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グローバル化に向けて

20220725文部科学教育通信掲載

中教審でも、グローバル政策として、高等教育のあり方についての議論が始まっています。

産業界の要請

国内の市場が縮小する中、大手企業のみならず、中小含めてすべての企業で、海外進出や、海外との連携を視野に事業を発展させることが求められるようになりました。しかし、社内を見回しても、グローバル人材はいないというのが、多くの企業の抱えている課題です。

その結果、グローバル展開を覚悟した企業では、企業と個人が、共に、お金と時間を投資し、社内で、グローバル人材開発を行っています。中学校から英語を始めているにもかかわらず、仕事で英語を使えるレベルに到達している社員はほとんどおらず、グローバルに活躍が期待されている人材は、仕事をしながら英語を学んでいます。

世界は、かつてはものづくりの拠点でしたが、今日では、世界は市場です。このため、海外進出においては、多様な世界のニーズに共感できる企業だけが生き残るとも言われています。

 

英語教育のゴール

日本のグローバル化を本気で考えるのであれば、義務教育における英語教育のゴールは、社会どこでも英語が話せる人がいる国にすることです。

それは、企業のグローバル化にとっても、留学生の日本での就職にとっても、大学の発展にとっても重要なことです。

企業人は、社会に出てから、改めて英語を学び直す必要がなくなり、その結果、デジタルなど別な学びに、時間を使うことが可能になります。

留学生あるいは、外国人が日本で就職する際のハードルが下がります。米国企業の日本法人で働く日本人は、米国本社で働くことを夢見るのですが、日本企業の現地法人で働く外国人は、日本の本社で働くことを希望しません。言葉の壁があることを知っているからです。

大学に目を向けると、英語を話すことが当たり前の社会でないために、教員の英語力にも、課題があります。以前、オランダの教育関係者に、日本の大学教授を紹介したところ、「なぜ、彼は、教授なのに英語をはなさないのか」という質問をされて、驚いた経験があります。

オランダも、かつては、国際化に遅れを取り、大学のグローバル化に力を入れたそうです。このため、今日では、全て教授は英語を話せるようになったといいます。

大学教授が、英語でも、日本語と同等の授業を行うことができれば、より多くの留学生が、日本で学ぶことに興味を持つでしょう。日本語の授業を受けたとしても、友達や、事務部門の職員が英語を話すことができれば、留学生にとってはとても心強いです。

 

留学生の就職

留学生の就職に目を向けると、課題は山積です。多くの留学生が、日本に就職して驚くのは、会社が、彼らに日本人的な行動様式を求めることです。多様性枠で入社しているのに、なぜ、彼らは、我々を、彼らと同じ様に染めようとするのかと、不思議がります。

また、世界の優秀な人材は、誰も解決することができない難しい課題を解決することに、とても意欲的ですが、そういう人材が日本に魅力を感じないといいます。理由は、規制や組織内のしがらみなど、物事を前進させるための障壁がとても多いからです。

日本で働くことは、世界の人々にとってあまり魅力的ではないというデータも、出ています。

毎年、各国の国際競争力を報告するIMDの2021年の世界タレントランキングでは、日本は世界64の国と地域の中で、39位となりました。

世界タレントランキングでは、教育分野への投資、タレント(高度人材)の誘致、国内におけるタレント(高度人材)の育成という3つの項目から各国の競争力を比較しています。

世界ではスイスが1位となり、アイスランド、デンマーク、スウェーデンと続きました。アジア太平洋地域では、上からシンガポール(10位)、香港(11位)、台湾(16位)、韓国(33位)、日本(35位)という結果となっています。

また、英金融大手HSBCホールディングスが2020年に発表した、各国の駐在員が働きたいランキングでは、日本は調査対象33カ国中、32位という結果でした。「賃金」、「ワークライフバランス」、「子どもの教育」の3つが最下位であったことが、32位の結果につながっています。

外国人から見た視点が全てと言えないと思いますが、彼らの視点を真摯に受け止めることは、国内の優秀な人材の海外流出を抑えるうえでも大切ではないかと思います。

教育が変わることも重要ですが、それと同じくらい企業が変わることも重要です。教育と企業の両方が変わることで始めて、グローバル政策が実を結ぶのだと思います。

 

留学生の量と質の向上

理想は、大学が、グローバル化を牽引するプラットフォームとなり、世界に伍すのではなく、研究活動および、教育を通して地球や人類の発展に寄与する大学として、世界の優秀な人材を魅了し、研究活動と教育を通して、グローバルと日本社会の発展に寄与することではないかと思います。

教育再生実行会議でも提言しましたが、国際バカロレアやケンブリッジ国際の認定校の卒業生が、日本の大学に留学し易い環境整備が進むことを願っています。国際バカロレアの認定校は、世界150カ国の国と地域に5,500校、ケンブリッジ国際は、世界160カ国の国と地域に10,000校あります。

スタンフォードやハーバード等のトップクラスの大学が、この2つの認定校の卒業成績を入学資格にするほど、その教育レベルの高さが、世界的に評価されています。日本の大学に、優秀な留学生が来ることで、日本の学生にとっても、たくさんの良い刺激を得ることができます。

世界では、留学生の学費は、国内の学生よりも高く、同時に、留学生のための支援も充実しています。また、国立大学などでは、定員枠を留学生が埋めてしまうと、日本の大学生の門戸が狭くなってしまうので、留学生の定員枠を別途設けると良いのではないかと思います。このような制度改革が進むことで、大学も、留学生を歓迎し易くなります。

 

アウトバウンドの留学生

コロナで、日本から海外に留学する学生数が激減しました。2019年には、11.5万人に増加していた留学生は、98.6%減少し、1500人になりました。この数値が、どのくらいのスピードで回復に向かうのか、不安が残ります。

日本財団の18歳調査では、社会と自分のつながりについての意識がとても低いという結果が出ています。日本国内においても、社会とのつながりを感じられないとしたら、世界とのつながりはもっと感じられないのではないかと思います。

世界の若者と交流することで、社会や世界とのつながりを実感し、自分らしく貢献することができるとよいと思います。また、初等中等教育でも、今日は、生徒エージェンシーを高めることが求められています。社会課題に向き合い、社会を変えられると本気で思う生徒が増えることが、彼らの幸福にも、社会の発展にも重要です。

世界では、学位のインフレが起きていて、国際機関で働くのであれば、大学院、さらには博士過程の修了が当たり前と言われるようになりました。人類が直面する課題がより複雑になり、より高度な専門性が求められる時代になったためです。

しかし、日本では、学位のインフレは起きていません。学位をとっても、その価値を、企業も社会も評価しないからだと思います。

世界では、同時に、スタートアップや、テクノロジーの専門性を有する若者や、学位を必要としないというトレンドも生まれています。

グローバル政策の議論を大切に行いたいと思います。

ワークライフバランス

2022.07.11文部科学教育通信掲載

日本の女性活躍推進は、成長戦略と位置づけられ、2014年以降 本格化しています。それまでは、多くの女性たちが、結婚、出産で退社していましたが、今日では、産休・育休後に復帰する女性、子育てとの両立のために時短で働く女性が増えました。女子大生の多くは、長く務めるつもりで就職活動を行うようになりました。

 

変化の兆し

女性活躍が進むことで、若い男性の意識も変わり始めています。ある企業採用担当者から「先日、採用面談で、男子学生から、御社は、出産後の女性が働きやすい会社ですかと聞かれました」という話を聞きました。とても時代を象徴している話だと思いました。労働人口の減少によりスタートした女性の本格的な社会進出は、パートナーである男性のライフスタイルにも大きな影響を与えます。昼間は保育園に子どもを預けることができますが、朝晩の送り迎え、家庭での家事・育児は、夫婦で協力して行うことになります。

 

共働き社会へのシフト

女性活躍推進という考え自体がすでに古く、今日の取り組みは、共働き社会へのシフトと考える方が望ましいです。

 

