易ではありません。

経験から学ぶ振り返りでは、得たい結果に対して、実際の結果を振り返ります。その際に、アクションの前提となる仮説と、経験を通して得た智慧(新たな仮説)を明確にする際に、他者からの問いかけは、とてもパワフルなものです。また、経験そのものを意味づける際にも、すでに、自分のものの見方が、経験の捉え方を限定してしまっているので、他者のレンズが、そこに加わることで、経験からより多くの学びを得ることができるはずです。

 

多様性の心得

最後にお伝えしたのは、多様性の包摂と無意識の偏見についてです。

「私と違うあなたを尊重します」という在り方は、多様性を包摂している姿ではありません。この在り方は、「私を基準に、あなたが違うことを尊重する」という考えが前提としており、自分は多様性ではなく、相手が多様性であるというものの見方を表しています。多様性を包摂するという場合には、自分も多様性の一部であり、あなたも多様性の一部であるというものの見方が大切になります。

部下育成においても、この考え方が大切だと言われています。その理由は、私達は、自分に似た人を高く評価する傾向を持っているからだといいます。このため、多様性を組織に根付かせるためには、リーダーが、自己認識を高める必要があります。自分が、どのような人を高く評価する傾向を持っているのかを知り、無意識の偏見を排除することが大切です。

最後に

最後にお伝えしたのは、成人発達理論が説明している2つの発達レベルです。人が、自分一人の力で発達できるレベルは「機能レベル」です。他者の支援を得て得ることができる発達レベルは、「最適レベル」です。この2つのどちらがより大きな発達・成長に繋がるか、皆さんも、もうお解りですね。人間は、他者の支援を得ることで大きく成長することができます。ぜひ、皆さんも、他者育成に貢献し、自らの成長には他者の支援を求めてください。

 

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