NPO次世代リーダー育成
202302.13文部科学教育通信掲載
先日、NPO法人で働く若者を対象に、ワークショップを行いました。
特定非営利活動を行う団体
特定非営利活動促進法が施行され、特定非営利活動を行う団体に法人格が付与され、 ボランティア活動をはじめとする市民の自由な社会貢献活動が本格的に始まったのは、1998年です。
法人数も4万6千になり、NPO法人が社会に定着した2012年には、大幅な法改正が行われました。認定NPO法人の制度も導入され、寄付に伴う税制優遇措置が適用されることになりました。現在、全国に、5万を超える団体があり、1220が認定法人(2021年時)になっています。
特定非営利活動に含まれるのは、以下の20種類の分野に該当する活動です。
- 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
- 社会教育の推進を図る活動
- まちづくりの推進を図る活動
- 観光の振興を図る活動
- 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
- 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
- 環境の保全を図る活動
- 災害救援活動
- 地域安全活動
- 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
- 国際協力の活動
- 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
- 子どもの健全育成を図る活動
- 情報化社会の発展を図る活動
- 科学技術の振興を図る活動
- 経済活動の活性化を図る活動
- 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
- 消費者の保護を図る活動
- 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
- 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動
フローレンスとかたりば
ワークショップの企画運営を行ってくれたのは、日本を代表するNPO法人であるフローレンスとかたりばのメンバーです。
2005年に病児保育事業をスタートしたフローレンスは、「みんなで子どもたちを抱きしめ、子育てとともに何でも挑戦でき、いろんな家族の笑顔があふれる社会」の実現を目指す、社会問題解決集団です。現在は、訪問型病児保育、障がい児保育、小規模保育など、常識や固定概念にとらわれない新しいサービスを創造し続けています。
かたりばは、2001年に活動を始め、「すべての10代が、意欲と創造性を育める、未来の当たり前を目指して」子どもたちを支援する様々な活動を行っています。カタリバは、12億円の規模の寄付を集める団体に成長しています。
ワークショップには、放課後NPOアフタースクール、キッズドア、全国こども食堂支援センターむすびえ、Ridilover, RCF,育て上げネット、クロスフィールド、エティック、CLACK、ASHA等日本を代表するNPO法人で活躍する若者が参加しました。
ワークショップのテーマは、リーダーシップとリフレクションです。ワークショップで、次世代リーダーの皆さんが学んだことを以下に紹介します。
リーダーシップとマネジメントの違い
多くの場合、リーダーとマネージャーという言葉を、管理者を表す言葉として、その違いをあまり意識することなく活用しています。このため、リーダーシップとマネジメントの違いを理解していない人が以外に多いです。
マネジメントは、目標を達成するために、資源配分を行い、計画を立て、その進捗を管理し、結果を出す一連のプロセスです。一方、リーダーシップは、他者に対する影響力の話です。他者が、ビジョンに向かって主体的に行動するために、発信する言葉やアクション、存在そのものを通して、他者に影響を与えます。
このため、リーダーに取って欠かせないのは、自分を知ることです。そこで、リーダーには、リフレクションが欠かせません。自分が何者なのか、自分は何を願っているのか、自分はどこに向かっているのか。この問いに対する答えを持つことがリーダーシップを発揮する上で欠かせません。
NPO法人を立ち上げたリーダーたちを上司に持つ皆さんは、団体に、ロールモデルとなるリーダーが存在しているので、企業で働く若者よりも、リーダーシップの大切さをよく理解している様子でした。
ビジョンと対話
リーダーには、様々な機能があります。自分を知り、ビジョンを形成したら、他者を巻き込むために、発信をします。ありたい姿がどんな姿で、そこに行くことがどれほど魅力的なことなのかを発信し、多くの人に共感してもらう必要があります。磁石のように、人々を引き寄せられるビジョンを語ることができるリーダーが、多くの仲間を集めることができるからです。
同時に、リーダーには、対話の力も必要です。対話を行うことで、一人ひとりの主体性を育むことが大事だからです。発信力の強いリーダーに引き寄せられた仲間たちが、リーダーの夢を実現するために活動すると、強い組織は創れません。このため、「あなたはどうしたいのか」、「あなたにとって、なぜこの活動が大切なのか」を問いかけ、一人ひとりが、リフレクションを通して、ビジョンを自分ごと化するプロセスが大切です。
問題解決
リーダーは、問題解決力を磨く必要があります。大きな夢を実現するプロセスには、多くの課題が存在します。今とは違う世界を創造するのであれば、誰もが解決したことのない課題に向き合う必要があります。NPO法人のビジョンの多くは、今の社会課題を解決する活動なので、リーダーの問題解決力が試されます。
問題解決力には、課題発見、解決策の創造、解決策の実行、恊働と幅広い力が必要になります。また、課題が顕在化する前に、課題を予知する力があると、組織は安泰です。
課題解決に際しては、多様なメンバーの知恵を結集し、解決策を見出すことも大切になります。リーダーが一人で考えているようでは、発想も広がりません。また、解決のためのアクションにおいては、ビジョンの共有、課題の自分ごと化等、リーダーの発信力と対話力が欠かせません。
育成力
組織を率いるリーダーには、育成力が欠かせません。組織の成長は、人の成長とも言えるからです。多くの組織の成長が鈍化するのは、人の成長が鈍化するからです。組織が成長すれば、人に求められることが変わるのは当然です。ところが、そのことに気づかない人たちがいます。そこで、リーダーは、人々が学習と成長に向かうために工夫する必要があります。同時に、リーダー自身も、役割の変化を理解し、できれば、次のステージに行く前に、自分をアップデートする習慣を持つことが望ましいです。
組織の成長に欠かせないのが、経験から学ぶリフレクションです。経験を通して学習し、法則を見出し、仮説を持って次の行動を行うという学習サイクルを上手に回す人は、成長し続けます。また、他者の成長を支援するコーチングやフィードバック等のスキルセットも欠かせません。
受け手主導
リーダーシップの評価は、受け手が決めます。どれほど、素晴らしい人物でも、どれほど雄弁な語り手でも、他者が、リーダーの意図した通りに、主体的に動くことができなければ、リーダーシップは機能していないということになります。このため、リーダーには、受け手に学ぶ謙虚さも欠かせません。意図通りでなければ、そのことに気づき、改善点を模索する経験学習サイクルを回し続けることで、多様な相手に対しても、効果的にリーダーシップを発揮することができます。
よりよい社会を目指して、様々な領域で活躍する次世代リーダーの益々の活躍を期待したいです。