skip to Main Content

ジェンダーギャップ

2020.07.13文部科学教育通信掲載

労働人口の減少により、成長戦略の一環として始まった、女性活躍推進を皆さんはどのように捉えていらっしゃいますか。

毎年、発表されるグローバルジェンダーギャップレポート2019年では、日本は、153か国中121位となっており、G7の中でも最下位です。また、アジアにおいても、106位の中国、108位の韓国よりも、男女平等が進んでいない国というのが日本の現実です。このレポートは、経済、政治、健康、教育の4つの指標で、男女の差を評価しています。日本は、健康と教育では、男女の差がなく、経済と政治において大きな差があるというのが121位の理由です。

ジェンダーギャップを埋める動きは、日本だけでなく、世界でも加速しており、女性の特性についても、様々な視点で語られるようになっています。そのいくつかをご紹介したいと思います。

リーン・イン

フェイスブックのCOOを務めるシェリル・サンドバーグ氏は、女性の課題を取り上げた本「リーン・イン 女性、仕事、リーダーへの意欲」(日本経済新聞社)を出版し話題になりました。サンドバーグ氏は、「私達女性は、自信に欠けていたり、手を挙げなかったり、乗り出すべきときに身を引いたりと、大なり小なり自制して行動してしまっている」と指摘します。そして、女性が国や企業の半分の舵取りをし、男性が家庭の半分を代表する存在となる、真の平等な世界が実現すれば、人的資本と才能の全てを取り込むことができ、国家や企業全体としてのパフォーマンスが上がると主張しました。

そのためには、女性がキャリアを積めるよう社会や組織の柔軟性を高めるだけではなく、女性自身が内面に作った壁を克服する必要があるとサンドバーグ氏は強調します。この精神的な壁は、社会的風潮によって成長の過程で自然に作られたもので、特に、成功を手に入れる男性は周りから好かれる一方で、女性は敬遠される傾向があることが、女性が積極的にリーダーシップを取りに行きにくい大きな要因だといいます。サンドバーグ氏は、世界中に、「気が強い」という言葉が存在し、それは、すべて女性にのみ使われる言葉であるとも述べています。

シェリル・サンドバーグ氏は、自分の娘が成人する頃には、成功しても人から好かれる(嫌われない)と信じられる人に育って欲しいと願い、子育て世代と共に、ジェンダーギャップをなくす社会創りにも取り組んでいます。

女性が持つ12の特性

コーチングの神様が教える「できる女」の法則(サリー・ヘルゲセン、マーシャル・ゴールドスミス/日本経済新聞出版)は、コーチングを通して明らかになった、女性の課題を解りやすく解説しています。女性が持つ12の特性は若年層では強みとして効果を発揮しますが、キャリアの次のステージに進む際に、女性のキャリアアップを阻む要因となってしまうと言われています。

  1. 自分の成果を主張しない
  2. 自分の貢献は誰かが自然と気づいてくれて、いつか報われるだろうと期待している
  3. 専門知識を重視しすぎる
  4. 人間関係を築くだけで活用しない
  5. 初日から協力者を得ようとしない
  6. 自分のキャリアよりも目の前の仕事を優先する
  7. 完璧主義者の罠に陥る
  8. 他人を喜ばせることに執着する
  9. 小さく見せたがる(矮小化する)
  10. 全てに過剰
  11. 反省しすぎる(反芻する)
  12. 周囲を気にしすぎる

アメリカの女性について書かれた本ですが、日本の女性にも当てはまることが多く、とても参考になります。

女性のリーダーシップから学ぶ7つのポイント

コロンビア大学トマス・チャモロ・プレミュジック教授は、女性リーダーを増やし、女性の声を経営や政治に反映させるために、女性が男性のように振る舞うことが必要だと言われているが、本当にそうだろうかという疑問を投げかけました。そして、プレミュジック教授は、男性が女性のリーダーシップから学ぶべき7つのポイントを紹介しました。

  1. 積極的になるべき対象がないなら、積極的になる必要はない
  2. 自分の限界を知る
  3. 変革を通じてモチベーションを高める
  4. 自分よりも他者を優先する
  5. 命令ではなく共感する
  6. 仲間を高めることに力を入れる
  7. 「恐縮です」と言うだけではなく、謙虚になれ

(ハーバードビジネスレビュー/2020.05.07)

女性活躍が進む海外では、たくさんの事例を基に、女性の課題や、女性の強みが議論されるようになっていることはとても興味深いです。日本では、サンプルが少なく、まだ、女性活躍も道半ばであり、ここまでの議論は始まっていませんが、近い将来、日本でも、このような議論が盛んになる日が来るのではないかと思います。

私の経験

女性活躍推進に取り組み始めて、14年になります。14年前に比較すれば、女性の社会進出は進み、今では、結婚し、出産しても時短で働くことが当たり前になりつつあります。

14年前には、女性がリーダーシップを発揮するという考え自体も一般的ではありませんでしたが、今では、多くの女性が、しなやかなリーダーでありたい、チームを大切にするリーダーでありたい等、自らのリーダーシップについて普通に語るようになりました。

女性の強みをリストにすると、オープンなコミュニケーション、フラットな人間関係、チームワーク、柔軟さ、ぶれない軸、完璧主義、責任感等が挙げられます。

ある海外の調査では、「採用の募集要件に、いくつ該当すれば応募するか」について男女の違いを調べたそうです。その結果、男性は、6割の要件を満たしていれば応募すると考え、女性は、100%要件を満たしていないと応募しないことが明らかになりました。日本で調査を行っても、同様の結果になるのではないかと想像します。女性が、自信を持つためには、完璧主義(100%)を少し手放し、男性のものの見方(6割)に学ぶ必要があるようです。

時代と共にリーダーの要件は変わります。カリスマ性が重視された時代は終わり、今は、チームを大切にするリーダーの時代だと言われています。その観点からは、オープンなコミュニケーション、フラットな人間関係、チームワークを重んじる女性の強みは、時代の求めるリーダーシップに活かせるはずです。女性リーダーが増えれば、忖度文化も組織からなくなるかもしれません。

ダイバーシティの推進

ダイバーシティを推進する上で、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を撲滅することが大切であるというのは、今日、世界の常識になっています。しかし、アンコンシャツバイアスは、その名の通り、無意識なものなので、気づくことが難しいです。

ダイバーシティの推進に力を注ぐGEでは、リーダーに自己認識を高めるよう求めています。その理由は、人は、自分と似た人を高く評価する特性をもっているからだそうです。リーダーが、評価における自分の偏見を理解し、意識することで、多様な人々を正しく評価することができると云います。

人間は、一人ひとり異なり、一人ひとりが多様性の一部です。男性か女性かという違いは、一人の人間の個性の一部ですが、それがすべてではありません。また、ジェンダー特性をどのアングルから捉えるかにより、その特性が強みにも、弱みにもなります。

ダイバーシティの推進のゴールが、誰もが自分らしく活躍し世の中に貢献することだとすれば、一人ひとりが本当の自分らしさを知ることが、ダイバーシティを推進する社会づくりにおいてとても大切なことだと思います。

 

Back To Top