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隠岐島前高校での取り組み

2023.06.12文部科学教育通信掲載

隠岐島前高校には、地域との協働による学校教育改革推進事業と普通科改革支援事業の2つの運営指導委員会(運営共創委員会)があります。私は、普通科改革支援事業の委員を担当しています。

普通科改革支援事業指定校は、全国に20校あります。隠岐島前高校も指定校に選ばれています。

高等学校改革推進事業(普通科改革支援事業)の背景

高等学校には多様な背景を持つ生徒が在籍していることから、義務教育段階において育成された資質・能力を更に発展させながら、生徒の多様な能力・適性、興味・関心等に応じた学びを実現することが必要です。このため、令和3年1月の中央教育審議会答申等においては、新時代に対応した高等学校教育等の在り方について、高校生の学習意欲を喚起し、可能性及び能力を最大限に伸長するための各高等学校の特色化・魅力化や、教科等横断的な学習の推進による資質・能力の育成が提言されたところです。
これらも踏まえ、令和3年3月31日に公布された学校教育法施行規則等の一部を改正する省令等により、高等学校等の特色化・魅力化に向けて、「普通教育を主とする学科」として「学際領域に関する学科」や「地域社会に関する学科」等の普通科以外の学科を設置可能にしました。   文科省HPの引用

地域創生科

隠岐島前高校は 2022年から「普通科」と合わせて、新たに「地域共創科」を開始しました。文部科学省の普通科改革の先駆けとなるプログラムです。

「地域共創科」では、教科学習や 「総合的な探究の時間」による探究的な学びとあわせて、地域でのより実践的・実際的な学びを展開することで、他校にはない隠岐島前ならではの 「地域・社会と共にある教育環境」をつくります。

隠岐島前高校の目指す生徒像は、「グローカル人材」です。「普通科」、「地域共創科」のどちらにおいても、この目指す生徒像は共通です。

「地域共創科」には、地域共創DAYが設置され、地域共創科における2年次の「地域未来 共創」と3年次の「グローカル未来共創」はそれぞれ週6時間分あり、1日をつかって地域に飛び出し、地域のリアルな現場で実践的・探究的に学ぶ時間を カリキュラムの中で設けます。

振り返りの島前

隠岐島前高校では、探究学習において「振り返り(リフレクション)を大切にしています。以下、学校パンフレットの引用です。

地域共創DAYでは、隠岐島前地域ならではの伝統文化の体験や様々な事業所 での探究的実践など、地域を共創する一人として実社会の中で学びます。その際、しっかりと振り返りの機会を設けることでより主体的により自律的に考え、行動することができるように高校・隠岐國学習センターでサポートします。

地域共創科のカリキュラムで伸ばしたい資質・能力とは

新学科「地域共創科」では、意志ある未来を共に創っていくために、とくに4つの観点を大切にしていきます。 これらの資質・能力はこれからの人生で宝物となることを想定し、高校時代に基礎を築くものです。

主体性:未知なる物事に対して一歩踏み出す、踏み込むことができる

そのために、困難や障壁に向かって一歩を踏み出す経験をしてもらいたいと考えています。 協働性:自分を活かしながら、多様な人と協働することができる

そのために、多様な世代を巻き込み、行動に責任を 持つ経験をしてもらいたいと考えています。

探究性:適切に問い続けることができる、適切に振り返ることができる

そのために、成功体験だけでなく失敗体験さえも学びに変える経験をしてもらいたいと考えています。

社会性:小さな行動・小さな越境を粘り強く続け、周囲に貢献することができる

そのために、地域に暮らす当事者として、納得するまでやり切る経験をしてもらいたいと考えています。

 

生徒との交流

地域創生科のスタートを機に、振り返りの実践をもっと充実させようという先生やコーディネーターの皆さんの思いと、私の「リフレクションは人生を幸せにする力だ!」という思いが重なり、昨年から、隠岐島前高校の生徒にも、リフレクション講座を開講しています。

隠岐島前高校の生徒は、自ら、主体的に考え、教科書にない道を歩くことに誰もがチャレンジするので、想定通りに行かないことは「普通のこと」です。このため、「振り返り(リフレクション)」は、行動を続けるために不可欠な作法です。彼らには、自然に、ダブルループ・ラーニングも実践します。

経験を振り返る際に、行動と結果の関係だけを振り返るのはシングルループ・ラーニングで、行動の前提となる目的や自分の思い込み等まで振り返ることをダブルループ・ラーニングと呼びます。

例えば、地域の人に何かをお願いしても、自分たちの期待通りの反応にならないことがあります。そんな時には、地域の人が考えていることと、自分たちの考えに隔たりが合ったり、お互いがイメージしているゴールの姿が異なっていたり、いろいろな理由が考えられます。

いずれにしても、自分たちの期待通りに反応しないから、すぐに諦めてしまうというのは、隠岐島前高校の期待する生徒像ではありません。納得するまでやりきるためには、その過程で、「振り返り(リフレクション)」は、彼らにとってなくてはならないものなんです。

そのことを、短い間に生徒たちはすぐに理解し、すでに、「振り返り(リフレクション)」を活動の中で、普通に実践しています。生徒の学ぶ力は偉大です!

 

分掌長向け教員研修「振り返り(リフレクション)」ワークショップ

生徒の「振り返り(リフレクション)」力が進化する中、今月はじめて教員研修で、分掌長向けにワークショプを行いました。

 

日頃分掌内でどのような振り返りが行われているのかを確認し、ワークショップを進めました。ワークショップでは、今年度のトピックを一つ選び実際に振り返りを行いました。

 

学校の分掌は、重点施策、具体的施策、担当業務の3層構造になっています。一人ひとりが担当する担当業務の成功が、集約されると具体的施策全体、さらには重点施策全体が実現する構造です。そこで、分掌内での「振り返り(リフレクション)」では、具体的施策全体の振り返りもお勧めしました。担当業務が割り振られると、誰でも、自分の業務に対する責任に意識が向き、チームや組織全体の施策を気にかけているのはリーダーだけになってしまうということは、学校に限らず、どの組織にもよくあることです。特に、役割分担が明確で、個人の責任感が高ければ高いほど、自己完結になりがちです。

 

「振り返り(リフレクション)」には、書籍『リフレクション 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』でも紹介している「経験から学ぶリフレクション」のフレームワークにそって行っていただきました。

 

経験の振り返りは、実は、一人で行うのではなくチームで行った方がよいです。なぜなら、一人の振り返りは、自分のものさしやレンズを通しての振り返りになってしまうからです。自分の枠の外にある学びを得るためには、他者からの質問はとても役に経ちます。また、同じ経験をしている仲間が、同じテーマで振り返れば、多面的多角的に経験から学ぶことが可能になります。

 

探究学習には、リフレクションが欠かせないことを、多くの先生方に知っていただきたいです!

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