skip to Main Content

未来を創るリフレクション講座

2021.08.09文部科学教育通信掲載

このたび、NewsPicksが運営するNewSchoolで、未来を創るリフレクション講座を実施することになりました。昨日、その体験会を実施し、参加者との意見交換をする機会を持ちました。

 

2019年 NewsPicksの記事

2019年1月に、佐藤留美副編集長に、【図解・保存版】「自分を知るリフレクション講座」実況中継という素敵な記事を書いていただいたのが、NewsPicksとのご縁の始まりです。記事では、副編集長自らが、認知の4点セットの記入用紙に、ペンでリフレクションを記入したものを、そのまま画像で記事の中で紹介する等、臨場感あふれるリフレクション講座の様子を、とてもわかり易く紹介していただきました。記事のピック数は、5364と、NewsPicksの中でも、とても多いです。佐藤留美さんのペンの力に圧倒されたことを今でも鮮明に覚えています。私が読んでも、とてもおもしろく、わかりやすく、リフレクションのことが解説されています。元ネタは、私なのですが、佐藤留美さんのように文章で上手に表現することができるとはとても思えませんでした。

その後、佐藤留美さんは、JobPicksを立ち上げて、誰もが、幸せにキャリアを選択できる社会の実現に向けて、『JobPicks 未来が描ける仕事図鑑』(NewsPicks)も出版さされています。幸せなキャリアを実現するために、自己を知ることはとても大事なことです。このため、リフレクションにも、共感頂いたのだと思います。

 

2021年 書籍出版

NewsPicksの記事が紹介されてから2年後の今年の3月に、やっと、私自身も、『リフレクション 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を出版し、書籍を通してリフレクションを広めることが可能になりました。リフレクションは、実践することに意味があるので、この本は、読むための本というよりも、実践するための本というコンセプトで書きました。いつも、ワークショップで実施していることを、本にするというのは、とても難しいのですが、出版社の支援もあり、なんとか出版にたどりつけました。

2019年にもVUCA時代だから、リフレクションが必要と話していましたが、なかなか臨場感を持ってVUCA時代を実感することが難しいと感じていました。しかし、コロナを通して先は読めないという実体験を持ったことで、VUCAが身近なものになり、リフレクションの必要性も、とても説明しやすくなりました。

 

2015年と2021年のギャップ

リフレクション講座を開始したのは、今から6年前の2015年です。学習する組織のリーダー養成を専門にしていたので、その知見を活かしながら開始したのですが、人によって理解のばらつきが出てしまうことに悩みました。特に、認知の4点セットを使ったリフレクションについては、できる人、できない人、価値を見いだせる人、価値を見いだせない人がいて、全員に伝わる伝え方に悩みました。ところが、昨日の体験会では、多くの方たちが、すらすらと認知の4点セットを活用し、自分の考えを述べていて、本当に感激しました。

 

認知の4点セットは、意見、経験、感情、価値観の4つの要素で、自分の内面をメタ認知するツールです。自分の意見の背景には、経験があり、経験の記憶は感情に紐付いています。さらに、意見、経験、感情の背景には、価値観(ものの見方等も含む)があります。この4つの要素で、自分の思考や感情をメタ認知することができると、自分を俯瞰することができるようになります。例えば、負の感情が湧いて来た時にも、「自分はなぜ、今、怒っているのか」を俯瞰できます。また、自分の考えについても、「その考えの根拠はどこからやってきているのか」を知ることができ、それ以外の考えもあるという可能性に意識を向けることができます。

 

VUCA時代には、過去・現在・未来の連続性を疑う必要があるため、自分の内面をメタ認知することがとても大事になります。過去の成功体験が通用しないかもしれないとしたら、オートパイロットで思考するのはとても危険なことです。同時に、スピードが問われる時代ですから、ゆっくりと考えようという訳にも行きません。そこで、認知の4点セットで自分の内面をリアルタイムでメタ認知できる習慣が役立ちます。リフレクションは、不確実な時代を幸せに生きるために必要なことなのです。

 

2003年OECDキー・コンピテンシー

私とリフレクションという言葉の出会いは、2009年にさかのぼります。当PISA(OECDの学習到達度調査)の報告書との衝撃的な出会いがきっかけです。報告書の序文に、VUCA時代に生きる子どもたちが、幸せに生きる準備を万全にするために、教育が今大きく変わらなければならないという趣旨のことが書いてありました。そして、そのためのガイドとして、キー・コンピテンシーを発表し、最近では、学びの羅針盤2030を発表しています。キー・コンピテンシーでは、リフレクションは要であるという説明があり、学びの羅針盤では、AAR(Anticipation、Action, Reflection)モデルに発展しています。

 

オランダの4歳児との出会い

その後、オランダに教育視察に訪問した際に、4歳児が先生と一緒にリフレクションを行っている様子に出会いました。「過去3ヶ月を振り返り、一番誇りに思うワークは何? なぜ、誇りに思うの?どこに一番苦労した?次に同じことをやるとしたら何を変える?」このシンプルな問いに、子どもは自然な様子で答えていました。小さい頃から、こんな風にリフレクションを行う習慣を持つことができれば、とても楽にリフレクションの力を身につけることができます。また、これくらいシンプルな問いかけができる先生は、自らもリフレクションを行っている人だと思いました。教育が変わるためには、大人が変わらなければならないという私の使命が明確になったのは、この時でした。

 

世界のリーダーのリフレクション

リフレクションという言葉を強く意識したのは、OECDのキー・コンピテンシーとの出会いからですが、今思えば、ハーバードビジネススクールに留学していた際に、アメリカの産業界が行っていたのはリフレクションでした。「なぜ、アメリカは日本に負けたのか」、「なぜ、日本は強くなれたのか」この2つの問いに対するリフレクションが盛んに行われていました。その後、日本に帰国して驚いたのは、日本の経済界は、お祭りモードで、全く、自らを振り返る様子がなかったことです。「なぜ、日本は強くなれたのか」この通説が確立される前に、日本のバブルは崩壊し、失われた数十年が続いています。

 

未来を創るリフレクション

なぜ、振り返る行為が未来を創るのかと疑問に思われるかもしれません。経済界が、もし、リフレクションを行っていたら、今とは全く違う社会を創れていたと思います。強い理由が明確であれば、環境の変化に併せて、不易と流行を見極めることができます。リフレクションにおいては、環境の変化にも目を向ける必要があります。これまでと、これからの何が違うのか、我々は、自らの前提の何を見直さなければならないのか このようなリフレクションができれば、あらゆる可能性に対する仮説を構築でき、仮説に基づき行動することが可能になります。

 

NewSchoolでは、一人ひとりが、マイプロジェクトを成功に導くためにリフレクションを実践するアクションラーニングに取り組みます。リフレクションのパワーを皆さんにも実感してもらえるよう尽力したいと思います。

Back To Top