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オンライン化への適応

2021.01.11文部科学教育通信掲載

コロナ禍で、会議、研修、セミナー、ワークショップがすべてオンライン化して、半年が過ぎました。皆さんは、この変化をどのように受け止めていらっしゃるのでしょうか。

オンラインのコミュニケーション

オンラインでいきなり初対面という出会いもたくさんあり、名刺交換ができないことに不便を感じます。しかし、オンライン初対面でも、自己肯定感が高く、自分をよく知っている人や、コミュニケーション力のある人とは、すぐに親しい関係になることができます。お人柄というものは、オンラインでも伝わるものであることが解りました。

あるプロジェクトでは、コロナ禍でもリアルな会議を続けています。リアルでもなかなか会話も弾まない会議です。この会議を、オンラインでファシリテーションして欲しいと言われたらと想像してみると、「ちょっと無理」という心の声が聞こえてきました。ある研修講師が、「オンラインでコミュニケーションに問題が出てきているというのは嘘です。リアルに場を共有していただけで、リアルにオフィスで時間を過ごしていた時からコミュニケーションの問題は存在していて、その問題がオンラインになり露呈しただけです」と厳しくお話されていたことを思い出します。

ZOOMは民主的

インターネットは、世の中を民主化するツールであるということは、以前から言われていたことですが、ZOOMを体験して、民主的であることを実感します。オンラインの会議では、社長も部長も平社員もみんな同じように画面に映ります。席次も自分で変えられますから、社長が常に中心に存在する訳ではありません。話している人の顔は大きく映っても、地位によって、画面に映る顔のサイズが変わることはありません。

私は、女性なので、これまでたった一人の女性という立場で会議に参加することが多くありました。例えば、100人中女性1人という会議の場では、場の空気を読み、少し緊張感が生まれていたように思います。ところが、ZOOMになりますと、場の空気がないのです! これは、ジェンダーの問題だけでなく、部屋に入るだけで他者に圧のようなものを感じさせていた人の圧も、ZOOM画面では届きません!リアルな会議であれば、その人の存在が、部屋全体の空気を換える存在でしたが、オンライン会議では、画面上の1人として存在するだけです。

ZOOMでグループワークをする時には、全員がちゃんと話すことができます。リアルなグループワークでは、誰か一人がしゃべり、聞き役に回る人もいたように思いますが、オンラインでは、全員が話すようになります。誰もの顔が画面上にあり、話していない人は誰かを誰もが意識できるからだと思います。私は、講師という立場で、グループワークを皆さんに実施していただくことが多いのですが、ZOOMになって初めて、彼らが本当に何を話しているのかを聞かせていただくことが出来ました。これまでは、一人だけ、立ったまま、グループの話を横で聞くことしかできなかったのですが、ZOOMに入れば、一緒に座って話を聴いている感じです。彼らが何を考えているのか、生の声が聞こえます。講師が、グループワークに入っても、誰も遠慮する様子もなく話してくれます。ZOOMが民主的なツールだからなのだと思います。

会議の数

会議がオンラインとなり、時間の使い方が変わりました。これまでは、移動の時間を含めると、訪問などを含む会議であれば、午前に一つ、午後に2つと、一日3つ位しか入れられなかったのではないかと思います。ところが、会議がオンラインになると、会議の数を無限大?に増やすことが可能になります。これまでは、目上の方に、オンライ会議でお願いしますということは失礼に当たりましたが、今では、オンライン会議も、会議の部屋を選ぶのと同じ位当たり前の選択しになりました。これには、良い面と悪い面があると感じます。よい面は、移動という無駄がなくなったこと。CO²の排出量も削減できます。悪い面は、移動という気分転換の時間が消え、運動不足になることです。また、移動という空きスペースが、発想を広げたり、意外なものに遭遇したり、自然と触れたり等、色々な経験をする場になっていたということに改めて気づかされました。最初は、オンライン会議があまりにも便利で、時間のある限り、予定を埋めていたのですが、そのスタイルは危険であることに気づきました。そして、画面の前に1日中座り、会議を続けることは、意図的に避けなければならないことを学びました。パソコンと人間が同じ様に働くことはできません。

オンラインプレゼン

オンラインでも、とても素敵なプレゼンをされる講師のお話を聴く機会がありました。背景にもこだわり、カメラ目線も決まっていて、画面の構図も完璧です。休憩時間には、音楽が流れ、コーヒーブレイクにも癒しのための工夫が見られます。完璧なオンラインの講義とは、こういうものかと、大変勉強になりました。そして、改めて自分のプレゼンを見直し、恥ずかしく思いました。2021年には、少し改良を加えていきたいと思います。

オンラインは、リアルよりも、プレゼンを聴いている方の体験が薄くなるため、聴衆の関心を引き付けることが難しいと云います。このため、最低限注意しなければならないことは、目線をカメラに向かって真っすぐ自然な角度に合わせることだそうです。カメラをまっすぐ見ることで、相手の顔を見て話す状態になります。照明の明るさやマイクなどに、こだわる方もいるようです。ZOOMの背景も大切になります。リアルでは、身だしなみが大事と言われていましたが、オンラインになると、また、違った配慮が必要になることがとても興味深いです。

メラビアンの法則によれば、言語情報が7%、聴覚情報が38%、視覚情報が55%なので、画面の背景や、自分の顔や目線に意識を向けることは大切なことです。同時に、聴覚情報にも、注意を払わなければなりません。そこで、ポイントとなるのが、緩急だそうです。注意を惹きたい時に少し話すスピードを落とすなど、話すスピードを変えて、変化をつくることで、聴衆が注意を向けるよう促すことができます。声の大きさや高さを変えることも、同様に、聴衆の注意を喚起するために役立ちます。オンラインに移行することで、誰もが、新しい自己表現の力を身に付け機会になっています。

対話力

主催している21世紀学び研究所では、意見だけではなく、その背景にある経験、感情、価値観まで含めて、伝え、聴き合う対話のコミュニケーションを広める活動をしています。この対話のアプローチが、オンラインになり、とても役立つというお言葉をたくさん頂きました。初対面の人でも、この対話を実践すると、どんな経験の持ち主で、何を大切だと思っているのかを知ることができるからです。

私も、意見、経験、感情、価値観を活用して、オンライン初対面の人間関係の構築に挑戦しています。一緒に暮らしたことも、仕事をしたこともない他人のことを知るということは、簡単なことではありません。特に、異なる経験を持っている人のことを知ることは、難しいものです。そんな時にも、意見、経験、感情、価値観の4つを聴き取るように心がけてみてください。そして、ご自身も、この4つを伝えてみてください。たった15分の対話でも、相手をよく理解できたと感じることができるはずです。

これからも、オンライン化に適応し、進化を遂げたいと思います。

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