skip to Main Content

2018年の活動目標

文部教育科学通信 2018.1.15掲載

今年も実現したいことがたくさんあります。その一部をご紹介させていただきます。

 

社会人基礎力の再定義

2018年に予定されている経産省による社会人基礎力の再定義をとても楽しみにしています。昨年12月には、我が国産業における人材力強化に向けた研究会にて、私の課題意識を提示させていただきました。戦後の高度成長期を支えた日本の人材育成のあり方を見直す必要があると同時に、人生100年時代において、人の生き方が変わることも、社会人基礎力の再定義が必要な理由です。社会人基礎力の新しい定義を核に、企業の人材育成、高等教育、生涯学習、初等中等教育、幼児教育と、一連の教育が連鎖的に変わっていくことを願っています。すでに、文科省より進められている学習指導要領の改訂と融合することで、日本における教育改革が全体性を持つことになります。

 

オランダの地球市民教育ピースフルスクールを日本の幼稚園・小学校で展開する中で、学んだとても大切なことのひとつは、社会人基礎力の多くは、幼児の頃から学ぶことができるものだということです。ピースフルスクールが教育の軸とする自立と共生は、社会人基礎力では、主体性、コミュニケーション力、コラボレーション力、問題解決力に当たります。このような力を、3歳児は3歳児なりに、すでに発揮することができるのです。そんな背景もあり、社会人基礎力の改定と平行して、未来教育会議では、人一生の育ちを整理することに取り組んでいます。

 

もうひとつ大切なことは、立場や年齢に関係なく誰もが学び続ける時代になったことです。人生死ぬまで学び続ける時代です。それが大変なことではなく、楽しいことと思えるような社会を創る必要があります。

 

女性の活躍推進と働き方改革

国家戦略として進められている女性の活躍推進と働き方改革ですが、そのスピードは遅く、世の中全体のコンセンサスが取れている訳ではありません。そんな中で、当事者である女性たちは、ワークとライフを共に充実させるために奮闘しています。また、働き方改革やダイバーシティ推進の担当者は、組織全体を巻き込むために懸命な努力を行っています。昭和女子大学ダイバーシティ推進機構では、女性と担当者を応援するために、様々な学びの機会を提供しています。今年は、跡取り娘のためのビジネススクールの企画も始まる予定です。

 

女性の強みは、コミュニケーション力、コラボレーション力、オープンでフラットなチーム運営力などで、この力を社会が取り込むことで、硬直化した日本社会に多様性と柔軟性がもたらされるはずなのですが、画一性が根強い日本社会に、そもそも多様性を吸収する力がないため、女性の活躍推進のスピードが上がりません。一方で、ベンチャー企業やIT企業など、比較的新しい企業では、男女関係なく多様な働き方も実現していて、よい事例もたくさん生まれています。こうして、世の中は生まれ変わっていくのかもしれません。

 

非管理型組織

多様な働き方が主流になるこれからの時代において、組織のあり方も変わることが予測されます。すでに、日本でも、ベンチャー企業を中心にその動きが始まっています。非管理型組織とは、その名前の通り管理しない組織です。誰もが主体的に行動し使命を果たす組織は、ヒエラルキー型の組織や管理職を必要としません。報告や承認を得るための業務も発生せず、人は自由に動くことができます。自由には責任を伴いますが、必要なサポートを得ることもチームで動くことも、自由に行うことができます。組織のあり方は、その企業が使命を果たす上で最適化されるべきなので、すべての企業が非管理型組織を目指すことにはならないと思いますが、このようなトレンドが、今、世界に広がりつつあることは無視できない事実です。雇用のあり方や流動性、働き方や生き方、生活保障の設計等々、あらゆることが、変わっていく兆しです。同時に、このことは、人材育成にも大きな意味を持ちます。我々がイメージしている主体性やコラボレーション力を10倍位拡大しなければ、非管理型組織を実現することは難しいのではないかと思います。

 

