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21世紀学び研究所

文部科学教育通信No.381 2016.2.8掲載

昨年、未来教育会議という活動を通して、2030年の教育の未来シナリオを描きました。

学習指導要領の改訂や、大学受験改革など教育を変える大きなうねりが生まれていると感じます。しかし、未来教育会議で作成した教育の未来シナリオはあまりポジティブな未来の姿になりませんでした。21世紀スキルを画一的に学ぶ学校という姿は当分変わりそうにありません。21世紀の学びの要は主体性です。しかし、画一的に学ぶ学校では、主体性を育むことがとても困難です。このような矛盾を抱えた教育では、子どもたちに21世紀スキルを届けることができないと考え、21世紀学び研究所を起ち上げることになりました。

 

 教育と社会(企業)は双子

教育の未来シナリオを描く過程でもう1つ明らかになった重要なことは、教育と社会が双子の関係にあるという事実でした。特に、社会に大きな影響力を持つ企業の姿が教育にそっくりなのです。指示命令と評価を重視し、上下関係を重んじ、物事を数値で測定し、マニュアルで管理し、生産性と効率を追求します。これらは、企業活動のある側面においては重要であることは間違いないのですが、人が個人として意思を持つことや、意見を述べることがなく、経営目標を到達するために期待に応えることが全てという環境下では、本来誰もが持っている創造性や革新性を活かす機会がありません。社会は、若者にリスクをとる勇気を求めますが、企業においてリスクをとる事は賢い人間の選択する道ではないのです。

 

 企業にはイノベーションが求められる時代

企業にはイノベーションが求められる時代です。グローバル経済の発展により、ビジネスチャンスが広がりを見せたと同時に、企業間の競争は激化しています。ITや人工知能の発展により、約50%の仕事が消滅すると言われています。会計士や弁護士、医師といった専門性の高い職業においても、部分的な仕事は機械に取って代わると言われています。テクノロジーと人間の境界線が消滅し、テクノロジーがルーティン業務を引き受け、人間は創造性が必要な業務に携わるといった時代が到来します。

 

 日本企業のイノベーション力

日本企業のイノベーション力を時価総額で眺めてみましょう。グーグル一社の時価総額579000ドルに対して、ソフトバンクを筆頭に日本のIT企業トップ10社の時価総額を併せても、168476ドルと約3分の1の規模であることが解ります。時価総額だけがイノベーション力を評価する物差しではないかもしれませんが、産業構造が転換する今、新しいビジネスを創出することが日本の未来を明るくすることに繋がります。

 

 クリエイティビティに自信がもてない

日本のクリエイティビティは世界でも高い評価を得ています。アニメや和食、ファッションなど日本人の感性が世界で高く評価される中、日本人の44%が、自分は創造する人ではないと考えています。アメリカでは71%の人が自分は創造する人だと考えているそうです。

 

21世紀の学び

21世紀の学びは、主体性を土台としています。自らの意志で問題を発見し、知識を活かし、試行錯誤を通して創造的に問題を解決していく力を身に付けることを狙いとしています。イノベーションや変化を起こす力、複雑な問題を解決する力が必要になります。そのために、世界ではさまざまな教材が用意されています。代表例としては、デザイン思考やシステム思考があります。世界では、学校教育への導入とともに、社会でも幅広い問題解決に活用されています。日本にも、関連する書籍が多く販売されていますが、なぜか世界で広がりを見せているこの2つの思考法がなかなか広がりをみせません。

そこで、21世紀学び研究所では、「21世紀のOS」というものを広める活動をスタートすることにしました。デザイン思考やシステム思考がアプリケーションだとすれば、そのアプリケーションを活用するためのOSが必要だという発想です。デザイン思考もシステム思考も、問題を解決するためのプロセスを示し、思考の枠組みを示しているのですが、それをどう活用するかについては、本を読むだけでは理解することができません。目的に併せて自ら活用方法を考えて活用し、その成果を振り返り、活用方法を開発していく必要があります。自ら考え、実践し、試行錯誤を繰り返すという21世紀の学び方よりも、20世紀のように「答えを示してもらえばその通り反復します」という学び方の方が心地良いというのが本音でしょうか。しかし、その考えでは21世紀を生き抜くことはできないのです。

 

 6つの力を「OS21]と定義する

 

1)動機の源を活かす

2)深く考える

3)感情をメタ認知する

4)内省する

5)多様性から学ぶ

6)人を育てる

 

6つの力の解説については、20世紀型のOSと対比した表を作成しましたので、こちらを参照してください。

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 OS21の特徴

OS21は、誰もが潜在的に持っている力であり、一人ひとり異なります。OS21は、動的であり、人生を通して変化していくものです。

OS21は、自分についての理解を深める力でもあります。自分の知っていること、知らないことを認知する力であり、知らない世界と積極的に対話をする力です。自分を知ろうとしない人が対話をしても、それほど多くの学びがありません。すべては自分を知るところから始まります。

 

どんな人に役に立つプログラムか

  • セルフラーナー(自律的学習者)になりたい人

  • 人として成熟を目指したい人

  • 前例を踏襲しない、新たな視点を持ちたい人

  • イノベーションを起こしたい人

  • 複雑な問題を解決したい人

  • 学習する組織を創りたい人

  • アントレプレナーシップやリーダーシップを磨きたい人

  • 100年に一度のパラダイムシフトの時代を楽しみたい人

 

今、世界では100年に一度のパラダイムシフトが起きていると言います。20世紀とは全く異なる21世紀の世界を創ろうと多くの人たちがイノベーションに参画しています。

アインシュタインは、「問題を起こした時の思考では、その問題を解決することができない」と言います。そういう意味では、このパラダイムシフトを受け身ではなく、能動的に生き抜きたいと思うすべての人にとってOS21は有益ではないかと思います。

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