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2026.4.16
リフレクション・対話・学習する組織
失敗の日
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2025年11月24日文部科学教育通信掲載

「失敗の日」

 

今年も、10月13日に運営共創委員会の委員を務める島根県隠岐島前高校で行われた「失敗の日」行事に参加して来ました。

島前高校は、島根県の離島に位置する公立の高等学校です。隠岐諸島の「島前(どうぜん)地域」は、海士町・西ノ島町・知夫村の3町で構成され、本土からフェリーで2〜3時間半ほどかかる環境です。このような離島という地域の特性を活かし、「島まるごと学校」をコンセプトに、地域をフィールドとして探究学習・地域課題型学習を推進しています。7割近くの生徒が、島外からの留学生であることも、島前高校の特色です。

少子化・人口減少が進む島前地域において、学校自体が地域の核として、地域と共に未来をつくる拠点機能を担っています。「隠岐島前高校新魅力化構想」では、「学校の魅力化・地域の魅力化・永続的な発展」に向けた方策が示されており、地域・学校・行政が連携して持続可能な地域づくりに取り組んできました。教育の中核には、」があります。島前高校は、文部科学省が掲げる「新時代に対応した高等学校改革推進事業(普通科改革支援事業)の採択校として、普通科の枠組みを超えた学びの実現を目指しており、2022年度より「地域共創科」を設置しています。

島前高校が掲げる「踏み込みの島前」「振り返りの島前」というキーワードが示すとおり、「踏み込むこと」「振り返ること」を大切にするという姿勢が、生徒・教員双方に浸透しており、地域・学校・生徒が一体となってチャレンジと学びを繰り返す文化を育んでいます。地域のなかへ一歩踏み込んで実践し、その経験を振り返り次へつなげる。そうした循環がこの学校の強みです。こうした地域・学校・生徒が「場」を共創していく学びの環境は、今、全国においても注目される「地域共創型教育」の一つのモデルとなっています。

「失敗の日」の背景

「失敗の日」は、毎年10月13日に失敗を祝う目的で行われる、フィンランドで生まれた行事です。2010年頃、フィンランドの学生や起業家らが「失敗を恐れてリスクを取らないこと」が新しい挑戦やイノベーションを阻むという認識から、「失敗の日」を作り、失敗を称え、失敗から学ぶ文化を醸成しようと動きが生まれたそうです。「挑戦して、もしうまくいかなかったとしても、それを振り返り、共有し、次にどう活かすかを考える」ことに重きを置く「失敗の日」の理念に共感し、2022年から、島前高校でも、「失敗の日」行事を行うことになりました。

2025年度の「失敗の日」

冒険家 西川さんのお話

今年は、ゲストスピーカーとして、冒険家でありサイクリングツーリズムやコーヒースタンド運営等多岐にわたる活動を行ってこられた 西川正徳(にしかわ・まさのり)さんがゲストです。 西川さんは、自転車による世界38カ国の旅を経験された冒険家です。小学校の頃の友達が20歳で亡くなったことをきっかけに、自分の人生を見つめたことがきっかけで、自分探しの結果 冒険家としての人生を始めたのだそうです。世界中を自転車で旅する中で、たくさんの人の暖かさに出会い、最も大切なことは人とのつながりであると気づき、フリーコーヒースタンドを始めたのだそうです。美味しいコーヒーだから三百円でも売れると思うけれど、売ってしまうと、あっさりした関係にしかならず、自分が求めている人とのつながりは生まれないと西川さんは言います。冒険家として世界を旅する西川さんは、フリーコーヒーを、日本以外にも、韓国や台湾、香港などでも実施し、人とのつながりが生まれるコーヒーの力に確信を持っていました。私が最も印象に残ったのは、香港の話です。香港でフリーコーヒーをやっていることをSNSで紹介したら、「私にできることはないかしら」と、美味しいケーキを焼いてみんなに配ってくれたそうです。西川さんのおおらかで、人を包摂するお人柄が、みんなにも伝播するのだろうと想像しました。西川さんを招聘したのは、2年生の島前高校生でした。彼女の地元は、西川さんのお膝元の兵庫県で、夏休みに西川さんのサイクリングツーリズムに参加した経験を持ちます。西川さんは、三週間のマウンテンバイクツアーを、小中学生と行っています。この旅も、やはりテーマは人とのつながりです。自転車が得意な子も苦手な子も一緒に家族になって協力しないと3週間の旅は乗り切れないそうで、最初は他人同士の子どもたちも、旅を終える頃には一つの家族になり、逞しくなって親元に戻って行きます。私は、全く、西川さんのことを存じ上げなかったのですが、失敗の日に参加し、とても貴重なお話を伺うことができました。ネット社会になり、人とのつながりはどんどん希薄になっている今日だからこそ、西川さんの一番大切なことは人とのつながりだという原体験は、とても心強い話でした。

偏愛授業

毎年、恒例の偏愛授業にも参加しました。偏愛授業とは、生徒や先生が、自分の好きなこと、こだわりを持っていることを自由に語る授業です。「私の大好きなおじさん図鑑」の授業では、西川さんを招聘した高校生が、西川さん、岩本悠さん、水谷智之さんの3名を紹介し、なぜ好きなのかを解説してくれました。岩本さんは、島前高校の存続の危機時代に再建を実現した人です。水谷さんは、リクルートキャリアの初代社長で、現在は、聞島前高校の学校運営補佐官も勤められています。彼女の話を聞きながら、3人に共通点があることに気づきました。彼らは、「自分を生きている」と同時に、「人と共に生きている」そんな方達だと思います。強い個性を持ちながらも、人と共に生きることを大切にされているので、大きなビジョンを掲げ、周囲や社会に幸せをもたらすことができるのだと思いました。

仮面

失敗の日イベントは、毎年、生徒が中心になって企画します。今年は、踏み込みより振り返りに寄せた企画になっており、余白のあるプログラムでした。今年の企画の中で、特に興味深かったのは、紙製の白い仮面に、普段みんなと接しているときの自分」と「本当はこう思っている自分」を描き、対話をするワークでした。海外留学した生徒が、海外での体験をもとに企画したようです。私たち社会人も、グループになり、ワークに参加しました。このような対話ができるのも、島前高校に心理的安全性があるからです。

リフレクション

最後のリフレクションには、認知の4点セットを使ってくれました。深い振り返りを仲間とじっくりと行う生徒の様子がとても自然で素敵でした。3年前に初めて振り返りを島前高校に紹介した際には、多くの高校生は、「振り返りは先生のためにやるもの」と考えていました。小学校・中学校で、「とても良い学びになりました」、「とても楽しかったです」等と通り一遍の振り返りを繰り返した経験に基づく意見なので、否定することはできません。今年の彼らは、自分の内面を見つめることも、友達と対話をすることもとても慣れている様子です。島前高校で、リフレクションの良い経験を積んでいるのだと思いました。先生方に、リフレクションが浸透していることも一つの要因だと思いますが、踏み込んでいる生徒は、踏み込んだ後に、振り返り次のアクションにつなげるフレクションを日常的に行っている様子です。 

今年の「失敗の日」は、「踏み込みの島前、振り返りの島前」を生徒も先生も体現している様子が伺えるとても貴重な機会になりました