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意見 経験 感情 価値観

2023.08.14

自己を客観的および批判的に振り返る行為であるリフレクションを行うために、意見・経験・感情・価値観の4点セットで自分の内面を俯瞰する方法をワークショップで紹介しています。意見・経験・感情・価値観を認知の4点セットと名付け、自分の内面をメタ認知するための手法と説明しています。

なぜメタ認知が大事なのか

変化の激しい時代になり、過去の成功体験が役に立たないことが増えています。また、多様性を活かす時代になり、異なる考えに遭遇する機会も増えています。このような時代には、即決即断ではなく、自分の考えについても、すぐに「これしかない」と考えるのではなく、多面的多角的に考えることが必要になります。同時に、変化のスピードに合わせて、決断のスピードも必要になるため、より深く・より早く思考し判断することが求められます。

メンタルモデル

認知の4点セットの原型は、学習する組織論で紹介されているメンタルモデルです。メンタルモデルとは、人間が持っている人や物事に対する前提です。夏は暑い、桜は春に咲く、海は青い、アメリカ人は◯◯、日本人は◯◯、あの人は◯◯等 私達は、過去の経験を通して、人や物事に対して前提を持って暮らしています。この前提は、物事を判断する上でも、思考に影響を及ぼし、判断を支援する役割を担います。

雪が積もった朝、皆さんは坂道を避けて歩きませんか。その理由は、私達が、過去の経験を通して、雪の積もった朝、坂道を下ると滑り易いことを知っているからです。このように、メンタルモデルは、私達を危険から守るために、大切な役割を果たします。

私達の行動の前提には、メンタルモデルがあります。例えば、家をギリギリに出ても、電車の接続がスムーズで、遅刻しなくて済んだ経験を数回繰り返すと、「このぐらいギリギリに家を出ても、時間までに到着できる」という思い込みを持ち、ギリギリに家を出ることが習慣になるかもしれません。しかし、ある日、電車の遅れにより、接続がうまく行かず遅刻してしまうと、過去の経験に基づく前提が通用しないと気づきます。そして、この経験を通して、新しいメンタルモデルが形成されます。

行動と認知の4点セット

私達の行動の前提には、意見・経験・感情・価値観が存在します。例えば、上意下達の組織に長く働く人は、「上司に物を申してはいけない」というメンタルモデルを持ち、上司の考えに従うことを大切にしています。上意下達の組織では、多くの人たちが、このメンタルモデルと行動様式を当たり前だと思っているため、組織風土にも、その姿が現れます。このため、新人も、すぐに、このメンタルモデルと行動様式を習得し、上意下達の組織風土に合わせることができます。

【意見:上司に物申してはいけない】→【行動:上司の指示に従い行動する】

私達の考えが、行動に反映することは、誰もが理解出来ると思います。

【メンタルモデル】→【意見】→【行動】

では、そもそも、なぜそう考えるのでしょうか。この問いに対する答えが、先程から紹介しているメンタルモデルです。過去の経験を通して形成されたものの味方が、意見の前提にあります。

【経験と感情】→【価値観(ものの見方や前提)】

メンタルモデルである、物事に対する前提は、過去の経験とその時に味わった感情を通して形成されます。

行動・思考・経験・感情・価値観

これらをつなぐと、私達の行動は、思考を前提としていますが、その思考の前提には、経験、感情、価値観があると言えます。

【行動】←【思考】←【経験】←【感情】←【価値観】

【行動:上司の指示に従い行動する】

【思考:上司に物申してはいけない】

【経験:物を申した同僚が、叱られている様子をみた】

【感情:怖い】

【価値観:上意下達の原則】

 

結果を変えるために

【結果】←【行動】←【思考】←【経験】←【感情】←【価値観】

私達は、物事がうまく行かない時、行動を変えることにフォーカスを当てることが多いです。結果を変えるために行動を変えることは誰もが考えます。しかし、もし、行動を変えても、よい結果に繋がらない時には、行動の前提にある思考を変える必要があります。そのためには、思考の前提となるメンタルモデルである経験、感情、価値観に目を向ける必要があります。

このように、前提を見直すことも、学習の一つで、ダブルループラーニングや、アンラーニング等の言葉が使われるようになっています。

【ダブルループラーニング】

原因と結果の関係を、行動と結果の2つで捉えることをシングルループラーニングと呼び、行動の前提に目を向けることをダブルループラーニングと呼びます。先程からの説明では、メンタルモデルにも意識を向けるということと同じ意味です。

【シングルループラーニング】

アンラーニングは、学びほぐしと呼ばれることもあり、過去の経験を通して形成されたものの見方や行動様式をアップデートすることを意味します。例えば、先程の事例のような上意下達の組織で働いていた人が、ベンチャー企業に転職したことを想像してみてください。誰もが主体性を持ち、一緒に新しい価値を創造していく仕事の仕方に切り替えるためには、過去のメンタルモデルと行動様式を手放すことが求められます。

変化の激しい時代には、誰もが、アンラーンの必要性を感じることが増えているのではないでしょうか。

学習する組織の教え

学習する組織には、「物事がうまく行かないときには、自分の外に原因を探すのではなく、自分のメンタルモデルに意識を向けたほうがよい」という教えがあります。学習する組織のリーダーは、自らの行動や思考だけではなく、その前提となるメンタルモデルを捉え、変えて行きます。

この考え方は、変革を推進するすべての人々の行動を支えます。自らのメンタルモデルに意識を向けることができると、変化の障害が自分であることにも、気づけやすくなります。ポジションや立場の違いを超えて、この考え方を誰もが実践するチームは強いです。

教育変革

現在行われている教育変革においても、学習する組織の教えは役に立つと考えてます。学校現場も、教育関係者も、親も社会も、すべての人々が、自分のメンタルモデルを見直し、社会全体がチーム学校になり、子どもたちが「人生の準備」を行う学校教育を支えることができる日を夢見て、活動を続けたいと思います。

8月には、初めて、教育委員会の関係者と一緒に、メンタルモデルの学習を行う予定です。しっかりと、メンタルモデルの価値を皆さんに伝えきりたいと思います。

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