最近の投稿
カテゴリー
-
ソーシャル & ビジネス 20
-
教育の未来 173
-
ダイバーシティ経営 111
-
その他 20
アーカイブ
-
2026年
-
2025年
-
2024年
-
2023年
-
2022年
-
2021年
-
2020年
-
2019年
-
2018年
-
2017年
-
2016年
-
2015年
-
2014年
-
2013年
-
2012年
-
2011年
-
2010年
-
2009年
-
2008年
-
2007年
2026.02.23 文部科学教育通信掲載
青山ビジネススクールにて、学習する組織のリーダー養成に取り組んでいます。昨日は、その講義の最終発表会でした。20代、30代の若者の発表を聴きながら、改めて学習する組織の理論の有益性を実感しました。そこで、改めて、学習する組織について学生の皆さんが学んだことを解説してみたいと思います。
1991年マサチューセッツ工科大学のピーター・センゲが学習する組織の書籍を出版し、30年以上経過かした今も、その理論は現実と乖離することなく、その有効性は、一層高まっていると感じます。学習する組織には、5つの規律があります。学習する組織をつくるリーダーは、自らがこの5つの規律を体現し、また、構成するメンバー全員が、この規律を実践することが期待されています。
リフレクション
5つの規律を実践する前提として重要な役割を果たすのがリフレクションです。リフレクションとは、自己の内面を客観的かつ批判的に振り返る行為です。自分に矢印を向ける振り返りは、反省とは異なります。物事はうまくいったとか、いかなかったとか、自分が正しかったとか、間違っていたとかを振り返るのではなく、自分は何を感じ、何を考えていたのか、自分はなぜそう感じたのか、なぜそう考えたのか等を「中立的な立ち位置」で、「評価判断を行わず」に俯瞰することを目指します。この力を持つことで、5つの規律が活かしやすくなります。
学習する組織の5つの規律
第一の規律は「自己マスタリー」です。自己マスタリーとは、自分が本当に大切にしている価値やビジョンを明確にし、その実現に向けて学び続ける姿勢を意味します。知識や技術の向上にとどまらず、自身の在り方や信念を問い続けることが重視されます。自己マスタリーが育つことで、組織には主体的に学ぶ人が増え、変化を前向きに受け止める土壌が生まれます。
実践することが難しそうに聞こえるかもしれませんが、講義では、リフレクションを通して自分を突き動かす価値観を知る方法を学び、自分が何を実現したいのか だけではなく、なぜそのことが自分にとって大切なのかを振り返ります。リフレクションを通して、無意識に選択している行動の中にある自分らしさを浮き彫りにすることで、「自己マスタリー」が実践できるようになります。
第二の規律は「メンタルモデル」です。メンタルモデルとは、人が無意識に持っている思い込みや前提、ものの見方のことです。これらに気づき、対話を通して問い直すことで、より柔軟で開かれた思考が可能になります。
授業では、全員がリフレクションを実践しながら、対話を行い、自分の内面を、意見だけではなく、その背景にある経験、感情、価値観まで開示することを繰り返す中で、お互いのメンタルモデルを明らかにしてきます。この経験を通して、自己及び他者のメンタルモデルに気づく力を高めています。授業では、全員が、リフレクションの実践者なので、対話を通して得る気づきも豊富です。自分ひとりで何かを考えていても、ディベートモードで意見を戦わせていても、自分のメンタルモデルに意識を向けることは難しいです。このため、学習が起きないというのが社会の大きな課題です。私たちは、経験を通して形成されたメンタルモデルを通して世の中を眺め、評価判断します。しかし、それは、自分の限られた経験の枠の中での物事の捉えであり、判断です。自分に見えている世界は限られていますし、自分の経験も限られています。また、時代の変化は、ときに過去のやり方をそのまま踏襲することを許しません。これまでうまくいっていた方法であっても、それだけでは通用しない場面が増えています。学習する組織の理論が古くならないのは、この理論自体が、人々に学び続け、アップデートし続けることを求めているからだと言えます。
第三の規律は「共有ビジョン」です。共有ビジョンとは、トップから与えられるスローガンではなく、構成員一人ひとりの願いや思いを持ち寄りながら形づくられる「共に目指す未来像」です。共有ビジョンがあることで、人は「やらされている」のではなく、「自分が実現したい未来のために行動している」という感覚を持つようになります。
学習する組織が提唱する学習は、知識の蓄積ではなく、ものの見方と行動の転換です。この転換を実現する前提が、共有ビジョンです。そして、共有ビジョンのスタートは、最初の規律である「自己マスタリー」に欠かせないクリエイティブ・テンションです。クリエイティブ・テンションと呼ばれる現状とありたい姿のギャップを埋めたいという強い内発的動機が、学習の原動力となります。ビジョンを実現したいという内発的動機が、チームや組織の共有ビジョンと結びつくことで、チームは同じ目的と方向に向かい、力を結集して臨むことができます。リーダーは、共有ビジョンを言語化し、共有し、対話を通して、メンバーの理解と自分事化を支援する役割を果たします。共有ビジョンには、ゴールとしてのビジョン、そのことに取り組む意義や目的、行動様式や文化に対する意識合わせも含まれます。この際にも、共有ビジョンを理解するだけではなく、自分のものの見方と行動に反映するための「学習」が期待されるため、リフレクションと対話が欠かせません。
第四の規律は「チーム学習」です。チーム学習とは、対話を通して集団としての思考力を高めていくプロセスです。チーム学習が根づくと、失敗は責められるものではなく、学びの資源として扱われるようになります。「チーム学習」の質は、対話の質により決まります。誰もが、評価判断を保留にし、自分の意見の背景にあるメンタルモデルに気づき、他者の意見やメンタルモデルから学ぶ姿勢を持つことで、チーム学習は、一人の枠を超えた視界の拡張を可能にします。
第五の規律は「システム思考」です。システム思考とは、出来事を個別に捉えるのではなく、背景にある構造や関係性、因果のつながりとして捉える視点です。問題を個人の能力や努力不足に帰すのではなく、問題を、構造やシステムとして捉えることで、小さい力で大きな変化を起こすことが可能になります。
「チーム学習」に欠かせないのが、第5の規律である「システム思考」です。今起きている課題を課題と捉えるのではなく、その背景にある「目に見えない氷山(現実を創り出している構造やシステム)」を可視化する際に、チーム学習が必要になります。事象としての課題は、誰でも理解することができますが、何がその現実を創り出しているのかを一人の力で理解することは難しいです。しかし、チームにはその力があります。システムや構造を可視化するツールを共通言語に持ちながら、対話を通して課題の原因を明らかにするプロセスは、誰にとっても驚きと発見の連続です。
「システム思考」を理解すると、システムや構造が課題を生み出していると捉えられるようになるため、犯人捜しや、責任の追及が無意味であるという共通認識も生まれます。また、
また、課題解決に対する時間軸も変わります。目の前の課題を解決することで、次に何が起こるのかも想像できるようになるため、短期的な解決策にとどまらず、中長期的な視点で、課題解決に臨めるようになります。
学習する組織の5つの規律を必要な時に適切に使うことができるリーダーが、よい未来を創造する組織と社会に貢献することを確信しています。