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2025.6.25
ソーシャル & ビジネス
パーパス経営
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2025.05.12 文部科学教育通信 掲載

今年から、青山ビジネススクールでパーパス経営をテーマとした授業を始めました。

SDGsに取り組むことが営利企業においても当たり前になった今日、企業の存在理由を再定義する試みが進んでいます。また、新しく生まれる企業の多くは、起業の目的が、社会課題の解決である場合が多いです。

 

グーグルの事例

例えば、グーグルは、その当時、テレビコマーシャルのような仕組みで動いていた検索エンジンを、民主的な検索エンジンに変えることを目的にしていました。当時の検索エンジンは、高い料金を払えば、検索結果が、リストの一番上に登場していました。この検索エンジンに疑問を持ったグーグルの創業者であるラリーとサーゲイは、「情報がおカネで操作さる検索エンジンではだめなんだ。世界は間違っている」と語り、グーグルを立ち上げました。グーグルのパーパスは、「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること」です。

グーグルには、「Don’t be evil(邪悪になるな)」という有名な言葉があります。グーグルが登場する以前の検索エンジンは、お金で操作されていたという認識を持つラリーとサーゲイからすれば、邪悪なビジネスということになるのでしょう。彼らは、「邪悪なことをしなくても、利益をあげることはできる」と語っています。

大学の研究室のような会社を目指したラリーとサーゲイは、新しいサービスのアイディアを誰もが創造することを奨励しました。グーグルには、「20%ルール」があり、自分の時間の20パーセントを、自分の興味のあるプロジェクトに使うことができます。Gメールをはじめとする新しいサービスの多くは、「20%ルール」の中から生まれています。グーグルでは、新しいサービスは、社内でテストされ、社内でよい評価を得たサービスが、本サービスになる仕組みになっています。この過程でも、「邪悪なビジネスモデルになっていないか」を、みんなで確認し合うのがグーグル流です。

 

テスラの事例

電気自動車の世界に革命を起こしたテスラのパーパスは、「世界が持続可能なエネルギーへ移行するのを加速すること」です。テスラの創業者は、イーロン・マスクではありませんが、テスラを急成長させた立役者は、イーロン・マスクです。テスラが創業した2003年には、まだ、電気自動車は主流ではありませんでした。また、ヨーロッパで開発された電気自動車は、電気で走るという機能を強いと捉えており、電気自動車であることと、かっこよい車であることの2つを追い求めている企業は一つもありませんでした。一方、テスラは、高価格で高性能なスポーツカーを製造し、「電気自動車はダサくない」ことを世の中にしましました。

テスラは、ビバリーヒルズに店舗を構え、受注販売を始めます。裕福なお客様は、すでに車を持っているので、テスラのスポーツカーが届くのに数か月を要しても苦情がでることはありません。むしろ、みんな子どものように、わくわくしながら、高性能で地球にも優しいテスラのスポーツカーに乗る日を待ってくれました。こうして、富裕層から広がった電気自動車への関心は、TOYOTAをはじめとする内燃機関車を製造していた自動車メーカーを動かすことになります。

 

ニューノーマル

『パーパス+利益のマネジメント』(ダイヤモンド社)の著者であり、ハーバードビジネススクール教授のジョージ・セラフェイムは、パーパスと利益を調和させることをニューノーマルと呼んでいます。

ミルトン・フリードマンが、1970年に、『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』に発表した有名な論文の中で、彼は、「企業の唯一の社会的責任は、株主のために利益を最大化することだ」と明言し、「利益至上主義」が企業経営の主流思想になりました。その後、レーガン政権やサッチャー政権による新自由主義的な経済政策が広がり、また、株主価値の最大化を重視するROE(株主資本利益率)等の経営指標が浸透し、株主至上主義の経営が主流となりました。

2008年の金融危機以降、「利益至上主義」や「株主至上主義」に対する不信感は高まり、気候変動が深刻化する中で、企業活動における社会的責任をより広範囲に捉える流れが始まりました。SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)が登場し、フリードマン的な利益至上主義からの転換点を迎えます。しかし、株主の利益に対する圧力は衰えることがなく、今日の企業は、利益を生む責任と持続可能性に対する責任の両方を追求しなければならなくなりました。

国連が2015年に採択したSDGs(持続可能な開発目標)には、多くの企業が参画しています。環境問題(気候変動、エネルギー)、社会問題(貧困、教育、ジェンダー平等)、経済的持続可能性(働き甲斐や経済性)に対する取り組みが、企業活動においても、無縁ではないという考えが主流となりました。

『パーパス+利益のマネジメント』(ダイヤモンド社)の著者であり、ハーバードビジネススクール教授のジョージ・セラフェイムは、パーパスと利益を調和させることをニューノーマルと呼び、このような時代に、地球や人類の未来に対する責任を果たすことが、企業のパーパスに含まれることを主張しました。

 

4つの社会的トレンド

ジョージ・セラフェイムは、著書ので、ニューノーマルを支える4つの社会的トレンドが既に存在していると言います。

 

トレンド1 選択肢:

消費者は信用できるブランドから商品を買う。

社会的に意義のある会社で働きたいと考える若者は増えている。

トレンド2 透明性:

Bコーポ認証(利益だけではなく、社会や環境への配慮も重視する企業に対する認証)の取得をはじめ透明性と説明責任を重視する企業が増えている。

トレンド3 意思決定:

企業の選好確率は、エネルギー消費量を削減した企業対する選好確率は32%アップするとう調査結果も出ている。

 

従業員に意思決定の事例

2019年に、8700人を超えるアマゾンの社員が、気候変動に対する取り組みを改善するよう同社に求める要望書に署名を行った。彼らは、「気候正義のためのアマゾン従業員の会」を結成し、ストライキを行い、2040年までにカーボンニュートラルを実現すると公約するように会社に求めた。 

『PURPOSE+PROFIT/パーパス+利益のマネジメント(ジョージ・セラフェイム著、ダイヤモンド社)』からの引用

トレンド4 価値観の転換

SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)に対する取り組みを促進するためにマテリアリティに注目する企業が増えている。(マテリアリティとは、その企業が長期的に存続するために絶対に無視できないテーマ 例えば、自動車メーカーであれば、CO2の排出量等) 

ニューノーマルが当たり前になる社会が待ち遠しいです。