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日中韓アジア・ウーマン・リーダーシップ・プログラム(その2)

2024年10月14日 文部科学教育通信掲載

昭和女子大学が、海外協定校である上海外国語大学(中国)と誠信女子大学校(韓国)とともに開催した 日中韓プログラム 「Asian Women’s Leadership Program」で、講師を努めました。普段は、社会人を対象に講義を行っており、日中韓の大学生を対象にしたプログラムに講師として参加できたことは、とても貴重な経験になりました。

2017 年度に初めて昭和女子大学の学生が、本プログラムに参加して以来8回目の実施となる今回は、本学および上海外国語大学からそれぞれ 10 人、誠信女子大学校から9人の選抜された学生 29 人が参加し、3か国を順に訪問しました。学生たちは、それぞれのホスト校で特別講義を受け、グループワークを全て英語で行いながら、女性が国際社会で活躍するためのリーダーシップについて、互いの言葉や文化の違いを超えてともに学びます。

中国 (上海)ラウンド(8月5~ 12 日)、韓国(ソウル)ラウンド(8月 12 ~ 19 日)についで、日本(東京ラウンド)は、8月 19 ~ 26 日に開催され、私の担当は、3週間に渡る最後のプログラムでした。

 

前回は、リーダーシップをテーマにした講義内容についてご紹介させて頂きました。今回は、日中韓のグローバルジェンダーギャップレポートと学生たちの様子について紹介致します。

グローバルジェンダーギャップレポート

日中韓の毎年発表されるグローバルジェンダーギャップレポートの結果は、比較的似ており、残念ながら、3国とも女性のエンパワーメントには課題を抱えています。3国の中では、韓国が最も女性のエンパワーメントが進んでおり世界ランキング100位以内となっていますが、日本は3国中の最下位。

グローバルジェンダーギャップレポートは、経済への参画、政治への参画、教育、健康の4つの観点でジェンダーギャップを測定しています。4つの要素で其々の国を比較してみると、教育においては、日本が3国中トップで、0.993のスコアを獲得しています。続いて、韓国が2位で、スコアは0.980です。教育においては、中国が3カ国中最下位となります。健康においては、韓国がトップで、0.976のスコア、日本が2位で、0.973のスコアです。

教育と健康では、日本は3カ国中最下位ではなく、全体のランキングにおいて最下位になる理由は、言うまでもなく、経済と政治への参画の低さが原因です。

経済への参画では、中国が3カ国中トップで、0.738のスコアを獲得しています。2位の韓国のスコアは、0.605ですが、3位の日本のスコアは、0.568となり、中国とはかなり差が開きます。また、政治への参画では、韓国が3カ国中トップで、0.223のスコアを獲得しています。続いて中国のスコア0.123、日本のスコア0.118となっています。日本は、政治への参画においても、1位の韓国とはかなりの差がみ見られます。

経済への参画、政治への参画において、日本よりも少し先行している韓国の学生からは、女性の家庭での役割負担が軽減しないとキャリア開発が難しいという声も出ており、ジェンダーによる役割期待に対する慣習が、今日においても女性のエンパワーメントの課題となっている様子も伺えました。

日本では、企業において少しずつ女性活躍推進は進んでおり、今日では、出産後も仕事に復帰することが当たり前になりました。この流れが継続すると、日本においても、女性の経済への参画においては大きな改善が期待できるのではないかと思います。一方、政治への参画に関しては、国会議員の半数を女性が占める未来の姿は全く想像できず、日本より先行している韓国における政治への女性参画のあり方に学べることがあるのではないかと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

最終発表

最終発表では、「あなたのリーダーシップを強化するために何をしますか」という問いに対して、チームでプレゼンテーションを行って頂きました。日中韓のメンバーが話し合いまとめた発表は、リーダーシップを自分のものにしたいという思いが伝わる、とても魅力的な内容でした。

自己理解                                                   最も人気のあったテーマは、自己理解でした。自己理解は、リーダーシップの土台をつくる上で欠かせないものです。彼女たちの多くは、対話を行う中で、自らの強みや個性、リーダーシップスタイルを見直す機会になったようで、自己分析の紹介も興味深かったです。また、自分らしく良い影響力を発揮し、みんなで前向きに目標に向かうチームを目指したいという声はとても多かったです。

参加者の多くは、すでにリーダーシップを発揮した経験を持っていました。参加者の中には、大学のルールを変更することに成功した学生もいました。戦略的に、メッセージを発信し、賛同する仲間を募り、大学への交渉に成功した経験をクラスに紹介してくれました。また、ある学生は、責任感が強く、高い目標に向かう一方で、みんなに仕事や役割を付与することに遠慮があり、自分が仕事を引き取ってしまうことが多いと悩んでいました。また、ある学生は、強いメッセージを打ち出すことに苦手意識があり、他者から自信がないように見えるのではないかと心配していました。彼女たちは、成功体験も、困った体験も、オープンにリフレクションし対話を通して、自分を見つめる機会を得たことで、自己理解が更に深まった様子です。

 

グッド・リーダー                                               あるチームは、バッド・リーダーと、グッド・リーダーの違いを、劇で演じて暮れました。自己理解が出来ていないリーダー、意見が定まらないリーダー、コミュニケーションが不足しがちなリーダー、感情が安定していないリーダー等々を理想のリーダーとの対比で演じてくれたので、改めてリーダーシップにおける重要なことをみんなで振り返る機会になりました。

ダイアローグ                                                 リーダーは、多様な意見に向き合う覚悟を持つ必要があり、自分と対立する意見に対しても、すぐに否定せず評価判断を保留にして、相手の意見の背景を傾聴する力が必要だという学びも、多くの学生の心に残ったようでした。ダイアローグを、対立を乗り越え、人々の心を一つにするために活かして欲しいです。

日中韓の女子大生が、アジア、そして世界のリーダーとして活躍する日がとても楽しみです。

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