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日中韓アジア・ウーマン・リーダーシップ・プログラム(その1)

2024年9月23日 文部教育科学通信掲載

昭和女子大学が、海外協定校である上海外国語大学(中国)と誠信女子大学校(韓国)とともに開催した 日中韓プログラム 「Asian Women’s Leadership Program」で、講師を努めました。普段は、社会人を対象に講義を行っており、日中韓の大学生を対象にしたプログラムに講師として参加できたことは、とても貴重な経験になりました。

2017 年度に初めて昭和女子大学の学生が、本プログラムに参加して以来8回目の実施となる今回は、本学および上海外国語大学からそれぞれ 10 人、誠信女子大学校から9人の選抜された学生 29 人が参加し、3か国を順に訪問しました。学生たちは、それぞれのホスト校で特別講義を受け、グループワークを全て英語で行いながら、女性が国際社会で活躍するためのリーダーシップについて、互いの言葉や文化の違いを超えてともに学びます。

中国 (上海)ラウンド(8月5~ 12 日)、韓国(ソウル)ラウンド(8月 12 ~ 19 日)についで、日本(東京ラウンド)は、8月 19 ~ 26 日に開催され、私の担当は、3週間に渡る最後のプログラムでした。

リーダーシップとは

授業の冒頭に、リーダーシップとマネジメントの違いについて解説しました。日本では、マネジメントをリーダーシップと捉えている人も多く、この2つの違いと、リーダーは、この2つの力を共に磨く必要があることを伝えました。そのうえで、皆さんは、この2つをどのように捉えていますかと尋ねた所、PDCAサイクルを知らない学生がとても多く、改めて、企業人と学生の違いを認識する機会になりました。特に、海外の学生には、PDCAサイクルは、とても新鮮で有益だということで、最終発表に、複数のチームが、PDCAサイクルのことを盛り込んでいました。

【リーダーシップとは】

リーダーシップとは、自分の言葉や行動、存在を通して、自分以外の人も主体的に動くようにしてしまう影響力のことです。リーダーは、未来に対する意図(目的、目標、ビジョン等)を実現するために影響力を発揮します。このため、リーダーは、未来に対する意図を持つ必要があります。

【マネジメントとは】

目標を実現するために、資源配分を行い、計画を策定し、計画に基づきPDCAサイクルを管理し、目標を達成させための管理のことです。リーダーは、結果を出すために、PDCAサイクルを徹底することも大事ですが、指示命令で人を動かすのではなく、人々の主体性を引き出すことも期待されています。このため、リーダーシップを磨く必要があります。

 

リーダーシップに関する5つの誤解

リーダーシップについて解説する経験から、明らかになった多くの人々がリーダーシップについて誤解していると感じていることを学生にも伝えてみました。この内容については、皆さん納得してくれたようです。

  • 立場=リーダーシップ

役職などの立場は、他者に対する影響力の源泉にはなりますが、立場がなくても、他者に影響力を与えることができます。部下が上司を動かすことも、生徒が先生に気づきを与えることも、子どもが親に影響力を持つこともあります。立場にかかわらず、私達は、リーダーシップを発揮することができます。また、立場だけに依存した影響力に頼るリーダーは、多くの場合尊敬を得ることができません。立場は、影響力の一部ではありますが、すべてではありません。

  • 生まれもったもの

多くの人が、私はリーダーに向いていないと言います。そう思う背景には、多くの場合、偉大なリーダー像を頭に思い描き、あんな風にはなれないという心の声があります。確かに、100年前のリーダー論では、生まれ持った特性が重要視されていたようですが、経営学者ピーター・ドラッカーは、明確に、リーダーシップは学べるスキルであると述べています。実際、多くの企業で、社員に対して、リーダーシップをスキルとして学ぶ機会を提供しています。

  • カリスマ性が必要

かつてのビジネススクールでは、カリスマ性のあるリーダーを称賛していました。しかし、グローバル競争が激化し、テクノロジー革新のスピードが増す中で、カリスマ性のあるリーダーが組織を率いる時代が終わりを告げました。一人の優れたリーダーが、すべての領域において未来を予見し、正解を持つことが不可能になったからです。リーダーのカリスマ性に依存する組織の特徴は、構成員が、リーダーの答えを待ち、自ら考えようとしなくなることです。女性の多くは、カリスマ性を持ち、組織を牽引するというリーダー像に自分を重ね難いと感じるようです。しかし、今日では、カリスマ性を持つリーダーよりも、チーム力を強化できるリーダーが期待されていると伝えると、多くの女性たちが、自信を持ってリーダーになれると言ってくれます。

  • ロールモデルが必要

女性の多くが、ロールモデルがいないから、リーダーを目指しにくいと言います。確かに、ロールモデルから学ぶことも重要です。しかし、リーダーシップの本質は、自分を知り、自分の個性を土台に、自らのリーダーシップスタイルを構築していく所にあります。

最終発表では、多くの学生が、自己理解の重要性を語ってくれたので、「リーダーシップは、一人ひとりの個性を土台に、自ら構築していくもの。誰の真似をしても、人は、あなたについてこない」というメッセージは、彼女たちにもしっかり届いたように思います。

  • リーダーは一人だけでいい

「個性を活かすリーダーシップを、全員が発揮する組織は生産性が高い」 というメッセージを届けました。一人ひとりが持っている強みを通してチームに貢献する際には、誰もがリーダーシップを発揮しています。論理的思考が強い人、物事を前進させることが得意な人、ディスカッションを活性化させることが上手な人、文章を取りまとめることが上手な人等、人の強みは多様です。しかし、その強みを、チームの強みにするためには、リーダーシップを発揮する必要があります。

最後のメッセージ

「リーダーとしての潜在能力を解き放つために」というタイトルで、プログラムの最後に、4つのことを伝えました。

①自己認識を育む

自分の性格、強み、価値観、そして才能を深く理解しましょう。これらがあなたのリーダーシップの核心となります。

アクション:定期的に振り返り、フィードバックを求めて強みと成長のための分野を理解しましょう。

②視野を広げる

新しい経験、アイデア、そして視点を常に求めて、世界に対する理解を広げましょう。

アクション:多様な分野、文化、そしてアイデアを探求しましょう。

③学び直しが必要な時を知る

自分や目標に役立たなくなった古い思考パターンや前提を見直し、手放す勇気を持ちましょう。

アクション:アンラーニング(学び直し)を促進するために、ダブルループ学習に取り組みましょう。

④自分の責任範囲を明確にする

リーダーとして、自分の責任が組織や社会、国を超えて広がっていることを認識することが重要です。今日の相互に結びついた世界において、リーダーはアジア、地球、そして人類全体に対する責任も考慮しなければなりません。この広範な枠組みを受け入れることが、明日のリーダーにとって必要不可欠です。

アクション:自分の決定や行動が環境や社会に与える影響を考慮しましょう。

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