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対話の5つの基礎力

2023.04.10文部科学教育通信掲載

価値創造や問題解決に多様性を活かす対話の実践方法を紹介するために、ダイアローグの本(『ダイアローグ 価値を生み出す組織に変わる対話の技術』ディスカヴァー/トゥエンティワン)を出版致しました。著書の中で紹介している対話の5つの基礎力について、紹介したいと思います。対話の基礎力が身につくと、対立を楽しむことも、多様な意見を融合することも、簡単に行えるようになります。

 

対話の5つの基礎力

対話の基礎力は、メタ認知、評価判断の保留、傾聴、学 習と変容、リアルタイム・リフレクションの5つに分けられます。 これらは一つひとつ個別に習得するものではなく、メタ認知を中心に広がるように 身につけていくものだと考えてください。

 

 

5つの基礎力の説明を書籍から引用致します。

1メタ認知

メタ認知とは、自分が認知していることを俯瞰して認知することです。自分の考え がどこからやってきたのか、リフレクションを通して、意見の背景にあるメンタルモ デルを理解し、自己の内面をメタ認知します。 自己の内面をメタ認知することは、対話の基礎力の要です。他の4つの実践が難し いと感じる人は、まずはメタ認知だけに焦点を当ててもよいです。 メタ認知の実践に慣れることで、残りの4つの対話の基礎力も身についていきま す。逆に、メンタルモデルを俯瞰することができないと、残りの基礎力を実践するこ とが難しくなります。 自分の考えを当たり前だと思わずに、「なぜ私はそう思うのか」を自分に尋ねる習 慣を持ちましょう。

 

2評価判断の保留

価値のある対話をするためには、自分の意見を持っていたとしても、その意見を横 に置き、他者の意見に耳を傾ける、つまり評価判断を保留にする必要があります。 自分の意見に固執した状態で対話をしても、ただ忍耐力が磨かれるだけで、創造性 は高まりません。評価判断を保留にしてこそ、多様な意見に学ぶことができます。 評価判断を保留にするためには、自分の内面を俯瞰し、自分と自分の考えを切り離 すことが必要になるので、ここでも先ほど挙げた「メタ認知」ができていることが重 要になります。 もし「そんな考えは間違っている」と決めつけながら他者の話を聴いている自分に 気づいたら、すぐに「評価判断の保留」を意識し、自分を制御してください。

 

3傾聴

メタ認知と評価判断の保留では、自らのメンタルモデルに意識を向けていました が、傾聴では、他者のメンタルモデルに意識を向けます。 他者の考えがどこからやってきたのか、相手はどのような価値観やものの見方を判断の尺度に用いているのか、他者の意見の背景にあるメンタルモデルを理解します。 自分の内面をメタ認知するように、相手の内面を理解することができると、相手に 共感することも可能になります。 ただし、傾聴し、相手の内面を理解しても、賛成する必要はありません。相手の世 界を、相手の感情も含めて正しく知ればよいのです。

 

4学習と変容

対話を通して何を学んだのか、自分の考えにどのような変化が起きたのかを明らか にするのも、大切な対話の基礎力です。 対話は、「他者の見ている世界を知る」という学びの場であると同時に、「自分を知 る」機会でもあります。対話における学習と変容は、「想像」「共感」「変容」の3ス テップで行います。その結果、対話を通して新しいものの見方を手に入れることがで きます。 学習と変容は、対話の大切な成果物です。しかし、学習と変容は、自己の内面に起きることなので、意識を向けないと自覚できません。ぜひ、リフレクションを通して、学習と変容をメタ認知することも、忘れないでください。

 

5リアルタイム・リフレクション

自分の内面に起きていることをリアルタイムにリフレクション(内省、振り返り)す ることで、対話からより多くのことを学ぶことが可能になります。 対話の5つの基礎力は、一つずつ順番に行うものではなく、複数の実践を同時に走 らせることになります。このため、リアルタイム・リフレクションを通して、自分の 内面に起きていることをメタ認知することが欠かせません。 対話の持つ潜在的な可能性が開花するのは、多くの場合、驚きや違和感といった多様なものの見方に遭遇したときです。 ところが、油断をしていると、驚きや違和感につながる意見や発言者に対してネガ ティブな感情が生じ、評価判断をしてしまう可能性が高いです。感情が動くのは人間として自然なことですが、対話を続けたいのなら、評価判断をしている自分にすぐに気づき、評価判断を保留にする習慣を持つことが大切になります。

 

一人で考えることには限界がある

ームで考えると、一人で考えるより生産性が下がると感じる人も多いと思います。知識の豊富な人ほど、その傾向が強いです。しかしそれは、あくまでも過去の知 識の蓄積を土台とした考えであり、前例のない発想ではありません。 あなたがエジソンのような発明家でないのなら、独創的なアイディアが、一人の頭 から生まれる可能性は低いと考えるほうが賢明です。 対話は、他者の頭を使う手段です。他者と一緒に考えることで、自分一人では思いつかない新しい発想に出会えます。そのような成功体験を、多くの人に持ってほしい です。

多様性を活かすチームで成果を出すために、対話の基礎力を実践していただきたいです。チーム全員が、対話の基礎力を身につけることで、対話の質が高まります。一方、メンバーの中に、一人でも評価判断を保留に出来ない人がいると、対話の場が破壊されてしまうので、対話の質が低下してしまいます。このため、対話の基礎力を、みんなで実践することがオススメです。

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