共働き社会へのシフトを成功させるために、女性活躍推進法が2015年に制定されました。従業員301名以上の企業は、女性活躍推進のための行動計画を策定し、公表することが義務付けられました。また、働き方改革関連法が2018年に制定され、企業における長時間労働の削減が本格化します。これまでは、24時間(長時間)働ける社員が模範でしたが、働き方改革が始まり、長時間労働は『悪』になりました。突然のバリューシフトではありましたが、企業は、照明を切る、パソコンへのアクセスを制御する等の徹底策を考案し、社員の意識改革を進めて来ました。

 

これまでの失敗から学ぶ

共働き社会へのシフトを成功させるためには、長時間労働を『是』とする働き方を変える必要があります。これまでも、女性が結婚出産後も働きやすい環境の整備は進められてきました。しかし、多くの女性たちが、結婚出産後に働き続けることを断念したのは、男性社会の「あの働き方」を、子育てと両立しながら行うことは難しいと判断したからです。また、女性が出産後も働き続けると、パートナーである男性社員も、これまでのように、長時間労働も、転勤も、積極的に行える社員ではなくなります。

 

世界とのギャップ

女性の社会進出は確実に進みはじめていますが、世界に目を向けると、かなりの遅れを取っており、男女の格差に関するジェンダーギャップレポートでは、日本は、156カ国中一20位です。この調査では、政治への参画、経済への参画、健康、教育の4つの指標で、男女の格差を評価しています。日本は、健康と教育では男女の差がありませんが、政治と経済への参画が低いことが、120位という結果に繋がっています。

 

日本では、女性が教育を受ける権利が守られており、女性にも、男性同様の教育の機会が与えられています。このため、海外からは、「なぜ、日本社会は、女性の力を生かさないのか」と疑問に思うようです。また、バブルの時代に、外資系企業が日本に進出する際に、優秀な男性を採用することが困難であったため、優秀な女性を採用した経験を持つ海外のリーダーは、日本の女性は、十分に社会で活躍できる力がることを知っています。このため、外国からも、日本の女性活躍に期待する声が聞こえてきます。

 

このジェンダーギャップレポートには含まれていないのですが、大学の研究者・科学者の女性比率に目を向けると、日本は、OECDの中で最下位です。全体的には、4割、3割が当たり前になっていますが、日本では、女性研究者・科学者は、15.7%です。子育てをしながら研究に従事することや、学会に出席すること等が難しいのでしょうか。今後は、女性研究者・科学者が増えることを期待したいです。

男性の育児参画本格化

育児休業法が改正され、両親が一緒に育休を取ることが奨励されることになりました。会社にとっては、労働時間の減少に繋がり、あまり喜ばしい取り組みではないかも知れませんが、国としては、少子化に歯止めをかけるために必要な手段を講じたことになります。共働き社会へのシフトは、すでに始まっていますが、日本の男性の育児、家事への参画は、諸外国の男性に比べて低く、特に、育児への参画の低さが目立ちます。

 

改正された育児休業法では、産後8週間以内に男性も「産後パパ休暇」を取得することを奨励しています。父親が、産後8週間以内に子どもと関わることで、子どもに対する愛着が増し、その後の育児への参画度が高まることを期待しています。「産後パパ休暇」制度では、最長4週間、2回に分けて、休暇を取得することができます。また、産後8週間後の育休についても、最長1年間を、2回に分割して取得できるようになります。

 

公教育の充実

共働き社会では、公教育に対する期待が更に大きくなります。以前、ヴァン クリーフ&アーペルという有名な宝石ブランドの米国支社長をされていたフランス人の女性にインタビューをしたことがあります。「フランスは、公教育が充実しているので、女性が安心してキャリアアップを目指せるのです」とお話されていたのが印象的です。すべての子どもたちが幼児期を保育園で育つ時代だからこそ、公教育への投資がさらに進むことを期待したいです。

 

アンラーン(学びほぐし)の実践方法

2022.06.27文部科学教育通信掲載

変化が激しく、変化のスピードの早い時代になり、社会人にとっても学ぶ力が欠かせないものになっています。技術革新により、多くの職業人が新しいスキルを学ぶ必要性が生まれ、リスキリングという新しい言葉も生まれました。

今回のテーマは、アンラーン(学びほぐし)です。アンラーンとは、過去の経験を通して形成された「ものの見方/行動様式」をアップデートしていくことです。アンラーンも、また、環境の変化の激しい時代に必要な学び方と言われています。

アンラーンでは、自己の内面(思考・感情・価値観)のメタ認知を行います。

 

リフレクション

アンラーンを行うためには、自己を客観的、かつ批判的に振り返るリフレクションが欠かせません。リフレクションを通して、自分の内面をメタ認知することで、初めて、過去の学びを手放すことが可能になります。

 

意見:自分がどのような考えを持っているのか

経験:その考えはどのような経験や知識に基づくものなのか

感情:そこにはどのような感情があるのか

価値観:その考えには、どのようなものの見方や価値判断が存在するのか

 

アンラーンのステップ

ここからは、アンラーンのステップを事例を活用し、順番に解説します。

 

  • 『過去の学び』のメタ認知

多くの人が、変わろうと必死なのに、変われない、アンラーンできないのはなぜでしょうか。それは、いきなりアンラーンを始めるからです。アンラーンを成功させるためには、まず、最初に、しっかりと「何をアンラーンするのか」、「アンラーンしなければならないものの見方や行動様式は、過去のどのような成功体験によるものなのか」をメタ認知することが大切です。

 

事例を見てみましょう。

 

【意見】アンラーンが必要かもしれないと思う「ものの見方/行動様式」はありますか。

これまでのやり方では、これまでのような成果・結果を出せないと感じること。

これまでは、計画に従い行動し、PDCAを徹底することで、成果を挙げてきた。しかし、予測不能な時代になり、計画づくりに苦労するようになってきた。

【経験】その「ものの見方/行動様式」に関連する過去の経験(知っていることも含む)は何ですか。

これまで、数多くの成果を挙げてきた。成果を出すために、常に心がけているのはPDCAを徹底すること。計画は、半年、3ヶ月、1ヶ月、1週間、1日の単位で、明確にし、行動する。計画がしっかりしているからこそ、進捗管理も徹底できる。

【感情】その経験には、どのような感情が紐付いていますか。

計画があると(安心)、成果がでると(うれしい)

【価値観】そこから見えてくるあなたが大切にしている価値観は何ですか。

成果、結果、責任、トラブルなし

 

変化の激しい時代に、計画を立てて行動するというマインドセットが、仕事を前に進める上で障壁となり、新しいものの見方を手に入れる必要があると感じていることが解ります。これまで、計画と進捗管理の徹底で大きな成果を出してきたという成功体験があることも解ります。

アンラーンのことを、過去の成功体験を手放すことであると説明されることが多いですが、これは大きな誤解です。過去の成功体験は、大切な思い出であり、誇りです。それを手放す必要はありません。その経験を通して形成されたものの見方と行動様式を手放せばよいのです。

 

  • アンラーンの可能性を想像

過去の学びのメタ認知が完了したら、次は、アンラーンの可能性を想像してみます。アンラーンが必要かもしれないと思った経験を振り返り、何をどう変えたいと考えているのかを深掘ります。

【意見】アンラーンが必要かもしれないと思う「ものの見方/行動様式」をどう変えてみますか。
これまでのやり方では、これまでのような成果・結果を出せないと感じることを、新しいやり方に変えてみることを想像してみましょう。

計画の質よりも、まず試してみることが大事かもしれない。

【経験】その「ものの見方/行動様式」に関連する過去の経験(知っていることも含む)は何ですか。

変化の激しい時代に、これまでのように計画の精度を高めるために尽力しようとしたが、前提がどんどん変わるので、計画を完成させることができず、困惑した。計画がないと、行動できないという考え方を手放さないと、アクションが始められない。

