女性活躍推進
2024年8月12日 文部教育科学通信掲載
過去の日本
2014年から女性活躍推進に取り組んでいます。日本では、戦後、新憲法が制定され、「法の下の男女平等」が実現しました。しかし、戦後の高度経済成長を実現する過程では、男性が経済を支え、女性が家庭を守るという社会モデルが基盤となります。このため、社会や企業は男性が中心となり、今日の男性社会が形成されていきます。大学を卒業するまでは、何もハンディを感じないのに、突然、社会人になると、突然、自分を取り巻く環境が変わり、何かしらハンディを感じると語る女性が多かったです。一方、男性も、定年後に、社会から家庭に生活の中心が移行すると、家庭は女性中心で、家庭に居場所がないと感じる人も一定数いるようでした。
2013年移行の日本
労働人口が減少する日本において、女性活躍推進は、成長戦略の一環と捉えられるようになります。安倍前首相が、2020年までに日本企業における女性管理職比率を30%にするという目標を掲げたのは、2013年です。その後、女性の活躍を加速するために、女性活躍推進法と働き方改革関連法が制定され、多くの企業では、多くの企業が、女性活躍推進に取り組むことになりました。
ゴールドマン・サックス証券は、2019年に発表したウーマノミクス5.0という報告書の中で、男女の就業率格差が解消すれば、日本のGDPは10%押し上げられると述べています。
女性が働くために
これまで、女性が、働き続ける上で、障壁となっていた結婚、出産というライフイベントを乗り越えるために、今では、時短という働き方も当たり前になりました。最近では、時短で管理職をしているという女性にも出会いました。2013年以前には、考えられない大きな変化が、この10年間に起きています。
歴史を振り返ると、1966年に、女性の結婚退職制度が無効になり、1969年には、定年年齢が男性55歳、女性35歳が無効になったという判決の記録があります。女性は、結婚すると働き続けることができない時代、35歳になったら退社を求められる時代があったという話は、驚きの事実です。
結婚すると働くことを許されなかった時代から、結婚後も、働き続けることを求められる時代になり、家庭における男性の役割も大きく変わり始めています。家事や育児に参画するお父さんの姿も多く見られるようになりました。 一方、男性社会のマインドセットが残る企業風土に生きる若い男性の中には、会社から、家事や育児への参画よりも、仕事を優先することを期待され、ワンオペで仕事も家事も子育ても全部頑張る女性の姿も見られます。
社会全体が、共働きを前提としたマインドや仕組みに変わるのには、もう少し時間がかかりそうです。
世界の潮流
日本では、現在、2025年までに女性部長比率を12%にすることを目標にしていますが、世界では、女性役員比率が30%を超えており、現在の目標は、40%を超えることです。フランス、イタリア、イギリスは、すでにこの目標を達成しています。経済活動がグローバルに広がり、日本企業も、この潮流を無視することはできません。株式市場は、日本企業の女性活躍推進の遅れを指摘します。
日本では、労働人口の減少を補うためにスタートした女性活躍ですが、他の先進国では、基本的人権を守り、差別のない公平な社会を実現することが、女性活躍を推進する理由です。また、諸外国の役員比率と共に、高い国会議員比率を見れば、よい社会を実現するためにも、人口の半分を占める女性たちが意思決定に参画することに意義があるという理解があるのではないかと思います。
ジェンダーギャップレポート指数2024
毎年も、世界経済フォーラムが発表する男女の平等に関するジェンダーギャップレポート指数2024が発表されました。日本は、昨年よりも少しランクを上げましたが、146位中118位 先進国中最下位という結果です。ジェンダーギャップレポートは、4つの指標でジェンダーギャップを評価しています。
- 健康 58位
- 教育 72位
- 政治参画 113位
- 経済参画 120位
政治参画と経済参画の2つの指標におけるギャップが大きいことが課題です。
最近では、このような情報を誰もが見れるため、海外でも、日本の女性活躍が遅れていることは有名になっており、海外に行くと、「大丈夫ですか」と慰められることもあります。また、日本は、女性にも男性と差別することなく教育投資を行っているのに、なぜ、女性が社会で活躍できないのかという疑問を持つ人も多く、女性は、日本の眠れる資産であるという表現もあるくらいです。
男性社会から共働き社会への移行
結婚、出産というライフイベントを乗り越え、女性が働き続けるためには、パートナーである男性の働き方も変わる必要があります。これまでのような長時間労働を前提とする働き方や企業命令の転勤と単身赴任を当然と考えるマインドセットでは、共働き社会に生きる人々が幸せに暮すことが難しくなります。個人が選択して長く働くことも、単身赴任することも自由ですが、誰もが当たり前にそのような働き方を期待される時代は終わりました。
家事は代行できても親業はすべてを代行できるものではありません。人格形成に大きな影響を及ぼす、子どもたちの幼少期の育ちを充実されるためには、保育園や小学校をこれまで以上に充実させていくことが鍵を握ります。両親が働いていても、子どもがすくすくと育つ社会を実現しなければ、共働きにより、当面の労働人口の減少には対処できても、長期的には国力の低下をもたらす可能性もあります。
企業は、人材が多様化し、流動化し、共働き化し、これまでのような画一性を前提とした団結力を持つことができない時代に合った企業の姿を模索する必要があります。より戦略を明確にし、より独自性を打ち出し、より存在意義を鮮明に打ち出し、誰もが、経営マインドを持ち動ける自律型組織への移行や、スピーディに意思決定を行えるマネジメントスタイルへの移行は必須です。
個人の幸福と、子どもの育ち、企業の強さの3つを同時に実現することに成功すれば、共働き社会への移行は、成功したと言えるのではないかと思います。しかし、現在は、この3つのすべておいて、変化の過程で混乱が起きています。
前提(男性社会から共働き社会への移行)を変えた上で、ありたい姿を明確にし、前提が変わることで、ありたい姿を手に入れる方法が変わることを明らかにして臨めば、混乱期を経て、バラ色の未来が待っていると思います。そのためにも、ありたい姿 ビジョンをみんなで共有していくことがとても大事だと思います。同時に、誰もが、自分の立場で必要なマインドセットの移行を行うことも必要になります。
個人と家族の幸福、子どもの育ち、強い組織の3つを同時に実現する日本になることを願い、女性活躍の支援に取り組みます。