skip to Main Content

就活とリフレクション

2022.09.12文部科学教育通信掲載

先日、就活生のためのYOUTUBE 「しゅんダイヤリー」とJobPicksのコラボ企画に参加し、現役大学生と一緒に、就活のためのリフレクションに取り組みました。

就活という意思決定

就活は、大学生にとって、人生で最も大きな意思決定です。しかし、彼らが持っている情報は限られており、最良の意思決定を行うための情報が圧倒的に不足しています。海外では、新卒一括採用という考え方はなく、インターンシップから始めて、本採用につなげたり、インターンシップを通してスキルを磨き、キャリアップにつなげていく等が一般的です。しかし日本では、大学生の間に、就活を行い、就職と言う名の就社のための決断を迫られます。

噛み合わない社会モデルと時代

VUCA時代に突入し、前例の見えない時代、DXが更に進む時代、これまでの職業がAIに代替される時代に、高度経済成長期に形成された就職という社会モデルが、時代と噛み合わなくなっていると感じます。大学を卒業したら、すぐに就職し、生涯1社で働き続けるという生き方は、今の20代の若者にとっては、珍しいケースになるでしょう。そんな中、彼らは、今でも、エントリーシートを記入し、真剣に就活を行っています。

なにがよい就職なのか

変化の激しい時代になり、安定を求める人も増えていると聴きます。一方で、受験同様に、優良企業に就職するために頑張る人も、多くいます。そこで問題となるのが、優良企業の定義です。かつては、歴史があり、ブランドも確立している企業に就職することが望ましいという社会通念が存在したように思いますが、今では、歴史のある企業であっても、将来を保証するものでもありません。また、歴史のある企業には、ヒエラルキー的な風土が存在し、若者の多くは、不自由さを感じてしまうようです。

ESのためのリフレクション

「しゅんダイヤリー」でお話を伺った高橋さんと、安保さんのお話から、自己分析は、エントリーシートを描くために行う作業という説明を受けました。就活生は、エントリーシートを提出後に、自己分析を行うことはないそうです。これは、とてもショッキングな事実です。リフレクションを通して、自分を知ることに価値があるのではなく、エントリーシートを埋めることに価値があるから、そのために自己分析を行うというのが、就活生の常識であることを知りました。

自分を知ることの大切さ

以前、教育視察で訪れたデンマークやオランダでは、幼児期から自分を知ることの大切さを先生たちが強調していました。様々な遊び道具が用意されていて、子どもたちは、自分で好きな遊びを選び、興味のあることを探究する機会を通して、自分が好きなこと、得意なことを見つけて行きます。また、お友達と一緒に遊ぶ中で、多様性の中での自分を見出していきます。

オランダでは、幼児が、計画を立てて遊ぶ様子も見学しました。壁に、園の遊び場が描かれていて、キーホルダーのようなものに名前が付いていて、お外で遊びたい子は、お外の場所に、自分の名札を付けてから遊びます。お部屋の中も、音楽や、アート、言葉遊びや読書、数遊び等、子どもたちの興味関心に合わせたコーナーが用意されていました。このため、子どもの興味関心を容易に理解することができます。そして、毎日、どこで遊んだかの記録をポートフォリオに書き記すことで、子どもの特性を理解する事もできます。また、先生は、その記録を使い、いつも遊んでいないコーナーで遊んでみることを奨励し、子どもが、あたらしい世界に触れる機会を持つことにも気を配っていました。

振り返り嫌い

日本の学校では、自分を知ることや、自分について学ぶことを重要視しません。生徒も、学力が高まる訳ではないので、自分を知ることに関心がありません。新学習指導要領がスタートし、学校でも振り返りの重要性が強調されるようになりました。その結果、振り返りを嫌う生徒が増えている現実もあります。生徒は、振り返りは、自分のために行うものではなく、先生の期待に答える行為という認識を持っています。このため、振り返りは、自分にとって意味のない、無駄な行為と考える生徒が多いです。先生が読むのだから、本音を書く気になれないという生徒もいます。

しゅんダイアリーで就活生に伝えたこと

就職活動の中で、インターンをしたり、先輩の話を聞いたり、新しい経験をしたら、その度にリフレクションして欲しいと伝えました。楽しくても、やりがいを感じられなくても、その経験を振り返ることで、自分が何を大切にしているかを知ることができます。

楽しかったら、なぜ楽しかったのか

職場の人たちとのやり取りの中で、良好な人間関係を垣間見ることができ、こんな職場で働きたいと思ったとしたら、私は、職場の人間関係を大事にしたいと思っていることが分かります。

やりがいを感じない時には、なぜ、やりがいを感じないのか

誰もが、仕事に集中していて、インターンの自分には、集中して取り組める仕事はなく、なんとなく、一日を過ごしてしまったのでつまらなかったと思ったとしたら、私は、仕事を任されるような人になりたいとか、自分の裁量で仕事ができる人になりたいと思っていることがわかります。

自分が大切にしていることが解ると、その観点から仕事を選びやすくなります。

リフレクションは、過去と現在と未来をつなぐものです。過去の経験を振り返ると、自分を知ることができます。その結果、リフレクションを通して、今、できる最良の決断を行うことが可能になります。未来は、現在の決断により形づくられます。また、過去をリフレクションし、自分らしさを知ることで、自分にあった未来のありたい姿を思い描くことが可能になります。

リフレクションをしないで、自分を知らないまま、意思決定を行う時、就活生は何を基準に意思決定をしているのでしょうか。多くの学生が、社会や親の基準を頼りに決断しています。

反省ではあくリフレクション

以前、米国企業GEのイメルト元会長のお話を伺った際に、とても印象に残った言葉がありました。「911や、リーマンショックなど、想定外の出来事が起きる中で、意思決定を行うことは容易ではなく、間違うこともある。そんなときには、軌道修正をする。僕は、毎晩、今日を振り返り、反省することもある。でも、翌朝には、自信満々の自分になる」この話を聴いた時、リフレクションのお手本を示していると思いました。

多くの人が、振り返りを学習ではなく、反省と捉えています。反省には、後悔や、申し訳ない気持ち等のネガティブな感情が紐づいているので、反省しているときには、経験からの学びを得にくい状態になっています。誰かに、責任を追求される状態であれば、心理的安全性は更に低下し、人間が学ぶ環境ではなくなります。一方、失敗経験には、学びの種がたくさん含まれており、失敗経験を通して得た智慧を可視化することに焦点を当てたリフレクションを行うことができると、ポジティブなリフレクションを行うことができます。その結果、経験を自信につなげることも可能になります。

成功でも、失敗でも関係なく、経験したことに価値があります。経験の価値は、それをどう意味づけるのかによって変わります。リフレクションを通して、智慧を言語化することの大切さを就活の前に知って欲しいと思います。そのために、学校の振り返りのあり方も、見直す必要がありそうです。

Back To Top