【感情】その経験には、どのような感情が紐付いていますか。

(計画が完成できず)困惑、(計画なしで行動することを考えると)不安

【価値観】そこから見えてくるあなたが大切にしている価値観は何ですか。

成果、結果、責任、トラブルなし

変化が激しくて、完璧な計画を作成してから行動しようとすると、計画の見直しを続けなければならず、アクションに移行できないという環境の変化に直面しているようです。

 

  • 『恐れの感情』のメタ認知

次は、『恐れの感情』のメタ認知です。変わりたいのに変われない最大の理由は、『恐れの感情』にあるからです。

【意見】これまでの「ものの見方/行動様式」を手放すことを想像すると、何が不安(心配)ですか。『恐れの感情』の原因は何でしょうか。

精緻な計画を持たずに行動することで、良い成果を出すことができないのではないかという『恐れの感情』がある。

 

  • アンラーンのためのビジョン形成

何をアンラーンしなければならないのか、どのような『恐れの感情』がアンラーンを阻害要因になっているのかが明らかになりました。次は、いよいよビジョンの形成です。アンラーンは、主体性が必要なアクションです。自ら、自分が幸せになるために行うものなので、内発的動機が欠かせません。また、継続して、アンラーンのために意識的に行動しなければならないので、「変わりたい!」と思えることが大切です。

 

【アンラーンするメリット】

アンラーンすることで得られるものは何ですか。

計画がなくても、仕事を前に進める力。

【アンラーンしないデメリット】 アンラーンしないことで失うものは何ですか。

(これまでの経験で極めた仕事術 PDCAの徹底で) 成果を出し続けること。

【ビジョン形成】 アンラーンに取り組むと、どんなよいことがあるのでしょうか。 あなたは何を手に入れるために、アンラーンに挑戦するのですか。

変化の激しい時代にも、これまで通り、成果を出す有能な人材で有り続けるために、  アンラーンに挑戦しよう。

 

  • アクションプランの策定

ビジョンが明確になったら、次は、アクションプランの策定です。アンラーン成功の鍵は、スモールステップで、アンラーンを進行させることです。いきなり、すぐに、最終ゴールを目指すと失敗します。

【最初のステップ】最初のステップとして、何に取り組みますか。

現在抱えている仕事の中で、一番不確実性の高いプロジェクトについて、計画よりも、仮説に意識を向けて行動し、その結果を振り返る。

【成功の評価軸】最初のステップにおける成功の評価軸は何ですか。

・仮説が明確である。

・仮説に対する振り返りが明確である。

・次の行動を、仮説に基づき決める。

・1ヶ月後に、活動全体を振り返り、計画を立てた場合との違いを言語化する。

【振り返りのタイミング】

1ヶ月後

【最終ゴール】

・状況に合わせて、効果的な計画の粒度を柔軟に選択できる。

・変化の激しい時代の実行力の高め方、成果の出し方に必要な“PDCA”(多分、アジャイル的な仕事の仕方)の技を持つ。

まずやってみる。振り返る。このサイクルを繰り返すことで、新しいものの見方や行動様式を無意識に実践できるようになることがアンラーンの最終ゴールです。

学校の先生のためのリフレクション講座

2022.06.13文部科学教育通信掲載

5月の大型連休の直前に、学校の先生ためのリフレクション・ワークショップを実施しました。先生方は、超多忙な4月を走り抜け、GWでホッと一休みできると伺いました。ワークショップの主催者は、子どもと先生が『希望が持てる学校』を目指す「現役教師x挑戦x異業種」の新しい教育コミュニティ「職員室ネクスト」です。「職員室ネクスト」を立ち上げた星野達郎さんは、教員を卒業し、今年から、この活動に100%専念するそうです。そこで、私も応援団として、ワークショップを企画することにしました。

 

セミナーの企画

「職員室ネクスト」から頂いたお題は以下の通りです。

企画名

指示をせずに!あの子が変わる『新・児童生徒理解』体験型セミナー

ターゲット

子どもの問題行動、犯行的な態度、伸びない学力、成長への意欲に課題感を持っている先生

提供する価値

あの子を理解し、あの子が変わるためのリフレクション

・なんでA君は成績上がらない?

・なんでBさんは積極的に活動しないのか?

・なんでC君はトラブルばかり

・なんでDさんは私に反抗的なの?

➡セミナーを通して、あの子への理解を深めていくリフレクションスキルを獲得する。

さすがは、現役の教員の集い! 先生たちのニーズのど真ん中に焦点を当てた企画です。

 

先生のご苦労

この企画を頂いて、正直、期待に添えることができるだろうかと不安な気持ちもありましたが、企画の狙いをずらさずに、真正面からリフレクションに取り組んでもらうワークショップを企画することにしました。

事前に、先生方がどんな悩みを持っているのかを知るために、お話を伺いました。先生方の生の声をお聞きして、子どもの多様化が進み、様々な子どものイレギュラーな行為と向き合わなければならない先生たちは本当に大変だと思いました。子どもの抱えている課題も、多様で、勿論、対応も、一律という訳にはいきません。先生方のお話を伺い、多忙化する学校現場で、子どもたちと向き合い、子どもたちのために、日々過ごしている先生たちには、感謝の気持ちしかないと、改めて思いました。

先生方の現状を知り、私の意思も固まりました。少しでも、先生方の役に立てるワークショップにしようと構想を練りました。

ワークショップ

ワークショップのタイトルは、『あの子が変わる“魔法の言葉”を見つけよう』です。本当に、“魔法の言葉”を見つけてくれるだろうか、ドキドキしながら本番を迎えました。

ワークショップでは、2つのワークを行いました。

1つ目は、自分の考えと感情をメタ認知するためのリフレクションです。このリフレクションでは、どんな気持ちが、自分の心を支配しているのかをメタ認知し、その背景にある自分の価値観を探ります。

2つ目のワークでは、自分の心を悩ましている子どものことを考えます。その子は、どうしてその行動をするのか、その背景には、どんな気持ちや大切にしている価値観があるのかを想像します。

ワークショップでは、意見、経験、感情、価値観の4点で考えるためのメタ認知のツールを使いました。

意見:何かに対する自分の意見

経験:その意見の背景となる経験や知識

感情:経験の記憶に紐づく感情

価値観:大切にしている価値観

価値観は、意見が形成された背景となる判断の尺度であり、感情がポジティブ・ネガティブになった理由です。

 

ワークショップの流れ

ワークショップでは、前段にリフレクションの解説を行います。リフレクションは、自己を客観的、批判的に振り返る行為であることを解説し、その重要性を伝えました。

前例のない変化の激しい時代を生き抜くためには、これまで通りのやり方やものの見方をそのまま踏襲するのではなく、自分で見通しを立てて行動し、その結果から学び、やり方やものの見方を変えて行く力が必要になってきており、その力を支えるのが、リフレクションやメタ認知ということになります。

 

ワーク1:自己の考えと気持ちをメタ認知する

ワーク1の狙いは、先生が自らの内面をメタ認知することです。自分が、その子についてどのような考えを持っているのか、どんな気持ちなのか。このワークをする前は、子どもの態度が、先生を悩ませているという理解ですが、このワークを行うと、自分が何を大事にしているから、子どもの態度を改善したいと思っているのかに気づくことになります。思考が、子どもから、自分の内面に移行することで、負の感情の原因は、子どもの問題行動ではなく、その問題行動が、自分の願い(大切にしている価値観)に反するからであるということに気づきます。同時に、自分が大切にしている価値観(ものの見方)が、子どもの行動を問題であると捉えていることにも、気づくことになります。

 

社会人が、他者育成に苦労している時にも、このアプローチは有効です。人を育てていると、その人の行動が変わらないことにストレスを感じます。そして、自らの行動や内面を振り返ることを忘れてしまいがちです。先生の場合は、相手が、子どもであり、常に集団なので、その苦労は2倍だと感じます。個々にニーズも背景も違う多様な子どもたちを、個人として集団として、両方の観点から見立てて、自らの言動を通して、マネージしていかなければなりません。

メタ認知のワークは以下のようになります。

事例:自分の考えと感情のメタ認知

 なんでBさんは積極的に活動しないの?

