skip to Main Content

女性活躍推進の未来

2023.08.28文部科学教育通信掲載

女性活躍推進に取り組むことが、企業のあたり前になり、育成の取り組みも盛んです。企業の中には、役員が自ら女性活躍推進の最前線に立ち、メンターやスポンサーとして、直接、女性たちの指導に当たるケースも生まれています。

 

成長戦略

日本における女性活躍推進が本格化したのは、2014年です。労働人口が減少する中で、女性活躍推進は、労働力確保のための重要な打ち手と考えられ、成長戦略の一環として女性活躍推進に取り組むことになりました。女性活躍推進法と、働き方改革関連法が制定され、全国で女性活躍推進が本格化します。政府が当初掲げた2020年に女性管理職比率を30%にするという目標は実現しませんでしたが、多くの女性が、結婚・出産を経ても、会社を辞めなくなったことで、今後は女性管理職比率は高まるであろうことが予測されます。

短い女性活躍の歴史

我が国の男女平等は、家父長制が廃止された戦後がスタートです。1967年には、働く女性が、1000万人を超えましたが、男女別の採用と賃金制度や、結婚退社の慣行は残ります。1960年代には、結婚退職制度を導入している企業や、定年年齢を男性が55歳、女性35歳と規定している企業もあったようです。

1985年に、日本は国連の女子差別撤廃条約を批准することを決定し、男女雇用機会均等法が成立し、我が国の女性活躍は本格的に始まります。女性が働き続けるために必要な、育児休業法が制定され、男女従業員に、子どもが満1歳になるまでの休業が認められることになりました。2009年には、短時間勤務制度なども導入され、女性が、結婚出産を経ても働き易い環境整備のための制度が整備されました。しかし、女性活躍は一向に進まず、多くの女性が、結婚や出産を機に、専業主婦になるという慣習は残り続けました。

制度が整っても、女性が退社する理由は、男性の働き方に合わせることができなかったからです。夜遅くまで働く社員が高く評価され、夜接待をすることで営業成績が上がる職場に、女性が働き続けるためには、育児を放棄するか、誰かに託す覚悟を持つ必要があります。このため、2014年以前にキャリアアップを目指す女性は、働く女性の中でも特別な存在でした。結婚出産後も働き続けた女性の多くは、親やパートナーの支えがあり、また、子どもを産まないという選択や結婚しないという選択をした女性たちもいました。

そこで、生まれたのが男性の働き方を変えていこうという発想です。男性も女性も、ワークライフバランスの時代の始まりです。昨年からは、パパ産後育休も始まり、男性も家事育児に参画することが良いことだと考えられるようになりました。その結果、共働きの子育て世代が増え、男性の働き方も大きく変わろうとしています。ある保育園では、朝子どもを保育園に連れてくる親の9割がパパだという話を伺いました。

政府は、女性管理職比率と、出生率をともに向上させることを目標に掲げていますが、出生率については、改善が見られず、新たな少子化対策の必要に迫られています。

 

数値目標

政府は、2025年に、係長級の管理職比率30%の目標数値を掲げています。 課長級では18%、部長級では12%が目標です。2014年以降に始まった女性活躍推進の取り組みの結果、2021年の女性管理職比率は、係長級で20.7%、課長級で12.4%、部長級では7.7%になっています。

30%という数値目標の背景には、ハーバード大学のロサベス・モス・カンター教授が提唱する黄金の3割理論があります。30%は、マイノリティがマイノリティでなくなる割合で、組織に質的な変化を起こすと言われています。10人の役員の中で、1人女性がいても、同調圧力が存在するため、一人の存在では、他者と異なる意見を述べることに勇気が必要になります。しかし、3人女性がいれば、意見を述べやすくなります。このため、多様な意見が表出しやすくなり、多様性を活かすことも容易になります。

 

世界とのギャップ

共働き社会へのシフトが進み、保育園の送り迎えに参画するお父さんが増えている日本にいると、女性活躍推進は進んでいると感じますが、残念ながら、世界との比較では、日本の順位は下降傾向にあります。毎年発表されるジェンダーギャップ指数2023では、146カ国中126位となっており、韓国や中国よりも遅れている国という評価になりました。

ジェンダーギャップ指数は、教育、健康、経済参画、政治参画の4つの指標で男女の差を評価しています。日本は、以前は、教育では1位だったのですが、高等教育就学率の男女比が加わったことで、47位に順位が後退しました。健康では59位、経済参画では123位、政治参画では138位という結果です。

世界では、女性役員比率4割を目指しており、係長級の管理職比率3割を目標にしている日本とはかなり様子が違います。また、政治についても、世界は、1980年代から女性役員位率を高め続けており、日本とはかなり様子が異なります。

国会の姿

日本の女性活躍推進が本物になるためには、国会における女性議員比率をどれだけ高めることができのかにかかっているのではないかと思います。先日、ある研修で、「国会は、おそらく1980年代の企業の感じなのだろう」という意見がでました。我々の先人の多くは、「女性が男性以上に頑張って、自分には何も劣っている点はない」と虚勢を張って生きていました。企業においても、「子どもがいるから、・・」等と口がさけても言えない時代もありました。しかし、企業は、すっかり様変わりしました。

女性議員が増えることは、子ども目線、生活者目線、人口の半数を占める女性目線が、政策に反映されることを意味します。企業目線と政治目線だけで物事が推進される国よりも、万人が行きやすい国になるよう思います。そのための改革は、誰がどのように進めることになるのでしょうか。企業の女性活躍が加速することが、政治の世界を動かすことになるのでしょうか。今しばらく様子を見守りたいと思います。

Back To Top