OECDのキー・コンピテンシー
OECDのキー・コンピテンシーとは、世界中のOECD加盟国が共通認識を持つ、グローバル時代を生きる力を定義したものです。今、教育に求められていることは、我々大人を超える大人に子どもたちを育てることです。OECDのキー・コンピテンシーは、子どもたちのために策定されたものですが、これを読むと大人にも、成長が求められる時代であることが解ります。THE DEFINITION AND SELECTION OF KEY COMPETENCIES Executive Summary(PDF) と ドニミク・S・ライチェン 立田慶裕監訳(2006) 『キー・コンピテンシー 国際標準の学力をめざして』 明石書店を参考に概要をまとめましたので、ご覧下さい。oecd_key_competencies.pdf
●OECDのキー・コンピタンシーは、どのようなロジックで策定されたのでしょうか。
OECDが、キー・コンピタンシーの定義に取り組んだ背景には、社会の変化があります。これまでの学校教育では、子どもたちが将来、幸せに、意義ある人生を生きるために必要な力を身につけることができないという課題認識に基づき、キー・コンピタンシーは、策定されました。
●前提となる時代の捉え方
時代背景を表す言葉は、変化、複雑性、相互依存の3つです。
- •変化 技術が急速に変化する世界においては、技術に関する学習はプロセスの一時点でのマスターだけでなく、変化に対する高い適用力が求められます。
- •複雑性 社会がどんどん複雑化、細分化してきており、個人的な関係においても、多様な人々との交流がますます求められてきています。また、グローバライゼーションは、新しい形態の相互依存性を作り出しています。
- •相互依存性 経済競争や、環境破壊に繋がる様々な活動は、個人の住む地域や国家の枠を超えて広がってきており、グローバライゼーションによる相互依存性は、今後ますます高まることが予測されます。
●子どもたちが直面するであろうチャレンジ
- 技術革新に対応すること
- あふれる情報を取捨選択すること
- 経済成長と地球環境の保護という二つの矛盾する目的を達成しなければならないこと
- 豊かさの追求と、貧困や富の格差の是正を同時に考えること
●OECD加盟国が目指す社会
OECD加盟国の究極の目的は以下の実現です。
- 民主的な社会の実現
- 持続可能な発展の達成
●キー・コンピテンシー策定のための基本方針
OECDのキー・コンピテンシーは、次のような指針に基づいて策定されました。
- 社会や個人にとって価値ある結果をもたらすこと
- あらゆる状況において、重要な課題への適応を助けること
- 特定の専門家だけでなく、全ての個人にとって重要であること
●成功の定義
個人と社会のそれぞれにとって価値ある結果とは以下の4つです。
■ 個人の成功
- 有利な就職と所得
- 個人の健康と安全
- 政治への参加
- 人間関係
■ 社会の成功
- 経済的生産性
- 民主的プロセス
- 社会的まとまりや公正と人権
- 環境維持
●コンピテンシーの3つのカテゴリー
- カテゴリー1:相互作用的に道具を用いる力
- 1-A: 言語、シンボルテキストを相互作用的に用いる能力
- 1-B: 知識や情報を相互作用的に用いる能力
- 1-C: 技術を相互作用的に用いる能力
- カテゴリー2:異質な集団で交流する力
- 2-A: 他人といい関係を作る能力
- 2-B: 協力する能力
- 2-C: 争いを処理し、解決する能力
- カテゴリー3:自律的に活動する力
- 3-A: 大きな展望の中で活動する能力
- 3-B: 人生計画や個人的プログラムを設計し、実行する能力
- 3-C: 自らの権利、利害、限界やニーズを表明する能力
●3つのコンピタンシーすべてに共通する最も重要な2つの力
3つのカテゴリーを包括する力として、自らの経験を内省したり、学びを抽象的に概念化する力や思考について考える力が不可欠です。
- リフレクション(内省力):キー・コンピテンシーの核心
- キー・コンピテンシーの根底にあるのは、自らを省みる思考と行動です。
- 状況に直面した時に慣習的なやり方や方法を規定どおりに適用する能力だけでなく、変化に応じて、経験から学び、批判的なスタンスで考え動く能力です。
- 自ら工夫・創造する力
- 今日的な課題に対処するために求められているのは、教えられた知識をただ繰り返すのではなく、複雑で精神的な課題に対処するために個人的能力を開発することです。
- キー・コンピテンシーの中心にあるのは、自ら考える力と自らの学習や行為に責任をとる個人の能力です。