【意見】

なんでBさんは積極的に活動しないの? ・・・他の子はちゃんとできているのに。

【経験】

Bさんは、最近、算数の授業で、自分で問題を解く時間に、全く問題を解こうとしない。

【感情】

(自分で問題を解かないと解るようにならない)心配

(授業に興味を持てないのは、私の教え方に問題があるのか)不安

(ここで解らなくなると、次も解らないので、算数が苦手になるのが)心配

【価値観】

みんなが算数を理解すること

みんな勉強ができるようになること

 

ワーク2:子どもの世界を想像する

今度は、先程の事例「なんで、Bさんは、積極的に活動しないの?」に登場したBさんになったつもりで、Bさんの内面を想像してみます。

ここでは、想像力を膨らましてもらうために、2つの事例を用意しました。

事例1

【意見】

全然わからない。おもしろくない。どうせ、勉強頑張っても解りっこない。

【経験】

割り算から急についていけなくなった。みんなスラスラといているのに。

【感情】

(スラスラ解けず)残念 (算数は)つまらない

【価値観】

勉強ができる子が理想

 

事例2

【意見】

ゲームが楽しい。 

【経験】

ゲームが楽しくて仕方ない。夜遅くまで、布団の中でゲームをしているので、授業中は眠くてしかたない。

【感情】

(ゲーム)楽しい、(授業)つらい 

【価値観】

ゲームで全クリ

2つのワークを終えた後は、対話タイムです。それぞれが、自分の書いたシートを共有しながら、対話をする中で、多くの気づきを得ていただきました。

 

ワークショップの感想

ワークショップは、成功しました! 中でも、一番嬉しかった感想は、ある校長先生の以下のメッセージです。

自分から見える部分だけで判断し、指導するのではなく、相手の世界を想像してみると、1つ、2つ、3つと次から次へ、相手の「意見・経験・感情・価値観」のアイディアが湧いて来ました。すると、どんどん対象となる子どもを愛おしく思う自分がいました。

学習する学校 札幌新陽高校の取り組み

2022.05.23文部科学教育通信掲載

昨年より、札幌新陽高校で、学習する学校の実践を始めています。その活動が、先生の学校の発行する雑誌HOPE3月号に紹介されました。赤司展子校長と、株式会社リクルートでR&D組織HITOLABO(ヒトラボ)を創立し、「人と組織」に関わるプロジェクトに取り組む福田竹志さんと3人で、企画会議を重ね、1年間のプログラムを終えたタイミングで、記事にしていただけたことで、よい振り返りの機会となりました。

先生の学校の創立者三原菜央さんからが、「学習する学校」に関する全国の取り組みを取材する企画のお声掛けを頂き、私も、「学習する学校」のコンセプトを紹介し、並行して、札幌新陽高校も取材の対象になりました。また、システム思考を教育界に広めることに情熱を注いでいる福谷彰鴻さんも、記事を書かれていて、小さいコミュニティの知り合いが、季刊誌HOPEに大集合しました。この10年間は、試行錯誤の連続でしたので、「学習する学校」を取り上げていただき、感無量です。

 

学校「組織」は特別である

教員養成専門職大学院で、教員養成にかかわる以前は、企業組織しか知らなかったので、学校組織のあり方に始めて触れた時の驚きは、今も忘れることができません。大学院には、校長経験を持つ教授もいらしたので、正直にそのことを伝えたところ、「学校ですから」というお返事を頂きました。その後、多くの学校関係者に同様の感想を述べると、「学校組織ですから」と、似たような返事が返ってきました。そして、学校がいかに特別であるかを丁寧に説明して頂きました。

 

学校は組織とは言えない

私の違和感を一言で語ると「学校は組織とは言えない」ということです。組織は、一つの目的のために共に歩む集団です。企業の組織では、この考え方が当たり前でした。ところが、学校組織は、多くの場合、一体化しておらず、教員が学級単位で組織をつくり、学級に所属しているような風景に見えました。もちろん、学校の中には、校長先生のリーダーシップのもと、一つの組織として動いている事例もたくさんあると思います。しかし、多くの先生が、自分の学級に責任を持ち、他の先生の力を借りないで、学級を運営することを当たり前と考えています。先生方も、移動があり、学校への帰属よりも、学級とのつながりが強く、また、校長先生は、2年で変わられる場合もあるので、組織づくりが難しいという背景があることも知りました。

 

大学院で始めた講義

「次代の教育を創る」を創立理念に掲げた大学院では、学習する学校の理論に基づくチーム作りの方法についての講義を行いました。彼らが、卒業後に赴任する学校の組織では、すぐに実践できないかもしれないという不安を持ちながら、講義を進めていたことを思い出します。当時は、まだ、OECDのキーコンピテンシーに対する共通認識も確立されておらず、海外の教育に関する情報もとても限られていましたので、学習する学校の重要性を伝えることも、容易ではありませんでした。

 

札幌新陽高校での取り組み

2021年4月に、赤司展子さんが、札幌新陽高校の校長に就任し、学校改革を始めるにあたり、リクルートの福田竹志さんと3人で学習する学校の取り組みを始める事となりました。

札幌新陽高校では、学習する学校を実現するために必要な5つのツール(メンタルモデル、チーム学習、システム思考、共有ビジョン、パーソナルマスタリー)の実践方法を学ぶことから始めました。これらは、すべて、共に未来を創造するために必要なツールであり、学び続けるための手法でもあります。

月に1度、職員会議を、中つ火を囲む会と名付けて、2時間半の時間を、学習する学校のための時間としました。中つ火は、焚き火のことで、『一万年の旅路ネイティブ・アメリカンの口承史(ポーラ・アンダーウッド著、星川淳翻訳 翔泳社)』から来ているようです。中つ火を囲む会は、研修会という位置づけですが、実際には、「今、話し合うべきこと」にについて、学習する組織の5つのツールを使い対話を行います。外部のファシリテーターがいることで、通常の仕事を前に進める会議とは異なる場と、お互いの意見に学び、お互いの気持ちや大切にしていることを知り、時には、アンラーン(過去の経験に基づくものの見方を手放す)の機会にもなります。

2年目の中つ火を囲む会

今週、2年目になる中つ火を囲む会の第1回を開催しました。ファシリテーターは福田竹志さん、テーマは、札幌新陽高校の3つの「らしさ(自分らしさ、新陽の教員らしさ、新陽の生徒らしさ)」と、新陽2030ビジョン「人物多様性」について「大変なこと」、「わくわくすること」です。「らしさ」のワークでは、自分のこと、同僚のこと、生徒のことを、みんながどう捉えているのかを、ポストイットに書きながら共有しました。「人物多様性」については、画一性を前提とする学校文化を変えるビジョンでもあるので、「わくわくすること」と同じくらい「大変なこと」についての意見が出ていたことが印象的です。

 

学校生活規則の策定

札幌新陽高校では、「生活指導規定」を廃止し、新たに、「学校生活規則」を策定しました。新たな規則では、服装や髪型が自由になりました。その前提として、「学校生活規則」では、多様な生徒と教員が、お互いに自由かつ安心安全に学校生活が送ることを目的に掲げています。さらに、規則の前提として、教育方針、ビジョン2030「人物多様性」、周囲の自由を奪わない、安全を脅かさない、法律に違反しない等を掲げています。

昨年の中つ火を囲む会でも、校則について対話を行いました。これまでの慣習を変えるのですから、勿論、心配の声も聞かれました。それでも、自信を持って、「学校生活規則」の策定に取り組めたのは、教員同士が対話を通して培ったお互いに対する信頼があるからではないかと思います。

学習する学校が、2年目にどのような発展を遂げるのか、とても楽しみです。

隠岐島前高校ではじまるリフレクションの実践②

文部科学教育通信掲載2022.05.09

 

