skip to Main Content

21世紀未来企業プロジェクト

文部科学教育通信NO.375 2015.11.9掲載

「未来教育会議」という未来の社会、未来の人、未来の教育のあり方を、多様なマルチステークホルダーで共に考え、共に豊かな現実を創造していくためのプロジェクトを、2013年に株式会社博報堂をはじめとする企業の方々と共に立ち上げました。

2014年度は教育の未来について考え、「2030年の社会と教育のシナリオ」を作成しました。(第33回、第34回参照)

2015年度は、企業・行政・先生・NPO・学生などのマルチステークホルダーで、「不確実な未来への準備として2030年の社会・企業・人のあり方を考える」をテーマに、2030年にはどんな社会が訪れるのか、2030年に賞賛され、生き残る企業とはどのような企業か、2030年の未来企業の働き方はどのようになっているのか、未来企業のもつべき価値観とはどのような価値観かを考えるプロジェクトをスタートいたしました。

今回は、なぜ未来の企業について考えるのか、その理由についてまとめます。

 

二十一世紀の教育の目的とは?

OECDは二十一世紀の教育の目的を以下のように定義しています。

  • 持続可能な成長を実現する社会

  • 多様な人々が安心して共生できる民主的な社会

二十世紀は、持続可能性や多様な人々が幸せに生きることをあまり意識せず、自国が成長することを一番に考えてきた時代であると言えるのではないでしょうか。今までの社会のあり方を踏まえ、二十一世紀は持続可能な成長を続けながら、様々な人が共生できる民主的な社会をつくるために、教育がなされるべきだと定義しているのです。「理想の社会をつくるために必要な力を教育と通して身につける」と理解することができると考えます。

 

子どもたちが直面する課題

二十一世紀を生きる子どもたちは、どのような課題に直面しているのでしょうか。

OECDは以下のようにまとめています。

  • 技術革新に対応すること

  • あふれる情報を取捨選択すること

  • 経済成長と地球環境の保護という二つの矛盾する目的を達成しなければならないこと

  • 豊かさの追求と、貧困や富の格差の是正を同時に考えること

これらの課題は、二十一世紀の社会を生きる上で生じるものです。子どもたちは、これらの課題を解決し、より良く生きるための力を身につけなくてはならないのです。

 

OECDのキーコンピタンシー

上記のような社会を実現するため、特定の専門家だけでなく、すべての個人にとっても重要とされるコンピテンシー(つねに安定した業績を上げている人材に共通して観察される行動特性)をOECDは次のように定義しています。これらは、教育改革のガイドラインとして、重要な役割を果たしているものです。

 

Ⅰ.相互作用的に道具を用いる

語学や数学等の教科の知識に加え、テクノロジーに対するリテラシーが含まれます。

Ⅱ.異質な集団で交流する

他人と協働する力に加え、争いを処理し解決する力が含まれます。

Ⅲ.自律的に活動する

不確実な時代を幸福に生きるため、自らの人生を計画する力に加え、環境から自分を守る力が含まれます。

 

また、これら3つのキーコンピテンシーの核となるのは以下の2つの力です。

 

A.自ら工夫・創造する力

教えられた知識をただ繰り返すのではなく、複雑な課題を解決するために、自ら考える力と自らの学習や行為に責任をとる能力のこと。

B.リフレクション(内省)する力

慣習的なやり方や過去に成功した方法を規定通りに適用するのではなく、変化に応じて経験から学び、批判的なスタンスで考え動く能力のこと。

 

子どもたちは、これらの能力を学校生活の中で身につける必要があるのです。それは、二十一世紀の社会を幸せに生きるために必要だからです。

 

現状の日本の教育課題は?

これまで、二十一世紀の社会と子どもたちに必要な力について述べてきました。

それでは、現状の日本の教育課題はどのようなものがあるのでしょうか。

未来教育会議で教育課題について考えた際、「誰もが一生懸命なのに、子どもたちは本来の力(主体性、創造性)を開花することができない」ことが課題ではないかという結論に至りました。

社会には様々なステークホルダーがあり、それぞれの立場で誰もが真摯に取り組んでいます。しかし、その部分最適化こそが教育システムの崩壊を加速させていると考えています。

 

教育と社会は双子の関係

未来教育会議で上記の探求を進める中で、「教育と社会は双子の関係」であると確信を持つようになりました。

第35回_挿入画像.jpg

二十世紀の社会は、定量的な評価基準、標準化・マニュアル化、ヒエラルキー構造といった画一的なものでした。その方が工業化を進めるには好都合だったのです。

親子の成功の定義も、大学受験の成功や大企業や安定した職種への就職といった具合に画一的です。

そのため、社会が学校現場に要求するのは、成績評価、偏差値重視、教師と生徒の主従関係、決められた学習指導要領に則った授業といった具合に画一的な教育でした。

このように、社会のあり方が教育の内容に色濃く影響を与えているのです。

二十世紀はこのような社会と教育のあり方で問題がなかったかもしれませんが、上記で記した通り、二十一世紀を幸せに生きるためには、このままの社会と教育のままではうまくいきません。

そのため、2014年度は「2030年の社会と教育」について考え、2015年度は社会を創りあげている大きな要素である企業の未来について考えています。

 

未来企業プロジェクト

2015年10月、未来教育会議の2015年度の活動である「未来企業プロジェクト」がスタートしました。第一回目のワークショップには、企業・行政・NPO・学生など、多くのマルチステークホルダーの方々にご参加いただき、「2030年の社会について、自分として関心があることは何か?」について探求しました。

ワークショップでは、最初にそれぞれ関心のあることをポストイットに書き出し、その内容を発表してどのようなことに関心があるのか、多くの人の関心事は何かを可視化しました。

「テクノロジーの発展はどうなっているのか」「どのような働き方があるのか」「日本のよさはどうなっているのか」「グローバル化はどのように進んでいるのか」「地方での暮らしや仕事はどうなっているのか」「産業構造に変化はあるのか」「豊かさの定義は変わっているのか」など、様々な関心事が挙げられました。

これらの関心事をグループ化すると、「テクノロジー」「サステナビリティ・自然環境」「労働・雇用・ダイバーシティ」「イノベーション・起業」「経済・産業構造」「政治・安全保障」「地方」「グローバル化」というグループに分類できました。

メンバーそれぞれ、最も関心のあるグループに所属し、今後はその話題に詳しい人や場所に学びにいくスタディツアーを実施します。

どのような企業の未来が描けるか、今後ご紹介いたします。


 

Back To Top