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アンラーン(学びほぐし)の実践方法

2022.06.27文部科学教育通信掲載

変化が激しく、変化のスピードの早い時代になり、社会人にとっても学ぶ力が欠かせないものになっています。技術革新により、多くの職業人が新しいスキルを学ぶ必要性が生まれ、リスキリングという新しい言葉も生まれました。

今回のテーマは、アンラーン(学びほぐし)です。アンラーンとは、過去の経験を通して形成された「ものの見方/行動様式」をアップデートしていくことです。アンラーンも、また、環境の変化の激しい時代に必要な学び方と言われています。

アンラーンでは、自己の内面(思考・感情・価値観)のメタ認知を行います。

 

リフレクション

アンラーンを行うためには、自己を客観的、かつ批判的に振り返るリフレクションが欠かせません。リフレクションを通して、自分の内面をメタ認知することで、初めて、過去の学びを手放すことが可能になります。

 

意見:自分がどのような考えを持っているのか

経験:その考えはどのような経験や知識に基づくものなのか

感情:そこにはどのような感情があるのか

価値観:その考えには、どのようなものの見方や価値判断が存在するのか

 

アンラーンのステップ

ここからは、アンラーンのステップを事例を活用し、順番に解説します。

 

  • 『過去の学び』のメタ認知

多くの人が、変わろうと必死なのに、変われない、アンラーンできないのはなぜでしょうか。それは、いきなりアンラーンを始めるからです。アンラーンを成功させるためには、まず、最初に、しっかりと「何をアンラーンするのか」、「アンラーンしなければならないものの見方や行動様式は、過去のどのような成功体験によるものなのか」をメタ認知することが大切です。

 

事例を見てみましょう。

 

【意見】アンラーンが必要かもしれないと思う「ものの見方/行動様式」はありますか。

これまでのやり方では、これまでのような成果・結果を出せないと感じること。

これまでは、計画に従い行動し、PDCAを徹底することで、成果を挙げてきた。しかし、予測不能な時代になり、計画づくりに苦労するようになってきた。

【経験】その「ものの見方/行動様式」に関連する過去の経験(知っていることも含む)は何ですか。

これまで、数多くの成果を挙げてきた。成果を出すために、常に心がけているのはPDCAを徹底すること。計画は、半年、3ヶ月、1ヶ月、1週間、1日の単位で、明確にし、行動する。計画がしっかりしているからこそ、進捗管理も徹底できる。

【感情】その経験には、どのような感情が紐付いていますか。

計画があると(安心)、成果がでると(うれしい)

【価値観】そこから見えてくるあなたが大切にしている価値観は何ですか。

成果、結果、責任、トラブルなし

 

変化の激しい時代に、計画を立てて行動するというマインドセットが、仕事を前に進める上で障壁となり、新しいものの見方を手に入れる必要があると感じていることが解ります。これまで、計画と進捗管理の徹底で大きな成果を出してきたという成功体験があることも解ります。

アンラーンのことを、過去の成功体験を手放すことであると説明されることが多いですが、これは大きな誤解です。過去の成功体験は、大切な思い出であり、誇りです。それを手放す必要はありません。その経験を通して形成されたものの見方と行動様式を手放せばよいのです。

 

  • アンラーンの可能性を想像

過去の学びのメタ認知が完了したら、次は、アンラーンの可能性を想像してみます。アンラーンが必要かもしれないと思った経験を振り返り、何をどう変えたいと考えているのかを深掘ります。

【意見】アンラーンが必要かもしれないと思う「ものの見方/行動様式」をどう変えてみますか。
これまでのやり方では、これまでのような成果・結果を出せないと感じることを、新しいやり方に変えてみることを想像してみましょう。

計画の質よりも、まず試してみることが大事かもしれない。

【経験】その「ものの見方/行動様式」に関連する過去の経験(知っていることも含む)は何ですか。

変化の激しい時代に、これまでのように計画の精度を高めるために尽力しようとしたが、前提がどんどん変わるので、計画を完成させることができず、困惑した。計画がないと、行動できないという考え方を手放さないと、アクションが始められない。

【感情】その経験には、どのような感情が紐付いていますか。

(計画が完成できず)困惑、(計画なしで行動することを考えると)不安

【価値観】そこから見えてくるあなたが大切にしている価値観は何ですか。

成果、結果、責任、トラブルなし

変化が激しくて、完璧な計画を作成してから行動しようとすると、計画の見直しを続けなければならず、アクションに移行できないという環境の変化に直面しているようです。

 

  • 『恐れの感情』のメタ認知

次は、『恐れの感情』のメタ認知です。変わりたいのに変われない最大の理由は、『恐れの感情』にあるからです。

【意見】これまでの「ものの見方/行動様式」を手放すことを想像すると、何が不安(心配)ですか。『恐れの感情』の原因は何でしょうか。

精緻な計画を持たずに行動することで、良い成果を出すことができないのではないかという『恐れの感情』がある。

 

  • アンラーンのためのビジョン形成

何をアンラーンしなければならないのか、どのような『恐れの感情』がアンラーンを阻害要因になっているのかが明らかになりました。次は、いよいよビジョンの形成です。アンラーンは、主体性が必要なアクションです。自ら、自分が幸せになるために行うものなので、内発的動機が欠かせません。また、継続して、アンラーンのために意識的に行動しなければならないので、「変わりたい!」と思えることが大切です。

 

【アンラーンするメリット】

アンラーンすることで得られるものは何ですか。

計画がなくても、仕事を前に進める力。

【アンラーンしないデメリット】 アンラーンしないことで失うものは何ですか。

(これまでの経験で極めた仕事術 PDCAの徹底で) 成果を出し続けること。

【ビジョン形成】 アンラーンに取り組むと、どんなよいことがあるのでしょうか。 あなたは何を手に入れるために、アンラーンに挑戦するのですか。

変化の激しい時代にも、これまで通り、成果を出す有能な人材で有り続けるために、  アンラーンに挑戦しよう。

 

  • アクションプランの策定

ビジョンが明確になったら、次は、アクションプランの策定です。アンラーン成功の鍵は、スモールステップで、アンラーンを進行させることです。いきなり、すぐに、最終ゴールを目指すと失敗します。

【最初のステップ】最初のステップとして、何に取り組みますか。

現在抱えている仕事の中で、一番不確実性の高いプロジェクトについて、計画よりも、仮説に意識を向けて行動し、その結果を振り返る。

【成功の評価軸】最初のステップにおける成功の評価軸は何ですか。

・仮説が明確である。

・仮説に対する振り返りが明確である。

・次の行動を、仮説に基づき決める。

・1ヶ月後に、活動全体を振り返り、計画を立てた場合との違いを言語化する。

【振り返りのタイミング】

1ヶ月後

【最終ゴール】

・状況に合わせて、効果的な計画の粒度を柔軟に選択できる。

・変化の激しい時代の実行力の高め方、成果の出し方に必要な“PDCA”(多分、アジャイル的な仕事の仕方)の技を持つ。

まずやってみる。振り返る。このサイクルを繰り返すことで、新しいものの見方や行動様式を無意識に実践できるようになることがアンラーンの最終ゴールです。

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