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マルチステークホルダーで教育の未来をつくる 未来教育会議

文部科学教育通信 No.333 2014-2-10に掲載されたグローバル社会の教育の役割とあり方を探る(43)をご紹介します。

 

2008年以降、世界では教育改革が猛スピードで進んでいます。

‘グローバル化”複雑化”相互依存性’がキーワードとなる新しい時代において、人々に求められる能力が従来とは異なるということがその背景にあります。

教育を改革するために、教育現場、企業、行政、NPO/NGOといった様々な立場にいる人々がそれぞれ教育や社会のあり方について議論しています。しかし、皆望んでいることや願っていることを突き詰めると非常に近いことを思っているにもかかわらず、立場や所属が違うがゆえになかなか協働することができずにいます。

そのため、時間をかけているにもかかわらず、学校教育と社会全体の連携がうまくとれておらず、飛躍的に教育改革が進んでいるという実感はありません。

このような状況を解決し、より良い未来に全員で向かっていけるよう、株式会社博報堂をはじめとする企業の方々と共に、マルチステークホルダーからなる多様な人々と未来について話し合い、より良い教育、より良い社会を実現することを目的とした「未来教育会議」を立ち上げました。

今回は、未来教育会議立ち上げの背景を追いながらその魅力をお伝えいたします。

 

未来教育会議とは

 未来の社会、未来の人、未来の教育のあり方を、多様なマルチステークホルダーで共に考え、共に豊かな現実を創造していくためのプロジェクトです。

急速にパラダイムシフトする社会の中では、教育のあり方と社会のあり方を同時に進化させることが大事です。この二つを別のこととして捉え、それぞれにおいて議論していては、子どもたちが受ける教育と社会において必要とされる力が大きくずれてしまう恐れがあります。実際、社会で必要とされるコラボレーション力やリーダーシップ、課題解決力などは、学校教育で教えていません。教育現場と社会に大きな隔たりがあることがわかります。

そこで、様々な立場の人と一緒に、私たちが創るべき未来の社会の姿とはどのようなものか、そこで生きる人々はどのような力を持っているのか、そのような人びとを育てるための教育はどのようなものか、といった論点で話し合って共有ビジョンをつくり、そのビジョンに向かってそれぞれの立場で前進することが必要であると考えています。

学校、家庭、企業、地域が共に連携して、豊かな未来の実現に向けたアクションを創造できるよう、未来教育会議は活動を始めています。

それでは、このプロジェクトを立ち上げた背景はどのようなものだったのでしょうか。

 

シフト化する社会と価値観

大きな時代のシフトの中で、社会システムとその社会を支える人の価値観も変容しています。20世紀に重視されていた’効率”画一性”確実性”規制”使い捨て’といった価値観は、21世紀の今では’効果”創造性”不確実性”開放”循環’に変化しています。

子どもたちが大人になった時、複雑化した課題を解決し、イノベーションを起こすために創造性や国境を越えた思考を求められるのにもかかわらず、いまだに教育現場は画一性や国内完結の思考から抜け出せていません。テストや入試の在り方も、いかに短時間で間違いなく高得点があげられるかが重視されています。そのため、子どもたちは小さな頃から自由に発想したり、コラボレーションすることよりも、一問一答式の問題をいかに早く、正確に解けるようになるかを繰り返し練習する傾向にあるのです。

高度経済成長期であれば、こういった効率や画一性を重視するやり方が合っていたのかもしれませんが、現代において本当にこのままで良いのでしょうか。

このような現実と向き合い、学校教育の領域の外にある知慧や経験を教育に取り入れる必要があると考えています。

 

現代の教育が抱える問題点現代の教育が抱える問題点

 大きく時代が変化する中、教育が迷走していることはお伝えしましたが、もう一つ残念な現象があります。

子どものことを思う大人たちの善意と懸命の頑張りが、結果として子どもたちを苦しめるという悪循環を生んでいることです。

どうしてこのようなことが起きているのか、システム図を書いて分析しました。

目指す社会のイメージが立場によって異なるため、課題に対して個別の対処療法をとっています。そうすることで教育現場への指示や圧力が増すため、現場に対する負荷が増加します。教育システムはますます複雑化し、教員や子どもに対する負荷が拡大します。結果として、子どもたちの本来の力である主体性や創造性の開花が損なわれてしまいます。

最初は個別の課題を解決するために善意で始まったにもかかわらず、最終的に教員や子どもたちといった教育現場に対する圧力となってしまっているケースが多いことをふまえ、部分最適を求めるのではなく全体で考えて動くために、マルチステークホルダーで教育の未来や社会の未来について話し合い、共有ビジョンを打ち出すことが必要であると考えています。

 

未来教育会議で私たちができること

 それでは、未来教育会議で何ができるのでしょうか。未来教育会議のあり方.png

もともと未来教育会議は株式会社博報堂が開発した「bemo(ベモ)」という手法を用いて立ち上がりました。bemoとは、様々なステークホルダーと一台のバスに乗り込み、「旅」をしながらリサーチをし、「システム全体」を見据えて、そこから解決策や未来へのアクションを創造していく手法を指します。

bemoの魅力は、多様な人々との話し合いや、様々な現場を実際に見ることで、自分たちに一番適した行先を決めることにあると思います。

そのため、未来教育会議が何かを必ず行うといったことは名言できないのですが、そこを参加する人々と一緒に考えていくことができます。

この活動の皮切りとして、2014316日(日)にキックオフシンポジウムを開催する予定です。シンポジウムでは、平田オリザ先生や米倉誠一郎先生をはじめ、高校生や大学生といった若者、新しい教育にチャレンジしている教育現場の方、企業の方によるスピーチを聞き、参加者も「私たちが目指す未来の社会とは」というテーマでダイアログ(対話)をします。誰かを責めたり、何かのせいにするのではなく、未来を見つめて「願い」について話し合う機会としたいと考えています。そして、その話し合いを通して、これからの道筋が見えてくることを信じています。

ぜひこの活動にご興味のある方は、こちらのサイトをご覧ください。

URL:http://miraikk.jp/

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