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未来を切り開くアントレプレナー ライフイズテック(Life is Tech!)の挑戦

文部科学教育通信 No.332 2014-1-27に掲載されたグローバル社会の教育の役割とあり方を探る(42)をご紹介します。

21世紀という複雑かつ難解な問題が山積する時代において、今までにない仕事を生み出し、新しいスタイルで働いている若者の姿が目立つようになりました。また、その仕事は単純なお金儲けのためだけではなく、社会における様々な問題を解決することに通じているケースが多いです。今回は、アントレプレナー(起業家)とその力について学ぶ機会としたいと思います。

 

アントレプレナー

今までにない仕事を生み出しているアントレプレナーとは、どのようなことを行っているのでしょうか。アントレプレナーを多く生み出しているアメリカで、起業に関するノウハウ本が多く出版されています。その中の一つRobert Toru Kiyosakiの著書『Rich Dad’s Before You Quit Your Job』に、以下のようなことが書かれています。

「起業とは、パラシュートが開くかどうかわからないのに、飛行機から飛び降り、下降しながらパラシュートを開くようなもの。パラシュートが開かなければ、地面に衝突し、跳ね上がる。」このように、アントレプレナーは正解だとわかってから動き出すのではなく、動き出してから出来事を振り返り、より良い方向へ走り続けるというリスクを取ります。

リスクを取って動き始めると、上手くいくこともあれば、困難な状況に陥ることもありますが、彼らは小さな成功で満足したり、壁を乗り越えるのを諦めてしまうのではなく、ビジョンを達成するために、創造的問題解決に取り組みます。

とても大変そうと思われる方もいるかもしれませんが、アントレプレナー本人は、そのことを大変だとは思っていません。夢や目標を実現することの方に夢中なため、大変さよりも、実現欲求の方が勝っているというのが、より正しい表現かもしれません。苦悩よりも、夢の方が、心の中で占める割合が多いのです。

アントレプレナーは自己マスタリー(自分が「どのようにありたいのか」、「何をつくり出したいのか」について明確なビジョンを持ちながら、ビジョンと現実との間の緊張関係を創造的な力に変えて、内発的な同期を築くプロセスのこと。)を持っています。Appleの生みの親であるスティーブ・ジョブズは、「フォルクスワーゲンのようなPCがほしい!」という強い願いを持っていました。DELLの創設者であるマイケル・デルは、「IBMに勝ちたい!」と強く願っていました。ジョブズもデルも、どちらも素晴らしいアントレプレナーですが、ジョブズにはデルのように安価なPCを大量生産することはできないですし、デルにはジョブズのような美しいデザインのPCをつくることはできません。これは、能力的にできないのではなく、自己マスタリーが異なっているためです。このように、アントレプレナーはどのような世界をつくり出したいのか、何を生み出したいのかという明確なビジョンを持ち、対象に対して多大なエネルギーを注ぎながら、自己マスタリーに忠実に生きているのです。

 

今までにない仕事を生み出すために必要な力

それでは、アントレプレナーの「今までにない仕事を生み出す力」とは具体的にどのような力を指すのでしょうか。

私は、大きく3つの力が必要だと考えています。

 ①リフレクション(内省)力

率先して行動を起こし、その結果を振り返り、ビジョンや目標に向かうより良い方法を探し続けるアントレプレナーは、学習者そのものです。

学習し続けるという行為において重要なのは、新たな知識を増やすだけでなく、自らの行動や思考を内省することです。この内省も、ただ闇雲に振り返るのではなく、ビジョンやありたい姿と比較して現状がどうなのか、何を行えば目標に違づけるのかを考えることが大切です。

 ②コラボレーション力

新しい仕事を生み出す時に、自分と似た思考、経験を持っている人とだけ関わるのではなく、様々な考え方や経験をもった多様な人々と協力することが大切です。

目標を達成するために、どのようなメンバーのいるチームをつくるべきかを考え、多様な人々から学び、自分一人では考えつかないアイデアを出せることがアントレプレナーには必要です。 

③創造的問題解決力

前述した通り、新たなことに挑戦する時、前例のないことに挑戦する時には、実現に向けたステップは、どこにも存在しません。自分で、ステップを創るしかないのです。現状と有りたい姿とのギャップを埋めるために、解決策を創造することが大切です。システム思考やクリティカル思考など、さまざまな思考法が、創造的問題解決を支援するために用意されています。

 

日本のアントレプレナー ライフイズテック(Life is Tech!)の挑戦

日本にも素晴らしいアントレプレナーはたくさんいます。その中でも、ITの分野において新たなムーブメントをつくっているのがライフイズテックです。Life is Tech!1.JPGのサムネイル画像Life is Tech!2.jpg

ライフイズテックは、ITに興味を持つ人口を増やし、日本からもジョブズやデルのようなIT業界のスターを生み出すために、「中高生のためのプログラミング・ITキャンプ」といったアプリケーションやプログラミングに触れる機会を提供しています。

創設者である水野雄介氏は、「子どもひとりひとりが持つ可能性を、最大限伸ばせる社会をつくりたい。」と願い、ライフイズテックを立ち上げました。

水野氏はライフイズテック立ち上げ前に「野球だとイチローのようなスター選手がいるが、ITの分野だと日本にはスターはいない。なぜだろう?」と考えたそうです。考えをすすめていくと、野球は子どもの頃からクラブ活動などで取り組んでいる人が多いことに対して、プログラミングやアプリケーションの作成は大学で専攻しなければ触れる機会がほぼないということに気付きました。野球のように、プログラミングやITに対しても子どもの頃から慣れ親しむことができると、子どもの可能性を広げることができると水野氏は語ります。

ライフイズテックが開催するプログラミング・ITキャンプの参加者は年々増加しています。増加の要因は、子どもの頃からプログラミングを学ぶ機会の重要さに保護者が気付きはじめたということだけでなく、キャンプに参加する子どもたちの成長が他の子どもたちを惹きつけていることも大切なポイントになっています。

キャンプに参加する子どもたちは、様々な視点でどのようなアプリを開発すると良いか考え、他の子どもや大学生のインストラクターと共に学び、時に協力し、時に競いながら学習のサイクルを回します。キャンプに参加した子どもたちは、プログラミングの技術だけでなく、課題解決力やリーダーシップを身につけることもできます。このような力を身につけた子どもたちが、新たな時代を担うアントレプレナーとなっていくのだろうと考えています。

 

全ての方がアントレプレナーになることは難しいと思いますが、どのような場所においても、アントレプレナーの持つ力を意識して活動することが21世紀を幸せにいきるために必要であると考えます。

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