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オンライン学習への道のり

2021.07.12文部科学教育通信掲載

スクーで、リフレクションの講義を行いました。スクーは、大人たちがずっと学び続けるマナ放送コミュニティーです。スクーは、2011年に、森健士郎さんが創業した会社です。教育機関は、コロナで慌ててオンライン学習をスタートしましたが、スクーは、10年間 オンライン学習の実績を持ちます。

以下、ホームページから森さんの言葉を引用します。

2011年の春。
大手情報系企業に務めていた私は、インターネット上で教育録画を視聴する「eラーニング」という学習システムを初めて利用しました。その時、強く心の中に残ったのは「これだけテクノロジーやクリエイティブが進化している世の中なら、もっと良いものが作れるはずだ。」という思い。
衝動そのままに、次の日に会社へ退職届を提出。株式会社Schooはスタートしました。

(株式会社スクーHPより)

 

スクー体験

講義を行う中で、改めて、森さんのおっしゃることが理解できました。講義は、1時間でしたが、その中で、私は、たくさんの質問に答える経験をしました。講義は一人で行うのではなく、司会進行を務める方と一緒におこないます。私の担当は、中田さんという方でした。中田さんは、受講生代表という立ち位置で、画面に登場します。また、600名近い方たちが参加してくださったのですが、みなさんが、お部屋(インライン講座)に入ると、「着席しました」とストリーミングに投稿してくれます。また、私が話をしている間にも、ストリーミングに、みなさんがたくさんの質問を投稿してくれます。そして、受講生代表の中田さんが、質問をお名前と一緒に読み上げ、私に問いかけてくれます。私の講義は、6つのパートに分かれていたので、そのパートの間で、たくさんの質問に答えることができました。オンラインで行った講義で、1時間の間に、20以上の質問に答えることができたのは、この講義形式のおかげです。

この原体験を持ち、HPを読むと、スクーが、本物である背景がよくり理解できます。

創業したのは原体験から

ミッションの意味は進化していく

私自身の原体験から始まった株式会社Schoo
「世の中から卒業をなくす」という全社Missionと、ライブ配信というテクノロジーを用いて、人同士のつながりによって独自の学びを生むというサービスの核は今も変わっていません。
しかし、なぜこの事業に取り組むのかという「志」や「私たちが挑むべき社会の問題」は、出会い助けてくださった方々や、ご利用いただくユーザー様・クライアント様によって、少しずつ深く広く意味を進化させてきました。

 学びとは何か。

学ぶこととは楽しいことなのではないか。
人とは何か。

人はもっと選択肢を持って生きられるのではないか。

 Missionとサービスがいろいろなものと接する中で、私達は「学びのサービスを運営する会社」から、学びという手段を軸に「人や人類をより良く進化させ続ける会社」へと自らの解釈を深めてきました。

スクーは現在、大学や企業のeラーニングを支援する事業も展開しています。オンラインでの学びの可能性に10年前に気づき、その思いを体現し、そして、学び手と共に進化し続けてきたスクーを体験し、私自身も、改めて、eラーニングの学習体験とは何かを考えさせられました。

コーセラ

最近、AIやテクノロジーの進化に学ぶために、コーセラでの学習体験をしました。日本の自宅で、スタンフォード大学のアンドリュー・ン先生が、惜しみなくそのナレッジをわかりやすく解説してくれる「全ての人のためのAI」という講座に、心より感謝したのは、数ヶ月前のことでした。

アンドリューは、コーセラの創設者の一人です。インターネットが持つ学びの可能性を理解し、大学の講義を、世界に配信するというコンセプトに初めて触れたときには、とても驚きました。しかし、アンドリューたちは、本気でした。どこの国で生まれても、どんな環境で育っても、良質の講義を受けることができる環境を実現することで、誰かの潜在的な能力が開花する可能性が高まるという「学びの可能性」を信じていたのだと思います。

大学の知を民主化することで、社会全体が底上げされることも事実です。もちろん、その背景には、大学は知の消費者ではなく、知の創造主であるという自負があるのだと思います。このような理念があることで、大学が創造する知は、社会実装され、その実践が理論を更に進化させるという好循環のループが生まれます。

ブレンデッド・ラーニング

最近、21世紀学び研究所も、UMUという仕組みを活用し、ブレンデッド・ラーニングにチャレンジし始めています。テクノロジー、コンテンツ、学習理論を融合させることで、良質な学習体験をデザインすることが可能になります。また、学習プラットフォームを、学び手が共有することで、お互いの学習体験から学ぶことも可能になります。ブレンデッド・ラーニングでは、オンライン講義と対面講義の融合させるだけではなく、インプットとアウトプットをどのように設計するか、インプットを反転授業にするのか、授業形式にするのか、講師との対話をどのように設計するのか、学び手同士のディスカッションをどのようなテーマでどのような配分にするのか、学習者に何をアウトプットしてもらうのか等 良質な学びを設計するためには、たくさんの検討事項があります。そして、この設計の違いが、良質な学びを実現するための鍵を握ります。

ラーニングを設計する専門性

海外の学校教育を調べてみると、海外の学校には、ラーニングを設計できるラーニング・コーディネーターが存在することを知りました。コーディネーターの仕事は、個別最適な学びを実現するために、子どもたちの学び手としての多様性を理解することと、良質の学習を設計することが中心です。また、アクティブラーニングにおいては、概念学習を設計し、中心となる問いを立て、カリキュラム全体を通しての学びを統合するための設計を行っています。

日本でも、主体的で対話的な深い学びを中心に置く教育が始まっていますが、ラーニングを設計する専門家は、学校に配置されていません。おそらく、誰もが、それは教師の仕事であると考えているのではないかと思います。本当にそうでしょうか。

オンライン学習という選択

ハーバードビジネススクールも、現在、オンラインの講義を始めています。グローバルアドバイザリーボードの一員として、学長が、オンラインへのシフトを検討していた2015年に、その議論に参加した経験があります。ハーバードビジネススクールの授業は、コールドコールで始まるのが決まりです。最初に教授に指名された学生は、ケーススタディの登場人物になったつもりで、環境分析と、自分の決断を述べなければなりません。このプレッシャーでスタートする授業で、様々な議論を通して、学生は、決断に必要なものの見方を手に入れていきます。多くの人々は、この授業の臨場感をオンラインで再現ことは無理だと考えました。しかし、学長は、諦めることなく、そして一ミリも妥協することなく、授業の臨場感をオンラインで再現しました。

日本では、コロナを機に本格化したオンライン学習ですが、スクーのようにビジョンを持ち、その取組を発展させることが大切であると感じました。そのために、ブレンデッドラーニングや、ラーニング設計等 新たな専門領域における理論と実践の融合が進むことも期待したいと思います。

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