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2026.05.25 文部科学教育通信掲載
青山ビジネススクールの「パーパス経営」の授業で、オランダに本社を置くユニリーバ社のサステナビリティに対する取り組みを取り上げました。授業では、『資本主義の再構築 公正で持続可能な世界をどう実現するか』(日本経済新聞出版) の著者としても著名なレベッカ・ヘンダーセンの書いた「サステナブルな紅茶」をテーマにしたケースを題材にしました。そこで、今回は、ケースの対象となったユニリーバ社の事例と共に、サステナビリティの取り組みに欠かせない認証制度の一つであるレインフォレストアライアンス認証についてご紹介したいと思います。
ユニリーバ
ユニリーバは、イギリスとオランダにルーツを持つ世界有数の消費財メーカーです。食品、飲料、パーソナルケア、ホームケアなど幅広い分野で事業を展開しており、世界190カ国以上で日常生活に密着した製品を提供しています。
ユニリーバの大きな特徴は、「持続可能な成長」を企業戦略の中心に据えている点です。特に、元CEOのPaul Polmanの時代には、「サステナブル・リビング・プラン」が推進され、環境負荷の低減と社会的価値の創出を同時に実現する取り組みが進められました。たとえば、原材料の持続可能な調達やプラスチック削減、衛生習慣の改善を促すキャンペーンなど、事業活動を通じた社会課題の解決に取り組んでいます。ユニリーバは、グローバル企業としての規模と影響力を活かしながら、経済的価値と社会的価値を両立させる先進的な経営を実践している企業です。
フォームの始まり
フォームの終わり
レインフォレストアライアンス認証
レインフォレストアライアンス認証は、森林・農業・人々の暮らしを同時に守ることを目的とした国際的なサステナビリティ認証であり、農産物の生産から流通に至るまでの仕組み全体を対象に「持続可能なあり方」を求める点に特徴があります。運営しているのは国際NGOのレインフォレストアライアンスで、主にコーヒー、カカオ、紅茶、バナナなどの農産物に広く適用されています。
認証制度の必要性フォームの終わり
レインフォレストアライアンス認証の背景には、熱帯地域における森林破壊、生物多様性の喪失、そして農業労働者の貧困や労働環境の問題があります。従来の農業は、生産量や効率を優先するあまり、森林を切り開いて農地を拡大したり、過剰な農薬を使用したりすることが少なくありませんでした。その結果、気候変動の加速や生態系の破壊、さらには児童労働や低賃金といった社会問題が深刻化してきました。レインフォレストアライアンス認証は、こうした複雑に絡み合う課題に対して、「環境・社会・経済」の三側面からアプローチする仕組みとして設計されています。
認証の中核となるのは「サステナブル農業基準」と呼ばれるルールです。この基準では、まず環境面において、森林の保全や野生動物の生息地の保護、水資源の適切な管理、土壌の健全性の維持などが求められます。たとえば、森林の違法伐採の禁止や、農地周辺に生物多様性を守るための緩衝地帯を設けることなどが含まれます。また、農薬の使用についても厳しい規制があり、人や環境への影響を最小限に抑えることが求められます。
社会的側面では、労働者の権利保護が重要な柱となっています。具体的には、児童労働や強制労働の禁止、安全で衛生的な労働環境の確保、適切な賃金の支払い、労働時間の管理などが含まれます。また、地域社会との関係性も重視されており、農園が地域に与える影響を考慮しながら、持続可能なコミュニティづくりに貢献することが求められます。
経済的側面では、生産者が持続的に農業を続けられるようにすることが重視されています。単に環境や社会の基準を守るだけでなく、農家が収入を安定させ、将来にわたって生計を維持できるような仕組みづくりが必要とされています。そのため、認証取得により市場アクセスが改善され、企業との長期的な取引関係が築かれることも期待されます。
認証の信頼性を支えているのが、第三者機関による監査です。農園やサプライチェーンは、定期的に独立した監査を受け、基準を満たしているかどうかが確認されます。基準を満たさない場合は改善が求められ、継続的な向上が促されます。
消費者にとっては、製品に付けられた緑のカエルのマークが目印となります。このマークは、その製品が環境や人権に配慮した方法で生産された原料を使用していることを示しています。ただし、製品によっては「マスバランス方式」と呼ばれる仕組みが用いられており、必ずしも物理的にすべての原料が認証農園由来であるとは限らない点には注意が必要です。それでも、この仕組みは市場全体の需要を高め、生産現場の改善を広げる役割を果たしています。
企業にとっても、この認証は単なるラベルではなく、サプライチェーン全体を見直す契機となります。たとえばユニリーバのようなグローバル企業は、紅茶やカカオなどの調達において認証原料の比率を高めることで、環境負荷の低減とブランド価値の向上の両立を図ってきました。
一方で、課題も指摘されています。認証を取得しても農家の収入向上が十分でないケースや、監査の実効性に対する疑問、認証コストの負担などです。また、認証制度が複雑で消費者に十分理解されていないという側面もあります。そのため、現在では単なる「認証の有無」ではなく、「どのような変化が現場で起きているのか」を可視化することが求められています。
それでも、レインフォレストアライアンス認証の本質は、「より良い農業と社会への移行を促す仕組み」にあります。完璧な解決策ではなくとも、多様な主体を巻き込みながら、環境保全と人間の尊厳を両立させる方向へとシステムを動かしていく。この点において、単なるラベルを超えた「変革のためのプラットフォーム」としての意義があると言えます。
日本の事例
日本では、森永乳業と味の素AGFがアライアンスフォレスト認証を取得しています。
森永乳業は、2000年代初頭からレインフォレストアライアンス認証原料の活用を進めています。主な対象商品はチルドカップコーヒー「マウントレーニア」や、紅茶ブランド「リプトン」などで、認証農園産のコーヒー豆や茶葉を使用しています。特に「マウントレーニア」では、ブラジルの認証農園ダテーラ農園の豆を2005年から使用し、2009年には100%使用の商品も展開しています。
味の素AGFは、よりサプライチェーン全体を意識した形で認証を導入しているのが特徴です。2012年に開始されたレインフォレストアライアンスの流通管理(CoC)制度に対応し、2014年に国内コーヒーメーカーとして初めて認証を取得しました。 対象商品は「マキシム」や「ちょっと贅沢な珈琲店」などのレギュラーコーヒーで、認証農園産のコーヒー豆を使用しています。AGFは以前からトレーサビリティや品質管理の仕組みを持っており、それを活用して認証制度にいち早く対応しました。
サステナブルな紅茶
授業で扱った「サステナブルな紅茶」のケースでは、ユニリーバが自治体関係者やレインフォレストアライアンスと連携し、小規模農家が認証を取得できるよう支援してきた様子が描かれていました。これは、従来の消費財メーカーのイメージや役割とは異なるものです。この取り組みを通して、私たちの消費が森林伐採や農薬の過剰利用につながっていないか等を主体的に確かめていく時代に入っていることを、改めて認識しました。