システマティックチェンジ

社会起業家という言葉を生み出したビル・ドレイトン氏の思想に魅了され、社会起業家についての学びをデザインし、青山ビジネススクールで、社会起業家をテーマに半期の授業を行っています。今年は、ずっと夢だった社会起業家に学ぶワークショップを実施する予定です。

ワークショップでは、ビル・ドレイトン氏が創設したアショカという団体が認定した社会起業家アショカフェローを日本に招き、彼らが社会問題の解決にどのようなアプローチで臨んだのかをストーリーテリングを通して学びます。ワークショップでは、セオリーオブチェンジやシステム思考、ビジネスモデルなどのフレームワークに当てはめて、アショカが提唱するシステマティックチェンジについて学びます。システマティックチェンジでは、課題に対処するのではなく、課題を根本的に解決するためにシステム(構造)に介入します。日本社会にも変革が求められる今、社会を善くしたい思う人々が、この手法にたくさんのヒントを得ることができるのではないかと期待しています。

 

NPO活動

立ち上げから支援してきたNPO団体ラーニングフォーオールは、困難を抱える子どもたちに質の高い学習支援を実施する仕組みを確立し、成果を上げています。新たに取り組んでいる子どもの家事業においても、学習支援で培った仕組み構築力を活かし、高品質を担保する仕組み創りを進めています。しかし、現在の活動だけでは、全ての子どもたちを救うことはできません。そこで、すでに社会に存在するセーフティネットや教育機関とチームアップして地域全体で子どもたちを支援するという取り組みが行えないかと考えています。まだ、すべての答えを持っている訳ではありませんが、みんなで力を合わせて、どんな環境で生まれ育った子どもも、経済的に自立し、社会からその存在を感謝される人になって欲しいと思います。そのために、我々もシステマティックチェンジを学び、実践していきたいです。

 

21世紀の学び

社会人基礎力の改定、人一生の学び、女性の活躍推進、働き方改革、システマティックチェンジ、NPO活動と、様々な取り組みを行っていますが、その中心にあるのが、「学び」です。前例を踏襲しない、想像と創造を伴う「学び」が、未来を創るためには必要です。これまでの学校では、既知情報を学ぶことを学びと定義していましたが、21世紀に入り、想像と創造を伴う「学び」が、学びの定義に加わりました。変化する時代の中で、受身で時代を追いかけるのではなく、誰もが、時代を創ることに参画できるという発想の転換も起きました。誰もがパソコンや携帯でインターネットにつながる時代には、富がなくても、膨大な情報にアクセスできますし、何十億人にアクセスすることも可能です。誰もが、30年前と比べれば驚くほどパワーアップしています。ところが、私たちの「学び」がパワーアップしていないという危機感のもと、21世紀学び研究所を立ち上げました。21世紀の学びは、主体的なものであるため、メタ認知力を磨くことがとても大切です。正解のない中で、自ら正解を創るためには、自分で自分の考えを俯瞰し評価する能力を高める必要があります。働き方改革をはじめとする様々なパラダイムシフトは、過去の成功体験に基づく考えに縛られていると実現することはできません。また、何もかも捨ててしまうと、大切なものを守り続けることができません。不易と流行の判断を下す際にも、自分の思考と感情を客観視することが大切になります。21世紀学び研究所では、変化する時代にふさわしい「学び」を広める活動を加速させていきたいと思います。

 

シチズンシップ教育 ピースフルスクール

昨年は、幼稚園の教材を出版し、幼稚園での取り組みが広がりはじめています。今年は、現職の小学校の先生にご指導いただきながら、小学校の教材を充実させる取り組みをはじめます。子どもたちが、幼稚園や小学校で、理想の社会を実現するために自立と共生について学ぶことが、個人にとっても、社会にとってもよいことであるという確信は、今も揺るぎません。そのことが、社会に理解されるまで、孤軍奮闘する覚悟です。

 

今年もどうぞよろしくお願い致します。

Back To Top