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2026.04.27 文部科学教育通信掲載
2026年3月22日に、中高生のための英語x探究プレゼンコンテスト「チェンジ・メーカー・アワーズ(CMA)」の第8回全国大会に、審査員として参加致しました。
チェンジ・メーカーとは
チェンジ・メーカーの定義については、主催者である一般社団法人英語4技能・探究学習推進協議会から参加者へのメッセージを紹介致します。
Change Maker とは、すなわち「Go!Do!Be!」の3 要素を体現する人物です。
果敢に前進(go)、実施(do)、そして実現(be)するような人。コンテストではこのような人を応援しています。
インターネットで世界中につながる、便利な世の中だからこそ、そんな世の中を先頭切って導いていく人物が求められています。明るいようでいて混迷を極めるようでもある今の社会。その中で自ら道を切り開き行動してくことのできる人材を、私たちは応援したいと思っています。 (CMAホームページより引用)
全国大会
本大会は「個人部門」と「チーム部門」の2つで構成されています。どちらも、チェンジ・メーカーとして課題解決に取り組み、その内容について英語でプレゼンを行います。課題に個人で取り組んだ人は個人部門、チームで取り組んだ人はチーム部門にエントリーする仕組みになっています。
3月22日の全国大会には、地域ブロック予選を勝ち抜いた個人部門10名とチーム部門10組が出場し、最優秀賞を目指して渾身のプレゼンテーションを披露してくれました。審査員として他の皆様と共に選考に当たりましたが、どの取り組みも活動内容・英語力ともに甲乙つけがたく、最優秀賞を決めるのは非常に困難な決断でした。
会場には、指導にあたられた先生方や保護者の皆様に加え、おじいちゃんやおばあちゃんの姿も多く見受けられました。発表者が、たくさんの応援を得て、最終発表の日を迎えたことが解りました。
英語と探究を組み合わせた本大会の意義
現代社会は、気候変動、経済格差、少子高齢化、そして急速な技術革新といった、正解のない複雑な課題に直面しています。このような時代において、教育の役割は、単なる既存知識の伝達から、自ら問いを立てて新しい「価値を創造」する力の育成へと劇的にシフトしています。その学びの中核をなすのが、自ら課題を見出し、解決策を「探究」する学びと、多様な他者と協働するための「コミュニケーション能力」です。地球温暖化をはじめとする地球規模の課題解決に取り組むのであれば、英語による「コミュニケーション力」が欠かせません。
探究の成果を発表する意義
プレゼンテーションを上手に行うために、英語の発音や文章力も大切ですが、聴衆の心を動かすのは、プレゼンのテクニックではなく、発表する内容に対する情熱やコミットメントの強さです。本物のチェンジ・メーカーであることが、彼らのプレゼンテーションをとても魅力的なものにしてくれます。
探究のテーマ
探究のテーマは、幅広く興味深かったです。個人部門10名が取り組んだ社会課題の解決をご紹介します。
- おばあちゃんがおじいちゃんの介護をする中で、思うように動かせず苦労していた車椅子。その姿を見て、操作をもっと簡単にできないかと考え、実際にアイデアを形にした。
- 「一人ひとりのポテンシャルが花開く世界」を本気で実現したいと思い、大人と子どもが一緒に参加できる、アートを使ったワークショップを自ら企画し、開催した。
- カンボジアの村で、安全な水にアクセスできない現実に向き合い、現地の人が自分たちでメンテナンスしながら10年使えるろ過機を、ファンドレイズで資金を集めて導入した。
- 理系女子が増えない背景を考え、「小学生のときにロールモデルと出会い、実際に手を動かす体験が必要だ」という仮説を立て、自分の得意なプログラミングを活かして、小学生向けの体験スクールを立ち上げた。
- 途上国の教育格差の根っこには、家庭の収入や栄養の問題があると気づき、ルワンダの伝統食イソンベをレトルト化するための研究を行った。
- ヒートショックという身近で深刻な問題に対して、捨てられている食品廃棄物(コーヒーかす)や農業副産物(サトウキビの搾りかす)に可能性を見出し、高い断熱性能を持つ素材の開発に何度も試行錯誤を重ねた。
- 飛行機のCO₂排出を減らすために、持続可能な航空燃料の普及が必要だと考え、身近な廃食油の回収をサッカーチームとともに進める仕組みをつくった。
- 自分が開発したゲームが、意図せず障害のある人を排除してしまった経験から、カラーユニバーサルデザインの資格を取得し、誰もが参加できるゲームを開発。神奈川県や鎌倉市で社会実装まで行った。
- 日本の育児休業制度と実際の利用との間にある大きなギャップに違和感を持ち、キャリアと育児の両立が当たり前になる社会を目指して、社会人と高校生がつながるプラットフォームを立ち上げた。
- 多くの高校生がスピーチやプレゼンで緊張して力を出しきれない現実に向き合い、スピーチ力と自信を育てるアプリ「Voice Bloom」を開発。高校生を対象に実証実験まで行った。
探究のテーマは、身近な家族の課題から、水や栄養へのアクセスが困難な海外の人々に目を向けたものまで、多岐にわたりました。誰もが同じ社会課題に関心を持つわけではありません。だからこそ、一人ひとりが自分の関心のある課題に向き合い、その解決に貢献していくことが、多くの課題を前進させる力になります。
英語に触れる意義
一つ興味深かったのは、発表の中で「マインドセット」という言葉が頻繁に語られたことです。マインドセットとは、過去の経験や教育から形成される「思考の癖」や「物事の捉え方」を指します。
英語によるプレゼンテーションだからこそ、この言葉が多く選ばれたのではないか、という仮説を持ちました。欧米では「マインドセットは自ら変えるもの」という考え方が定着していますが、日本では、それは固定的なものと捉えられがちです。生徒たちは英語を学ぶ過程で、日本語の枠組みとは異なる「変革の文化」を自然と自分のものにしているのではないかと思いました。
システムチェンジ
大会終了後、あるチームがフィードバックを求めて審査員のところにやってきました。「他者のプレゼンを聴き、自分たちも、課題解決のアクションを更に推し進めたい」と語る彼らの向上心に刺激され、私は「セオリー・オブ・チェンジ(変化の理論)」や「ロジックモデル」について探究してみてはどうかと助言しました。
今、学校現場における探究学習に求められているのは、単なる事象への対処ではありません。課題を生み出している構造そのものを見つめ、根本原因に働きかける「システムチェンジ」の視点です。この考え方が広まることで、中高生たちの活動はより持続可能で、本質的な社会変革へとつながっていくはずです。
終わりに
彼らの挑戦は、この3月22日の大会で完結するものではありません。ここからが、彼らが紡ぐ新しい物語の始まりです。私たち大人もまた、彼らの情熱に負けぬよう、彼らが存分に羽ばたける社会を整えていく責任がある――そう強く確信した一日でした。
私自身も、4月から青山学院大学院国際マネジメント研究科(ABS)にて、大学院生を対象としたソーシャルイノベーションの授業をスタートさせます。未来のリーダーたちにとっての「よき伴走者」として、彼らが描くシステムチェンジを全力で支援して参ります。