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システム思考を学ぶ理由

2020.09.28文部科学教育通信掲載

昨年から、昭和女子大学昭和こども園の年長さんにシステム思考を学ぶレッスンを実施しています。今年も、9月からスタートするレッスンに向けて、保護者の皆様に、映像メッセージで、幼児がシステム思考を学ぶ理由についてお伝え致しました。

幼児期からの習慣化

こちらは、システム思考者の習慣 子ども版です。システム思考者の習慣は、前例のない時代を生きる上で、私たち大人にも不可欠な力であると云われ始めています。そして、世界では、幼児期から、システム思考者の習慣を身に付ける学習が始まっています。

アメリカでは、各州独自の学習指導要領を作成していますが、アマゾンやマイクロソフトの本社のあるワシントン州では、幼児期から段階的にシステム思考を学ぶことが、学習指導要領に記載されています。

私たち人類が直面する課題が、単純ではなく、一生懸命問題解決に取り組んでも、問題を解決することができなかったり、問題に対処した結果、新たな課題をうみだしたりすることもあります。そうならないためには、誰もが、物事の部分ではなく全体をととらえ、物事のつながりを理解する力を育むことが必要になります。

赤ちゃんはシステム思考者

赤ちゃんは、泣いて、おなかがすいたことを親に知らせる等、システム思考を生まれた時から活用しています。しかし、従来の学校教育は、システム思考を必要とせず、本来、子どもたちの中にあるシステム思考を眠らせてしまい、大人になった頃には忘れているというのが、私たち大人の現実ではないかと思います。

この思考習慣を大人になってから学ぶのはとても大変なことですが、子どもの頃から馴染んでいれば、簡単に行うことができます。

世界の教育改革

世界の教育改革は、2003年に本格化しました。OECDがこの年に発表した教育指針は、日本の教育改革にも大きな影響を与えました。その狙いは、変化複雑相互依存の時代を生きる力を、学校教育で、子どもたちが手に入れることです。そのため、学校教育には、多様な利害関係者と協力し、複雑な問題を解決する力を育むことが求められるようになりました。そして、全ての能力を支える核となる力として、リフレクション(自己内省)の重要性が謳われるようになりました。システム思考は、リフレクションを行う上でも、重要な役割を果たします。

こちらは、OECDが発表した学びの羅針盤2030です。2003年に発表した教育指針をさらに発展させ、学び手が人生を歩む上で羅針盤となることを願い、作成されました。学びの羅針盤では、新たな価値を創造する力という言葉が加わり、仮説を持ち、行動し、リフレクションを通して正解を見出すという行動様式も加わりました。また、システム思考やデザイン思考の重要性も、明記されています。

従来は、高い学力が人生の幸せを保証しましたが、これからは、学力は土台であり、基礎知識を活かし、自ら問いを立て、学び、前例のない問題解決に挑戦する力が幸せを保証することになります。システム思考の習慣は、そのために、必要なものです。

子どもの発達

こちらは、ハーバード大学子ども発達センターが発表している遂行能力の発達に関するグラフです。4歳から5歳にかけて著しく成長し、小学校6年生になると、成人とほぼ同じレベルに到達します。大人になる土台が、この時期に育つのだとすれば、幼児期から、小学校高学年になるまでの間に、システム思考を磨く機会を得ることができれば、生涯活かせる思考力になるはずです。

学校の学びは、評価できなければいけないという使命感から、数値で測定できない学びは、学びとして認められないというものの見方が主流となっています。このため、心の教育は、目に見えない、曖昧なものとして置き去りになります。

システム思考の学びも、心の教育同様に、短期的な成績を上げる効果はありません。しかし、物事の繋がりを探し、時系列で起きた事柄を因果関係で結び付け、その事柄に意味付けをする力や、過去から現在を眺め未来を想像したり、予測したりする力が身に付きます。その結果、内省力、問題解決力や創造力も高まります。

目に見えないもの

世界は、無数の要素が絡み合って現実を創り上げていますが、この無数の要素の中から、重要な要素を選択し、原因と結果の関係を理解することで、根本原因を突き止め、課題を解決するためには、システム思考が欠かせません。システム思考が問題解決に活かされている今日の代表例は、地球温暖化や環境破壊についてです。専門家たちは、マサチューセッツ工科大学のジェイ・フォレスター教授により開発されたシステムダイナミックスという手法を使い、シミュレーションを行います。

システム思考の習慣を持つ人は、目に見える事象は、目に見えない大きな氷山に支えられており、そこに根本原因があるいると云います。システム思考者の習慣がなければ、目に見えないものはその人の目には存在しませんから、対処療法的に、問題に対処することしかできません。このため、一時的に問題を解決することはできるかもしれませんが、その問題を、根本的に解決することができません。

地球規模の問題解決

2006年に、「システム思考とダイナミクス・モデリング会議2006」に参加されたシステム思考の専門家 小田喜一郎氏が、チェンジエージェントのHPで紹介している記事を引用致します。

地球温暖化問題を、「システム」として考える上で、重要なポイントが3つあります。「ストックとフローの構造」、「フィードバックの構造」、そして、「時間的遅れの構造」です。京都議定書にある1990年比で5~7%ほど二酸化炭素などの地球温暖化ガス排出量のフローを削減しても、大気中の二酸化炭素濃度(ストック)は増え続けること。また、温度が上昇し、ある閾値(てぃっピング・ポイント)を超えると、アック循環のスイッチが入って止められないほどの休息な勢いで温度が上昇すること。そして、今すぐ行動を取り始めても、自動車や家電、工場設備といった家庭や産業にある二酸化炭素を排出するものを十分効率的なものにお子変えることで排出量削減の成果をだすためには10年単位の時間を必要とし、さらに二酸化炭素濃度序章の温度への栄養を止めるには約30年の遅れが生じること。

システム思考者が増えることが、人類と地球のよい未来につながることを信じて、システム思考教育に取り組みたいと思います。

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