skip to Main Content

ティール組織

2023.01.23文部科学教育通信掲載

未来の組織論 ティール組織をご紹介します。

ティール組織は、マッキンゼーで10年以上 組織変革プロジェクトに関わったデリック・ラルーが提唱する新しい組織モデルです。

ティール組織のティールは、鴨の羽色(はいろ)を意味します。

今日における新しい組織モデル ティール組織は、一言で言うと、管理者のいない組織です。ティール組織のボスは、人間ではなく、組織のパーパスです。

ティール組織では、一人ひとりが、パーパスとつながることで、管理者がいなくても、使命を果たすことができると考えます。

5年前に、始めて、この考えに触れた時の驚きは、今も忘れることができません。私は、大抵のことには驚かないのですが、ボスはパーパス と知ったときには、「それで、どうっやって組織が回るの?」と大きなはてなマークが頭に浮かびました。

 

組織の進化

フレデリック・ラルーは、組織の進化は、人間の意識の進化共にあると言います。

最も古いのは、レッド組織です。

恐怖を与え、服従させる最古の組織モデルです。

次のモデルは、アンバー組織です。

権限や階層などを重視する軍隊のような組織です。

次のモデルは、オレンジ組織です。

実力主義・成果主義に基づくピラミッド型の階層構造の組織です。

今日の組織の多くは、オレンジ組織です。

最近では、オレンジ組織と共に、グリーン組織も登場しています。

成果よりも主体性やダイバーシティを重視するボトムアップ型の組織です。

オレンジやグリーン組織が進化した結果、フレデリック・ラルーが紹介するティール組織が登場します。 ティール組織は、一つの生命体や生物のように、平等に権限と責任が与えられ、進化し続ける次世代型組織です。

 

人間の意識

人間の意識の進化については、ケン・ウィルバーのインテグラル理論を参考にしています。ケン・ウィルバーは、意識のレベルを10種類に分けています。

ティール組織のティールは、インテグラル理論で、10種類の下から7番目に位置する意識レベルの名称で、統合的という意識レベルを表します。ティール組織のティールは、この意識レベルに由来しています。

ここで、少しだけ意識レベルの進化についても触れておきます。

私たちの意識は、自己中心的から、集団中心的な意識へと発達します。

今日、一般的な組織の形と考えられているオレンジ組織は、集団中心的な意識レベルに合った組織モデルといえます。

インテグラル理論によれば、私たちの意識は、自己中心的な意識から、集団中心的な意識を経て、世界中心的、更には、宇宙中心的な意識へと発達してきます。

ティール組織は、世界中心的な意識レベルに合った組織モデルです。

ティール色が表す意識レベルでは、世界をより広い視点で捉えることが可能となり、あらゆるものを統合していくことができるようになります。

 

ティール組織の特徴

ティール組織の特徴は、自主経営(セルフ・マネジメント)、全体性(ホールネス)、進化し続けるパーパス(エボリューショナリー・パーパス)の3つです。

ティール組織には、ボスがいないので、誰もが自律的に考え、行動し、問題を解決し、ゴールに到達します。このため、自主経営が基本となります。

2番目の特徴 ホールネス 全体性には、3つの視点があります。

1つ目は、人間の全体性です。会社でも、仮面をかぶるのではなく、ありのままの自分でいることを当たり前と考えます。

2つ目は、組織の全体性です。組織を、一つの生命体と捉えます。

3つ目は、世界の全体性です。人間も、組織も、地球の一部であり、社会の一部であると捉えます。

全体性という視点に立てば、自分も自然の一部であり、自然破壊は、自己を破壊しているのと同じことであるという捉えることができます。

持続可能な地球と人類の未来のために、私たちが、生き方を変えていかなければならない時代に、私たちの意識レベルが高まり、組織も進化するのかもしれません。

 

ビュートゾルフ

ティール組織の代表例として、看護師を中心に質の高い在宅ケアサービスを提供し、成功を収めている「ビュートゾルフ」というオランダの組織があります。

ビュートゾルフは、ティール組織なので、上司はいません。ただし、メンバー全員が守っている3つの約束があります。1つ目は、すべてのチームが財政的に持続可能であることです。そのために、ガイドラインとなる生産性の目標値が設定されています。2つ目は、看護師は必ずビュートゾルフ のWEBシステムを使用することです。共通のWEBシステムを使用することで、各チームの状況を把握することが可能になります。この2つの約束により、メンバーが自律的に動くことと、組織の持続性を担保することの2つの目的を両立させることができます。3つ目は、各チームが自分たちで採用を行うことです。メンバーは、この3つの約束を守り、それ意外は自律的に決断し行動することができます。ただし、チーム全員が意思決定の内容に居心地の良さを感じることは、大前提です。

抑えるところが、明瞭で、看護師の皆さんが、患者さんのために、最良の意思決定を行う様子が想像できます。

 

学習する組織

ティール組織の本(『ティール組織 マネジメントの常識を覆す次世代組織の出現』フレドリック・ラルー著 英治出版)が出版され、ティール組織のことをもっと知りたいと思い、日本で、ティール組織を実践している企業を探したところ、ダイヤモンドメディア社という会社が、もう何年も前からティール組織を実践していることを知りました。そこで、ダイヤモンドメディア社の創業者で、当時、社長を努めていた武井さんにお話を伺い、みんなで勉強会も実施しました。その際に明らかになったのは、ティール組織が、学習する組織であるということでした。

学習する組織の要は、パーソナルマスタリーを持つ人です。パーソナルマスタリーを持つ人は、自分を知り、自分らしく活躍し、組織に貢献します。パーソナルマスタリーを持つ人は、組織のビジョンを自分ごと化することができます。そして、現状と有りたい姿にギャップを発見すると、内発的動機を高め、ビジョン達成のための道を模索します。この姿勢を持つ人は、主体性のある人であり、ティール組織が求めるセルフ・マネジメントができる人です。

2018年に、ティール組織の本が出版され、日本でも大きな反響がありました。そして、多くの人達から、「管理型組織ではなく、ティール組織で働きたい」という声を聞きました。

 

リフレクション

上司のいない組織では、指示命令ではなく、リフレクションを通して、成果に到達しなければなりません。リフレクションは、セルフ・マネジメントを前提とする組織において、欠かせない習慣です。

ティール組織も、学習する組織も、現状と有りたい姿のギャップを埋めるために、誰もが、内発的動機に基づき、考え、行動することを期待します。そのうえで、結果や行動、自己の内面を振り返り、次のアクションを見出します。

その際に、チーム学習も欠かせません。失敗についても、恐れず、安心して語り、みんなで一緒にリフレクションを行えるチームは、経験から学ぶことができるので、得たい結果を手に入れることができます。リフレクションは、セルフ・マネジメントに欠かせないもの、学習する組織を実現する上で欠かせないものです。

ティール組織、学習する組織と共にリフレクションの習慣が広がることが楽しみです。

 

Back To Top