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ダイバーシティ推進について(パート1)

2024年12月23日 文部科学教育通信掲載

今日では、大学においてもダイバーシティの推進が重要なテーマになりました。ある大学のダイバーシティ推進のために映像動画を作成しました。その内容を2回に分けてご紹介致します。パート1では、ダイバーシティ推進とはどのような取り組みを意味するのかについて解説いたします。

多様性(ダイバーシティ)の定義

最初に、多様性(ダイバーシティ)について解説致します。多様性には、様々な要素がありますが、大きくは、2つに分類することが出来ます。多様性には、生まれ持ったものや個人が選択することができない要素と、個人が自ら選択することができる要素があります。年齢や出身地などは、個人が選択することができません。一方、ライフスタイルや働き方、所属する企業などは、個人が選択することができます。私達は、自分とは異なる多様性の存在を理解し、尊重することが大切になります。

多様性には、もう一つ大事な視点があります。特に、多様性をイノベーションに結びつけるうえで、欠かせないのが、デモグラフィ型ダイバーシティとタスク型ダイバーシティという視点です。 デモグラフィ型ダイバーシティとは、年齢、性別、人種、民族、国籍、宗教、社会的背景など、個々人の属性の違いに関連する多様性のことです。タスク型ダイバーシティとは、個人の役割や業務に関連するスキル、知識、経験の違いに基づく多様性のことです。専門性も、タスク型ダイバーシティに含まれます。イノベーションを生み出すチームや組織には、タスク型ダイバーシティが必要であると言われています。タスク型ダイバーシティがあることで、多面的多角的な視点を融合させたり、新しいアイディアを生み出すことが可能になります。

一人ひとり違う

多様性にはどのようなものがあるのか、多様性はどのように分類されるのかを解説致しましたが、日々の生活の中で、最も大切なことは、一人ひとり違うという視点を持つことです。そして、自分という「多様性」を理解すること、自己理解を深めることです。人には、様々な側面があります。経験も違えば、大切なこと、喜びの源泉、得意なこと、スキルや能力も一人ひとり異なります。ジェンダーも違えば、家族も違います。それらすべての要素が統合されて、一人の人が存在しています。自分という多様性を理解し、他者についても同様の多様性があることを受け入れることが大切になります。

ダイバーシティ&インクルージョン

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)におけるダイバーシティとは、性別、国籍、性的思考、障がいの有無にかかわらず多様な人が差別なく働けることを意味します。インクルージョンは、多様な人たちが尊重され、それぞれの持ち味を生かしていきいきと働けることを意味します。最近では、D&Iにもう一つ エクイティという言葉が加わりました。特性に基づく心理的・物理的なバリアを取り去り、個々人の能力を発揮し成果を出せる公平な機会を提供することを意味します。D&Iを推進するうえで、差別がないだけでは十分ではなく、公平な機会を提供することが大切であるということです。

公平

公平については、もう少し解説を加えます。学校教育においても公平な議論が盛んです。子どもたちの中には、とても恵まれている子どもがいます。学校以外にも、塾にいったり、英語教室に通うなどの機会を得て、学校の授業で学ぶ必要はありません。一方、教室には、恵まれないこともがいます。家庭での教育機会はなく、発達の遅れを抱えていて、学校の授業にはついていけません。しかし、学校は、一律同じ教育をすべての子どもたちに平等に行うため、恵まれない子どもたちは、授業で学力を向上させることができません。このような子どもたちに、特別な支援を行うことが、公平な機会を提供することです。このように、差別がないだけでは十分ではなく、公平な機会を提供することが大事であるという考え方も、D&Iを推進する上で欠かせないものになりました。

ビロンギング

最後に、ビロンギングについても触れたいと思います。ビロンギングとは、自分らしく生き生きと働ける居場所を感じられることです。差別がなく、公平で、誰もが自分らしく生き生きと働けるためには、自分に居場所があると感じられることも大切です。D&Iを実現するために、エクイティもビロンギングも大切な考え方ですので、ダイバーシティ&インクルージョンを実現するうえで、合わせて実現していただきたいと思います。

数値目標

次に、数値目標の意義についても触れて置きたいと思います。女性活躍推進では、30%の管理職比率や、30%の女性役員比率等の目標が掲げられています。なぜ、30%なのかと疑問を持たれる方もいるかも知れません。ハーバート大学のロザベス・モス・カンター教授が提唱する「黄金の3割」理論によれば、30%は、マイノリティがマイノリティでなくなる比率です。このため、30%は、組織に質的な変化を起こし、女性活躍推進の効果を実感するために達成するべき重要なマイルストーンと考えられています。想像してみてください。部屋には、10人の人がいて、あなただけが、男性または、女性というシーンです。あなたは、どこまで自分が考えていることをオープンに話せますか。自分一人が異なる意見をもっていても、なかなか声に出しにくいのではないでしょうか。1人ではなく、3人になれば、自分の意見をオープンに話すことができるため、マイノリティの意見も生かされます。このため、女性活躍推進に取り組むのであれば、3割を超えることを目指す方が、組織にとって意義があると考えられています。

パート1では、ダイバーシティ推進の取り組みについてご紹介しました。パート2では、ダイバーシティ推進がもたらす価値についてご紹致します。

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