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未来教育会議 二十一世紀未来企業プロジェクトワークショップ

文部科学教育通信No.380 2016.1.25掲載

「未来教育会議」という未来の社会、未来の人、未来の教育のあり方を、多様なマルチステークホルダーで共に考え、共に豊かな現実を創造していくためのプロジェクトを、2013年に株式会社博報堂をはじめとする企業の方々と共に立ち上げました。

2014年度は教育の未来について考え、「2030年の社会と教育のシナリオ」を作成しました。(第33回、第34回参照)

2015年度は、企業・行政・先生・NPO・学生などのマルチステークホルダーで、「不確実な未来への準備として2030年の社会・企業・人のあり方を考える」をテーマに、2030年にはどのような社会が訪れるのか、2030年に賞賛され、生き残る企業とはどのような企業か、2030年の未来企業の働き方はどのようになっているのか、未来企業のもつべき価値観とはどんな価値観かを考えるプロジェクトをスタートいたしました。(第35回参照)

10月にキックオフワークショップ、11月に第2回ワークショップ、12月に第3回ワークショップを実施しています。ワークショップまでの期間は、キックオフで表明したそれぞれの興味ごとに分かれてスタディツアーを行いました。

「テクノロジー、サステナビリティ・自然環境、労働・雇用・ダイバーシティ、イノベーション・起業、経済・産業構造、政治・安全保障」のチームに分かれています。

今回は、このプロジェクトで実施したワークショップについてご紹介いたします。

未来をつくるのは私たち自身である

このプロジェクトでは、キーノートスピーチや国内外のスタディツアー、メンバー同士のダイアログを通して、最終的には2030年に生き残る社会、企業、人のあり方のベースシナリオを描き、各企業への戦略的示唆を得ることを目標としています。そのために、今見えていることと見えていないことの両方から2030年の未来を考え、「未来は誰かに与えられるものではない。未来をつくるのは、私たち自身である」ことに気が付き、アクションを起こしていくことを大切にしています。

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ベースシナリオとは、未来予測の正しい答えではありません。未来の変化に対応できるかどうかの問いです。今後の世界を動かす重要な政治、経済的なイベント、主要な登場人物や組織、彼らの意図、世界を動かすロジックを抽出し、そこから複数の未来像を描きます。その過程では、確実なことは共通させるが、不確実な要素によってシナリオを分岐させ、違った未来を描いていくのです。

ベースシナリオを描く時の三つの視点は、以下の通りです。

  • 未来の社会
    ・今後、世界を動かしうる要因となるだろう政治・経済のトビックス、地球イシューとそこに流れるロジックとは
    ・ITによるイノベーションはどんな未来社会をもたらすか
    ・人口動態はどんな未来社会をもたらすか

  • 未来の企業
    ・21世紀に賞賛されるグローバル企業が果たすべき役割とは
    ・中長期視点をどのように経営に取り入れるか
    ・持続可能性と成長を実現するための視点とは

  • 未来の人
    ・21世紀未来企業の新しい「働き方」とは
    ・21世紀型グローバルリーダーシップ人材とは
    ・そうした人材を育てるための教育のあり方とは

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これらの視点をもとに、キーノートスピーチやスタディツアーなどを行っています。

シナリオをつくる過程も特徴的です。これまでのシナリオプランニングは、単一の企業が外部環境変化に対応し、生き残るためのアプローチとして行われることがほとんどでした。今回は、マルチステークホルダーと共にシナリオを描くプロセスことで、外部環境を対象化して見る世界観から外部環境自体に関わり、さらには創りだしていくアプローチへと移行しています。

ロイヤル・ダッチ・シェル社が行っているシナリオプランニングが、後者の例として適切です。生き馬の目を抜く「知略」と大局に立った「筋書き」が求められるエネルギー業界において、ロイヤル・ダッチ・シェル社が世界屈指のエネルギーメジャーであり続けられる理由のひとつとして挙げられる「シナリオプランニング」。最新のシナリオプランニングは、「単一の企業やセクター」での実施から、関連するステークホルダーと共にしたプロセスで

シナリオを描くことで、より深く精緻な探究と、さらには外部環境自体に働きかけ創りだしていくことへと発展を遂げています。

このように、一社だけの生き残りに焦点をあてるのではなく、大きな視野と種類の異なる視点を持ち合わせることで、より現実的なシナリオをつくることができるのです。

また、未来のベースシナリオをより豊かに描くには、影響力のある主体者による、多様な視点でつくることが不可欠であるため、未来教育会議では共創型でシナリオプランニングを行うことを大切にしており、企業、行政、学生、メディア、NPONGOなど、様々なセクターの方にご参加いただいています。

3.jpgスタディーツアーで学んだことの共有

12月に実施したワークショップでは、それぞれのチームが実施したスタディツアーで学んだことを他のメンバーに共有し、未来の社会・企業・人を洞察するにあたって、大切だと感じられる”問い”を考える時間を持ちました。

 

新しい働き方(イノベーション)についての班では、古い組織が変わるチャンスがイノベーションにはあるのではないか、時代に早からず遅からず、よいタイミングでついていくのが難しいのでは、会社として目の前の課題に対応しつつ、どこにリソースを投資していくかを考える必要性があるといった話がでました。

テクノロジーの班では、今の教育でICTを使いこなせる人材ができるはずなのに、現場の状態と乖離しているために浸透できていないこと、子ども同士がコミュニケーションとれず自分たちの問題を解決できない子が増えているのに、この部分を育てずに人工知能などの話が進むのはどうなのか、といった話があがりました。

現時点では、外部からのインプットを受けて発散と収束を繰り返しているフェーズですが、今後は未来の社会・企業人にインパクトを与える要因をシステムで捉えるために構造化し、シナリオプランニングへ移行する予定です。

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