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システム思考とシステムチェンジ

2023.12.11文部科学教育通信掲載

世界の動向を見ていると、地球上の全く別な場所で、異なるメンバーが行っている議論に不思議な共通点を感じることがあります。

例えば、VUCA時代の教育の未来について、2003年に、OECDは、教育改革の指針となるキー・コンピテンシーを発表しました。OECDは、その後、学びの羅針盤2030を発表し、世界中で、行政が牽引する教育改革の流れを創りました。同時期、アメリカでは、アップルなどの新興企業が中心となり、Partnership for 21st Century Skillsという団体を創り、これからの時代を生きる子どもたちの教育に必要なことを整理し、民間企業を中心とする団体が教育改革の流れを創りました。P21スキルフレームワークも、世界中の教育者が、時代が求める教育をデザインする際に活用しています。

大人もVUCA時代に生きる原体験を持つ今日、この2つの組織が提示している教育改革の指針を理解することは容易ですが、今から、20年前に、「21世紀を生きる子どもたちが幸せになるために必要なスキルは、これまでものとは違う」と言われても、なかなか理解することが難しいと感じたことを思い出します。

このような経験から、私には、『世界や社会は、未来を創る人達の先見性とビジョンにより形作られる』という思い込みがあります。そして、この思い込みを持ちながら、世の中を眺めることにしています。

 

システム思考

The Future of Jobs Report 2023のトップ10を見ると、システム思考が新たに6位に加わりました。

【2027年までに重要性が増すトップ10のスキル】

第1位:クリエイティブ思考

第2位;分析思考

第3位;テクノロジー・リテラシー

第4位;好奇心と生涯学習

第5位:レジリエンス、フレキシビリティ、アジリティ(機敏性)

第6位システム思考

第7;AIとビッグデータ

第8位モチベーションと自己認識

第9位タレントマネジメト

第10位:サービス思考と顧客サービス

 

2023年時点のトップ10も参考に添えます。

第1位:分析思考

第2位:クリエイティブ思考

第3位:レジリエンス、フレキシビリティ、アジリティ

第4位:モチベーションと自己認識

第5位:好奇心と生涯学習

第6位:テクノロジー・リテラシー

第7位:信頼性と細部へのこだわり

第8位:共感と積極的な傾聴

第9位;リーダーシップと社会的影響

第10位;品質管理

出典:後藤宗明著『新しいスキルで自分のミライを創るリスキリング実践編』日本能率協会マネジメントセンター

 

システム思考は、私達の従来のものの見方を補完、刷新する「新しいものの見方」(ピーター・センゲ)です。

従来のもの見方の特徴は、出来事をスナップショットで見て対処すること、要素還元型の考えに基づく分析や分類を行うこと、パターンや因果を線形に捉える傾向があることなどです。しかし、こうしたものの見方では、今日の複雑性や脆弱性を増やした組織システムや社会システムの中で成果を出し続けることが難しくなっています。

システム思考は、対局の流れを観ること、つながりを含む全体像を観ること、根本を観ることによって、複雑なシステムにおいても、より本質的で持続的に成果を作らすことを意図します。

出典:チェンジ・エージェントHP

システム思考は、OECDが提唱する学びの羅針盤2023においても、新しい価値を創造する力として重要視しています。学びの羅針盤2023は、変革を起こすコンピテンシーを整理し、提示したものなので、デザイン思考と共に、システム思考が含まれるのはとても自然なことだと思います。

 

システムチェンジ

最近、システム思考同様に、システムチェンジという言葉もよく耳にするようになりました。世界で始まっているドーナッツ・エコノミック・アクション・ラボ(地域で、持続可能な経済モデルを実現することを目指すコミュニティ活動)では、オーストラリアでも、ロンドンでも、オランダでも、みんなシステムチェンジに取り組んでいます。

複雑な問題を解決する際に、システムチェンジという考えを最初に提唱したのは社会起業家という言葉を生み出し、世界中の社会起業家のネットワーク『アショカ』という団体を立ち上げたビルドレイトンです。

アショカは、社会問題の解決には、4つのアプローチがあると述べています。

4つのアプローチ

■ダイレクトサービス

ダイレクトサービスは、現場に直接介入する奉仕的活動です。

現場に直接介入する奉仕的な活動をダイレクトサービスと呼びます。慈善活動(チャリティ)とも呼ばれ人類の歴史が始まって依頼存在してきました。より余裕のあるものが助けを必要としている者へ寄付やボランティアなどの形で手を差しのべる高位のことです。とりわけ、災害や事故などの被害に対応して提供されるダイレクトサービスはなくてはならない貴重な活動です。現場での活動には、明確で具体的なやりとりがみられます。

■大規模なダイレクトサービス

大規模なダイレクトサービスは、スケールを拡大したダイレクトサービスです。

現場に根ざした直接的なダイレクトサービスの、規模が拡大した活動が「大規模なダイレクトサービス」です。この活動は、活動を管理化、効率化し、活動範囲を、広範囲(全国的、全世界的)に予算をつけて拡大します。システムチェンジが、模倣によって広がるのに対して、大規模なダイレクトサービスは、活動自体を通常の企業のように拡大し、より多くの人口が恩恵をうけられるようになります。赤十字、難民支援プログラム等がこれにあたります。

 

■システムチェンジ

システムチェンジは、問題を生み出す水面下の構造的欠陥に介入する新たな解決アプローチです。

眼の前にある問題が見える時、その問題をすぐに取り除くために奔走するのではなく、問題を見出している牛綿花の様々な要素の複雑な絡み合いにフォーカスし、掘り下げ、根本的な解決策を生み出す新しいシャキア問題の解決モデルです。応急措置的な問題解決と一線を引きます。例えば、生活費に困窮するシングルマザーに支援金を上げるのではなく、もう一歩先を言って彼女たちに無償で職業訓練を提供するのでもありません。貧困を産んでいる根本の社会的な要因に介入して改善する解決アプローチを指します。

 

■フレームワークチェンジ

フレームワークチェンジとは、意識(マインドセット)と行動のパターンの変革です。

システムチェンジを起こす人が現れ、彼らがゼロから作り出した途が定着し始めると、ある量いいの基準と構造が変容することに繋がります。すると、次に、社会全体を貫く「人の意識(マインドセット)の転換」が起こります。その結果、これまでサッカーのルールでプレイしていたのに、ラグビーのルールが通用する社会になったということが起きます。このように、新しいマインドと行動のパターンが、社会の「当たり前」になることをフレームワークチェンジと呼びます。

出典:アショカジャパンHP(一部変更を加えています)

アショカは、システムチェンジが、フレームワークチェンジを起こすと述べています。チェンジメーカーが、模倣可能な問題解決の実践方法の型を創り、それを横展開することで、フレームワークチェンジに発展すると考えるからです。

地球規模の複雑な問題を解決したいと願う人々の心が、システム思考やシステムチェンジに可能性を見出しているのではないか思います。ぜひ、皆さんも、システム思考やシステムチェンジという言葉に耳を傾けてみてください。

 

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