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ワークライフバランス

2022.07.11文部科学教育通信掲載

日本の女性活躍推進は、成長戦略と位置づけられ、2014年以降 本格化しています。それまでは、多くの女性たちが、結婚、出産で退社していましたが、今日では、産休・育休後に復帰する女性、子育てとの両立のために時短で働く女性が増えました。女子大生の多くは、長く務めるつもりで就職活動を行うようになりました。

 

変化の兆し

女性活躍が進むことで、若い男性の意識も変わり始めています。ある企業採用担当者から「先日、採用面談で、男子学生から、御社は、出産後の女性が働きやすい会社ですかと聞かれました」という話を聞きました。とても時代を象徴している話だと思いました。労働人口の減少によりスタートした女性の本格的な社会進出は、パートナーである男性のライフスタイルにも大きな影響を与えます。昼間は保育園に子どもを預けることができますが、朝晩の送り迎え、家庭での家事・育児は、夫婦で協力して行うことになります。

 

共働き社会へのシフト

女性活躍推進という考え自体がすでに古く、今日の取り組みは、共働き社会へのシフトと考える方が望ましいです。

 

共働き社会へのシフトを成功させるために、女性活躍推進法が2015年に制定されました。従業員301名以上の企業は、女性活躍推進のための行動計画を策定し、公表することが義務付けられました。また、働き方改革関連法が2018年に制定され、企業における長時間労働の削減が本格化します。これまでは、24時間(長時間)働ける社員が模範でしたが、働き方改革が始まり、長時間労働は『悪』になりました。突然のバリューシフトではありましたが、企業は、照明を切る、パソコンへのアクセスを制御する等の徹底策を考案し、社員の意識改革を進めて来ました。

 

これまでの失敗から学ぶ

共働き社会へのシフトを成功させるためには、長時間労働を『是』とする働き方を変える必要があります。これまでも、女性が結婚出産後も働きやすい環境の整備は進められてきました。しかし、多くの女性たちが、結婚出産後に働き続けることを断念したのは、男性社会の「あの働き方」を、子育てと両立しながら行うことは難しいと判断したからです。また、女性が出産後も働き続けると、パートナーである男性社員も、これまでのように、長時間労働も、転勤も、積極的に行える社員ではなくなります。

 

世界とのギャップ

女性の社会進出は確実に進みはじめていますが、世界に目を向けると、かなりの遅れを取っており、男女の格差に関するジェンダーギャップレポートでは、日本は、156カ国中一20位です。この調査では、政治への参画、経済への参画、健康、教育の4つの指標で、男女の格差を評価しています。日本は、健康と教育では男女の差がありませんが、政治と経済への参画が低いことが、120位という結果に繋がっています。

 

日本では、女性が教育を受ける権利が守られており、女性にも、男性同様の教育の機会が与えられています。このため、海外からは、「なぜ、日本社会は、女性の力を生かさないのか」と疑問に思うようです。また、バブルの時代に、外資系企業が日本に進出する際に、優秀な男性を採用することが困難であったため、優秀な女性を採用した経験を持つ海外のリーダーは、日本の女性は、十分に社会で活躍できる力がることを知っています。このため、外国からも、日本の女性活躍に期待する声が聞こえてきます。

 

このジェンダーギャップレポートには含まれていないのですが、大学の研究者・科学者の女性比率に目を向けると、日本は、OECDの中で最下位です。全体的には、4割、3割が当たり前になっていますが、日本では、女性研究者・科学者は、15.7%です。子育てをしながら研究に従事することや、学会に出席すること等が難しいのでしょうか。今後は、女性研究者・科学者が増えることを期待したいです。

男性の育児参画本格化

育児休業法が改正され、両親が一緒に育休を取ることが奨励されることになりました。会社にとっては、労働時間の減少に繋がり、あまり喜ばしい取り組みではないかも知れませんが、国としては、少子化に歯止めをかけるために必要な手段を講じたことになります。共働き社会へのシフトは、すでに始まっていますが、日本の男性の育児、家事への参画は、諸外国の男性に比べて低く、特に、育児への参画の低さが目立ちます。

 

改正された育児休業法では、産後8週間以内に男性も「産後パパ休暇」を取得することを奨励しています。父親が、産後8週間以内に子どもと関わることで、子どもに対する愛着が増し、その後の育児への参画度が高まることを期待しています。「産後パパ休暇」制度では、最長4週間、2回に分けて、休暇を取得することができます。また、産後8週間後の育休についても、最長1年間を、2回に分割して取得できるようになります。

 

公教育の充実

共働き社会では、公教育に対する期待が更に大きくなります。以前、ヴァン クリーフ&アーペルという有名な宝石ブランドの米国支社長をされていたフランス人の女性にインタビューをしたことがあります。「フランスは、公教育が充実しているので、女性が安心してキャリアアップを目指せるのです」とお話されていたのが印象的です。すべての子どもたちが幼児期を保育園で育つ時代だからこそ、公教育への投資がさらに進むことを期待したいです。

 

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