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学校の先生のためのリフレクション講座

2022.06.13文部科学教育通信掲載

5月の大型連休の直前に、学校の先生ためのリフレクション・ワークショップを実施しました。先生方は、超多忙な4月を走り抜け、GWでホッと一休みできると伺いました。ワークショップの主催者は、子どもと先生が『希望が持てる学校』を目指す「現役教師x挑戦x異業種」の新しい教育コミュニティ「職員室ネクスト」です。「職員室ネクスト」を立ち上げた星野達郎さんは、教員を卒業し、今年から、この活動に100%専念するそうです。そこで、私も応援団として、ワークショップを企画することにしました。

 

セミナーの企画

「職員室ネクスト」から頂いたお題は以下の通りです。

企画名

指示をせずに!あの子が変わる『新・児童生徒理解』体験型セミナー

ターゲット

子どもの問題行動、犯行的な態度、伸びない学力、成長への意欲に課題感を持っている先生

提供する価値

あの子を理解し、あの子が変わるためのリフレクション

・なんでA君は成績上がらない?

・なんでBさんは積極的に活動しないのか?

・なんでC君はトラブルばかり

・なんでDさんは私に反抗的なの?

➡セミナーを通して、あの子への理解を深めていくリフレクションスキルを獲得する。

さすがは、現役の教員の集い! 先生たちのニーズのど真ん中に焦点を当てた企画です。

 

先生のご苦労

この企画を頂いて、正直、期待に添えることができるだろうかと不安な気持ちもありましたが、企画の狙いをずらさずに、真正面からリフレクションに取り組んでもらうワークショップを企画することにしました。

事前に、先生方がどんな悩みを持っているのかを知るために、お話を伺いました。先生方の生の声をお聞きして、子どもの多様化が進み、様々な子どものイレギュラーな行為と向き合わなければならない先生たちは本当に大変だと思いました。子どもの抱えている課題も、多様で、勿論、対応も、一律という訳にはいきません。先生方のお話を伺い、多忙化する学校現場で、子どもたちと向き合い、子どもたちのために、日々過ごしている先生たちには、感謝の気持ちしかないと、改めて思いました。

先生方の現状を知り、私の意思も固まりました。少しでも、先生方の役に立てるワークショップにしようと構想を練りました。

ワークショップ

ワークショップのタイトルは、『あの子が変わる“魔法の言葉”を見つけよう』です。本当に、“魔法の言葉”を見つけてくれるだろうか、ドキドキしながら本番を迎えました。

ワークショップでは、2つのワークを行いました。

1つ目は、自分の考えと感情をメタ認知するためのリフレクションです。このリフレクションでは、どんな気持ちが、自分の心を支配しているのかをメタ認知し、その背景にある自分の価値観を探ります。

2つ目のワークでは、自分の心を悩ましている子どものことを考えます。その子は、どうしてその行動をするのか、その背景には、どんな気持ちや大切にしている価値観があるのかを想像します。

ワークショップでは、意見、経験、感情、価値観の4点で考えるためのメタ認知のツールを使いました。

意見:何かに対する自分の意見

経験:その意見の背景となる経験や知識

感情:経験の記憶に紐づく感情

価値観:大切にしている価値観

価値観は、意見が形成された背景となる判断の尺度であり、感情がポジティブ・ネガティブになった理由です。

 

ワークショップの流れ

ワークショップでは、前段にリフレクションの解説を行います。リフレクションは、自己を客観的、批判的に振り返る行為であることを解説し、その重要性を伝えました。

前例のない変化の激しい時代を生き抜くためには、これまで通りのやり方やものの見方をそのまま踏襲するのではなく、自分で見通しを立てて行動し、その結果から学び、やり方やものの見方を変えて行く力が必要になってきており、その力を支えるのが、リフレクションやメタ認知ということになります。

 

ワーク1:自己の考えと気持ちをメタ認知する

ワーク1の狙いは、先生が自らの内面をメタ認知することです。自分が、その子についてどのような考えを持っているのか、どんな気持ちなのか。このワークをする前は、子どもの態度が、先生を悩ませているという理解ですが、このワークを行うと、自分が何を大事にしているから、子どもの態度を改善したいと思っているのかに気づくことになります。思考が、子どもから、自分の内面に移行することで、負の感情の原因は、子どもの問題行動ではなく、その問題行動が、自分の願い(大切にしている価値観)に反するからであるということに気づきます。同時に、自分が大切にしている価値観(ものの見方)が、子どもの行動を問題であると捉えていることにも、気づくことになります。

 

社会人が、他者育成に苦労している時にも、このアプローチは有効です。人を育てていると、その人の行動が変わらないことにストレスを感じます。そして、自らの行動や内面を振り返ることを忘れてしまいがちです。先生の場合は、相手が、子どもであり、常に集団なので、その苦労は2倍だと感じます。個々にニーズも背景も違う多様な子どもたちを、個人として集団として、両方の観点から見立てて、自らの言動を通して、マネージしていかなければなりません。

メタ認知のワークは以下のようになります。

事例:自分の考えと感情のメタ認知

 なんでBさんは積極的に活動しないの?

【意見】

なんでBさんは積極的に活動しないの? ・・・他の子はちゃんとできているのに。

【経験】

Bさんは、最近、算数の授業で、自分で問題を解く時間に、全く問題を解こうとしない。

【感情】

(自分で問題を解かないと解るようにならない)心配

(授業に興味を持てないのは、私の教え方に問題があるのか)不安

(ここで解らなくなると、次も解らないので、算数が苦手になるのが)心配

【価値観】

みんなが算数を理解すること

みんな勉強ができるようになること

 

ワーク2:子どもの世界を想像する

今度は、先程の事例「なんで、Bさんは、積極的に活動しないの?」に登場したBさんになったつもりで、Bさんの内面を想像してみます。

ここでは、想像力を膨らましてもらうために、2つの事例を用意しました。

事例1

【意見】

全然わからない。おもしろくない。どうせ、勉強頑張っても解りっこない。

【経験】

割り算から急についていけなくなった。みんなスラスラといているのに。

【感情】

(スラスラ解けず)残念 (算数は)つまらない

【価値観】

勉強ができる子が理想

 

事例2

【意見】

ゲームが楽しい。 

【経験】

ゲームが楽しくて仕方ない。夜遅くまで、布団の中でゲームをしているので、授業中は眠くてしかたない。

【感情】

(ゲーム)楽しい、(授業)つらい 

【価値観】

ゲームで全クリ

2つのワークを終えた後は、対話タイムです。それぞれが、自分の書いたシートを共有しながら、対話をする中で、多くの気づきを得ていただきました。

 

ワークショップの感想

ワークショップは、成功しました! 中でも、一番嬉しかった感想は、ある校長先生の以下のメッセージです。

自分から見える部分だけで判断し、指導するのではなく、相手の世界を想像してみると、1つ、2つ、3つと次から次へ、相手の「意見・経験・感情・価値観」のアイディアが湧いて来ました。すると、どんどん対象となる子どもを愛おしく思う自分がいました。

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