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2025年7月28日 文部科学教育通信掲載
フィードバックを求める文化
変化する時代の中で、社会人の成長にも大きな期待が寄せられます。このため、フィードバックを求め、伝え合う文化を大切にする企業も現れています。本日は、リーダーや管理職の成長を促進するフレームワークとして広く活用されているジョハリの窓と360度フィードバックをご紹介したいと思います。
ジョハリの窓とは ジョハリの窓とは、アメリカの心理学者ジョセフ・ルフトとハリントン・インガムが1955年に提唱した「対人関係における自己理解と他者理解を深めるためのフレームワーク」です。名前の「ジョハリ」は、二人のファーストネームを組み合わせた造語です。ジョハリの窓は、自己開示とフィードバックを通じて、人間関係の質を高めたり、自己成長を促したりすることを目的に、多くの組織や教育現場で活用されています。
ジョハリの窓の4つの領域 ジョハリの窓は、2軸で構成されます。 横軸:「自分が知っているか/知らないか」 縦軸:「他人が知っているか/知らないか」 この2軸により4つの領域(窓)が定義されています。
① 開放の窓 自分も他人も知っている自分 自分の性格、スキル、態度、価値観などが、周囲と共有されている領域。 信頼関係が築かれやすく、チームの中で最も健全なコミュニケーションが可能なゾーン。
② 盲点の窓 自分は気づいていないが、他人は知っている自分 口調や癖、態度、話し方など、自分では無意識に行っているが他人が気づいている言動が含まれる。 フィードバックを通じてこの領域に気づくことで、自己理解を深め、行動を改善するヒントになる。
③ 秘密の窓 自分は知っているが、他人には見せていない自分 感情、価値観、悩み、失敗経験など、自分の内面で把握しているが、周囲に開示していない部分。 自己開示を通じて開放の窓を広げることで、相互理解が深まりやすくなる。
④ 未知の窓 自分も他人も気づいていない自分 潜在能力や過去の影響、未経験の中にある特性などが含まれる。 新しい経験や深いリフレクションを通じて、この領域が明らかになることがある。
ジョハリの窓と自己成長 ジョハリの窓の本質的な目的は、「開放の窓を広げること」にあります。開放領域が大きくなるほど、他者と円滑な関係を築きやすくなり、自分らしく自然体で行動できるようになります。そのためには2つのことが大切になります。一つは、自己開示(自分から語る)です。その結果、秘密の窓を小さくすることができます。もう一つは、フィードバック(他人から受け取る)です。その結果、盲点の窓を小さくすることができます。この2つのプロセスを通じて、信頼関係が深まり、学び合う風土が醸成されることも、大切な価値になります。

360度フィードバック 360度フィードバックとは、個人の行動やスキル、仕事への姿勢などについて、本人を取り巻く様々な関係者(上司・同僚・部下・他部署・顧客など)から多面的な評価や意見を集める人材開発の手法です。通常の評価制度では、主に上司が一方向から評価を行うのに対し、360度フィードバックでは、複数の視点から本人の言動や働き方が見える化されるため、自己理解を深め、成長に向けた具体的な行動変容を促すことができます。このため、360度フィードバックは、評価のためではなく、成長を支援する目的で行われることが一般的です。
360度フィードバックは、以下のような関係者からの評価を収集して構成されます。
- 上司からの評価:業務全体のマネジメントや成果に関する視点。
- 同僚からの評価:チームワーク、協調性、職場での言動。
- 部下からの評価:リーダーシップ、指導スタイル、信頼性。
- 他部署・外部顧客からの評価(必要に応じて):横の連携や対外的な対応の仕方。
人は、自分の行動や考え方を自分自身では完全に理解することが難しく、他者の視点を通して初めて気づくことがあります。360度フィードバックは、本人の「思い」と「周囲の受け止め方」のズレを明確にし、自己理解を促します。
ジョハリの窓と360度フィードバックと関係 ジョハリの窓と360度フィードバックは非常に相性のよいフレームです。特に「盲点の窓」を小さくする手段として、360度フィードバックは有効です。上司や同僚、部下などから匿名でフィードバックを受けることで、自分の「無意識の癖」や「他者からどう見られているか」を知るきっかけになります。受け取ったフィードバックをもとに自己理解を深め、必要に応じて行動を調整することで、開放領域が拡大します。また、自分の考えや価値観を周囲に伝えていくことで、秘密の領域も縮小され、チーム内の信頼関係が深まります。
ジョハリの窓や360度フィードバックを活用するためには、良好な人間関係と心理的安全性のある組織が前提になります。そのためにも、リフレクションや対話の習慣を持つ組織づくりが大切ではないかと思います。人の成長と潜在的な能力の開花を支援する組織文化が広がることを願っております。