総生徒数158人の内、90名が留学生という隠岐島前高校で、2021年3月からリフレクションの実践が始まりました。3月に、隠岐島前高校を訪れ、2年生、3年生と、先生たちに、書籍で紹介しているリフレクションの手法を紹介する機会を頂きました。

前回は、生徒の皆さんのリフレクション講座の振り返りをご紹介致しました。今回は、先生と生徒のリフレクションの内容をご紹介致します。

 

プロジェクトの振り返り

意見、経験、感情、価値観の4点セットを活用した振り返りからご紹介します。

1年間の活動を終えて、プロジェクトを振り返り、最も印象に残ったことをテーマにリフレクションしました。

 

【生徒の事例】最終発表のための振り返りのリフレクション

最終発表のために、今まで逃げていたものに向き合った結果、プロジェクトの経験からたくさんのことを学んでいる自分に気づけました。うまくできなかったことやもっとできることがあったのではないかと、ネガティブな気持ちでいた自分が、振り返りを行うことで、前向きな気持ちに変わったという貴重な経験のリフレクションです。

(図1)

 

【先生の事例】担当チームの停滞期のリフレクション

リフレクション講座では、予め、先生にリフレクションを行っていただき、事例として生徒に紹介しました。問いは、生徒と同じく、最も印象に残ったことについてです。 自分が担当しているチームの活動が、停滞していた時の不安を語ってくれています。プロジェクト学習は、生徒の主体性を尊重することが前提です。よい学習経験をして欲しいという先生の愛情や責任感が伝わってきます。

(図2)

リフレクションは、人間の営みであり、そこに、立場の違いはありません。先生も人間です。先生だって、困惑したり不安になったりします。そういう気持ちや背景を、先生が、生徒に共有することで、先生と生徒の人間関係にも変化が現れるのではないでしょうか。

次に、先生と生徒が同じ出来事を振り返った事例を紹介します。

 

探究活動で実践の協力を予定していたお店を、生徒が訪問した際に、たくさんの意見をもらいました。先生も、生徒も、その出来事をリフレクションのテーマに選んでいました。

どちらも、心の動きがとても良く伝わってくるリフレクションです。生徒は、物事に対して共通認識を確立することが簡単ではないことを学びました。次回のプロジェクトでは、きっとこの学びが生かされ、上手なホウレンソウが行えるのではないでしょうか。

プロジェクト学習では、活動とその成果に意識が向きがちですが、一番大事なことは、「その経験から何を学んだか」です。学びを整理し言語化することで、リフレクションを友達と共有することもできます。

(図3 4)

 

経験から学ぶリフレクション

経験から学ぶリフレクションについても、先生と生徒の事例を一つずつ紹介します。

 

【先生の事例】

スポーツカーを所有する先生が、自動車を購入する際に重要な視点に気づいた事例です。

(図5)

 

【生徒の事例】

体験活動に満足してしまい、インタビューを行っていたのに、その情報が発表に活かせなかったようです。次回は、インタビュー直後に取りまとめることができるのではないでしょうか。

(図6)

リフレクションを共有すると、生徒が何を感じ、何を学んでいたのかを知ることができます。体験活動の後には、必ずリフレクションを行うことを習慣にしてみてはいかがでしょうか。

隠岐島前高校ではじまるリフレクションの実践

文部科学教育通信掲載 2022.4.25

総生徒数158人の内、90名が留学生という隠岐島前高校で、2021年3月からリフレクションの実践が始まりました。3月に、隠岐島前高校を訪れ、2年生、3年生と、先生たちに、書籍で紹介しているリフレクションの手法を紹介する機会を頂きました。1月から準備を重ね、実際に、生徒の皆さんの1年間の夢探求活動の振り返りを支援できて、とても楽しく、学びの多い時間でした。

 

高校魅力化

隠岐島前高校には、高校魅力化コーディネーターという制度があります。また、高校と連携した公営塾 隠岐國学習センターがあります。1月に開始した準備には、コーディネーターの山野 靖暁さん、学習センター長の竹内俊博さん、元コーディネーターであり現在は、地域・教育魅力化プラットフォームに所属されている奥田麻衣子さんが参加してくれました。オンラインでは、先生版ワークショップ、生徒版ワークショップを実施し、全生徒と一緒にリフレクションを行うための準備を行いました。

これまでも、たくさんの学校現場で活動をさせていただいた経験がありますが、今回のように、生徒の近くにいる教育関係者とじっくりと準備を進めた経験がありません。コーディネーターの学習センターの存在は、とても貴重な仕組みです。

隠岐島前高校は、90名の生徒が、島の外から留学しているとてもユニークな学校ですが、校長や先生の移動は、他の県内の学校と同じような仕組みで動いています。校長も、先生も、移動があるため、理念と特徴のある教育を定着させ、島留学生の包括的ケアを行うためには、コーディネーター、学習センター、寮マスターの存在が欠かせません。同時に、彼らと先生たちが上手に連携して、教育を創り上げているところがとても魅力的です。

4月からスタートする新学科「地域共創科」での探究活動に、リフレクションの実践が加わることで、仮説検証の質が高まり、活動の質にもよい効果が出るのではないかと期待しています。また、生徒が、自らの動機の源泉を見出したり、経験から学び、成長し続けることも、期待しています。

 

生徒は、なぜ振り返るのか

第1回のリフレクションセッションの後、生徒の皆さんに、リフレクションの振り返りを行って頂きました。その一部をご紹介します。大人か顔負けのリフレクションです。

 

【自分を客観視する】

これまでの私は、リフレクションは次にいかすためにするものと考えていた。

今の私は、次にいかすのも大切だけど、今の自分を分析するために必要と考えるようになった。そこで、私は、もっと客観的に自分を見ることに取り組む。

自分を知ること、メタ認知することの大切さに気づいた生徒のリフレクションです。

 

【仮説のアップデート】

これまでの私は、自分と向き合うことと考えていた。

今の私は、無意識であった仮説をしっかり持つように と考えるようになった。

そこで私は、仮説(過去)の自分と今の自分を比較すること に取り組む。

経験から学ぶリフレクションでは、行動の前提には「こうすればうまくいく」という仮説があるということを学びました。その仮説は、過去の経験に基づいています。これまで無意識であった仮説に意識を向けて、仮説の変化を言語化することの大切さに気づいた生徒のリフレクションです。

 

【行動前の仮説】

これまでの私は、失敗を見直すことを振り返りと考えていた。

今の私は、何かをやる前に自分が過去にやった事をリフレクションすることを振り返り と考えるようになった。

そこで私は、自分が何か行動を起こす前に振り返りをすることに取り組む。

無意識に仮説を持って行動していると気づいた生徒が、それはら、行動する前に、仮説の質を検証しようと考えました。リフレクションの習慣が、仮説の質を高め、その結果、行動の質が高まることに気づいた生徒のリフレクションです。

 

【行き詰まった時に】 

これまでの私は、振り返りをするのは面倒くさいし、しても変わらないから意味がない と考えていた。

今の私は、仮説の質をあげるためには振り返ってリフレクションをするのはよい と考えるようになった。

そこで私は、探求活動を進めていく上で行き詰った時に振り返ることに取り組む。

 行き詰まったら、仮説の質を上げるためにリフレクションを行えば良いと気づいた生徒のリフレクションです。

 

【書き出すこと】

これまでの私は、ぼんやりとだが大切なものだ と考えていた。

今の私は、出来事のあとに 頭と心の中にぼんやりと散らばっている学びを次に活かし、まとめるものと考えるようになった。

そこで私は、頭で考えて終わらすに紙に書くことに取り組む。

紙に書いてリフレクションすることで、自分の頭が整理されて、リフレクションからの学びが明確になることに気づいた生徒のリフレクションです。

 

【今の感情を大切に】

これまでの私は、振り返るということは過去の結果から未来につなげるイメージと考えていた。

今の私は、過去と未来を今の自分につなげるイメージと考えるようになった。

そこで私は、リフレクションする時に今の感情を大切にすることに取り組む。

リフレクションは、過去と未来と今の自分をつなげるものと気づいた生徒のリフレクションです。今の感情を大切にするという視点も素敵です。

 

