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なぜOECDキーコンピテンシーなのか

文部科学教育通信No.405 2017.2.13

未来に責任を持たない大人たち

教育改革がスタートし、約15年が経過し、その効果は、ミレニアム世代の持つ価値観や思考特性にも反映されています。最近の若者は、消費の意欲がないとか、野心がないという否定的な意見を持つのは古いパラダイムに生きる大人たちです。ミレニアム世代は、地球の未来を考え、持続可能な経済活動に関心を持ち、困っている人たちを助けたい、みんなが幸せに生きる社会を創りたいと言います。やさしく弱いメッセージに聞こえるかもしれませんが、それが本当に難しい時代になっているという現実を彼らが自分事としてとられていると考えるべきでしょう。しかし、大人の多くは、「私はその前に死ぬから」「それは君たちの問題だ」という態度です。「戦争が無い時代はない」とか、「中国をはじめとする新興国が協力しない限り環境問題は解決できない」等と言う人もいます。難しいからあきらめるという態度は、OECDの教育観の真逆です。未来に責任を持たない大人たちの更に残念なことは、若者が自らの意志で行動することを許可しないことです。

 

ミレニアム世代に学ぶ大人たち

一方、世界はどのようにミレニアム世代を見ているのでしょうか。欧米の多国籍企業の多くは、ミレニアムをエンパワーし(信じて任せること)、管理職がミレニアムに学ぼうとしています。ミレニアムに仕事をしている様子を観察してもらい、彼らの目に、管理職の人々の仕事がどのように映っているのかをフィードバックしてもらうのです。「なぜ、そこで紙が必要なのですか」等、デジタルネイティブの彼らのフィードバックを通して、ミレニアム世代の常識に学びます。日本のように、上位者が全て正しいという考えはありません。

 

時代の先頭を走るリーダー

世界には、ミレニアム世代とともに、善い未来を創るために挑戦するリーダーの姿もあります。ユニリーバ社のCEOポール・ポルマン氏はその代表的な存在です。環境負荷を半減させ、10億人の生活を豊かにするという目標を掲げるポルマン氏は、これまでの大人の常識に挑戦しています。四半期ごとに決算を報告するために使う時間とコストを、この目標を具現化するために使うと宣言し、四半期決算を廃止しました。この話を聴き、年齢の高い人たちの多くは、10億人の生活を豊かにするために、経営資源を使うのは経営の目的に反していると言います。若者の多くは、ポルマン氏の挑戦に賛同し、可能ならば自分もそのような取り組みに参画したいと考えます。

 

なぜキーコンピテンシーなのか

OECDのキーコンピテンシーは、これまでの学力を中心とした教育の何を変えることを求めたのでしょうか。複数の要因が複雑に絡まり、決して一人では解決できない問題を解決する力を育む事です。ポール・ポルマン氏のように、誰もが不可能だと思う目標を掲げ、その実現のために、解決策を見いだし多様な利害関係者を説得し、巻込み、その実現のために行動する力を育む事です。情報収集や分析にIT技術を活用し、テクノロジーを活用し、解決策を創造する力です。問題はより深刻化・複雑化していますが、テクノロジーにより、歴史上類を見ないレベルで、私たち一人ひとりが、エンパワーされているところに大きな可能性があります。これまでは、大企業にしかアクセス出来なかった情報も技術もすべて無料あるいは低コストで手に入ります。イノベーションを、誰もがとても簡単に行うことが可能になりました。教育の枠組みに学力のみでなくテクロノジーを活用し、イノベーションを起こす力が加わったのはこのためです。

 

OECDが主導する世界の教育改革がスタートし15年が経過しましたが、日本では、まだ、この改革は始まっていません。21世紀学び研究所を立ち上げ、大人にキーコンピテンシーを広める活動を始めています。

 

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