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元気な会社の経営者

202305.29文部科学教育通信掲載

本日は、先日参加したニュースピックス主催のセミナーの内容を共有いたします。

セミナーの登壇者は、フジトランスポート株式会社の松岡弘晃社長です。

フジトランポート株式会社は、全国118拠点のネットワークを持ち、2430台の車両を保有する運送会社で、フジホールディングスの中核となる会社です。松岡社長は、事業継承し、20年で売上100倍にしました。また、多くの運送会社が、働き手不足の時代に、人集めに苦労する中で、採用に全く困っておらず、2024年問題(長時間労働問題)もクリアしているユニークな会社です。

セミナーのご案内を読み、今の時代にこんなに元気な会社があるのか!と驚き、次に頭に浮かんだのは「なぜだろう?」という問いでした。日々、チャットGPTが話題になる中で、労働集約的な産業に目を向けることが少なくなっていましたが、「フジトランスポート株式会社の強さの秘密は何なのか」を知りたくなり、セミナーに参加することにしました。

採用面接は全部自ら行う

松岡社長は、53歳。とてもオープンなお人柄です。今でも、採用面接は全部自ら行うそうです。40歳過ぎて、独身なら、「結婚は?」「子供は?」「養育費はいくら払っているのか?」「2万円の養育費では安いぞ~」などと、面接で対話をされるそうです。松岡社長が、尋ねる目的は、相手をしっかりと理解して採用することなので、相手も、オープンに話してくれるそうです。面接というよりも、普通に、気の知れた人と話す感覚でみなさんも話してくれるのだと思います。採用後に、トラブルが起きないようにするためには、採用前に相手を正しく理解することが必要だと松岡社長は言います。この面談にはじまり、松岡社長は、今日の世の中の常識の真逆を実践していると思いました。

運送業界

運送業界は、多層構造になっていて、大手運送会社はトラックを持たず、下請けに運送を依頼する構造になっています。しかし、この数年、トラックを持っている運送会社に直接仕事を依頼するお客様も増えているそうです。人手不足やトラック不足で、下請けに運送を依頼している企業に発注しても、良いサービスを行うことができないからです。このような中、フジトランスポートは、着実に受注を拡大しています。

松岡社長の経歴

松岡社長は、父子家庭で小学生の頃から、お父さんの経営する運送会社で、伝票の消込を手伝い、週末も、お父さんのトラックに乗り過ごしたそうです。そして、小学5年生のときに、会社を継ぐ決意をします。お父さんは、人柄がよく、人間性だけでお客様とお取引をしている様な人で、経理や整理整頓が得意ではなかったそうで、お父さんの得意でないことを全部引き受ける覚悟で勉強に励んだそうです。学校を卒業した後は、三菱ふそうに入社し、自動車整備と販売の仕事を学びます。

松岡社長がお父さんの会社に入ったのは、27歳の時です。当時の富士運輸は、社員30人の会社ですが、業務量が激増し、ドライバーの不満が頂点に達したときに、30人中20人のドライバーが、奈良県内の産業別労働組合に入会し、労使交渉が始まったため、松岡さんは、その矢面に立つことになります。プロの活動かも入ってきたため、労働争議が4年間も続きました。

この時、社長は強くなければならない、社員を守れないようでは社長になれないと、徹底的に戦ったそうです。最後は、失うものはないと腹を括り、戦い続けた結果、労働争議もおさまり、松岡さんは、31歳で社長に就任します。

労働争議が収まった後も、地元では仕事が取れず、仕方なく、県外で営業を始めたことが、全国規模の運送会社に成長するきっかけだったそうです。

飛躍の背景

会社が大きく成長したのは、リーマンショックの時期と、コロナの時期です。リーマンショックの時期には、年商24億円の売上増、コロナの中、2022年には1年間で72億円の売上増を実現しています。「コロナ禍で、どうして売上を伸ばせたのか?」誰もが興味津々です。

コロナ禍で、営業強化、M&A強化、全国制覇の3つの戦略を掲げて、事業経営をされていたそうです。

コロナになり、商品の輸送が止まり、フジトランスポートにも、仕事が入らなくなり始めた2020年に、トラックのディーラーに見積もりを頼んだ所、メールで見積もりを送ってくる会社もあれば、コロナ禍でも、見積もりを持って会社を訪問してくれたディーラーも合ったそうです。このディーラーの様子がヒントとなり生まれた戦略が、「自粛禁止令」でした。「コロナ禍でも、訪問することで、喜んでくれるお客様はいるはずだ」と考え、お客様を訪問し続けたことで、仕事をどんどん受注することができました。

ドライバーがコロナに感染したら、荷物を運ぶことができないという問題の対策は、普段よりも、10%多くドライバーを採用することでした。コロナ禍ですから、採用に困ることもありません。余剰人員を抱えても困らないほど、仕事を受注することができました。

松岡さんのアプローチには賛否両論あると思います。しかし、松岡さんの心に曇りはありません。補助金をもらうこともできず、自己責任で生きていかなければならない企業の経営者として、会社と社員に対する責任を果たしている姿には嘘はありません。こうして、コロナ前には、77拠点だったフジトランスポートは、売りにでた会社を次々と買い取り、2023年には116拠点に拡大します。全国展開が可能になると、他社から乗り換えるお客様も増えました。

自前主義の強み

トラックの販売代理店になることで、トラックの在庫を持つことができることも強みの一つです。コロナ禍でトラックの調達難が業界の課題でしたが、フジトランスポートは、トラックの在庫をいつも抱えています。トラックは、下取り価格もよいそうで、1400万円で購入したトラックも、1000万円程度で売れるそうなので、ビジネスの機会損失を考えると、トラックの在庫は問題にならないのだそうです。

ITシステムも、外注した基幹システムが全く機能しなかったという苦い経験から、自前主義を徹底しています。その結果、一つひとつの受注の採算が把握できるシステムや、営業所でも、やってくるドライバーの名前や写真、トラックの位置が見れるシステムなど、会社の強みにつながるシステムがたくさん生まれたそうです。その結果、ドライバーでも、採算を気にしたり、お客様に値上げの交渉をすることができ、お客様も、値上げの理由を明確に理解できるために、値上げにも応じてくれるそうです。2000人いるドライバーも、日本全国どこの営業所に行っても、名前で呼ばれるのは嬉しいものです。

挑戦

副業でユーチューバーをしている社員がいたり、西郷隆盛に似た社員がテレビコマーシャルに出たり、インスタフラムやフェイスブックに投稿したり、新しいことにも次々と挑戦する会社に、若者が惹きつけられるのも当然だと思いました。

松岡社長は、ホームページには、未来のことを書くことが大事だといいます。これからどこに向かっていくのかを説明しない企業が多い中、フジトランスポートのホームページに行くと以下のことが書いてあります。

フジグループは、2035年に「大型トラック保有台数5000代、事業所200拠点、売上高1000億円」の目標に向かって進んでいます。

キャリア教育とはなにか? 本セミナーに参加し、改めて考えてみようと思いました。

 

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