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昭和女子大学キャリアカレッジの女性支援

文部科学教育通信No.363 20115.5.11

昭和女子大学キャリアカレッジでは、社会で活躍する女性を応援する取り組みを行っています。

2014年に、安倍総理大臣が発表した2020年30%(2020年までに女性管理職比率30%)に向けて、多くの企業でダイバーシティ推進の取り組みが進む中で、ステップアップを目指す女性や、組織の枠の外で活躍することを考え起業する女性を応援するための取り組みです。

 

時代の変化

私自身は、男女雇用機会均等法が導入された頃に社会人としての人生を始めたので、若い女性を応援することに、とてもやりがいを感じつつ、社会というのは、無責任なものだと思います。私が20代の頃には、女性はクリスマスケーキに例えられ、24歳までに結婚することをすべての上司から強く勧められました。今なら、セクハラですが、当時は、そのような言葉もありません。子どもが生まれてからは、「お母さんが働いていて子どもがまともに育つのか」という冷たい攻撃にも会いました。ところが、30年たつとどうでしょうか。国の総理大臣が、女性が働くこと、子どもを産み育てることを女性に進める時代になりました。そして、多く女性たちは、突然の変化に戸惑いを感じています。そんな女性達に、私は、自己責任で、自分の人生の選択をすることを大切にするように伝えています。女性の場合、キャリアと結婚や出産というライフイベントのバランスを上手く取る工夫が、男性以上に重要であることは、今も変わりありません。

 

欧米の女性たち

欧米では、女性も、キャリアと結婚の両面から明確なビジョンを持ち、若いうちから行動しています。例えば、イギリスでは、弁護士、医者、聖職者などの資格を持つことで、キャリアを開発する女性が多いそうです。私も、MBAですが、MBAなどは、常に、結果を出すことが迫られ、ワークライフバランスが取りにくいので、人気がないそうです。また、弁護士でも、M&Aなどの企業弁護士はスピードが求められるため、民事訴訟の弁護士を選び、医者であれば、外科医ではなく内科医を選ぶというのです。こんな風に、働き続けるために、しっかりと計画を立てているという話です。アメリカの女性には、成功を望むのなら、あなたの成功を恐怖に感じる男性は、結婚相手に選ばないようにとアドバイスをもらいました。また、バーバードビジネススクールを卒業後、大手会計事務所でパートナーになった友人のご主人は、ビジネススクールの同級生なのですが、彼を選んだ理由は、学年で最も女性のキャリアに理解のある男性だと思ったからと言われてびっくりです。実際、彼女は、子育てをしながら、在宅勤務なども経て、パートナーに昇格していますが、ある時期、ご主人が、仕事をやめ育児に専念していたこともあります。

 

働き方の変化

女性の社会進出や、女性管理職の登用が、日本において当たり前になる時代が、もうすぐやってきます。その過程で、家庭における男性の役割が変わり、子育てに対する社会の支援の在り方が変わり、そして、企業における働き方が変わっていくことが予想されます。

昭和女子大学キャリアカレッジでは、こうした企業の変化も、支援していこうと考え、21世紀の企業の在り方や働き方についての勉強会も、近く始める予定です。教育視察で、オランダを何度か訪問する機会があり、ワークシェアをしている先生や、校長先生にお会いすることがあります。担任の先生や、校長先生を、2人がペアになり担当しています。校長先生にお話を伺った所、週3日勤務で2人とも働き、1日だけは、いっしょに勤務し、そこで情報共有を行うのだそうです。2人とも、30代でお子さんが小さいというのが理由です。特に難しそうでも、大変そうでもなく、普通のことのようにワークシェアを行っている様子に驚きました。その話を、オランダで支社長をされていたある日本企業の経営者にお話ししたところ、自分も、人事部長がワークシェアを希望すると言われた時、日本なら、「何を考えているんだ」と言うところ、オランダでは、その要求を受けるしかなかったけれど、実際、ワークシェアを始めても、何も支障がなかったことに驚いたというお話を伺いました。日本の企業においても、そう遠くない時代に、このような変化が実現するのだろうと思うと、これからがとても楽しみです。

 

現実

現実に目を向けると多くの企業において、それほどダイナミックな変化は起きていません。女性活躍促進の第一の波は、2006年にありました。当時、多くの金融機関を中心に、人口の低下に伴う労働人口の不足を予測し、女性の登用が積極的に進められました。当時、女性活躍促進は、小さなブームになっていました。しかし、残念ながら、2008年のリーマンショックで、多くの企業が、その取り組みをやめました。そして、2014年の安倍総理の2020年30%発言により、再び、企業の取り組みにエンジンがかかり始めました。今回は、特に、経団連に名を連ねた企業において、経営者自らが旗振り役となり、その取り組みを推進しています。しかし、残念ながら、組織全体に目を向けますと、女性活躍を加速させようという強いエネルギーを感じることができる企業は、それほど多くはありません。女性達も、突然の経営トップからの期待に驚き、戸惑いを感じているという状態です。

 

そんな中で、表(参照)を書いてみて、私の心が定まりました。2014年に新入社員として企業に勤め始めた女性は、間違いなく、時代の空気を感じています。彼らの多くは、共働きの人生を歩むでしょう。オリンピックの年である2020年に、彼女たちは28歳になり、2030年には、38歳になります。労働人口が減少する中、持続可能な発展を遂げる企業において、おそらく、2030年には、女性と男性が当たり前のように、いっしょに働いている時代が来るのではないかと思います。すでに、家庭における女性と男性の役割には、変化が見られます。男性のクッキング本も大人気の時代、もはや、厨房に入れない男性はいません。

 

ジェンダーギャプレポート104位の国 ジャパン

ジェンダーギャップレポート104位の日本。女性が、政治や経済活動に参画していないことがその理由です。健康や教育では、男女の差がないというのは、とてもありがたいことですが、女性が、この国の意思決定にまったく参画していないという現状を、変える必要があると感じます。GDPにおける日本の教育費が、OECD平均以下であるという現実が、長年変えられないのも、女性が、その意思決定に参加できていないからなのではないかと思うことがあります。子どもや生活者の視点が、この国の形を創る際に、もう少し取り込めると、より多くの人々が、不安を感じることなく暮らせるのではないかとも思います。そう考えると、女性の活躍促進は、日本の未来にとって、とても重要な役割を果たすのではないかと思います。

 

昭和女子大学の学長坂東眞理子先生のリーダーシップの元、キャリアカレッジ学院長として、女性の支援を通して、日本の未来に貢献したいと思います。

 

 

 

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