【感情のリフレクション】

これまでの私は、感情を抜きにして振り返ると考えていた。

今の私は、その時の感情や思いも内省する上でとても大切と考えるようになった。

そこで私は、何かをしたから振り返るのではなく、日常の中から内省すべき点を見つける、自分と他人のリフレクションを比べてみることに取り組む。

日常の中から内省すべき点を見つけるために感情が役立つことに気づいた生徒のリフレクションです。

 

【キャリア形成】

これまでの私は、ただ考えて人に聞けば終わると思っていた。なんでもかんでも振り返りすれば良くなるとは限らないと考えていた。

今の私は、書きだしたり、問い次第ですごい学びが得られると考えるようになった。

そこで私は、自分のリフレクションの型を作って、これからのキャリア形成 に取り組む。

すごい学びを得ることができ、自分のリフレクションの型を作ろうと考えた生徒のリフレクションです。

 

【意思を育てる】

これまでの私は、自分のことを客観的に見ることは必要ないと考えていた。

今の私は、どちらもメリットはあるが、客観的にみて創造する方が大切だ と考えるようになった。

そこで私は、何かに取り組もうとする意志を育てることに取り組む。

 リフレクションを通して、ビジョンが形成できることに気づいた生徒のリフレクションです。

 

【落ち込む前に】

これまでの私は、ただ単に今までの振り返りの作業と考えていた。

今の私は、振り返るだけでなく自分自身の気づきを発見したり、感情からくる行動や気持ちの変化を知ることができる作業と考えるようになった。

そこで私は、何かにつまづいてしまった時、落ち込む前にリフレクションをして前に進むバネにすることに取り組む。

リフレクしションを行うと、前進するエネルギーが湧き出ることに気づいた生徒のリフレクションです。

 

先生も生徒から学ぶ

皆さんは、生徒の振り返りから何を学びましたか。皆さんは、なぜリフレクションに取り組みますか。リフレクションの魅力の一つは、先生も生徒から学ぶことができることです。

次回は、先生も、生徒も、素の自分になりリフレクションを共有する教室の様子をご紹介します。

 

隠岐隠岐島前高校と地域の魅力化の取り組みに学ぶ

2022.04.11文部科学教育通信掲載

隠岐島前高校の魅力化の取り組みをご紹介します。

隠岐島前高校の危機存続

昭和25年には、6500人いた島の住民は、平成17年には、2500人に減少し、高齢化率は40%になっていました。昭和40年代には在籍数が300人を超えていた隠岐島前高校も、平成9年には、77人(2学級)、平成20年には、28人(1学級)となり、平成25年には、島根県の高校統廃合基準である入学生21人を下回っていくという統廃合の危機に直面します。

地域が隠岐島前高校を失うと、地域の子どもたちは、中学を卒業すると島を離れなければならなくなります。島外の寮で暮らした高校生は、島に対する愛着も失い、島に戻る若者は減少していきます。その結果、地域の衰退は避けられなくなります。

島前3町村にとって、隠岐島前高校の存続は、島前3町村の存続に不可欠です。そこで、立ち上がったのが海士町副町長の吉元操さんです。2004年に高校の存続問題に取り組む重要性を盛り込んだ「自立促進プラン」を策定し、2008年から本格的に隠岐島前高校魅力化プロジェクトを立ち上げます。吉本さんを支援したのが、現在、地域・教育魅力化プラットフォーム代表の岩本悠さんです。岩本さんは、ソニーで人材育成・組織開発・社会貢献事業に従事されていた方です。岩本さん以外にも、現在プリマペンギン代表の藤岡慎二さん、学習センター長を務めら、現在は、海士町の大人留学に取り組む豊田庄吾さんが、地域と隠岐島前高校の魅力化の立ち上げに取り組んで来られました。

 

いけている大人たち

日本教育大学院大学では、隠岐島前高校魅力科プロジェクトが立ち上がった頃に、吉元さん、岩本さん、藤岡さんをお招きし、毎年、講演会を行っていました。島留学のスタート時には、生徒募集を兼ねたイベントを開催したこともあります。今では、日本中で地域創生の取り組みが行われていますが、その当時には、地方創生という言葉を耳にすることはほとんどなく、吉元さんの「自立促進プラン」に込めた思いに、心が打たれたことを思い出します。高校が消えたら、島が消える。だから、高校を絶対に存続させなければならない。吉元さんの強い思いが、岩本さんを始めとする「いけている大人たち」を魅了し、奇跡を起こすことができたのだと思います。

今日も、島前高校魅力化プロジェクトには、たくさんの「いけている大人たち」が関わっています。教育の専門家である大学教授、企業で活躍されたリーダー、探求教育の専門家、教育委員会の方々、学校の先生、先生と共に生徒の教育を支援するコーディネーター、学習センターの皆さん、寮で生活を見守る大人たち、みんなが、生徒の育ちをサポートしている様子に、心を打たれました。「いけている大人たち」という言葉で一括にするのは少し失礼かもしれませんが、いけている大人たちには、以下の5つの特性があります。①自分を知っている、②生徒の多様性を包摂できる、③生徒の過去ではなく、未来を見る、④願いを押し付けず、伝える、⑤待てる  いけていない大人は、この真逆の特徴を持ちます。

 

島留学

隠岐島前高校の総生徒数は、158人、そのうち留学生が、90人を占める高校です。スタートした当初は、説明会を実施できる大都市からの留学生が多かったそうですが、現在では、オンライン説明会も可能となり、日本全国から留学生が来るようになったそうです。このため、生徒は、とても多様です。島で育った生徒と、東京をはじめとする他県で育った生徒が、一緒の教室で学びます。

島親制度があり、すべての留学生には、島親さんが付きます。寮には、ハウスマスターがいて、近くには学習センターがあり、放課後に学ぶ場所もあります。

 

島前3島がまるごと学校

隠岐島前高校の魅力の一つが、学校と地域の境目が溶けてなくなっていることです。このため、学校、寮、学習センターだけではなく、学校のある海士町、漁業と観光を主な産業とする景勝地「魔天崖」のある西ノ島町、畜産を主な産業とし、国の名勝天然記念物「赤壁」を有する知夫村がすべて、生徒の学びの舞台になっています。地域の住民が、生徒を歓迎し、生徒が学びたいこと、やってみたいことを応援する地域文化が醸成されています。 地域の人々に歓迎され、暖かく見守ってもらえる生徒は、安心して行動することができます。

 

隠岐島前高校が目指す生徒像

隠岐島前高校は、「グローカル人材」の育成を目標に、以下の4項目を定義しています。

  • 真理の探求に向け、協働的に粘り強く挑戦する人の育成
  • 理想を追求し、自己を高め、地域社会に貢献する人の育成
  • 進取の気象をもち、主体的、意欲的に行動する人の育成
  • 心身ともに健康、情操豊かで、他人を思いやる人の育成

 

海士町にある隠岐島前高校の高校1年生と2年生に、「リフレクションの習慣」を届けに行きました。隠岐島前高校の生徒たちは、行動する高校生なので、リフレクションの題材をたくさん持っています。このため、驚くほど、リフレクションの価値をすぐに理解してくれたことがとても印象的でした。

隠岐島前高校で生徒と過ごしたのは、2日間だけでしたが、①から④の項目は、生徒の中に染み込んでいるかもしれないと思いました。リフレクションを行った際にも、一人ひとりが、自らの意思で取り組んだことがあり、振り返りのテーマも多様でした。進取の気象を持ち、主体的、意欲的に行動することを許可されていることは、高校生の成長において、とても大切なことです。行動力に、リフレクションの習慣が加われば、経験を意味づけ、経験から学ぶことができます。また、自分で決めて行動することが許されているので、リフレクションは、自分を知る大切な機会になります。

