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1on1 活用術 

2021.09.13文部科学教育通信掲載

リフレクションの活かし方として、1on1活用術について、あるセミナーで講演をさせていただきました。その内容を紹介したいと思います。

1on1

企業では、部下育成の新しい形として1on1という取り組みが始まっています。1on1

は,上司と部下の1対1の面談のことです。これまでも、上司と部下の面談はありましたが、これまでの面談は、上司が部下に指示を行う、進捗管理を行う、評価を伝えるなど、上司のための面談という位置づけでした。これに対して、1on1は、部下のための面談と言われており、部下が、自分のために上司の時間を使う場と考えられています。

セミナーでは、4つの視点で、1on1の質を高める方法をご紹介しました。

はじまりは、信頼関係から

今、職場で期待される人間関係のレベルに変化が見られます。

これまでの人間関係

レベル1

単なる業務上の役割や規則に基づいて、監督・管理したり、サービスを提供したりする関係。大半の「程々の距離感を保った」支援関係

これからの人間関係

レベル2

友人同士や有能なチームに見られるような、個人的で、互いに助け合い、信頼し合う関係

『謙虚なリーダーシップ/エドガー・H・シャイン,ピーター・A・シャイン(英治出版/2020))より引用

VUCA時代を生き抜く組織は、これまで以上に強いチーム力が求められることになります。その前提として、人間関係も、変わる必要があります。1on1の習慣も、新しい人間関係のレベルを期待しています。これまでは、仕事以外の話を職場でしない方がよい、仕事とプライベートを切り分けた方がよい、という考えが常識でした。しかし、これからは、職場でもプライベートの話をしてもよいことになります。また、これまでは、職場で、「気持ち」には言及しないというのが常識でしたが、今日では、「気持ち」を言葉にすることができる心理的安全性が大事であると言われるようになりました。

認知の4点セット【図】を活用した対話と傾聴は、レベル2の人間関係に欠かせません。自分が何を考えているのかだけではなく、その背景にある経験や感情、そして、大切にしている価値観やものの見方まで、相互理解することができるので、人との距離が縮まります。

また、多くの人々は、人の話を聴く際に、意見の背景にある経験、感情、価値観に意識を向けていません。この時、多くの人は、無意識に、人の意見に、自分の経験、感情、価値観を当てはめて、自分の解釈を加えて、相手の話を理解したと思い込んでいます。このため、実は、相手の話を本当に理解している確率はとても低いです。

 

自分ごと化の連鎖

VUCA時代には、自律型人材の存在が欠かせません。自ら定めた目的に対して主体的に取り組むことができる自律型人材は、たとえ、それが、会社や組織から与えられたミッションであったとしても、行動に移す前に、「自分はなぜ、そのことに取り組むのか」と自分に問いかけます。その結果、与えられたミッションも、自分ごと化することが可能になります。

1on1を、部下の主体性を引き出す機会にするために、オススメなのが、ビジョン語りです。正しくビジョンを伝えることができれば、ビジョンは、自分ごと化の連鎖を生む力を持ちます。事例をご覧いただければ、その効果は、一目瞭然です。【図:ビジョンの伝え方】

自身のビジョンを語った後は、部下のビジョンを引き出します。その際にも、認知の4点セットを活用することができます。「何に取り組みたいのか。何を実現したいのか」やりたいことを尋ねた後に、なぜ、そうなのかを、経験、感情、価値観レベルで質問することで、部下が、リフレクションを通して、自分がやりたいことを明確にし、自分ごと化させることが可能になります。

 

リフレクションの促進

リフレクションでは、自分を知り、課題を直視し、ありたい姿を明確にし、ありたい姿に向かい行動する自分をメタ認知すること、そして、経験から学ぶことを支援します。この一連のプロセスを、自分一人で行うことがとても難しく、伴走者がいることは、とても心強いです。特に、自分のものの見方が、自分を縛り付けている時に、そのことに自分自身で気づくことは容易ではありません。

経験から学ぶ振り返りでは、得たい結果に対して、実際の結果を振り返ります。その際に、アクションの前提となる仮説と、経験を通して得た智慧(新たな仮説)を明確にする際に、他者からの問いかけは、とてもパワフルなものです。また、経験そのものを意味づける際にも、すでに、自分のものの見方が、経験の捉え方を限定してしまっているので、他者のレンズが、そこに加わることで、経験からより多くの学びを得ることができるはずです。

 

多様性の心得

最後にお伝えしたのは、多様性の包摂と無意識の偏見についてです。

「私と違うあなたを尊重します」という在り方は、多様性を包摂している姿ではありません。この在り方は、「私を基準に、あなたが違うことを尊重する」という考えが前提としており、自分は多様性ではなく、相手が多様性であるというものの見方を表しています。多様性を包摂するという場合には、自分も多様性の一部であり、あなたも多様性の一部であるというものの見方が大切になります。

部下育成においても、この考え方が大切だと言われています。その理由は、私達は、自分に似た人を高く評価する傾向を持っているからだといいます。このため、多様性を組織に根付かせるためには、リーダーが、自己認識を高める必要があります。自分が、どのような人を高く評価する傾向を持っているのかを知り、無意識の偏見を排除することが大切です。

最後に

最後にお伝えしたのは、成人発達理論が説明している2つの発達レベルです。人が、自分一人の力で発達できるレベルは「機能レベル」です。他者の支援を得て得ることができる発達レベルは、「最適レベル」です。この2つのどちらがより大きな発達・成長に繋がるか、皆さんも、もうお解りですね。人間は、他者の支援を得ることで大きく成長することができます。ぜひ、皆さんも、他者育成に貢献し、自らの成長には他者の支援を求めてください。

 

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