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経験から学ぶリフレクション【実践編】

2021.03.08文部科学教育通信掲載

21世紀学び研究所では、経験から学ぶリフレクションを広める活動に従事しています。そのために、様々なフレームワークを作成し、試行錯誤を繰り返し、最も簡単に、最も質の高い経験学習を行っていただくための「問い」を模索してきました。

最新版の経験から学ぶリフレクションの問いを、新入社員のリフレクションを事例にご紹介してみたいと思います。

明確なゴール

経験から質の高い学びをえるために大切なことは、行動する前に、明確なゴールを持っていることです。新入社員の事例では、オンライン上で行う自己紹介で好印象を持ってもらうことがゴールでした。

問い:想定していた結果は何ですか。

答え:自己紹介で、好印象を持ってもらう。

 

計画と仮説

ゴールの次に重要なもの、それは計画と仮説です。行動には、計画が必要ということは誰もが知っていることです。仮説とは、経験の前提となるものの見方のことです。誰もが、行動する前には、「こうすればうまく行く」という考えを持っています。過去の経験により形成されたものの見方を、私たちは常に活かしています。多くの場合、無意識に活かしているために、その存在に気付き難いですが、誰もが、うまくいくであろうという仮説を持って行動しています。ところが、実際に行動してみると、うまく行かないこともあります。新入社員の事例では、事前に、パワーポイントを準備し、プレゼンの練習を行うことにしました。その前提となる仮説は、パワーポイントを使うと、口頭だけよりも、たくさんの情報を伝えられ、練習をするとスムーズに話せるようになるというものでした。

仮説の前提には、過去の経験があります。それは、自身の経験の場合もあれば、他者の経験に学ぶ場合もあります。本やセミナーなどから学んだことかもしれません。私たちは、常に、経験に学び、次に生かすという習性を持っているために、いざ、何かのゴールを達成しようと思うと、過去の経験に基づき、仮説を立て、その仮説に基づき行動します。ところが、この仮説は、過去の経験に基づくものであり、未来のゴール達成を保証するものではありません。このため、うまく行く時と、うまく行かない時があります。いずれの場合でも、仮説を明確にしていれば、その経験から学ぶことができます。

問い:どのような行動計画を立てましたか。

答え:オンラインでの自己紹介なので、パワーポイントを準備し、発表の練習をして本番に臨む。

問い:計画の前提にある仮説(判断基準)は何ですか。(「こうすればうまくいく」等の持論、過去の成功・失敗体験から得た知恵・成功法則等)

答え:パワーポイントを使うと、口頭だけよりもたくさんの情報を伝えられる。練習をすることで、スムーズに話せる。

 

経験の振り返り

経験を振り返りでは、ゴールに対してうまく行ったこと、うまく行かなかったことを洗い出します。この際に、感情を振り返ることもお勧めしています。新入社員の事例では、うまく行ったことは、練習の成果もありスムーズに語ることができたことです。うまく行かなかったことは、少し緊張してしまい、硬い話し方になってしまったことです。

経験の振り返りでは、感情を振り返ることも大事です。プレゼン中はドキドキ、終了してほっとした、その後、ちょっと残念な気持ちと、気持ちの変化を追うことで、自分の経験を追体験することができるからです。経験の振り返りにおいて、最も難しいことは、経験という膨大な情報の中から、何を切り出して振り返るのかということです。経験と繋がる感情を思い出すことによって、この経験のどこに満足していて、どこに不満が残ったのかが解りやすく、振り返りのツボが見つけ易くなります。

問い:どのような経験でしたか。うまくいったこと、うまくいかなかったことは何ですか。

答え:・練習の成果もあり、スムーズに語ることができた。
・少し緊張してしまい、硬い話し方になってしまった。

問い:その経験には、どのような感情が紐付いていますか。

答え:(プレゼン中)どきどき  (終了後)ほっとした  (その後)ちょっと残念

 

経験からの学び

経験を振り返ったら、いよいよ学びの刈り取りです。成功しても、失敗しても、経験を通して人は賢くなるというのが、経験から学ぶリフレクションの理念です。うまく行ったことも、うまく行かなかったことも共に学びの材料になります。

新入社員の事例では、うまく行ったことは、練習の成果があり、スムーズに語れたことです。うまく行かなかったことは、少し緊張してしまい、硬い話し方になってしまったことです。また、終了後に、少し残念と感じたのは、普段、面白いと言われる性格なのに、その部分が、自己紹介で全く出せなかったことです。もう少し、自分の面白いキャラクターを知って欲しかったという残念な気持ちが残りました。

うまく行かなかったことについては、経験前に戻れるとしたら、何を変えるかという問いにしています。次のアクションにつなげ易いと考えたからです。新入社員は、練習とは違い、本番では緊張することを改めて認識しました。このため、普段の面白さを、自然に出すことはできませんでした。そうであれば、プレゼンの中に、面白さを盛り込んでおけばよかったという気づきに至ります。

問い:(うまく行った場合)なぜうまくいったのだと思いますか。

答え:〇 練習の成果があり、スムーズに語れた。

問い:(うまく行かない場合)経験前に戻れるとしたら、何を変えますか。

答え:△ 緊張すると硬い話し方になることを計算に入れ、普段のような「面白さ」をあらかじめプレゼンに盛り込んでおけばよかった。

法則の定義

経験の振り返りを基に、法則を定義します。経験から学ぶリフレクションのクライマックスです。この際に、計画当初の仮説と、経験を照らし合わせることも重要なポイントです。

仮説は役に立ったのか、想定外の何かがあったのかを確認します。新入社員の場合、パワーポイントの準備も練習も役に立ちました。しかし、仮説の段階で、本番での緊張は考慮していなかったので、そういう意味で、本番での緊張は想定外ということになります。そして、自分らしさを十分表現できなかったことも残念に感じ、準備の段階で、自分の面白いキャラクターを伝えようという意識を持っていなかったことに気付きます。プレゼンを実際にやってみたことで、改めて、自己紹介とは何かについても、振り返ることになります。

問い:リフレクションから明らかになったことは何ですか。仮説(判断基準)がアップデートされた法則を定義してみましょう。

答え:自己紹介では、情報共有のみならず、自分らしさを伝えることも大切。まじめな自己紹介の中でも、愉快な自分を、どう表現するかを工夫することが大事。

行動計画

経験で学んだことは、すぐに活かす!これも、経験から学ぶリフレクションの大切なことです。新入社員は、まじめな自己紹介で、どう愉快な自分を表現するかその方法を考える事にしました。自己紹介がどんな風に進化するのか楽しみです。

 

問い:明らかになった学びをどのように活かしますか。

答え:まじめな自己紹介の中で、愉快な自分を表現する方法を考える。

ぜひ、皆さんも、経験から学ぶリフレクションで、進化し続ける楽しさを味わっていただきたいです。

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