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女性の活躍の色々

2021.04.12文部科学教育通信掲載

国際女性デーを記念して、今回は、女性活躍推進についてお話したいと思います。

日本が、もっと素敵な国になるために、教育を変えることと同じ位、エネルギーを注いでいるのが、女性の活躍推進です。

主婦もプロ

私自身は、1985年の男女雇用均等法の世代です。私の周囲を見回すと、私よりも100倍優秀だった女性たちが、ほとんど家庭に入り、主婦として人生を生きています。職業人の道を選んだ私が、主婦との接点を持つのは、ママ友と繋がりです。特に、幼稚園と小学校の時に出会ったママたちはプロの専業主婦で、子どもと家族のためにすべてを捧げ、また、自分自身も、美しくあることに努めていて、尊敬する方たちばかりでした。この時、「主婦にもプロがいるんだ」と思ったことを記憶しています。

子育てとキャリアの両立

主婦について、もう一つ忘れられないことがあります。それは、ハーバードビジネススールに留学するためにNYからボストンに移動する飛行機の中で読んだ雑誌の記事です。弁護士をはじめとするプロフェッショナルの女性たちが、子育てとの両立を目指し、フルタイムではない働き方を選んでいるという記事でした。アメリカは、日本よりも、女性の社会進出が進んでいると思っていたので、その記事に驚いました。当時の私は、まだ、未婚で、子育てがどんなに大変かも知らなかったので、余計に驚いてしまったのかもしれません。

一番優秀な女性が社会貢献

ビジネススクールの同級生のアメリカ人の中にも、クラスで一位、二位を争う優秀な女性が二人とも、専業主婦の道を選んでいます。一人は、大手コンサル会社出身の女性で、頭脳明晰で人柄もよく、いつもクラスの中心にいるような存在でした。もう一人は、学部もハーバードで、ロースクールとビジネススクールの両方に通っている才女。シェイクスピアの劇も上手で、ユーモアのセンスもある女性でした。ビジネススクールでは、5年ごとに、同窓会があるので、みんなが、今何をしているのかを知ることができます。最初に、彼女たちが、専業主婦の道を選んだと聞いた時は、「社会の損失ではないか」と、衝撃を受けました。しかし、彼女たちは、社会活動を辞めた訳ではありません。学校の理事会に入り、良い活動の資金調達イベントを企画したり、様々な形で、社会に貢献する活動を行っています。あの優秀さが、社会に活かされるのであれば、素敵なことだと感じました。

日本の進歩

私が、ビジネススクールから帰国した当時の日本は、まだ、完全なる男性社会でした。「○○社は、社屋を建てる時、女性トイレを設計図に入れるのを忘れたらしい」という話が、冗談ではない時代です。その当時に比べれば、日本に起きた進歩は、素晴らしいです。特に、2014年以降の女性活躍推進の動きは、とても前向きなものになっています。今では、結婚しても、出産しても、仕事を辞めないでよいという風に、社会通念も書き換えられています。「家庭にお母さんがいないと、子どもがかわいそうとか、子どもがまともに育たない」という言葉を口にする人は、ほとんどいません。優秀な専業主婦を母親に持つ女性の中には、全てを完璧にこなしたいと考え、自分を苦しめている人もいますが、そういう方たちも、周囲のママたちに勇気をもらい、変わりつつあります。

 

共働き社会

どうせ働くなら、楽しく働きたい。気持ちよく働きたい。やりがいを感じたい。成長を実感したい。そう考えるのは自然のことだと思います。ある種の緊張感は大事ですが、変に体に力が入っている不自然な状態では、よい仕事もできません。仕事もスポーツも、同じ原理なのではないかと思います。変に体に力が入ったスイングでは、ゴルフボールも、うまく飛ばすことができません。共働き社会に生きる子どもたちにも、親が、「働くって楽しいよ」と伝えられるような仕事の仕方を、みんなで実現して欲しいです。

女性の特性

ジェンダーバイアスを持ち込むつもりはありませんが、学術的なジェンダー論によると、女性の思考には、ヒエラルキー概念があまりなく、フラット概念が強いそうです。このため、階層を上がること自体に、男性ほど興味がありません。また、管理職になったとしても、ヒエラルキーの長としての振る舞いよりも、チームの長として振る舞う傾向があります。このジェンダー特性があるために、多くの女性たちが、管理職になることに、高いモチベーションを持たないのではないかと思います。理由は二つです。一つは、抑々、管理職になること自体に、男性のように魅力を感じなかったためです。もう一つは、男性上司の管理職のスタイルを見て、あんな風にはできないと考えたためです。

女性のリーダーシップ

昭和女子大学キャリアカレッジでは、2014年から企業で働く女性たちのリーダー養成を行っています。そこでも、女性の特性について解説しています。そして、女性たちが、自分らしいリーダーシップスタイルを開発する支援を行っています。ぶれない軸を持ち、反対意見に遭遇しても、真摯に対話できる強くてしなやかなリーダーになるために、スキルトレーニングも行っています。今も、1年に一度、同窓会で修了生と会うことが、とても楽しみです。

時代が求めるリーダーシップ

チームを大事にする女性のリーダーシップは、実は、イノベーションを生む創造的なチームを創る上で、とても魅力的なものです。フラットでオープンなコミュニケーションや、心理的安全な文化の醸成が、みんな、とても上手です。昨年より、男女半々位で、リーダーシップを学ぶ場を創っていますが、グループワークでは、女性が大活躍です。質問したり、意見を出したり、ファシリテートしたり、その場に必要な役割を柔軟に担ってくれます。また、最初に発言してくれることで、場にコミュニケーションの機会をもたらします。少し褒めすぎでしょうか。国際女性デーなのでお許しください。

女性の弱点

実は、女性にも弱点があります。その一つが、自信がないことです。女性は、99%できそうなことでも、1%のリスクを眺め、できないと考える、そんな完璧主義的な傾向があります。

女性たちには、いつも、「男性6割、女性100%。男性に学ぼう」と伝えています。男性は、6割ぐらいできそうなら、「できます」と云えるという意味です。実際に、海外で、採用の募集広告の要件に何割自分が該当していたら応募するかという調査を行った所、男性は6割、女性は一つでも要件が満たされないと応募しないという結果になったそうです。VUCA時代に、確実な成果物を最初から生み出すことはできませんから、女性も、男性に学ぶ必要があります。

これ本当?

もう一つ、これは、まだ私の中で未消化のことですが、ここで、皆さんに投げかけてみたいと思います。昨年、ハーバードビジネスレビューという雑誌が、女性の力というテーマで、様々な記事を紹介してくれました。その中に、コロンビア大学のトマス・チャモロ・プレミュジック教授が、男性が女性リーダーから学ぶべき7つのポイントを紹介しています。その中の一つに、「変革を通じてモチベーションを高める」という項目がありました。「えっ?! ということは、男性は、変革にモチベーションを感じないということなの?!」と私の頭の中には、たくさんの「?」が浮かびました。まだ、この真実は、解明できていません。これから、色々な場面で、確かめてみたいと思います。

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