地域共創科のカリキュラム

この春から地域共創科がスタートし、値域共創科で学ぶ生徒は、毎週金曜日は、一日地域に出て学ぶことができるようになります。

【伸ばしたい資質・能力=人生の宝物】

新学科「地域共創科」では、意思ある未来を共に創っていくために、4つの観点を大切する。

主体性:未知なる物事に対して一歩踏み出す・踏み込むことができる・踏み込むことができる

協働性・自分を活かしながら、多様な人と協働することができる

探求性:適切に問い続けることができる、適切に振り返ることができる

社会性:小さな行動・小さな越境を粘り強く続け、周囲に貢献することができる

値域共創科で学ぶ生徒たちには、リフレクションの達人になってもらいたいです。そのために、先生たちとも、リフレクションの勉強会を行いました。

 

先生の勉強会

先生の勉強会でお伝えした一番やってはいけないことは、「評価のために振り返る習慣」を身に付けさせることです。

リフレクションの習慣は、人生の宝物です。答えのない時代に、答えを見つけるために欠かせない、とても大切なツールだからです。しかし、学校では、生徒のリフレクションを評価するという動きがあります。その際に、教育関係者にお願いしたいのは、評価のために振り返るという意思のないリフレクションを生徒に習慣化させないことです。かつて、関心意欲態度の評価のために、授業中に手を挙げる、授業後に先生に質問に行く等々、生徒は、見せかけの関心意欲態度にも価値があることを学びました。しかし、見せかけが通用するのは学校社会だけで、現実社会はそれほど甘くはありません。

次回は、生徒が行ったリフレクションについてご紹介したいと思います。

クエストエデュケーション

2022.03.28、文部科学教育通信掲載

クエストエデュケーションとは、教育と探求社が行う、学校の授業の中で、現実社会と連動しながら生徒が主体となって取り組む探究型の教育プログラムです。学ぶ内容、学び方、学ぶ目標を革新しながら導入校は着実に拡大し、小年度は、全国36都道府県320校が導入し、約61,000名の生徒が取り組みました。

2022年から、高校でも「総合的な探求の時間」が必修科目となりますが、クエストエデュケーションは、日本経済新聞社から、2004年に独立した代表の宮地勘司氏が、2005年に開始し、15年以上の試行錯誤を繰り返してきた探求型の教育プログラムです。

  • 4つのコース

クエストエデュケーションは、目指したい生徒像、身につけたい力、関心のあるテーマ等N合わせて、企業探求コース、進路探求コース、企業コース、社会課題探求コースの4つのコースの中から、プログラムを選択することができます。

進路探求コース

【ロールモデル】

日本経済新聞社「私の履歴書」を執筆した先人の人生を探求し、身分たちで制作したドキュメンタリー作品を発表します。

【マイストーリー】

自分の人生を、私の物語として執筆し、新たな視点で過去を捉え、探求した自分史を発表します。

【ザ・ビジョン】

社会で活躍する大人たちのビジョンから自分らしい人生を探求し、自分の中から見えてきたビジョンを発表します。

企業探求コース

企業が提示するミッションに取り組み、新しい価値創造や課題解決の提案を行います。

社会課題探求コース

生徒自身が、社会課題を発見し、その課題の解決について考え抜き、企画提案を行います。

起業家コース

日常生活の中からビジネスの種を発見し、ゼロから新商品の開発に臨み、ピッチ(短いプレゼンテーション)を行います。

 

  • クエストカップ

毎年、開催されるクエストカップでは、中高生が、自らの探求の成果を社会に向けて発信します。今年は、クエストエデュケーションに参加する約半分の学校に当たる154校から4098作品の応募がありました。

2022年2月26日に開催されたクエストカップ2022 企業探求コースの審査員を勤めさせて頂きました。中高生が、1年間、仲間とともに探求に取り組んだ成果を発表し、社会が、生徒の発想や成長した姿、決して簡単ではない探求活動の過程とアウトプット等々のすべてを、称賛するクエストカップの理念にとても賛同しました。

クエストカップ2022のテーマは、「あふるる、ゼロ」 です。

ゼロ。キミはこの数を見て、何を思うだろう。無であるからこそ、自由。

他にはない、唯一無二。終わりのない、始まりの地。

心を無にするといつの間にやら身体のど真ん中にあるエネルギーの貯蔵地が爆発寸前だ。

+と-の間にあるゼロ。可能性無限大。

 

  • 企業からのミッション

私が審査員を勤めた企業探求コースの特徴は、企業が、本物のミッションを生徒に提示する点です。審査を担当した12校のプレゼンテーションでは、アデコグループ、カルビー、博報堂、富士通、三菱地所、メニコンが、企業探求コースのミッションを生徒に提示していました。

アデコグループ

一人ひとりの「やりたいが目覚める瞬間」が溢れ出すアデコグループならではの新規事業を提案せよ!

カルビー

大自然と人間の「ドキドキな関係」をつむぐカルビーのシン・サービスを提案せよ!

博報堂

「君の疑う力」から世界をつくり変える新しい教科を提案せよ!

富士通

これからも変わり続ける「幸せのカタチ」を共に描く富士通らしい新しいサービスを提案せよ!

三菱地所

未来を生きる私たちが、「そこに集う喜び」を感じられる場と仕組みを提案せよ!

メニコン

人と人の「心の変化」を生み出す全く新しいみるに挑戦するサービスを提案せよ!

 

生徒たちは、ミッションを果たすために、企業のパーパス(存在理由)に立ち返り、企業の魅力を掘り下げます。また、その企業の提供している事業やサービス、商品が、どのような社会価値を提供しているのかを探求します。そのうえで、自らの原体験を元にアイディアを生み出し、仲間と一緒に話し合い、これまでにないアイディアで、ミッションに答えます。

企業から提示されたミッションを読むと、大人でもワクワクしますから、高校生たちも、同様の気持ちで、探求に取り組んだのではないかと思います。

企業探求コースでは、ミッションを提示した企業人が自ら、中高生にミッションを説明する機会を得ることができるので、この交流にもとても価値があると思いました。企業探求コースは、進路探求コースではありませんが、生徒にとって、仕事ってなにか?働くって何か?新しい価値を創造するって何か?を考える機会になっていると思います。

 

  • プレゼンテーション

企業探求コースで、最終プレゼンに選ばれたのは24チームです。1日の発表会なので、審査は、2つに分かれて行われました。私が担当した12チームは次の通りです。

岐阜県立増田清風高等学校

滝川第ニ中学校 (アデコグループ・チーム)

クラーク記念国際口頭学校横浜青葉キャンパス ★準グランプリ★

多治見西高等学校

常翔学園高等学校

千葉県立東葛西中学校(博報堂チーム)★グランプリ★

法政大学高等学校

福山市立城南中学校

滝川第二中学校(三菱住所チーム)

百合学院高等学校

千葉県立東葛西中学校(メニコン・チーム)

新潟県立津南中等教育学校

 

すべてのチームのプレゼンテーションにグランプリを渡したかったのですが、審査員に与えられたミッションは、12チームの中から、グランプリと準グランプリを選ぶことでした。

グランプリに選ばれたのは、博報堂のミッション「君の疑う力」から世界をつくり変える新しい教科を提案せよ!に対する企画提案を行った千葉県立東葛西中学校でした。アプリを使って、世の中を良くしていこうという教科です。いじめを始めとするさまざまな社会課題のテーマについて、アプリを活用し対話することができる教材の特徴は、バーチャル空間とリアルが融合です。

私たち大人が、直面している、気候変動等の課題について、すでに科学的な分析に基づき、我々が取り組むべきアクションが提示されているにも関わらず、多くの人たちが、日常の仕事や生活に没頭し、未来のための課題解決を先延ばしにしている様子も、彼らの教材のヒントなったのではないかと思います。

 

