最近の投稿
カテゴリー
-
ソーシャル & ビジネス 15
-
教育の未来 166
-
ダイバーシティ経営 109
-
その他 18
アーカイブ
-
2025年
-
2024年
-
2023年
-
2022年
-
2021年
-
2020年
-
2019年
-
2018年
-
2017年
-
2016年
-
2015年
-
2014年
-
2013年
-
2012年
-
2011年
-
2010年
-
2009年
-
2008年
-
2007年
2025.04.28 文部科学教育通信 掲載
先日、組織開発に取り組む株式会社コーチングファームジャパンの10周年記念イベントで基調講演とパネルディスカッションに参加致しました。基調講演では、強い組織を創ることをテーマにお話をさせていただきました。
■強い組織の定義
強い組織を、人と組織の観点から一つずつ挙げました。
人の観点:個人の潜在能力の開花
多様な人材が、その潜在能力を開花させることで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげていく。
組織の観点:学習機敏性の向上
答えがない時に、立ち止まらず機敏に学習するかつてないほど、アジャイルで起業家精神に溢れる企業文化の中で、人々の無限の可能性を引き出す。
(エドワード・ヘイのリーダーシップ資料を参考に一部引用)
■個人の潜在能力の開花
個人が、その潜在能力を開花させるためには、内発的動機につながる目的を持つことが欠かせません。誰かが決めたことを目的にするよりも、自分の心が願うことを目的にする方が、人は、やりがいを感じやすくなります。勿論、人によっては、「誰かのために貢献したい」という願いを持つ人もいるので、そういう人は、誰かが決めたことを目的にしても、「貢献したい」という願いのために行動するので、やりがいを感じることができます。
目的の難易度も重要です。目的を達成することが難しい場合でも、本当に実現したいと思えば、人は、「なんとかしよう」と試行錯誤し、成果につなげることができます。このプロセスの中で、人は成長を遂げます。不可能に挑戦するような巨大な目標に立ち向かう際には、100%の成果が出せなくても、挑戦する過程で自分の潜在能力を引き出すことに成功しているはずです。
ビジネスの世界では、前人未到で非常に困難だが、達成できれば大きなインパクトをもたらし、イノベーションを生むそうだタイな計画や挑戦のことを「ムーンショット」と呼びます。
ムーンショットは、その名の通り、人類を月面着陸させるという困難は伴うが野心的で夢のあるアポロ計画とその成功が語源です。グーグルなどイノベーションを起こすことが上手な組織では、ムーンショット目標を設定し、不可能に挑戦しています。
一方、他人から指示された仕事では、不可能に挑戦するための内発的動機につながらず、自らの潜在能力を引き出す機会につながらないことが多いように思います。
組織において、自分の心が願う目的を持ち行動するためには、組織のパーパスを自分事化することが必須になります。このため、リーダーがパーパスを語ることや、リーダーとメンバーが対話を通して、組織のパーパスに対する理解を深めることも大切になります。
一人ひとりが、「組織のパーパスが、なぜ自分にとって大切なものなのか」を自問し、リフレクションすることで、組織のパーパスは自分事になります。パーパスを自分事にした上で、パーパスを自組織の役割や自分の役割に落とし込み、自らの為すべきことができると主体的・自律的に行動することができます。また、あるべき姿が明確であれば、現状と理想のギャップを見出すことが容易になり、課題解決にも取り組みやすくなります。
誰もが、喜んで困難な目標にチャレンジし、学習を通して成果と成長を共に手に入れることができると、組織力にもよい効果が生まれます。
■学習機敏性の向上
変化の激しい時代になり、前例のない仕事が増え続けています。新入社員からベテランまでみんなが、答えのない中で仕事に取り組むことが当たり前になりつつあります。このため、仮説をもって行動し、結果を通して学習するAAR(見通し、行動、リフレクション)モデルの実践を誰もが習慣化することが大事になります。
正解のある時代の学び方に慣れている多くの人たちは、行動の結果が想定通りではないときに、「失敗」と判定し、結果を悔やみ反省し、次の失敗を避けたいために思い切って行動することを避ける傾向があります。この状態では、永遠に正解に到達できないことになります。
学習機敏性とは、新しい環境や経験から素早く学び、未知の問題に応用していく能力です。学習機敏性を向上させることができれば、素早く目標を達成し、素早く成果につなげることができます。そのためには、学習に必要な心理的安全性が組織にあることが前提です。また、一人ひとりが、自らの意思で目的をもって行動する自律型学習者であることが前提です。
受け身の人材でも、能力と責任感があれば大丈夫では?と思われるかもしれませんが、自律型人材であることは、学習機敏性を向上させる上で不可欠になります。その理由は、仮説の質に影響するからです。自分が願う結果を得るために仮説を明確にし、行動することができるのは、自律型人材の強みです。仮説が明確だからこそ、結果からの学びを有益な情報として、次のアクションのための軌道修正に役立てることができます。
■組織開発の実践
参加者は、経営者と組織開発の充実るコンサルタントやコーチの皆さんです。参加者の共通のテーマは、組織開発です。組織開発に充実する背景や目的は多様ですが、皆さんの組織をよくしたい思いは共通です。
パネルの中では、彼らからの質問もあり、例えば、「経営者は全般的に売上と利益を上げることには真剣になる。しかし、組織を良くすることに対して強い意志を持つ経営者は非常に少ない」という話がとても印象的でした。数週間前に、事業継承をテーマにしたイベントで、経営者によるパーパス経営の実践のお話を伺っていたので、経営者の中には、組織開発の重要性に気づいている方もいることも確かですが、すべての経営者の当たり前ではないということもよく理解できました。
私自身は、ファミリービジネスの事業変革に取り組み、「事業戦略が変わる=人と組織が変わる」という法則があることを知りました。また、ベンチャー企業が、市場があるにもかかわらず成長できない理由が人と組織にあることも知りました。
人と組織を軽視すると、その結果、売上や利益の伸び悩みに直面します。しかし、それでも、売上や利益を伸ばすことだけに経営者が夢中になると、経営者と組織の課題認識にずれが生じ、ますます経営者は孤軍奮闘することになります。その結果、経営者の関心は、ますます組織から離れていくことになります。これが、経営者が、人と組織に興味を持たない現実を創り出している構造なのではなかと思います。
■学習する組織
イベントに参加した多くの方々が、学習する組織理論を組織開発に活かしているとお話されていたことがとても印象的でした。私自身も、2008年にチームダーウィン「学習する組織だけが生き残る」という書籍を出版し、学習する組織の普及啓発に尽力してきたので、仲間に出会えてとてもうれしい気持ちになりました。多くの経営者に学習する組織の有益性が理解される日が待ち遠しいです。