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2025.6.25
ダイバーシティ経営
昭和女子大学キャリアカレッジ10周年
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2025.04.14 文部科学教育通信 掲載

2025年3月1日に、昭和女子大学キャリアカレッジ10周年記念シンポジウム&レセプションパーティを開催致しました。シンポジウムでは、清水建設代表取締役会長の宮本洋一氏に基調講演をお願い致し、100名の関係者の皆様にご参加いただきました。

キャリアカレッジの始まりから現在、そして未来についてお話したいと思います。

私は、子育てを終え自由を手に入れた後は、「よい変化に貢献する」という人生の目標を設定し、女性、教育、企業の三つの領域で、様々なご縁を頂き活動しています。その中の一つがキャリアカレッジの取り組み「女性活躍推進(共働き社会への移行と多様性を社会の価値にすること)」です。

サウジアラビアの女性たちとの出会い

2012年に、日本貿易振興機構(ジェトロ)が主催するサウジアラビア視察団に参加したご縁で、2014年にキャリアカレッジを始めることになりました。サウジアラビア視察団の座長は、昭和女子大学総長の坂東真理子先生です。視察団には品川女子学院理事長の漆紫穂子先生や、国際社会経済研究所理事長の藤沢久美氏をはじめとする日本をリードする女性たちが参加しました。

サウジアラビアを訪れた際に受けた衝撃は、今も忘れることができません。サウジアラビアの女性は、イスラム教のしきたりに沿って黒いアバヤを身にまとっています。女性は、家族以外の男性に顔を見せることを許されていません。視察に訪れた日本企業ユニ・チャームで日本から出向されている社員の方からお話を伺った際も、「僕たちは女性社員と顔を合わせたことはありません」とおっしゃっていました。結婚式も、新郎と新婦が分かれて祝うという徹底ぶりです。保護者会も、お父さんの会、お母さんの会が別々に行われています。

この不思議な(私たちの常識とは異なる)社会を訪れたことで、視察団に参加した女性たちはある重要な事実に気づきました。自分の枠の外に出て、自らを眺めることができたからです。

女性社会に生きるサウジアラビアの女性たちは、学ぶことにも、仕事にも、家族にも、子育てにもパワー全開です。男性社会に生きる私たちとは少し違います。私たちもパワー全開のようですが、それでも、どこかに遠慮があり、少しずつ自分たちの生きるスペースを拡大してきたように思います。もし、その当時の私が、「本当に思ったことをどれまで口に出しているか」と聞かれたら、2分の1以下だと答えたと思います。

この視察の経験から、後輩の女性たちには、もっと伸び伸びと社会で活躍して欲しいと強く思うようになりました。これが、キャリアカレッジの起源です。

10年間に起きた大きな変化

  • 共働き社会への移行

サウジアラビア視察の翌年2013年には、安倍前首相が、「2025年までに女性管理職比率を30%にする」と宣言し、共働き社会への移行が始まります。労働人口減少への対策として、女性も働く国にシフトすることが成長戦略の一つの目標となりました。その結果、女性は、結婚・出産を理由に会社を辞める必要がなくなりました。時短で働くことも許され、子育てをしながら働く環境が整備されました。

  • 女性管理職の登用

10年前にキャリアカレッジをスタートした当時、多くの女性たちは自分が管理職になることをまったく想定していませんでした。キャリアカレッジの講座募集に際し、「管理職を育てる」や「リーダーを育てる」という言葉を使うと、女性の参加意欲を削ぐのではないかと心配するほどでした。しかし、今では、女性が管理職になることがあたり前の世の中になりました。女性が働き続けるだけではなく、女性が管理職になることが当たり前の時代です。

残された課題

残された課題もいくつかあります。

課題①:家庭における男性の役割

社会における女性の役割が拡大する一方で、家庭における男性の役割の拡大が遅れる傾向があります。社会には、過去の慣習が残っており、「24時間働けますか」とは言われなくなりましたが、男性の働き方が共働き仕様に転換されておらず、ワンオペ状態の女性が多く存在します。

課題②:管理職の働き方改革

働き方改革が進み、一般社員の長時間労働が削減される中、管理職の長時間労働については改善が進んでいません。社員を早く帰らせるために、部下の仕事を引き取る管理職も多いです。管理職の働き方改革を実現するためには、仕事そのものを見直す必要があります。一人ひとりが効率を上げるだけではなく、組織全体として、付加価値を生む仕事とそうでない仕事を仕分け、ホワイトカラーの仕事を再構築する必要があるのではないかと思います。

課題③:生産性の向上

管理職の働き方改革とも共通のテーマかもしれませんが、日本企業の生産性の低さは大きな課題です。国際比較を見ると、日本よりも労働時間が短い国々の生産性の方が、日本よりも高いのですから、明らかに、日本人は、労働時間に見合う付加価値を生んでいません。様々な理由があると思いますが、ここでは、一つの理由として、「多様性が化学反応を起こし価値創造が起きる」という理論が、日本では、まだ実践されていないことを挙げたいと思います。

課題④:多様性を価値に変える力

企業活動の収益は、大きな価値があり他が追随できないモノやサービスから生み出されます。このような付加価値を生む力を高めることで、企業の持続可能な発展が期待できます。多様性は、特にブレイクスルー(大きな付加価値)を生む過程には不可欠であると言われています。しかし、日本の企業は、多様性に慣れておらず、多様性を価値に変える力が不足しています。この力を高めることができれば、多様性の価値を誰もが享受することができます。

これから10年の間に、この4つの課題が解決すれば、日本も大きく変わるのではないかと思います。キャリアカレッジも、この変化に貢献したいと思います。