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21世紀の社会人基礎力

文部教育科学通信 2017.12.25掲載

12月6日に、経済産業省で行われた「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」必要な人材像とキャリア構築支援に向けた検討ワーキング・グループ第4回人材像WGにて、「人生100年時代の社会人基礎力」と「教育のあり方、企業のあり方」についてご提案させていただきました。今回は、その内容を共有させていただきます。

 

学びと主体性の質の転換

 

【1.「学び」の質が転換していること】

①学校教育に社会人基礎力が含まれる時代になった。

OECDがキーコンピテンシーを定義した理由 : 変化・複雑・相互依存の時代(VUCAワールド)に、幸せに生きるために先例のない複雑な問題に対処する力を誰もが習得する必要があることを、教育関係者のみならずすべての人々が知る必要がある。それは同時に、持続可能な成長と民主的な社会の維持を可能にするために必要な力でもある。

②地位や年齢に関係なく、誰もが学ぶ時代になった

学習する組織であるGEのリーダーたちは、リーダーにも専門家的態度ではなく、学習者の姿勢を求める。変化の時代に、世界中のベストプラクティスを検索し、よいものを最も上手に取り入れることができれば、世界1の会社になれる!というのが信条だ。

 

〔学習するリーダー〕

学習者(Learner)の姿勢

  • いい質問の仕方を知っている
  • 選んでリスクを取る、変革する
  • 他者が考え、実践することを奨励する
  • 選択肢を幅広く探す
  • 立場・地位に固執せず、俯瞰する

専門家(Knower)の姿勢

  • あらゆる答えを知っている
  • あらゆるリスクを避ける
  • 見た目に焦点を合わせる
  • 自分の責任領域しか見ない
  • 立場・地位に固執する

〔学習する組織〕

GEでは、エリック・リースからリーンスタートアップの手法を学び、起業家の行動様式を組織の力に変える。

〔リバースメンタリング〕

  • デジタル・ネイティブ世代のITリテラシーの高い社員に、経営者のメンターを務めてもらう。
  • 仕事のスタイル・プロセス、ツール、情報収集・整理・保存、テクノロジー/アプリの活用、SNSでのネットワーキング、スピード感を学ぶ。
  • 無意識に古い仕事のスタイルを繰り返していないかのチェックは重要。
  • 2015年に実施して、デジタル世代のスピード感を学んで仕事に取り入れた。                     この引用はリバースメンタリングの部分のみです。※SWUキャリアカレッジエグゼクティブ共創コース ビザ・ワールドワイド・ジャパン 代表取締役 安渕聖司氏 講義資料引用

2.VUCAワールドの「学び」が求めること】

③変化に前向きに対処する

時代が求める変化を、現状の否定(自己否定)と捉えるのではなく、ありたい姿と現状のギャップを埋めるための目的に変える。世界のイノベーションが加速する背景には、テクノロジー革新に加えて、人々が前例のない複雑な問題解決に向かう「衝動」が存在する。学習する組織論では、この衝動を、クリエイティブテンションと呼ぶ。 〔関連するキーワード〕

自己肯定感、自己効力感、グロースマインド、マインドフルネス、リフレクション、クリエイティブテンション、チェンジメーキング、アントレプレナーシップ、リーダーシップ、課題発見力、課題解決力

④主体性を再定義する

自ら考え、行動と内省を繰り返し、得たい結果を自ら創る主体性を実践する。自己を知り、真の自分を生きる。その先に、創造性の開花や多様性の価値を生かしたイノベーションが生まれやすい社会がある。

⑤多様性を活かす対話力を持つ

多様性を活かすためには専門性、言語、組織、文化等の壁を超えて、相互理解と相互学習を行える対話力が必要になる。違和感を乗り越えるためには、感情のコントロールと、思考の柔軟性(評価判断を保留にする力)が求められる。

⑥民主的で参画型なコミュニティを作る

多様性を価値に変えるためには、多様性を包摂する力、多様な人々と共生する力が必要になる。民主的で参画型の組織を作る力は、コラボレーションの土台となる安心安全な環境を作る上でも重要な役割を果たす。

⑦システムとして物事を捉える

変化・複雑・相互依存の時代には、目の前の問題に対処するのではなく、問題を俯瞰し構造やシステムを理解する必要がある。社会起業家の父・アショカ創立者のビル・ドレイトン氏は、社会変革の手法としてシステム・チェンジを提唱している。今月には、ビル&メリンダ・ゲイツ、eBay創業者ジェフ・スコール、ロックフェラー財団等が、US$5億を出資し、世界の喫緊の課題に対してシステム・チェンジを起こすためのファンドCO-IMPACTが発足した。

⑧テクノロジーを道具にする

テクノロジーを活用するだけでなく、テクノロジーを活かし社会を変えて行く力を高めることも、OECDキーコンピテンシーは提唱している。日本がイノベーション立国になるためには、テクノロジー教育が不可欠である。

⑨ソーシャルとビジネスを融合する

ユニリーバ社は、10億人の豊かな暮らしを実現すること、売上を2倍にすること、環境負荷を半減することの3つを2020年までに実現すると経営計画に盛り込んでいる。ソーシャルとビジネスが融合する時代に、地球市民を育むシチズンシップ教育が不可欠である。

⑩高い倫理観を持つ・正しい選択をする

フラット化する社会では、リーダーのみならず誰もが世の中を変える力を持つために、誰もが高い倫理観を持つ必要がある。そのためには、自分の行動や考えに対して批判的なスタンスで考えるリフレクションの習慣が求められる。

⑪学びを再定義する

知識の丸暗記による一本足の馬では走れない。深い理解には、目的:何のために理解するのか、知識:その知識/情報は何で、お互いにどういう関係にあるか、

方法:どう理解を進めるか、形式:理解の表現の形、の4本足が必要である。

 

【3.「学び」が求める環境】

⑫環境を創る

人々が、前例を踏襲しない学び(価値創造・リスクテイク)を必要とするチャレンジを行うためには、個人のみならず、指導者(例:先生、上司)と組織(例:学校・企業)も、有り方を変える必要がある。

 

【4.リフレクション(現実を見ること)から始めよう!】

⑬世界と同期する社会を創る

若者が世界と協働する社会を実現するためには、日本の個性や強みを残しながらも、世界と同期する社会を創る必要がある。

⑭社会人基礎力の改定 ⇔ 経済と教育の対話

画一的に学ぶ学校では、21世紀の時代が求める主体性と社会人基礎力を育むことが困難であることを社会全体が直視し、教育改革に取り組むためには、経済と教育の対話が不可欠ある。また、教育は社会の映し鏡であることを認識し、経済界から21世紀型にシフトする必要がある。

 

 

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