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誰にとっても無縁じゃないリーダーシップ

文部教育科学通信No.400 2016.11.28掲載

先月から品川女子学院の高校生を対象に「リーダーシップ講座」を実施しています。リーダーシップとは、自分の言葉や行動、存在を通して、自分以外の人も主体的に動くようにしてしまう影響力のことです。リーダーシップは特別な人のものと思われがちですが、誰にとっても必要な力です。これは大人だから、子どもだからということは関係なく、高校生でも幼稚園児でもリーダーシップを発揮することは可能です。

 

品川女子学院では、このような内容で「リーダーシップ講座」を進めています。

第1回:誰にとっても無縁じゃないリーダーシップ

第2回:自分の強みを活かしたリーダーシップ

第3回:対話、メンタルモデル 第4回:リフレクション

第5回:未来のためのリーダーシップ論・学びの振返り

 

今回は第1回と第2回の内容について触れていきたいと思います。
第1回:誰にとっても無縁じゃないリーダーシップ

 初回はリーダーシップとは何かを知り、自分のリーダーシップを振り返ることを目的に授業を実施しました。

 

まずは、皆さんが憧れる身近なリーダーを具体的にイメージしてもらいました。部活の部長や先輩、校長先生、スティーブ・ジョブス、孫正義、SMAPの中居正広など高校生のイメージするリーダーは多種多様ですが、高校生も自分なりのリーダーのイメージはきちんと持っています。ここで、リーダーシップは誰もが持つ力であり、潜在的な力であることを伝えました。さらに、誰もが持つ力であることの理解を深めるために、「赤ちゃんには、どんなリーダーシップ(影響力)があるでしょうか。」と質問をしました。リーダーシップは影響力であると捉えれば、赤ちゃんにもリーダーシップがあるのです。赤ちゃんには人に「見てるだけで幸せな気持ちになる」「何かしたあげたくなる」といった感情を抱かせます。これもリーダーシップの一つであり、赤ちゃんにもできるのだから自分にもその力があることを気づいてもらいました。

 

リーダーは常に未来に対する意図を持っています。ありたい未来を描き、それを実現したいと思う意図があるのです。その意図が強ければ強いほど、ありたい未来の実現に向けてリーダーシップは向上します。人の言動には必ず意図があります。意図とはどのようなものかを理解してもらうために、このような問いについて考えてもらいました。
問い:どんな意図をもっている?

  • そのアクションにはどのような想いが込められていますか。
  1. 話し合いが煮詰まった時、気分転換を提案する。
  2. お母さんが不機嫌だと解ったら、「お母さんのおいしいご飯が食べたいな」と言ってみる。
  3. みんなのノリが悪い時、自らテンションをあげて頑張る。
  • そんな時、どのようなアクションをとりますか。その意図は。
  1. 友達が悲しんでいる時、どんなアクションをとりますか。その意図は。
  2. みんながやる気をなくした時、どんなアクションをとりますか。その意図は。
  3. お父さんが疲れていると思ったら、どんなアクションをとりますか。その意図は。

 

さらに「どんな時に、誰に対して、身近なリーダーシップ行動をとっていますか。」という問いを投げかけ、自身がリーダーシップを発揮したいと感じるときの意図は何かを考えてみます。この意図を考えることがリーダーシップの始まりです。自分はどのようなときにモチベーションや行動力が上がるのかを知り、その力を原動力にすることが困難と向き合いながら、推進していく根源となるからです。

 

第2回:自分の強みを活かしたリーダーシップ

第1回の未来に対する意図を発展させ、あなたの心を突き動かす動機の源をテーマに実施しました。意図の段階では、まだ自分に対しての理解が漠然としており深掘りできていません。誰のために、どんな役に立ちたいのか、社会にどんな価値を提供したいのかを追求し、自分の判断基準や信念としてありたい未来のために活用できるのが動機の源です。  自分の動機の源を知るために、気になるテーマとそれはなぜか、自分の価値観と紐付けて拾ってもらうことにしました。ここで使用したテーマは、SDGsという国連が提唱する持続可能な開発目標です。SDGには人間、地球及び繁栄のための行動計画に対し、17の目標があります。貧困や飢餓、エネルギー、気候変動、平和的社会など、持続可能な開発のためのテーマからひとつ、自分の興味があるテーマを選択し、その理由を探ってもらいました。いずれのテーマもこれからの時代を生きる高校生にとっては、避けては通れない、世界共通の課題です。同じものを見ても、人それぞれ興味をもつものは異なります。そこには自分が大切にしている価値観や信念とつながる理由があるからです。自分が興味のある領域と理由を見出し、動機の源とつなげることで、自分が進みたい将来の道やありたい姿も明らかにすることができます。多くの高校生が悩む自分の進む方向性を探すきっかけづくりにもなるのです。 動機の源とリーダーシップ ・人は、複数(たくさん)の動機の源を持っている。人それぞれの個性や専門性が多様なリーダーを存在させ、問題解決の幅が広がる。

・動機の源を知るには、ポジティブ、ネガティブな感情の声に意識を向け、その感情の理由を探る。

・動機の源を記録しリスト化し、モチベーションやビジョンとつなげることで、自分を活かしたリーダーシップを発揮できる

・日々の生活で、意識的に動機の源を活用することで、学習意欲や解決力が高まり、能力が最大化する。

 

現代は、子どもたちが社会の中でリーダーシップを伸ばす機会が減っていると言われています。核家族化や地域との関わりの減少で、異年齢の集団に属したり、多様な背景をもつ人とのふれあいが減っているのです。学校生活の中では、リーダーの不在により、子ども同志でコミュニケーションが上手に取れない、学校行事の推進役不足など影響が出始めています。また集団の中で発生するトラブルの仲裁役がおらず、不登校やいじめにもつながることがあります。子ども達自身が自分たちの遊び場や学び場をより良い環境へと変化させていくことができれば、充実感、満足感の高い豊かな子ども時代をおくることができます。子どもの頃からリーダーの経験を積み重ねることは、社会に出て活躍する良い練習となることでしょう。  リーダーシップは他者をリードし導く印象が強いですが、自分に対するセルフリーダーシップの意味合いも含まれています。自分の個性や能力を活かしながら、これからの人生を切り開いていくためにも、自分自身をリードしていくことが必要です。このためには様々な体験の中から自己肯定感を高め、「自分はできる」と自信を持たせることです。また、新しい体験の中では、異なる考え方の友達と話をしたり、ロールモデルとなる先輩や大人と触れ合う機会も増えるでしょう。その中から自分は何者なのか、どんな強みや弱みを持っているのか、自分を知る機会を得ることにもなります。

様々な体験の中には、失敗をしたり、挫折を味わうこともあるでしょう。「失敗したらどうしよう」「失敗したら恥ずかしい」といった気持ちが先行してしまうとせっかくの成長の機会を逃してしまうことになります。このように子どもが困難にぶつかったときには大人の適切なサポートが必要になります。何よりも失敗をしたことを怒らないことです。まずは挑戦したことを褒めてあげましょう。その上で「なぜ失敗をしたのか」「次はどうすれば良いのか」を子どもが考えるサポートをしてあげましょう。その時、大人が答えを与えてはいけません。子ども自身で考え、持論を持つことで主体性が育まれます。

「失敗は誰にでもある。乗り越えることが大切なんだ」ということを子どもが理解すれば、いろいろとなことに興味を持ち、挑戦する行動力が芽生えることでしょう。こういった日々の積み重ねがリーダーシップを育むのです。

 

 

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