  • 利他の精神

グランプリ以外のすべての作品に共通の特徴として、よりよい社会を願う心、人々の幸せを願う心、人々を思いやる心等が土台にあることも、とても素敵な共通点でした。課題解決の第一歩は、共感であると述べたのは、社会起業家という言葉の生みの親であるビル・ドレイトン氏です。利他の精神や、誰かを思う気持ちが、良い発想が生まれる原動力です。そこに、学問で得た知識や智慧が加わると、解決策の可能性が広がります。

 

  • 探求学習の未来

探求学習には、教科学習では得られない魅力があります。何かについて深く考える機会は、探求するテーマについての理解を深めるだけではなく、自分を知る機会に繋がります。既知の情報を集めるだけでは、意味がなく、その情報に意味付けを行うことに探求の価値があるからです。その意味付けを行う際に現れてくるのが、「自分」です。自分のものの見方や、大切にしていることが、物事を評価し、優先順位付けを行います。

探求学習で自分を知る機会を持ち、自分の内にある利他の心と出会い、大人がその環境を創り見守る。これが、未来の教育の姿ではないでしょうか。

仮説の質を高めるリフレクション

2022.03.14文部科学教育通信掲載

経験から学ぶリフレクションの指導を繰り返す中で、新たな気付きが有りました。それは、リフレクションの質が高まると、仮説の質も高まるということです。

AARサイクル

OECDが提唱する学びの羅針盤2030は、子どもたちがトランスフォーマティブ・コンピテンシーを身につける敎育へのシフトを奨励しています。AAR(Anticipation, Action, Reflection)サイクルは、学びの羅針盤2030で紹介されたリフレクションのためのツールです。仮説を持って、行動し、リフレクションを通して学び、次の仮説に活かす。前例のない時代に必要なアジャイル思考や、プロトタイプ思考にもつながる、試しながら結果を創造するプロセスに、欠かせない思考習慣です。

 

経験から学ぶリフレクション

21世紀学び研究所は、経験学習サイクルを元に、経験から学ぶリフレクションを、5つのステップで行うことを奨励しています。経験学習サイクルは、皆さんのも御存知の通り、経験をしたら、経験を振り返り、法則を発見し、次の計画に活かすというシンプルでパワフルな経験学習のツールです。経験から学ぶリフレクションも、この経験学習サイクルを土台にしています。

 

経験から学ぶリフレクション 5つのステップ

  • 想定していた結果と、実際の結果を振り返ります。
  • 行動する前に考えていた行動計画と仮説を振り返ります。
  • 経験と感情を振り返ります。
  • 経験から学び、法則を見出します。
  • 法則を次の計画に活かします。

 

行動計画と仮説

経験を振り返る際に、行動は振り返るものの、行動計画を振り返る人は少ないかもしれません。また、その行動計画の前提となる仮説を振り返る人はとても少ないようです。しかし、実は、行動計画と仮説の振り返りが、未来を変える上でとても重要なものであることに、改めて気付かされています。

 

幸せになるために

経験から学ぶリフレクションを多くの方たちと実践する中で、「人は幸せになるために生きている」ことに確信を持つようになりました。それは、人生がすべて幸せで満ち溢れているという意味ではなく、私達は、幸せになるために行動しているという意味です。この気付きは、行動計画と仮説のリフレクションを通して得たものです。実際の結果が想定とかけ離れたものであったとしても、行動の時点では、「こうすればうまくいくはずだ」という前提で、人は行動を選択しています。

例えば、「これくらいでだいじょうぶだろう」とあるレベルを想定し、行動する時、人は、そのレベルで望んでいる結果を手に入れることができると考えています。そして、そのレベルの選定は、過去の成功体験に基づき設定されています。ヤマカンがあたって100点が取れた経験を持つ人が、次も、ヤマカンで90点は取れるだろうと、テストの準備に力を入れるのを止めるかもしれません。ところが、次のテストでは、ヤマカンが外れてしまった。そんな経験は、人生に付き物です。この2つの経験を経て、人生はそんなに甘くないと、地道に努力する大切さを学び、計画的に勉強することで、よい成績を取ることを目指すようになります。(ただし、人は幸せになるために生きているため、目の前に、ゲームなど、今の自分をもっと幸せにすることができる目的が現れると、勉強の習慣は後回しになってしまうかもしれません。これは、幸せの定義や人生の目的の話になりますので、また、別の機会で解説できればと思います。)

 

仮説に無自覚

「こうすればうまくいくはずだ」は、行動の前提にある仮説です。ところが、多くの人は、この仮説に無自覚なことが多いです。仮説を分析したり、評価したりする人はとても少ないです。もし、行動前に、行動の前提となる仮説をしっかりと点検することができたら、成功の確立が上がると思いませんか。

私達は、一日に3万5千回も決断をしているそうなので、一つひとつの決断の前提を自分に尋ねることは難しいです。しかし、自分が成功させたい、望む結果を手に入れたいと思う特別な決断に対しては、特別に扱ってもよいのではないでしょうか。その際に、計画や、シミュレーションなどを行うことも大切ですが、以外な盲点が、自分が立っている前提です。あなたが想定している「こうすればうまくいく」は本当ですかという問いかけをおすすめするのが、仮説のリフレクションです。

仮説の背景には、必ず経験を通して知っていることがあります。今日のように、変化の激しい時代には、過去の経験が通用しないこともありますから、更に、仮説の検証は重要になっています。

 

仮説のリフレクション

仮説はなにか。

仮説の背景には、どのような過去の経験があるのか。

例えば、自己紹介のプレゼンテーションを成功させるために、しっかりと練習することを計画した人には、どんな経験があるのでしょうか。

 

仮説の前提となる経験

大学の授業で行ったプレゼンで、資料づくりにエネルギーを使い果たし、発表の準備をせず本番に臨んだ。寝ずに準備したプレゼンの内容には自信があったのに、時間内にうまく説明できず悔しい思いをした。

この経験を通して、プレゼンテーションは、内容の準備のみならず、発表の準備も忘れては行けない事を学びました。また、発表は、時間の枠の中で収まるように準備しなければならないことに気付かされました。

この経験を経て、周到な準備には、プレゼンの内容やパワーポイントの準備に加えて、発表そのものを時間内に効果的に行える準備も大切であると意識するようになりました。そして、この気づきを、次のプレゼンに、その経験を生かしています。

 

AARサイクルと幸せな未来

OECDは、学びの羅針盤2030の中で、『計画的な行動と経験をリフレクションすることを通して、学習者は、物事に対する理解を深め、視野を拡大していく。AARサイクルは、個人と社会の幸福につながる学習方法』と説明しています。

AARサイクルは、前例のない時代に、未来を創造するプロセスでもあります。仮説を持って行動し、結果を検証し、軌道修正することの大切さは、今日、企業活動でも盛んに言われています。念入りな計画を作成し、計画通りに物事を推進することで成果が出る時代は終わりました。このため、一人ひとりに、より高い主体性が求められるようになりました。自ら、考え、行動し、経験から学び、仮説を組み立て行動し、必要なら軌道修正も行わなければならない。この新しい時代の仕事にも、AARサイクルは役立ちます。

 

生徒エージェンシーへの期待

学びの羅針盤2030では、生徒は、よりよい社会を創造する主体(エージェンシー)であると定義しています。誰もが、主体的に、自分と社会、今では社会は世界とつながっているので、合わせて世界を幸せにするために、様々な活動に参画し、寄与していくことになります。一人ひとりが、自分の判断と行動に意識を向けて、決断を下すことができるようになると、その結果、一人ひとりが願いを叶えることになり、また、社会全体でも、幸福度が増すはずです。

今日では、ESG投資やSDGs等 地球規模で同じゴールに向かって活動することが可能になりました。テクノロジーの進化により、生徒が、社会の一員として、よりよい社会に貢献しやすい環境も生まれています。

前例のない変化の激しい時代に生きる私たちが願いを叶えるためには、計画や行動の質に加えて、その前提となる『仮説の質』を高めるリフレクションが大切です。『PDCA&AARサイクル』の時代です。

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