BLOG
ブログ
2026.4.16
リフレクション・対話・学習する組織
新時代をひらく女性人材育成プログラム
SHARE

2025年11月10日文部科学教育通信掲載

今年も、福岡県が主催する女性準材育成プログラムのキックオフイベントで講演致しました。

「WOMEN’S BUSINESS CAMP 2025 ~新時代をひらく女性人財育成プログラム~」は、福岡県が主催する女性人材育成研修で、今年で5年目を迎えます。県内企業等で働く女性を対象に、個人のスキルアップとともに組織全体の変革力を高めることを目的としています。2025年度は「人への投資が組織の未来を作る」をテーマに、個人と組織を同時に成長させる学びの場として実施されます。

 

プログラムは受講者の階層に応じて構成され、課長相当プログラムでは組織マネジメントや課題解決力、財務基礎などを学び、最終的に所属企業の経営課題に対する提案を経営層へ発表します。係長相当プログラムではリーダーシップやコーチング、強みの活用を中心に、若手プログラムではキャリア形成や時間管理、コミュニケーション力を磨く内容が用意されています。さらに、推薦した企業の経営層や人事担当者向けにも、多様性を活かす組織づくりや女性の健康課題、優良事例研究をテーマとした研修が実施され、企業文化そのものの変革を促す仕組みになっています。

「WOMEN’S BUSINESS CAMP 2025」は、女性一人ひとりの成長を支援するとともに、企業における多様性推進や組織力強化を同時に実現する総合的な人材育成プログラムとして位置づけられています。

講演では、ダイバーシティ推進と学習の2つの観点からその重要性をお伝えしました。今回は、その一部をご紹介致します。

 

▶時代が人と組織に求めるもの

企業が目指す究極のゴールは、そのパーパスを通して顧客と社会に貢献する組織であり続けることです。そのために、イノベーションを実現することが期待されています。

日本は、長寿企業大国として世界にも知られています。創業100年超の企業は国内に4万5,000社以上存在し、100年以上の歴史を持つ企業の約半分が日本企業であることは驚きです。日本企業は、存続のために、これまで不易と流行を大事に必要な変化に対応し続けてきたのだと思います。

一方、VUCA(変化が激しく(Volatility)、先が読めず(Uncertainty)、要因が複雑に絡み合い(Complexity)、答えが曖昧な(Ambiguity))時代には、変化のスピードがこれまでとは異なります。そのためには、一人ひとりが継続的に時代に合わせて自らをアップデートしていくことが期待されるようになりました。

そこで人と組織には以下の期待があるとお伝えしました。

 

人 潜在能力の開花

多様な人材が、その潜在能力を開花させることで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげていく。(この定義は、経済産業省のダイバーシティ経営を参考に作成)

 

組織 学習機敏性

答えがない時に、立ち止まらず機敏に学習するかつてないほど、アジャイルで起業家精神に溢れる企業文化の中で、人々の無限の可能性を引き出す。(この定義は、エドワード・ヘイのリーダーっシップに関する資料を参考に作成)

 

カルチャーシフト

VUCA時代が人と組織に求めることを体現するためには、企業文化を変えていく必要があります。これまでの組織の特徴は、同質性、管理型、ヒエラルキー型組織でしたが、これからの組織は、多様性、自律型、自律分散型組織であることが期待されています。

同質性、管理型、ヒエラルキー組織は実行力が競争優位性の源泉である時代には有効な選択です。やるべきことが明確な時代には、計画を徹底し実行する力を持つ統率力のある組織が、大きな成果を上げることができます。

しかし、前例のない時代には、このアプローチは通用しません。そこで、多様性、自律型、自律分散型組織へのシフトが期待されることになります。多様性はイノベーションの源泉です。みんなが同じことを考える集団では、現状を打破するようなアイディアは生まれません。しかし、多様性は、管理者からは厄介な存在です。同じルールや法則が通用しなくなるからです。組織は、パーパスのために存在するのですから、誰もが自由に生きるだけの場所ではありません。そこで、誰もがパーパスをしっかりと理解し、組織の一員となり、管理されなくても自律的に動く人材として活躍してもらう必要があります。このため、管理者には、新たなマネジメントスタイルが必要になります。

このような背景から、企業は、自律型人材が育つ組織にシフトしていく必要があります。多様性を推進するのであれば、自律も促進しなければならないのはこのためです。現在、多くの組織では、多様性の推進だけが先行しており、組織力が弱まっている可能性があります。ここは、多様性の推進の上で、注意しなければならない大事なポイントになります。

 

▶学習の高度化

講演のもう一つのテーマである学習においても高度化が進んでいいます。そこで、代表的な例として、学習機敏性、アンラーン、ダブルループ・ラーニングについてご紹介しました。

学習機敏性とは、素早く学び、未知の問題に活かしていく力のことです。仮説をもって行動しリフレクションを通して学習したことを次の仮説に活かす学び方も重要です。学習機敏性には、机上の学習だけではなく、経験からの学びも含まれます。実行力と学習力が一体化した学び方は、結果だけを追い求めている集団には欠けている習慣です。

アンラーンとは、学びほぐしと呼ばれる学び方です。過去の成功体験などに基づき形成されたものの見方/行動様式をアップデートしていく学び方のことです。これまでのやり方が通用しない時代には、ものの見方や行動様式をアップデートしていくことも必要になります。

ダブルループ・ラーニング

ダブルループ・ラーニングとは、問題に対して、既存の目的や前提そのものを疑い、それらも含めて軌道修正を行うことを言います。行動と結果の関係を振り返ることを、シングルループ・ラーニングと言います。行動と結果の関係には目に見える解りやすさがありますが、前提と結果の関係を理解するためには、自己の内面を振り返る必要があります。自分はなぜその行動を選んだのか。振り返ると、過去の経験を通して得た知恵や、思い込みの存在に気づくことができます。前例のない時代には、このような手間のかかる振り返りが、成功を手に入れるために役立つと言われます。

 

▶多様性とイノベーション

多様性とイノベーションの関係については、認知的多様性を活かす重要性をお伝えしました。

マシュー・サイの著書『多様性の科学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)では、認知的多様性のない同質性の高い組織がいかに危険であるかがたくさんの事例に基づき方らえています。代表的な事例は2001年9月11日の同時多発テロです。彼によれば、当時のアメリカの情報機関、特にCIAは、白人・男性・エリート大学出身者といった似通った経歴を持つ人材で構成されていました。そのため、文化や言語、宗教に関する多様な視点が欠けており、アルカイダによる攻撃の兆候を正しく読み取ることができませんでした。CIAには、同質性が生む認知の偏りがあったと指摘してます。

創造的な活動にも、認知的多様性は重要な役割を果たします。世界に溢れる潜在的なニーズを一人で捉えることは不可能です。多様なレンズを持つチームが協働することで生まれる創造性には、無限の可能性があります。多様性が持つ潜在的な可能性を多くの企業の皆さんに実感していただきたいです。